東方虚悪魔異聞(原作厨が原作キャラに憑依してしまう話)   作:イベリ子

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 感想、誤字報告いつもありがとうございます。考察感想とか見るとはえー頭良いーってなったりしてます。あと誤字以外にも読みづらいかな? と思った所はちょこりちょこりと変えているので、読みやすくなってるといいなあと思います。

 今回1万字超えてしまいました。そして全編シリアスっぽい雰囲気で進みます。小悪魔もシリアスになってます。ごめんなさい。


紅貴なる悪魔との邂逅、それは長い長い舞台のカーテンコール

 こうりゅう、なんて言葉で片付けないでほしいわね。あなたにとっても私にとっても、これは酷く甘美な運命の緒となるものよ? 言葉は着飾ってこそのもの、大仰で派手で目立つ方がいいじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「小悪魔。あんた今日は司書の仕事しなくていいわ」

 

「そうなんですか? では何を」

 

「レミィがあなたと話したいことがあるってさ」

 

「レミリア様が?」

 

「ご案内します、小悪魔様」

 

「わ、びっくりしました。どうしたんですか咲夜さんその口調」

 

「……客人に対しての対応よ。主の客に軽口叩くメイドはいないでしょう?」

 

「私はかまいませんし、他に聞いてる人もいないのでいいのでは?」

 

「うーん、調子狂うわね。じゃあまあ案内するわ」

 

「はい、よろしくおねがいします。あ、その前に妖精メイドたちに伝えてきますね」

 

「あなたのところの妖精メイド本当に働き者よね。掃除班と交換したら私も楽になるかしら」

 

 

(何でしょうね。あの時と同じようになるかもしれないし、一応警戒したほうがいいはずなのに気が抜けるわ。咲夜もまるで警戒してないし、こんなんでいいのかしら)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 妖精メイド達に言伝をしてから咲夜さんと合流し、案内されることになった私。

 

 

「レミリア様は何の御用事なんでしょう?」

 

「全く分からないわね。あの人何か考えてそうで何にも考えてないこともあるから」

 

 

 ここに来てからしばらく経ったけどほとんど図書館で過ごしているせいで廊下に出たのがしばらくぶりだったりする。最初に案内されたのはパチュリー様にだったなあ、と考えながら廊下を歩きはじめて30秒。

 

 

「はい、着いたわ」

 

「え、あれ?」

 

 

 早。まだ10歩くらいしか歩いてないけど着いてる。あ、これあれか! 

 

 

「ああ、空間の操作ってことですか! へえ、実感出来たのはじめてですよ! すごいなあ」

 

「……ま、まあこの程度なら別にすごくないわよ? なんならあなたの寝床を100畳くらいにしてあげましょうか?」

 

「パチュリー様のお部屋に間借りしてる身分なのでそれはちょっと……」

 

 

 パチュリー様は割と昼夜感覚がしっかりしているようで、ご飯は食べないし居眠りもまるでしないけれど決まった時間に「今日の仕事は終わりよ。休んでいいわ」と告げられる。

 パチュリー様のお部屋は元々家主があまり眠らないようで埃を被った簡素なベッドが一つと、図書館に持っていけない研究用の道具が散らばっていた。色々あった1日だったけど、ちょっとこれでパチュリー様を寝させるのは良くないよなあと寝る前に同じく埃を被っていた替えのシーツの中で一番マシなものでパチュリー様のベッドメイキングをした後、適当なシーツにくるまって初日は夜を過ごしていた。

 次の日起きたら私もベッドの上で寝ていたのでパチュリー様が移動させてくれたんだろうなあ。今はどこから持ってきたか分かんないけど2台目のベッドを用意してくれたので、そこで寝させて貰っている。

 

 

「ああそれは確かに私も嫌ね。パチュリー様の部屋は触っていいものと悪いものの区別がつかないし勝手に空間に触って紅魔館が爆発したら目も当てられないわ」

 

「さすがにそんなことは無いと思いますけどね。私は使い魔としてそこら辺は教えて頂いたので(はじめて魔法受けたんだよねえあの時。私も魔法使いたいなあ……あれ私このままだと弾幕出せない?)」

