ですが、ちょっとした伏線が複数あるので先のお話を妄想しながらお楽しみください☆彡.。
「君の個性は、その、はっきり言って――見当が付かない」
俺は個性の発現した翌日、両親に連れられて病院で検査を受けることになった。
その結果を医者は「見当が付かない」と表現したのだ。
そう、そりゃあそうだ。
普通に考えてみればこんな個性は"おかしい"。
例えば火を噴くことが出来る個性があったとする。
それはどんなに応用できたとしても手から火をだすとか、火を操るだとかそのあたりで頭打ちだ。
もし、そもそもの前提である火を噴くという個性が実はガスを操るという個性だったとしてもある程度は似通ったものになるだろうし、原理を説明することができる。
しかし、俺の場合は多様すぎた。
言い方を変えれば一貫性がまるでない。
体を強化することと怪我の治療はまぁ、まだ結び付けられる。
だが、何も無いところから武器を取り出したり、体から電流を発生させるなんてどうやってどうやって結び付けていいものか。
俺自身もさっぱり思いつかない。
医者もさぞ困惑しただろう。
「うぅむ……」
用紙の空欄へペンを向けては天井を仰ぐという一連の動作を何度も繰り返しては眉間にシワを寄せる。
その原因は今私の目の前で椅子に腰掛けている少年だ。
彼は個性が発現したことで当院に受診しに来た。
ここまでは特におかしな所はない。
この超人社会では珍しいものではなく、むしろ誰もが通る道だ。
さらにうちは個性専門の個性科病院。
彼がここに来るのも当然というものだ。
しかし、問題は彼の個性だった。
肉体の強化を見せられて、「なるほど、君は強化型の個性なんだね」と言ったらその子供は「怪我も直せるし物も作れるし電気だって流せます」と真顔で言うのだ。
「はぁ……」
本日何度目かわからない溜息をつく。
小さく吐いた息はただ虚しく空気中に霧散した。
個性を発現したばかりの子供が夢を抱いて自分の個性を誇張して伝えるというのは、まぁ、よくある話だ。
別に個性に限った話ではない。
子供によくある大人や友達に興味を持たれたいが故の嘘。
最初は私もそう思った。
しかし、それを実際に目の前で見せられたらたまったものではない。
今までずいぶん長いことこの仕事を続けてきたが、こんな例は見たことがない。
長々と言い訳をしたが、とどのつまり、個性の登録用紙に何と書いていいかわからないのだ。
私が悩みあぐねていると、小さな声で「あの……」と彼が声を掛けてきた。
「ん?うむ、何かね?」
「あの、個性の登録の欄に書くことが決まらないなら、俺が決めてもいいですか」
「君がかい?」
「はい」
先程までただ内気で気弱そうな子供に見えていた彼の眼には明らかに強い意志が灯っていた。
後ろに控えた両親に目をやると、普段からそういうわけではないようでふたりとも少し驚いた様子だ。
「ご両親は構いませんかな?」
「え、ええ。立香がそういうなら」
少年の両親は顔を見合わせながらそう言った。
「では、君の案を聞こう」
「ロード、『ロード・カルデアス』……」
「な、なに?」
予想していた子供が考えそうな個性名とはかけ離れた言葉に少し狼狽える。
いや、確かに横文字を並べてくるというのは考えてはいたが、自分でも意味が理解できない言葉を出してくるとは思いもしなかった。
もっと子供っぽさ全開のダサいネーミングが飛んでくると思っていたのだが。
多少の期待はずれ感はあるものの、同時に彼がどうしてそんな名前をつけたのか興味が湧いた。
「どうしてその名前にしたいんだい?」
「その、うまく言えないけど、この力は俺だけの力じゃなくて、俺達の旅路の始まりであり終着点なんです。だから、どうしてもこの名前にしたくて」
『旅路』。
『終着点』。
五歳になりたての子供の口からすらすらと出てくるような単語ではないものばかりで驚くが、その言葉の節々にはやはり確固たる意志が窺えた。
元からどうしたものかと悩んでいたのだ。
どうせなら、彼の願いを叶えられるように努力しよう。
無駄に個性に関する医者、研究者としての地位は持っているのだから。
こんな時にこそ利用せずいつ役に立つというのか。
「それで、具体的な内容についてはどうするのかね?」
「あ、それについては魔術でお願いします」
「魔術ぅ!?!?」
決めていた覚悟が一瞬で揺らぎそうになった……。
本当に、大丈夫だろうか……。
後に彼が提出した藤丸立香の個性についての議論をめぐり、彼が学会を震撼させるのはまた別のお話。
次回は視点を実技試験に戻して戦闘に入ります!
乞うご期待!