Fate/Dainsleif   作:英雄ならできたぞ?

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コードギアス 復活のルルーシュ見たら超ハイテンションになって投稿。
深夜テンション振り切ってもう自分で何書いてるのか本気で分かんないけど、とりあえず完結までの道が見えた(出来るとは言ってない。

本気で書けば案外書けるもんだね。


第15話

振ったこともない剣を無理矢理に振るう。凡そ技術や経験等という物は、この身体には一切入っていない。剣を振ったとしても子供の棒振り。速度はただ力強く振っただけでの加速で、威力など振った時に起こる遠心力の分しか起こらない。

 

それに対して相手は戦闘用に製造されたホムンクルス。手に持つ武器はハルバード。破壊力は剣などとは比べ物にならず、剛腕で放たれるその術技は岩をも砕く。

 

目先の力量差など目に見えている。勝つ勝てないなど一々判断する必要は無い。ジークは呆気なく両断されて死ぬ。それ以外の結末はありはしない。

そのはずだった。

 

「うグゥっ・・・!ア゛ア゛ア゛アアアアアア!!」

 

奇声とも聴ける声を上げて、ハルバードを全力で弾き上げる。あくまで弾き上げただけ。相手は次の攻撃へ直ぐに繋いでくるし、後衛部隊との連携も出来る。

 

「くぅっ・・・!!」

 

だがそれを、ジークは間一髪ながらも躱し、捌き、反撃までする。筋力の違う相手。射程の違う相手。武器の違う相手。どのような要素をとっても足元にも及ばない敵に、ジークは互角に渡り合っていた。

 

「ぶグッ・・・ハアアアア!!」

 

体を動かすたびに、まるで身体の中で炎が燃焼されるような幻想が頭に叩きつけられる。喀血し、筋肉を酷使しながら内部の熱と共に突き進む。力任せに振るわれる刃は骨すらも無理矢理に両断し、その身体を喰い破る。

返り血が頬につく。鉄くさい臭いが鼻にこびりつく。新鮮だが、臭い。汚れを知らなかった真っ白な肌は既に汚泥に塗れた泥水に転がり、転び、返り血等によって薄汚く汚れている。

 

「ハァッ!」

 

「うぅぅぅッ」

 

空を切って振り下ろされるハルバード。ジークは剣を横に構え、咄嗟に防ぐも、すぐに膝を屈する。ぎちぎちと嫌な音を立てながら、ハルバードの切っ先が押し込まれてくる。今はまだ、全力で力を出せているが後少しすれば力は緩む。そうなればジークは自分の剣と共に両断される。

 

(このままじゃ・・・!)

 

咄嗟に剣を引き抜いて、地を這うように横に転がる。瞬間、顔の横に振り下ろされるハルバード。地面を喰い破り、その刃痕を地面へ大きく残している。ほんの少し遅ければ、その刃痕は肉の断片が埋め込まれ、潰れたトマトみたいに赤が飛び散っていただろう。そう考えると背筋がゾッと冷えていく。

 

「やばい・・・!」

 

起き上がるまもなく、後衛の魔術師型ホムンクルスによる一斉掃射。近接型達は既に跳んで逃げている。残ったのは今も地に伏せているジーク一人のみ。

 

「間に、合え!」

 

痛む身体に鞭打ち、物陰に身を転がす。すると飛来してきた魔力の篭もった攻撃はジークが一瞬前までいた場所に、軌跡を残しながら通り過ぎていった。飛来した攻撃は民家の壁を破壊し、誇りや砂の交じった煙が辺りへ撒き散らされる。

思わず顔を手で覆う暇もない。何故なら既に煙を切りながら近接型達が降り立とうとしている。

 

「ぐあああああッ!!」

 

追撃を何とかいなすも、左肩を斬られた。冷たい鉄の感触が体を引き裂きながら侵入してくる。ただでさえ熱い体に、痛みという熱が追加され、我慢などでは耐えきれない程の苦痛に変わる。

カラン、と右手から剣が零れ落ちる。振るうどころか握る気力さえありはしない。剣に染み付く赤は、地面に流れる持ち主(ジーク)の血。剣は敵ではなく、担い手の血を吸ったのだ。

 

(ここまで・・・なのか・・・)

 

苦痛に慣れ、霞む視界に近寄ってくるホムンクルス達を見据える。もう敵意は感じられない。各々武器は下げている。無機質な瞳だ。自分を同類とも思っていない。いや、彼らにはそう思う権利さえ与えられていない。行動も、意思も意識も何もかもがユグドミレニアの為に。そしてジークの回収もそのため。

 

(巫山戯るな・・・!)