 

「ふーん、じゃあ今度私も掃除させて貰おうかしら。って、ここで長々と話してても仕方ないわね、お通しするわ」

 

「あ、よろしくお願いします」

 

 

 失礼します、と前置きしてれみりゃが使うにしろ誰が使うにしろ幻想郷の住人には大きすぎる扉を片手で開ける咲夜さん。パワー系過ぎんか?? まあ霊力とかなんかがあるんだろうけど170cmくらいしかない女の子が動かしてる姿は違和感しかない。でも東方の世界はこれが普通なんだろうなあ、慣れればいいけど。

 

 扉の先はれみりゃの私室。真っ赤なクロスが敷かれた円卓の端にれみりゃが座っていて、目が合う。吸い込まれるような()()()()()。私に気づいたれみりゃもちょっと笑みを浮かべてふりふりと手を振ってくれる、かわいい。

 でもここも見るのはあの地獄の面接以来だなあ。いっちゃなんだけど無駄に広いよね。でも端に置かれてる棺桶はベッドなんだろうなあとかレース付きのテーブルクロスなのに綺麗に保ってるのすごいなあとか気づけて自分があの時より余裕があるのが分かるね。……? なんで私こんなに緊張しないでいられてるんだろ? 

 

 

「よく来たわね、座って頂戴? 咲夜、お茶を」

 

「お持ちしました」

 

「(早業! いや時停めなんだろうけど)ご案内、ありがとうございました。では失礼して」

 

 

 れみりゃに着席を勧められると隣の手ぶらだった咲夜さんがティーセットを用意済になっている。この唐突さ何度見てもびっくりするなあ。とりあえず私もれみりゃの対面に座ると、目の前でカップに紅茶を注いでくれる。ここは時停めないんだ。

 

 

香りも楽しんでもらいたいからね。お待たせしました」

 

「ありがとう、咲夜。下がっていいわ」

 

「失礼します」

 

 

 耳元でそっと囁いてからサーブしてくれる咲夜さん。お茶会に来る時も毎度見てるけど無駄がなくて綺麗だなあ。今日は一緒に飲めないけど、咲夜さんが淹れた紅茶を一緒に飲めるとか贅沢な経験してるよな、私。そんでこれかられみりゃと一緒に二人きりでお茶会でしょ? 夢みたいだよ本当に。

 

 

「さて、これで二人ね。といっても、そんな格式張ったものじゃないから気楽にしてね?」

 

「はい、分かりました」

 

 

 にこりと笑みを浮かべるれみりゃ。前回はカリスマと殺気がやばかったけど今日は凄い穏やかな雰囲気だ。普段なら絶対気楽に出来ないしテンパってそうだけど私も落ち着いて会話出来ちゃうな。さて、と前置きしてれみりゃが口を開く。

 

 

「ここに来てしばらく経ったでしょう? 大体館の者たちとの顔合わせも済んだようだし、色々感想を聞きたくてね」

 

「感想ですか?」

 

「そうそう。周りからは大分気に入られたみたいだけど、あなたからはどう思ってるのかな、ってね。さっき帰った咲夜については? あの娘について知ってそうだったけど」

 

 

 感想、感想ねえ。本物の紅魔館勢ってこんなキャラなんだ! っていう驚きは全員に共通して思ってたけど、それぞれに対して、か。でも()()()()()()()()()()()()()だし、なるべく()の言葉で伝えよう。

 

 

「咲夜さんについて知ってることはありますけど、言えないです。やっぱり所作が綺麗だし背が高いし素敵だなあ、と思いますし仲良くしてもらっているのに心苦しいとは思っているんですが」

 

「何よケチ。というかあなた図細いわね、気に病むくらいなら言えばいいじゃない」

 

「簡単に言ってくれますね……(図細い? 繊細ってこと?)」

 

 

 確かに東方のキャラは全員変な図太さがあるけどね。でもよく話しかけてくれるようで、友達(恐れ多いけど)みたいに接してもらえるようになってから尚更心苦しいのは仕方無くない? 咲夜さんは本当に何のわだかまりも感じさせずに話しかけてくれるのに、言えない事情って言っても完全に私のエゴみたいなもんだし、お前何様だよと。

