とある冬の日の待ち合わせ。

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季節外れの投稿テロ


隣の笑顔

 

 

頬が寒い。

 

肩を震わせ、悴んだせいか歯も先ほどから無意識にガチガチと音を鳴らしている。

 

ポッケに入れた手ですらもう既に冷えきっておりもはや入れておく意味もない。

 

とはいえ出しても変わらない分、決して手を出そうとはしないのだが。

 

 

「翔子のやつふざけやがって…。いつまで待たせりゃ気が済むんだ……?」

 

 

少しでも身体を暖めようとその場で足踏みをして身体を動かす。

 

目の先は翔子が来るであろう道の方向。

 

目を細めて道の奥まで見るが一向に来る気配がない。

 

 

「……雄二」

 

「うおぉっ!?い、いきなり後ろから出てくるんじゃねぇ!驚くだろうが!」

 

 

その矢先、後ろから待ち人の声が聞こえ、俺は思わず飛び退いてしまった。

 

振り向けば真っ黒で綺麗なストレートの髪を揺らした翔子の姿。

 

マフラーを巻いて顔が半分埋れ、頬はほんのり紅く蒸気していた。

 

急いで走って来たのか寒いからなのか、そのマフラーから出ていく息は白く結露を起こしている。

 

 

「……それはごめんなさい」

 

 

少し顔を伏せて俯く様はシュンとしていて、ちょっぴり可愛らしい。

 

明久達にしてみれば変わらない表情らしいが俺にしてみれば十分にその違いは見分けることが可能だ。

 

申し訳なさが滲み出ていて真面目な翔子の性格を表している。

 

 

「ったく…。次からは気をつけろ」

 

「……うん」

 

 

コクリと小さく頷く。

 

……本当にいつからこいつは一つ一つの動作が小動物のようになったのだろうか。

 

 

「……待った?」

 

 

デートにはお馴染みの台詞。

 

小説なんかで見る分には青春という感じがして一度はやってみたいなどというやつもいるが、いざ待ってみると存外、そこまでいいものでもない。

 

ここでストレートに待ったと言ってもいいがなんだか癪だ。

 

 

「俺が待ったかどうか、お前自身が確かめてみやがれ」

 

 

そういいながら俺は両手をポッケから取り出し翔子の頬を摘まむようにし手を当てた。

 

あ〜……。あったけぇ…

 

 

「っ!?」

 

 

翔子の方はあまりの冷たさに驚いたようで体が少しビクついた。

 

こいつめ。

 

俺が待ってる間もしっかり暖をとってやがる。

 

体温が全然違うじゃねぇかよ。

 

 

「……雄二の手、冷たい…」

 

「当たり前だ。どんだけ待ったと思ってやがる」

 

 

フニフニと翔子の頬を弄びつつ暖を取る。

 

肌はスベスベでモチモチとしていて当然のことながら男の俺とは大違いだ。

 

しばらくそうしていると悴んでいた手も半分復活。

 

なんとも言えない無音の空間を翔子が口を開いて破る。

 

 

「……ごめんなさい。私が待たせちゃったから…」

 

「そう思うなら最初から早く来やがれ」

 

 

クシャクシャと頭を撫でる。

 

すると翔子は子犬のように目を細め、尻尾がついていれば今にも振り出しそうな雰囲気だ。

 

本当に謝るつもりがあったのかよこいつは…

 

 

「ま、お前に何かなかったみたいで何よりだ。とりあえずさっさと行こうぜ」

 

 

なんだか上手く操られた感じがしたので即座に手を離し、足を進めようと翔子に促した。

 

 

「……待って」

 

「待ってって…。何かあるのか?」

 

「……雄二の手、まだ冷たい」

 

 

頭から離された手をきゅっと掴んだ。

 

ははぁん。

 

なるほどな。

 

 

「俺は大丈夫だぞ。元々体温が低いんだ」

 

 

少し意地悪。

 

こいつのしたいことは分かったが、ここで上手く乗せられてたまるか。

 

 

「……いや、雄二は冷たいはず。絶対に」

 

「だから大丈夫だっての。ほら、急ぐぞ」

 

 

手を振り解こうとするが、中々離さない。

 

かと言って当の翔子は何か言いたげに、けれど言葉が見つからないといった様子で珍しく戸惑っていた。

 

前までは強引にでもやってたくせに、こいつも相当丸くなったもんだ。

 

 

「……そ、そのっ。私の方が手が寒いから…手を繋いで?」

 

 

……………首傾げるのは反則だろ。

 

 

「最初から素直にそう言いやがれ」

 

「……雄二のいじわる」

 

「そりゃ褒め言葉をどうも」

 

 

少しジト目で俺を睨みつつも、翔子がきゅっと俺の手を握ったのが分かる。

 

男の俺の方が断然大きい手を必死に掴もうとしてもぞもぞ動く小さな翔子の手はとても柔らかいものだった。

 

 

「今日はなにしに行くんだっけか?」

 

「……今度のクリスマスパーティーで使うプレゼント交換用のプレゼントを買いに行く」

 

「あー、あれか」

 

「……雄二はもう買ったの?」

 

「おう、当然だろ」

 

「……何を?」

 

「ブラ」

 

「…………」ギリギリ

 

「イデデデデ!? じょ、冗談だ!ブランケットだブランケット!ちょっとからかおうと途中で区切っただけだっての!」

 

「……それならそうと最初から言ってほしい」

 

「相変わらず女とは思えん怪力だ……」

 

「……むっ」

 

「…なんだ?突然腕に抱きついたりして」

 

「……女の子らしい?」

 

「ったく。当たり前だろ」

 

 

今日も共に平常運転。

 

身分不釣り合いな俺がいつまでこいつと居れるのかは分からない。

 

ただこの瞬間、俺の腕に抱きついているお嬢様は溢れんばかりの笑顔を輝かせている。

 

出来るならこの笑顔を途切れさせることなくこいつの隣にずっと居たいものだ。

 

 


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