俺だって英雄になりたい   作:時雨。

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どうも時雨です!
皆さんご感想、ご意見ありがとうございます!
これからも感想だけでなく評価の方もどしどしお待ちしております!
も、もっと気軽に毎話感想書いてくれてもいいのよ?


茶番はこれぐらいにしておいて……
はたして立香はどうやって沖田に勝つのか、ではどうぞ!


俺だって瞬間移動くらいしたい

どこからか、風に乗って香しい花の香が漂う。

まり嗅ぎなれないその香りに意識を惹かれた一瞬。

たった一瞬であいつはそこに居た。

別に目を離したわけじゃない。

気を抜いていたわけでもない。

だが、俺は奴の個性の発動どころか奴が動き出す瞬間でさえ認識することは出来なかった。

 

『0秒00!』

 

計測マシンが頭のおかしな記録を合成音声で告げる。

冷たい汗が一筋背中を伝った。

続いて土方がすさまじい速さでゴールする。

 

『1秒34!』

 

どちらのタイムも正気とは思えない記録だ。

比べてしまえば負けてはいるが、土方だって3位を大きく突き放しての2位。

そもそも50メートルを1秒代で駆け抜ける女子高生なんて想像もできないが、今実際に目の前で記録をたたき出されたのだからそういう奴もいると認識を改めざる負えないだろう。

だが、だからこそ、藤丸立香という人間の異常性は大きく際立っていた。

 

 

『0秒00』。

 

 

まるでスタート時から既にそこに居たとさえ思える。

だが、スタートの合図が鳴った時確かに奴はスタート地点に居た。

はっきり言って原理も理屈もわからない。

まさに瞬間移動だ。

藤丸立香という人間はまさに未知数。

それは俺が入試の映像を初めて見た時の所感だった。

何ができるのかもわからない。

何が目的なのかもわからない。

奴の個性、書類には『ロード・カルデアス』と書かれていた。

このわけのわからないふざけた個性名の詳細欄には「魔術を使用することが可能。基本的に何でもできる」などと殊更ふざけたことが書かれていた。

初めて見たときはこの書類を書いた奴は頭に何か異常でもきたしているのかと思ったが、なるほどこれは恐ろしい。

先程までジャージしか着ていなかったはずの藤丸は体に白いローブのようなものを羽織っている。

恐らく入試の時に仮想ヴィランを暴走させたときに着ていた物と同じだろう。

 

「ちょ、ちょっとぉ!?それ反則ですよ!!ずるいですって!!それもう50メートル走じゃないじゃないですかぁ!!!」

 

「いやいや、さっき先生が言ったじゃないか。個性の使用はOKってさ。ならまぁ、これもまた頭の使いどころだよね?」

 

そう言って人差し指で土方の額を突く藤丸。

何やら言い合いをしているが、結局のところ今晩のおごりは土方に決まりそうだ。

それを受けて藤丸はすこぶる上機嫌と見える。

こちらは内心焦りと困惑でいっぱいだというのに。

スタートの合図がなった時、土方の方は一瞬踏み込む動作が目視できた。

どんなに早くたって走り出すには必ず人間は何らかのモーション、筋肉を動かす予備動作がある。

だが、藤丸にはそれがなかった。

本当にあの男は棒立ちの状態からあの場所へと一瞬で移動したのだ。

他の生徒は皆ありえない記録に開いた口がふさがらない。

かく言う俺もこの信じがたい記録には本気で驚いた。

奴の個性はどんなものかわからないが、かなりの汎用性があるらしい。

それだけは入試の時からわかっていた。

だからもし何かトラブルが起きたとしても個性を消せる俺が担任にあてがわれた。

だがこれは―――

 

 

「少しばかり、荷が重くないか?これは」

 

 