 

 

「別に言いたくないなら堂々としていなさい、仲良しなら隠し事しないだなんて今日日人間でもしないでしょ。私もパチェのプロフィールほとんど知らないし、覚えてない咲夜は仕方ないにしても美鈴のことも何も知らんしなあ」

 

「ええ? 雇用主として大丈夫なんですか、それは」

 

「だって面白そうだったんだもの。いきなり中国からきた奴が何も言わずに住まわせてほしいだなんて言われたら二つ返事しかないわ」

 

 

 しれっとした顔でそう言ってからじゃあ美鈴についてはどう思うのよ、と言うれみりゃ。いやどうと言われても、その馴れ初めのほうが気になるんですけど。

 

 

「うぅん、一番は泣いてしまって恥ずかしいなあ、と。それとあれから話しかけてくれるようにはなったんですが、ちょっと手のかかる子だと思われてそうで複雑です。一応大人のつもりでいるので」

 

「まあ美鈴からしたら大体子供みたいなものだしあいつそういうところあるからなあ。確か中国のシンって国のときに一緒に産まれたはずだからもう1億歳くらいでしょ? 全員赤子だと思ってるに違いない」

 

「どのシンだったとしてもそんな前では無いと思いますが……」

 

 

 でもやっぱり中国出身だったんだ美鈴。シンってめちゃくちゃ色々あるから何の参考にもならないけど、やっぱりキャラのこと知れると嬉しいなあ。

 

 

「まあ美鈴がこの場所を住処にしている以上はその扱いは避けられないわね。あいつは自分の居場所が無くなるのを嫌うことと住処の中身を愛でることが本能だから」

 

「へえ。思ったよりれみr……リア様も美鈴のことご存知なのでは」

 

「同居してたらある程度は勝手にね。あなたはどうやら幻想の存在のくせにかしこまるのが得意なようだけど、大人のふりをした所作を行うよりは素直に接していたら素直な反応が帰ってくると思うわよ?」

 

「いえ、大人のふりというよりこれは、……やらなくてはいけないことなので」

 

 

 危ない危ない。今小悪魔のイメージとしての動きって言ってしまいそうだったわ。ちょっと今日はなんでだか口が滑っちゃうなあ。さっきだってれみりゃってそのまま口に出しそうになっちゃったし。

 落ち着くために紅茶を一口。美味しいなあ、技術が進歩したと言ってもティーバッグと本当の紅茶なら味が違うのは当然だよね。これ毎日飲めるれみりゃは幸運よね、とちらりと窺うと()()()()()がきらりとまたたいたような気がした。「素敵」

 

 

「うん、何が素敵って?」

 

「レミリア様の瞳は、綺麗だなと。……あれ?」

 

「うん? そうかい、でもうちの妹も同じ目をしてるじゃないか。フランのことはどう思ってるんだい?」

 

 

 なんだか今までよりも特に落ち着いた、優しい声で問いかけられる。フラン、フランかあ。あの娘は、あの娘も、

 

 

「フラン……ドール様は、私も詳しくは知らなかった彼女の目的や頑張りを知れて嬉しかったのと、偉い娘だなと思いました。495年もの間自分を破壊してでも独りで成り立つための研究をしていた努力家で健気で誇り高い娘。彼女が放っていたスペルやU.N.オーエンって言葉に想いを馳せて、……それでも、彼女の目的を応援してあげられない自分が嫌になりました」

 

「へえ、甲斐性がないのね」

 

「あはは、495年の研究だなんて気が遠くなるようなものを私ごときが否定していいはずがないんです。でも、私はフランが好きだから。私が知ってるフランはアンノウンじゃなくて、フランドール・スカーレットだったから。酷い話ですよね、本当に」

 

 

 本当に酷い話だ。あの時咄嗟にフランに原作の話を語ったときは、この娘を誰も知らない存在にしたくないって無我夢中だった。だけど、アンノウンになって欲しくなかったのは、私が原作通りにしたかっただけじゃないか? この世界で生きていない私の話を伝えて、私のエゴまみれの勝手な言い分を聞かせて、優しいフランはそれを尊重した。なんだそれ。

 

 

「頭が良くて、優しくて。この世界で必死に生きてる彼女が一途に続けたものを、ぽっと出の私の言葉で歪ませてしまったんじゃないかって「お前馬鹿??」ええ!?」

 

 

 この世界に来てから一番上がり気質の自分を責めたあの時を思い出していたら心底馬鹿を見る目でれみりゃに見られた! いきなり何!? 

