全て事実で、悪口に感じた人もいるかもしれない。だが何故だろう。
少年には魅力が溢れていた。
ドラゴンボール×ダンまちのクロスオーバー。ちょっと挑戦してみました。
それはある晴れた日のこと。空から一条の星が、この地上へと降ってきた。多くの人が目にしたそれは、人の寄り付かぬ森の中へ。
その光景は、見た者によってはまるで光の柱が天上から地上を繋いだかのように映った。そして一拍遅れて地上を捲り上げる爆発、そこから響く轟音、地を嘗める烈風。
あれはなんだ。悪しき者の仕業か。それとも神の悪戯か。もしかすると奇跡の前兆か。
様々な憶測が飛び交い、知性ある者は騒ぎ始める。ついには、世界の中心オラリオの冒険者ギルドから正式に依頼が出され、冒険者が調査に出向する始末。
しかし戻ってきた冒険者の報告は『人一人が入れそうな謎の球体が存在し、そこを中心にクレーターが形成されていた』というだけのもの。
周囲というには離れていたが、直近の村々へと行った聞き込みもこれといった収穫はなく。調査は打ち切り。残ったのは解明出来ぬ謎の飛来物だけとなった。
ただ。運よく直近の村
はてさて。それは本当に運が良かっただけなのか。それとも神の思し召しであったのか。
時が来れば、自ずと分かることであろう。
◇
オラリオのダンジョンにて。駆け出し冒険者が二人、牛頭の怪物と向かいあっていた。
「ご、悟空! 早く逃げよう!」
「えっ。ベル戦わねぇんか?」
「戦うわけないじゃないか! 僕たちじゃ絶対に勝てないよッ!」
白髪にルベライトの瞳の少年、ベル。四方八方に伸びた黒髪に黒眼の少年、悟空。
ベルはとてもあたふたした様子で、冷静とは言い難い。それと相反するように悟空はのほほんと、されど牛頭の怪物『ミノタウロス』から目を離さず、ベルに対してあっけらかんと言い放った。
「よぉし! じゃあオラがやっつけてやる!」
僕たちじゃ敵わないって言ったばかりじゃないか!?ベルが口に出そうと思った言葉は、パクパクと空気を吐き出すだけの口から出てはこなかった。驚きの方が強かったからだ。
(そりゃあ悟空は村でモンスターを退治してたけど、今回ばかりは話が違う!)
ベルの内心はまさにその通り。ダンジョンのモンスターは外よりも強さが上だ。更にミノタウロスはレベル2相当のモンスター。強さはレベル2冒険者が敗れてしまうこともある程だ。
「悟空ダメだ! 戦わずに逃───」
逃げよう。そう伝えようとした。だが悟空はそれよりも早く飛び出し、それに合わせるようにミノタウロスが視認困難な攻撃を繰り出し───悟空はそれをヒョイと避けてミノタウロスを殴り飛ばした。
「───げ、ようと思った、んだけど……。………。……え」
その光景を見て、すぐ後にベルの驚愕を表す絶叫がダンジョンに響き渡った。
こっそり助太刀に入ろうとしていた金髪の少女と銀髪の青年も驚いていたのは蛇足であろうか。
◇
そこはとある酒場。
どうやら客足が多く、店員たちは休む暇もなく働いている様子。とても繁盛しているようだ。
また一つ、来客を知らせるベルの音。
そちらを見やれば14歳程の白髪の少年。そして更に年下に見える黒髪の少年。二人組の来店だ。
銀髪の可愛らしい店員が駆け寄り、なにやら話ながらカウンター席へと誘導する。
二人が座ればカウンター越しに酒場の店主が声を掛けてきた。
「アンタたちがシルのお客さんかい? 冒険者のくせに可愛い顔してるねえ! それに黒髪の方のアンタ、一体いくつだい?」
「オラこれでもベルと同い年で14だぞ」
珍しく心配そうな店主の声に悟空が返し、店主と銀髪の店員シルは思わず驚いた。ベルはさもありなんと空笑い。これまでに何度もあった光景だからしょうがない。
悟空の見た目はとても小さい。小人族かと勘違いしてしまう者が多いのも仕方ないことだろう。しかし直ぐに気付く。
悟空の臀部からユラユラと揺れる長い尻尾があるではないか。
そして猿の獣人かなんかか、と納得して去っていくまでがワンセット。
店主とシルもその類いであったようだ。悟空の尻尾で少し納得した表情を作っていた。