俺の個性は"見た"相手の個性を消すことができる。

この超人社会において他の個性とは別のベクトルで強力な個性だ。

瞬きと同時に解けてしまうという欠点も、工夫の使用によっては対処できる。

だが、だがあいつには個性を発動させるモーションなんてなかった。

つまり奴を抑え込むには出来得る限り常に個性を消し続けなければいけないということだ。

だが、瞬きというインターバルを挟む以上必ず奴が視界から消える一瞬がある。

普通ならこの一瞬だけで特殊な立地や建物内以外で俺の視界外に出られる者は少ないだろう。

しかし奴は違う。

今の瞬間移動を使われれば俺は個性を再度封じるどころか追いかける事さえ不可能だ。

どれだけの距離移動できるのかもわからない。

しかも奴にはあの巨大な仮想ヴィランを撃破したときの謎の攻撃モードがある。

あの侍のような風貌。

あれと今の瞬間移動を併用なんてされたらたまったもんじゃない。

頭の中を思考がグルグルと回っていく。

気が付くと当の本人たちがこちらへ戻ってきていた。

 

「どうかしましたか?相澤先生」

 

「さっきのやっぱり不正ですよね!?もっかいやり直しましょう!」

 

「あんまり動き回るとまた倒れるんじゃない?大丈夫?」

 

「少なくとも沖田さんのお財布は大丈夫ではありません!!!」

 

年相応の無邪気さが残るやかましいやり取りを目の前で繰り広げる二人。

だが、普段なら五月蝿いと注意するであろうその騒ぎようすら俺の耳には届いていなかった。

早急に校長に報告、そして今後の方針を決める必要がある。

心の中で先のことを決め、体力テストに戻った。

まだ、この体力テストでは見極めなければいけない事項が残っているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先程の50メートル走から程なくし、他の種目もそれなりに頑張った。

握力に反復横跳びに走り幅跳び。

途中で沖田が貧血を起こした以外は特にハプニングもなく計測は進んでいった。

 

「さっきの子、無限はすごかったね」

 

「あぁー、体力テストにどれだけ人を切れるかーとか無いんですかねぇ」

 

「そんな物騒なのあるわけないでしょ。てかそれで一体体力のどの辺が計れるのさ。そんなの取り入れてるの新選組くらいだよ」

 

「いや、流石にうちでもそこまでひどい入隊テストはしてないですよ。ちょっと幹部クラスがサクッと相手してあげるだけです」

 

「君たちの軽くは軽くじゃないんだよなぁ……」

 

「というか、さっきのやっぱりずるですよね」

 

「なんだとぉう?まだ言うか」

 

 

 

「だって、あれ()()()()()ですよね」

 

 

 

そう、俺はあの瞬間構えもしなければ走る気も見せなかったが、そもそも走り出してすらいなかったのだ。

順を追って説明しよう。

まず、沖田の話からだ。

沖田は勝負、と言ったからには絶対に手は抜かない。

元より昔から張り合いを始めるとノッブが相手だろうと俺が相手だろうと必ず勝ちを取りに来るやつだった。

薄く、そして寒い現在の彼女の財布事情を考えても本気で向かってくるのは当然だろう。

まぁ、実際に勝てるかどうかは別としてだが……。

ともあれそうなれば彼女はサーヴァント時から引き継いでいる『縮地』を使用するであろうことは火を見るよりも明らかだ。

障害物のない直線でしかも短距離。

必ず沖田は縮地を使って来る。

これが確定した時点で俺の「走って勝つ」という選択肢は限りなく少なくなった。

というか皆無だな。

そもそもで『縮地』を使用した沖田に速度で勝てるようなサーヴァントは数少ないし、居たとしてもトップサーヴァント連中だ。

そんな体に負担のある力を借りる?

しかも体力テストで?