 

 

「アイツがやってる研究なんて歪みに歪みまくってるだろ。自分で自分を破壊してた時だって私が助けないとアイツそのまんまお陀仏だったわよ?」

 

「え、で、でもそれでも続けてるのなら」

 

「持って産まれたものを消すなんて土台無理な話。あなたも幻想としての価値観がズレにズレまくってるわ。私達はね、深く考えたら負けなのよ」

 

 

 カチャン、と音を立ててカップをソーサーに置くれみりゃ。その()い瞳は私を真っ直ぐに射抜いていて、なんでだか今日はじめて目を合わせたような気がした。

 

 

「私は別にアイツのやりたいことを否定しないわ。やりたいならやればいいし、やりたくなくなったらやらなければいい。死にそうになったら助けてやるけど、研究とか私にとってはどうでもいいからアイツにとってどれだけ大事でもどうでもいい。お前もそうなりなさい」

 

「そ、……れは、無責任というか、私は」

 

「責任なんてあるわけないでしょ? お前の言葉で曲げる程度の研究ならその程度、どれだけ長く研究していようがその時間よりお前の言葉が刺さったのよ。私はお前の責任という言葉が気に入らないわ。()()()()()()()()()()()()()()()()。お前は何に責任を持とうとしているの?」

 

 

 何に。何に? 責任、私が感じている責任。それは、

 

 

「……この世界が、夢ならいいのにと思うんです」

 

「……胡蝶の夢だって? お生憎様、私もあなたも生きてるわ」

 

 

 そう、生きている。寝て、起きて、ベッドの上は暖かくて、紅茶は美味しくて、みんな生きていて。でも、それなら、

 

 

「なら、この世界が正しい世界なんですか?」

 

 

 

 違うんだ。それはあってはならないんだ。だって私は小悪魔じゃないから。頑張って小悪魔みたいに仕事して、小悪魔みたいに会話して、小悪魔みたいに振る舞おうとしても空も飛べない魔法も使えない、ガワだけ悪魔の人間みたい。

 紅魔館の人たちと会話するのは楽しい。夢みたい。東方ファンならみんな喜ぶよ。()()()()()()()()()()? この世界が本当に本当の幻想郷で、自分の振る舞いが()()になったら? 自分が小悪魔として認められたら? 

 

 

 嫌、嫌、嫌! だってそんなの、()()()()()()()()()()()()()()じゃないか! 自分のこれが、現実のワタシの二次創作ならいい。いいよ、全然いい。この意思もこの行動もこういう動きをする憑依キャラとしてならいい。でも、でもこれが原作になるのなら。神主が私を見ていたら? 小悪魔が……■■(ワタシ)になったら? そうしたら、ワタシの世界も、私の世界も、全部私のせいで壊れちゃう! 私とワタシの世界を繋ぐ(よすが)であるはずのこの記憶も、ただこの妄想を抱えたものになっちゃう! 

 

 ずっと目を背けてきた。楽しい毎日に浮かれて、頑張って原作と同じような動きはしてるからって自分を誤魔化して。でも駄目だ、私はこの世界を認められ「正しいに決まってるでしょ?」

 

 

 滲んだ視界のままぽかんと口を開いてレミリアの方を見る。涙が口に入ってしょっぱい。レミリアはやれやれ、と頸を振ってこちらを見ている。

 

 

「あなたもなかなか難儀な思考をお持ちのようだけど、残念ながら全て杞憂ね」

 

「……それは、何故ですか」

 

「あら、さっきも言ったでしょう? 