 

生きると決めたのだ。自由に生きると決めたのだ。もう何のしがらみにも囚われない。己のやりたいことを、今度こそやろうと決めたのだ。なのに、こんな所で倒れ伏し、漸く引き裂いた呪縛に大人しく捕われる。

 

(まだだ・・・!)

 

許せるものかよ、認められるか、そんなもの。

自分は違う。もう自由に生きる権利を与えられたのだ。使い潰される雑多な命の延命と、自由を彼に授かった。そしてジークという自分だけに与えられた、人生においてたった一つの大切な物を彼女に与えられたのだ。

 

生まれたばかりで、あらゆることに疎くてもわかる。彼らは自分に生きて欲しいのだと。

その思いを踏み躙るものか。

 

まだ身体は動くだろう?呼吸は出来ている。新しい心臓は駆動している。血液は全身に流れている。痛覚は残っている。

この身体の中に滾る灼熱を力に変えるのだ。動くための燃料が足りないのなら、この体に宿る炎を使え。

だってこの炎は、さっき見た『——』が自分に与えてくれた物なのだから。

 

震える膝を叱責し、落ちた剣を再び手に取り立ち上がる。その姿はボロボロで、惨めで、情けなくても。その心に宿る炎は少しも色褪せてはいない。

さぁ剣を構えろ。敵は目の前。援軍に強力なゴーレムもいる。敗北は必須。

だが、それがどうした?

 

「いくぞ・・・。俺の光は奪わせない・・・!」

 

授かった輝きが消えぬ限り、この身は不滅であると知れ。いくら斬られても立ち上がろう。全ては明日を掴むため。

 

ジークの言葉を皮切りに、ホムンクルス達が一斉に動き出す。完璧なタイミングでの連携。ジークを何度も追い詰めてきた、対人、対魔術師を想定して考えられた戦法。脱げ出すには絶対的なこの力か、それとも辺り一面を制圧する大魔術か。どちらにせよ、ジークは何も持ってない。

あるのは身体一つと剣一本。足りないと思われるかもしれないが、今のジークにはそれがあるだけで十分だった。

 

「・・・!?」

 

まず初めに斬りかかったホムンクルスが人間らしい驚愕を見せた。ジークを両断するはずだった一撃は、しかしどういう訳か武器の方が切断されていた。それもただ切られていたのではなく、まるで超高温のバーナーで溶断したかのような溶けた切断面。

 

起きた現象に対して疑問に思うことも、離脱することも叶わず。気付けばジークは懐に入り込み、その心臓を刃で切り裂いた。裂ける白い肉体。飛び散るはずの赤い血液は、まるで蒸発したかのように音を立てて消えていく。

 

「次」

 

無機質にそう呟くと、第二第三のホムンクルスがやってくる。今度は速度型と通常型と言うべき存在。ダガーと槍。近距離と中距離の組み合わせ。一撃の重さはハルバードに負けるが、速度は比べるまでもない。

ダガー持ちは包囲網を作るかのように壁を蹴って飛び回る。その包囲網を槍持が隙間を縫うように突いていく。常人とは一線を画しているホムンクルスだからこそできる芸当。

だがそんな技も、ジークには通じず。

 

「無駄だ」

 

必殺の一撃と言わんばかりに殺しに来たダガー持ちを、逆に首を撥ね、その身体を左手で掴み、迫る槍の穂先に盾のように突き刺し、槍が止まった一瞬の隙をついて剣を切上げ、槍を半ばから切断し、流れるような動きで槍持ちを切り裂く。

 

残忍な戦い方。卑劣と呼ばれることもあるその戦い方。それはジークが、己の『生きる』という願いから生み出した本能での戦い方。地を這い、泥を啜り、その身を汚しながらたった一つの願いを貫き通す。

 

「遅い」

 

縦横無尽に遅い来る魔弾を、弾き、斬り、避け、殴り、蹴り、割き、砕き、撃つ。どれ一つとしてまともに当たることは無い。まるで未来が見えているかのような動きで、ジークは弾幕を避けながら魔術師型達へ向かっていく。

近づく度に、安全圏は減り、迎え撃つ量も増えているはずなのに、しかしまるで当たる気がしない。ジークの動きに、無いはずの感情が増幅される。それは恐怖という原初の感情。原初の生物が『火』を恐れたような恐怖を、彼らは味わっていた。