却下だ。

確かに沖田との勝負は現上何より優先度は高かったが、ここでぶっ倒れてその後に控えた種目を0点またはバツ印で過ごして雄英から入学初日に一発退学とかシャレにならない。

そこで俺はそれ以外で沖田の記録を破る方法を考えた。

そこで思いついたのがこれだ。

 

 

『スタートの合図から最速でゴールラインに存在していればいい』

 

 

詰まる所、俺本人がそこに居る必要はない。

俺がそこにいると機械や先生が認識できればそれでいい。

となれば後は簡単だ。

 

「いやぁまったく、今日の晩ごはんが楽しみだ」

 

「ぐぬぬっ……この借りは必ず返しますからね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

当たり障りのない会話をしながらテストの順は進んでいき、最後の緑谷の番になった。

これまで彼は特に突飛な記録は出していない。

このままいけば最下位除籍は間違いなく緑谷だろう。

 

「彼、大丈夫なんですかね」

 

「うーん、どうだろう」

 

「おや、お友達じゃなかったんですか?」

 

「朝の聞いてたの?」

 

「ええ、何やらお知り合いのようでしたのでてっきりどこかで何か縁があったのかと」

 

「ああ、緑谷とは入試の会場が一緒だったんだ」

 

「えぇーっと、もしかしてノッブが言ってた体爆散アーラシュさんの人ですか?」

 

「あの人はいったい何を言ったんだ……」

 

相変わらず適当な上にオーバーな表現だなぁ……。

体爆散アーラシュさんって、いや、確かに左手以外ボロボロだったけども。

流石に爆散はしてなかったしそう伝えたつもりだったんだが。

一体俺とノッブとの間で意思疎通の過程に一体何があったんだろうか。

頭の中で「うはははははは!!」とハイテンションな笑いが鳴り響いている。

どうやら彼女はどこまでも俺のことを逃がしてはくれないようだ。

 

「彼の個性は少し特殊、というかうまく扱いきれていないように見える。だから0か100かしか出せない現状じゃあ他の種目で個性を使うわけにはいかなかったんじゃないかな」

 

あくまで俺の憶測にすぎないけどね。と付け足して緑谷に視線を向ける。

青い顔で独り言をつぶやいていたようだが、覚悟が決まったのか助走距離を取った。

円の中で思い切り踏み込み、ボールを投げた――――が、これと言って当たり障りのない記録が出る。

本人も困惑し、「今確かに、使おうって思って……」とつぶやいた。

 

「個性を消した」

 

相澤先生の発言に周囲が騒めく。

どうやら今のは先生の個性によるものらしい。

個性を消す個性、興味深いな。

相手の個性をどんなものでも消せるのならそれはまさに最強の個性だ。

緑谷は相澤先生に何事か注意を受け、再度ソフトボール投げの円に戻された。

あと一回。

次が彼のラストチャンスだ。

もう、後はない。

 

「彼、どうなると思います?」

 

「乗り越えてくるよ」

 

「おや、即答ですか。ちなみにその心は?」

 

「何となく。だけど――」

 

先程と同じように思い切り踏み込んで振りかぶる。

だが、先ほどとは何かが違うように感じられた。

ボールが指を離れる寸前。

僅かに触れたその指先で、緑谷はあの個性を使用した。

こちらまで感じられる風圧。

小さな風だが、常人ではボールを投げただけではそんなことはありえない。

赤黒く変色した指の痛みに耐え、ぐっと握りこぶしを作って相澤先生を見る。

 

「先生……!まだ、動けます……!!」

 

「こいつ――!」

 

痛みであふれた涙を目一杯に貯めながら、挑発的な笑みを浮かべる緑谷。

ああ、彼は。

きっと逆境を乗り越える天性のなにかを持っている。

未だ自分の力を制御することもできず、周りも決して味方が多いというわけでもない。

そんな状況を瞬間的な発想と機転で乗り越える。

 

「俺、自分の直感は信じるタイプなんだ」

 

これから先の三年間。

彼と一緒に居ればきっと楽しいことがたくさん待っている。

俺の直感がそう囁いていた。

今から先が楽しみだ。

騒然となるグラウンドで、俺は一人空を仰いだ。

 

 

 

 




いやぁ!
それにしても仕事終わってから書くと辛いね!
時間が!時間が無いよ!!
学生時代はあんなに腐るほどあった暇が!ないね!!
辛いやぁ!(血涙)
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