 

 

 私が生きているからよ!!」

 

 

 立ち上がり、胸に手を当てて小さい背でも堂々と胸を張るレミリア。魔力も殺気も発していないのに、そこには確かにカリスマのような人を惹き付ける何かを感じた。

 

 

「ええまああなたは難儀な性格のようだし出身も難儀なのはなんとなく存じているけれど、断言してあげましょう。何を持って正しい世界とするか? それは世界の主役たるこの私の運命力よ!」

 

「……ええ?」

 

 勘違いだったかもしれない。何だ運命力って、いきなりIQが低下したぞこのおぜうさま。

 

「フン、運命力がピンと来ないなら意志でもいいわ。あなたは延々にそこを間違えているようだからもう一度言うけれど、私たちは好きに生きている。好き勝手にやっているのよ、自分勝手にやっているの。

 

 だって自分が世界の中心だから!」

 

 

「えええ?」

 

 なんか途中までいい話かもしれなかったのに! よく分からない話の方向にいったけど!? 

 

 

「私はね、あなたが何を思って何をしようがどうだっていいわ! 好きにしなさい! あなたはあなたの世界の中心なのでしょうから!」

 

「え、それはどうなのかなはい」

 

「でも、あなたがあなたらしくあるのと同じように、私たちは私たちらしくあるのよ。

 

 

 あなただけじゃない、他の誰の言葉だって私を真に変えるなんて出来はしないわ。それは咲夜も美鈴もフランもパチュリーもそう、あなたという存在によって行動は変わったわ。けれど歪ませたなんて思い上がりも甚だしい。教えておくけどね、この世界にあなた程度の存在で芯が変わるやつなんてそうそういないわ!」

 

 

 だからね、と言葉を切るレミリア。その姿ははじめて出会った時よりも強大で、誇り高く見える。

 

 

 

 

「舐めるなよ、名も無き小悪魔。あなた程度に生きる責任を負わせるほど私たちは弱くないわ」

 

 

 

 

 

 なので、お前はお前で好きに生きるように。

 

 

 

 そう続けて、椅子に座るレミリア。

 

 

 

 

 私は呆然としていた。我に帰ったと言ってもいいかも。話さないようにしていた本心をペラペラと喋ったこと、それでレミリアを怒らせたこと、そして、……心が軽くなってること。

 

 

 そうだろうな、と納得出来た。私が間違えても、私が小悪魔じゃなくても、レミリア達の物語が壊れることはないだろうな、と。

 それと、私の好きに生きること。……私、この小悪魔として振る舞うことは、好きでやってたことだったわ。私としてこの世界に来たんじゃなくて、この小悪魔の体に憑依したんだから原作っぽく振舞って原作通りの関係性になれたらいいなって思ったんだった。

 

 あー駄目だなー。元々深く考えないようにしてふらっと生きてきたのにこっちの世界に来て幸せ過ぎて逆にネガティブになってたわ。レミリアって凄いなあ。伊達に6面ボスやってないわ。……本当凄いなあ。

 

 

 

 

「……はい、お手数お掛けしました。本当にありがとうございます」

 

「ま、面倒な事情持ちには慣れてるから別にいいわ。それにしてもあなた、幻想郷(ここ)に来る前どこで何をしていたの?」

 

 

 返答に窮する。……どうしよう。原作云々の話はしたくない、んだけど。でも、言って貰ったこの娘に不義理な真似もしたくない。うーん、ぼかして伝える? 

 

 

 

「そは、

 

 

 

 そこまでですわ。そんな言葉が聞こえてきたと同時に、私の意識は闇に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらら。魅了が解ける前にさくっと答えて貰おうと思ったのに」

 

 机を挟んで吸血鬼に対面していた少女が、電池が切れたかのようにうつむき動かなくなる。あからさまな異常事態に、しかし吸血鬼は動揺を見せずに紅茶を飲み、虚空へと声をかける。

 

 

「スキマ妖怪。客人はいつでも歓迎するが、先客に割り込むのは関心しないな」

 

 

 館の主と招かれたものしか入れない吸血鬼の私室に、世界にインクを落としたような真っ黒な影が一文字を描いている。かわいげのアピールか、両端に結われているピンク色のリボンを眦としたように、眼が開かれる形で影が広がった。そこから美しい一人の少女が顔を覗かせ、妖しい雰囲気をまとわせながら口元に弧を描く。