 

flacără(炎よ)!」

 

唱えると、剣に灼熱が宿る。付与魔術としては過程を飛ばしたせいか、炎自体の強度、持続性はとてつもなく脆い。それこそ子供の魔弾一つで消え去るほどに。だがジークは持続性に与える魔力を全て火力に与えた。時間などいらん。ほんの一瞬で十分だと言わんばかりに。

 

太陽の如き煌めきを放つ炎の刃が閃く。その一閃はこの短い戦いで覚えたことの全てを詰め込んだ集第製。より効率よく、より強力に。

交差はほんの一瞬。その一瞬は魔力の炎を撒き散らし、何もかもを切り裂いた灼熱の剣斬。斬られた端から炎は身体を侵食し、数多のホムンクルスを灰に変えた。

 

「うづッ・・・ぐああああああああ!!!!」

 

その代償もまた大きい。脳内で大量に分泌されていたアドレナリンが切れた瞬間、止まっていた痛みが決壊のように襲ってきた。あまりの痛みにのたうち回り、民家への迷惑すら考えずに絶叫する。音が響き、天へ轟く。その有様を笑うかのように、月はジークを見下ろしている。

 

「まだ・・・止まるな・・・!敵は・・・残って、いる・・・!」

 

まだゴーレムもホムンクルスも残っている。戦わなければ。生きなければ。まだこの命を手放す訳にはいかないのだ。

今の悲鳴でもうすぐこちらにやってくる。実際、ゴーレムの歩く音が段々と大きくなってきている。

 

「こんなこと、していられない・・・!」

 

剣を引きづる様に持ち上げ、仄かに肉を焼いた匂いのするボロボロの身体を引き釣りながら、ジークは夜の闇へ消えていく。

 

時折街から見える炎も、ジークの身体で燻る炎も、未だ消えず。

 

 

———————————————————————————————

 

 

「そうか。やはりお前が。お前はそれを起動させられたか」

 

じの決死の奮闘を、生存のための闘争を、一人暗い場所で見ていたシロウ。近くで行われていた『黒』のアサシンと『赤』のセイバーの戦闘を、監督役としての責務で監視するために放っていた鳩の使い魔が、彼らの戦いなんかよりもよっぽど貴重な物を見せた。

それこそが、シロウが先の戦いで命を救ったジーク。

 

ジークはシロウに付け加えられた機械の心臓を、正しい意味で起動させ、その力を存分に奮ってみせた。今まで数多の被検体で彼の持つ心臓についての実験(・・)をしてきたが、終ぞここまでのものを見ることは出来なかった。

 

「これでようやく、ファブニルから出された宿題も終わりました。さて、後はどうやって彼を生存させるか。そしてどうやって彼をここまで連れてくるか」

 

かつて邪竜から出された課題。その課題はジークの心臓について。心臓の適合者を探せとのことだったか、これまで一人も適合してこなかったのだ。最悪ファブニルに諦めてもらうことを考慮していたが、思わぬ拾い物だったと喜ぶべきだ。

これでようやくファブニルもシロウも、遠慮なく願いをかなえられる。負い目すら感じることは無い。

ふと、鳩から送られてくる映像に、一体のサーヴァントが映った。そのサーヴァントはジークのことを心配し、彼を抱き上げ、どこかへ消えていった。

その時垣間見ることが出来た安らかに眠るジークの顔。それは幸福。

 

「しかし、生きたい、ですか。でもそれでは足りませんよ。自由に、という言葉が。そう、貴方の意思で決めるのです。この場所に、地獄に来ることを」

 

嗚呼成程。だからか。だからだったのか。だからあんな天啓が下ったのか。殺すべきだと思っていたし、実際に殺そうと行動に移していたから正規のルーラーを生かせとはそういう事か。彼とルーラー、それはセットにしろということなのか。

嗚呼、全く。神はなんて残忍で酷いんだ。穢れなき罪無き命に、邪な願いの為に死ねというのか。

 

「いえ、それこそが神なのでしょう」

 

どちらにせよ、これからの指針は全て決まった。

狂える邪竜の心臓は正常に駆動する。天駆翔は太陽を掴みにやってくる。そこで迎え撃とう。絶望させ、壊し、邪竜に与えよう。

覆ることは無く、失敗することは無い。何故ならそれが決断者(天草四郎)の決定なのだから。




呻き声とかどう書けばいいかよく分かんね(適当

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