「アッハッハッハ! こりゃ失礼したね! まあ今日は
「ぶっ」
「たいしょくかんってなんだ?」
ベルが吹き出し、悟空が知らない言葉に首を傾げる。
ベルはシルが店主に伝えていたらしい、自身が一言も言ったことのない言葉に困惑気味だ。なによりベルは大食漢では断じてない。それに当てはまるのは悟空の方である。
「たくさん食べる奴のことさ! アンタはちっと小さ過ぎるからねえ! 腹はち切れる程食ってデカクなりな!」
「そうなんか! おめぇオラのことよく知ってんなぁ。あとオラ、アンタじゃねえぞ。孫悟空だぞ」
「そうかい! ならあたしもおめぇじゃなくてミアって名前があるんだ! これからもウチに来るなら宜しく頼むよ悟空!」
「おう! よろしくなミア! うまい料理たのむぞ!」
悟空の名前が東方での名付けだと瞬時に判断出来た店主ミア。流石は世界の中心オラリオで繁盛する酒場を取り仕切る女傑である。
このミア。実は元冒険者だ。しかもレベル6にまで至った一級冒険者。料理の腕も超一流だが、純粋な腕っぷしも超一流というわけだ。
故にミアと悟空の自然と酒場へ響くような明朗快活な言葉を聞いていた冒険者たちは、口の中にあるものを吹き出した。
───あのミアを呼び捨てにしやがったぁッ!!??!
ちっこい14歳の子供。しかも見るからに駆け出しの冒険者が、あのミアを呼び捨て。これからあの駆け出し冒険者はボッコボコにされて店から叩き出されるんだろうなぁ……。
なんて、憐れみの籠った視線を悟空にやる冒険者一同。
しかし当のミアは。
「───。……クッ」
来るか!
皆が身構えて。
「アーッハッハッハッハッハッハッッ!!!!! ああ! 任せときな悟空!!」
大きな、嬉しさ。
そんなものが籠った笑い声と、そこから来る気合いの入った返事が聞こえてきた。
冒険者一同も、ベルの隣にいたシルも、他の店員たちでさえも。ポカンとだらしなく口を開けて、有り得ないものを見るかのように呆然としてしまった。
唯一この状況がよく分からなかったベルと、何も気にしていない悟空とミア。三人のやり取りで注文を完了し、最後にミアの放ったシルへと声かけで、その場の空気は霧散した。
「シル! なにボーッとしてんだい! 仕事しな!」
このとき、ミアの心情を推し量れた者は誰もいない。長年の時を生きる常連の神たちも今はこの場に居なかったことから、その出来事は深く推察されることもなかった。
誰が思うだろう。
悟空の無知であり、純粋な言葉。瞳。雰囲気。機嫌良さそうにフリフリと振られる尻尾。それらを見て、人を見る眼もこれまた超一流のミアが至った考えを。
下からでも上からでもない。神々のように親のように見る眼でもない。人を隔絶された外界から見るような眼でもない。
無知であるからだろう。それ以上に純粋であるからだろう。何処までも澄んだ魂だからだろう。
その言葉は今は久しく聞いていなかった───同じ目線に立つ者同士のもの。まるで隣にいる親しい友に語りかける言葉のよう。
(ああ、忘れたことなんかないよ。いつだってあたしの中にある。でも、今それが甦ったように感じちまうなんてね。……自分じゃ想像できないことが起こるから、この世は面白いんだねえ)
嫌なことだって多いけれど、良いことだって多いもんさ。
今、ミアの脳裡には若かりしころ。友と共に繰り広げた冒険の数々が甦っていた。
血潮が舞い、剣と踊る。敵はモンスターと、己自身。自身の想像を軽々と越える困難は、とても苦しいものだった。悲しみが数えるほどにあった。けれど喜びの記憶がそれに勝る。かけ換えのない、黄金の日々。
そんな同じ目線で語り合い、殴り合い、何もかもを分かち合った、黄金の日々を過ごした友たちと悟空が───重なった。
(なんだか、不思議なガキンチョだねえ)
───まるでアイツらが生き返ったようじゃないか。
ミアは腕捲りをし直し、調理場へ向かう。
その顔には若かりし頃の花咲く笑みが、確かにあった。
黄金の日々が、始まる。
ヒロインがミアの小説ってないんだろうか(誰得)