俺だって英雄になりたい   作:時雨。

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どうも時雨です!
今回は屋内戦闘訓練です!
このシリーズ始まって数少ない立香達の戦闘シーンが……!
ではどうぞ!


俺だって沖田と本気で斬り合いたい

『では、二人とも準備はいいかな?』

 

耳のインカムからオールマイト先生の声が聞こえる。

通信は良好で音質も問題ない。

とはいっても俺にも沖田にも通信する必要のある相手なんていないんだが。

俺は今ビルの入口正面に陣取り、訓練開始の合図を待っていた。

空は青く、雲も少ない快晴。

いい天気だ。

気分はどこかへピクニックにでも行ってお日様の陽気な光を浴びながらサンドイッチでもくわえていたいところだが、今回ばかりはそうも言ってはいられない。

沖田は訓練が始まる前に「前回の雪辱を晴らす」と言った。

必ず何らかの策を講じてくるはずだ。

これは幼少期からずっと一緒に育ってきた幼馴染みとしての俺の経験則であり、彼女の後ろに立ち続けたマスターとしての経験則でもある。

あいつはそう何度も簡単にやられてくれる相手じゃない。

 

『それでは――戦闘開始!!』

 

耳に届く声と共にビルの中に入る。

中はシンと静まり返っていて、物音一つしなかった。

だが、どこかで待ち伏せをしているような気配も予感もしない。

個性を使用して実技試験の時のように武蔵ちゃんの力を借りる。

ちなみに俺の着ていたコスチュームはずっと来ていた『魔術礼装・カルデア』と同じデザインにしてもらった。

体が青白い光の粒子に包まれ、上下とも深みのある青に燃えるような赤が特徴的な袴に変化した。

この状態で再度周囲を警戒するが、それでも奇襲の気配はない。

 

「とりあえず進むしかないか」

 

ゆっくりと奥へ、奥へと進んでいく。

一階を全て調べ終えてもまだ沖田は見つからない。

どうやらさらに上のようだ。

階段でも警戒は怠らなかったが、それでも沖田が出てくる様子はない。

そして二階の奥、この階で一番大きいであろう部屋にたどり着いた時点で直感が走った。

 

「いる、な」

 

腰に下げた刀を二刀引き抜き、扉を蹴破る。

大きな音を立てて倒れた扉の向こうに、沖田は微動だにせず立っていた。

閉じていた瞳をゆっくりと開き、こちらを見据える。

 

「待たせたね」

 

「ええ、待ちくたびれました」

 

切り合いなんて気合いがすべて。

切ってしまえばみんなおんなじ。

常日頃からそういっている沖田とは思えないほどに正々堂々とした武士らしすぎる立ち姿。

こちらとしては多少の違和感を感じるが、沖田は地面に付き立てて両手を置いていた刀を持ち、抜刀。

沖田は新選組の羽織を身に纏った、一言で言ってしまえば第三再臨の姿だ。

俺と比べると明らかに華奢なその体から大きな威圧感を感じる。

どうやら本気のようだ。

こちらもそのつもりで構える。

一瞬でも気を抜けばやられる。

そんな予感があった。

高校生となったばかりの二人の生徒が行う初の戦闘訓練。

そんなことを言ってもきっと誰も信じないであろう空気が今この部屋には充満している。

殺るか殺られるか。

斬るか斬られるか。

 

「覚悟はいいですか」

 

「ああ、いつでも来い」

 

「では――――いざ、参る!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

地下のモニタールームでは先程までの訓練とは明らかに違う雰囲気に皆固唾をのんでモニターを見つめていた。

 

「すっげぇなこれ。ここまでピリピリした空気が伝わってくるみてぇだ」

 

「ああ、実際あっちにいる二人はもっと重たい空気の中に居るんだろうな」

 

「藤丸君、入試の時に見たのは一瞬だったが、今と同じ姿で戦っていたと思ったが……彼の個性はいったい何なのだろうか」

 

各々の思いを口にするも、視線は決して映像から離さない。

 

「す、すごい……」

 

その場には保健室で怪我の治癒を済ませて無理を言って戻ってきた緑谷もいた。

応急手当のおかげで通常よりも怪我の度合いが軽減され、意識が戻り次第すぐにこちらへ帰ってきたのだ。

普段は個性の分析や解説で目まぐるしく動く彼の口も、その時は開いたまま動くことは無い。

皆が見つめるモニター。

そこにはまるで、芸術のような剣戟が映し出されていた。

 

 

 

 

「ッああ!」

 

「せぁっ!」

 

鍔迫り合いに持ち込もうとすると、技量で上の沖田はうまく勢いを利用して回避する。

力ではこちらが上だが、向こうは技と速さでそれを勝って来る。

しかも厄介なのはこの世界で彼女に生まれた"個性"だ。

後ろへ飛んで一度距離を取る沖田が飛びのきざまに刀を一振りすると、その延長線上に居る俺へ向かって歪んだ空気のようなものが飛んでくる。

それを左で斬り壊し、こちらも一度体制を整えるために距離を取る。

幸いこの部屋は広い。

沖田の得意な中、近距離にとどまっていてはこちらに休む時間など与えてはもらえないだろう。

端によりすぎて逃げ場がなくならない程度にできるだけ距離を取る。

 

「はぁ。それにしても、随分と今回は気合いが入ってるね」

 

「もちろん。あなたは数えていないかもしれませんが、前回ので私は5連敗です。そろそろ巻き返させていただかないと、と思いまして」

 

「そうだっけか……。まぁ、何にせよこんなに真剣勝負なのは久しぶりだね」

 

「そうですね。ですから、ここは何が何でも勝たせていただきます」

 

そういいつつも沖田は核の張りぼての前から動く気配はない。

彼女は本来奇襲やその速さを生かした攻めが得意なはずだ。

だが、現状俺は彼女の守りに俺は攻めあぐねている。

今回はこの戦闘訓練における立ち位置的な要因もそうだがそれ以上に厄介なのが彼女の"個性"だ。

沖田の個性は斬撃を相手に向けて飛ばすという突拍子もないもの。

何を言っているかわからないが俺もわからない。

果たして一体何が刀から飛んでいるのか。

何をエネルギーにしているのかもどんな理屈かもわからず、ぶっちゃけ殆ど何も知らないに近いが、唯一分かっているのは一度大きく破損してしまえばあっという間に空気中に霧散してしまうという事くらいか。

その切れ味は真剣と比べても差し支えないほどだが、破壊すること自体はそう難しくない。

ただ、問題はそのせいで沖田が近距離戦オンリーではなくある程度の中距離戦、または中距離での牽制攻撃を可能にしているところだ。

しかも強力な個性に引きずられて近接戦闘の鍛錬を怠るなどという事は全く無く、こちらとしては大変いい迷惑である。

攻めては防がれ攻めては防がれを繰り返して随分時間が経っている。

制限時間がある以上これ以上引き延ばすわけにはいかない。

こっちは沖田の向こう側にあるハリボテに触れるために彼女を超えて行かなくてはならない。

きっとマーリンの力を使えば今より楽にここを攻略できるだろう。

だが、そんなことを沖田は望んでいない。

そして当然俺も望んでいない。

多少上がっていた息おさまり、思考も落ち着いてきた。

再び地面を蹴って張りぼてめがけて走り出す。

そして予想通り沖田はそれを斬撃を飛ばして牽制してきた。

破壊ではなく回避で応じ、尚距離を詰める。

武蔵ちゃんの力は今の俺では手に余る。

明らかに彼女の力をすべて発揮しきれていない。

そして時間を考えればこれが最後の攻防だろう。

技術は明らかに沖田の方が上、となればこっちも切り札を使わせてもらう。

俺の眼球が熱を持ち、それが発動したことを確認する。

 

 

『天眼』

 

 

斬るべきものを捉えて決して逃がさぬその瞳。

あらゆる物を断つための眼。

ここで確実に決める。

そう思った時、沖田の口がわずかに持ち上がった。

なんだ、何が来る。

今まで守りに徹していた沖田が大きく踏み込む。

この踏み込み、まさか――!!

ザンッ!

音を立てて沖田が地面を蹴る。その姿が一瞬ぶれたように見えた。

そして、気が付いたときには彼女はそこに居る。

 

「くっそ!!」

 

急いで防御態勢を整えるが、これは明らかにまずい。

防ぎきれな―――

咄嗟の判断で体をかばうように構えるが、沖田は俺の予想とは全く違う動きを見せた。

今の今まで見せていた"あの突き"の動きとは違い、空中でとどまったまま大きく地面に向けて一閃。

ワンテンポ遅れて俺の立っていた足元が沈む。

ここまで来てようやく沖田のたくらみに気が付いた。

そしてそのころにはさらに数太刀地面に斬撃が浴びせられ、瞬く間にして俺の体は落下していった。

 

「や、やりやがったなぁぁぁああ!!!!」

 

俺の体は崩れたビルの床ごと落下していき、その十数秒後にタイムアップが告げられた。

 

『ヴィランチーム、ウィーーーーーン!!!!』

 

 

 

 

「あーっはっはっはぁ!!沖田さん大勝rぶごはっ!!?」

 

 

 

 

 

 

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