 

 

「ごめんあそばせ。いささか不躾な行動の自覚はありましたが、急用だったもので」

 

 

 たっぷりとしたゆるいウェーブがかかっている長い金髪をたなびかせ、紫色のドレスに隠された白い足を組んで虚空の上に座る少女。たおやかに笑みを浮かべ、口元を隠すその仕草は見るものを魅了するだろう。しかし空間に広がる影のような歪みに腰掛け、金色の瞳を輝かせているその光景は美しさも得体の知れない不気味さに変えてしまっていた。

 

 

「急用とはな。私の侵攻以来ろくに顔も見せなかったのに、今更何の用事があったのかしら?」

 

「あなたの謹慎処分が終わる目途がつきましたの」

 

「へえ?」

 

 

 お互いに同じ空間にいながら、眼を合わせることなく別々のものに腰掛けたまま会話を続けていた二人。しかしその言葉に初めて吸血鬼は金髪の少女へ視線を向ける。

 

 

「嘘だね。誤魔化せると思っているのかい?」

 

「あらあら、本当ですのよ? あなたと紅魔館の面々も館から出られないのは窮屈でしょう」

 

「だけどその件は急用じゃない。こいつだろ? 本題は」

 

 

 つ、と長い爪に覆われた指を対面していた紅い髪の少女に向ける吸血鬼。その動作に金髪の少女は表情を動かすことなく、ただ慎ましやかに笑みを浮かべている。

 

 

「こいつの運命は独立しすぎている。一人一種族の妖怪であったとしても、発生に人間の恐怖の縁が絡みつき、弱く貧小な存在であれば周囲のありとあらゆる運命に絡みつかれ翻弄され、強く強大な存在になればなるほど世界の運命という大本線のせいで動きづらくなる。でも、こいつは違う」

 

 

 吸血鬼はそのまま指を少女の上へと滑らせる。そこにある人形遣いの糸を探るように。

 

 

「こいつの運命は一本きりだ。辿っても辿ってもそこには何もない。他の何者にも左右されず、自分自身の強固な幻想により成り立ってる幻想の存在……なんて、厄介なもんだと思っていたけど」

 

 

 そこで言葉を切って、ニヤリ、と悪辣な笑みを浮かべる吸血鬼。笑みを浮かばせ続ける金髪の少女とは対照的で、妖怪らしい仕草だった。

 

 

「お前にとっても非常に厄介なんでしょう? こいつの運命の起点、召喚されたその日の小悪魔と私の小競り合いは門番でも感じ取れてる。ただでさえこの世界への関所みたいな役割を持っているお前が気付かないはずはないのに、これまでちょっかいをかけてこなかった。理由までは分からないけれど、下手に刺激したく無かったのよね?」

 

 

 そう断言されて、金髪の少女はほう、と息をつき、やれやれ、とかぶりをふって笑みを崩した。その仕草すらも演技がかったようで不気味さが減ることはない。

 

 

「……そうね、正直にお答えしますわ。下手に刺激したく無かったのは本当。詳細はお話出来ませんが、その悪魔はあまりにも未知数なのでございますわ。解体方法が見つかるまで、不発弾には触らないに限るでしょう?」

 

「不発弾、ねえ。お前が私の心配するはずないし、爆弾の影響は紅魔館って訳じゃなくてこの世界ってところかしら?」

 

「聡明なのはいいことですわ。具体的な影響は不明ですし、そもそも杞憂の可能性もございます。しかし、ご理解頂けるのであればその悪魔への干渉は控えて貰いたいのです」

 

 

「え? 嫌よ」

 

 

 きょとんとした顔で返事を返す幼い顔をした吸血鬼にぴくり、と眉を動かす金髪の少女。

 

「あら、聡明という言葉を撤回したくなりましたわ。どういう意図で断るのでしょう? 脅しなら……」

 

 

 

 

「だってその方がカッコイイでしょう!」

 

 

 

「は?」

 

「あなたも分かっていないわね、八雲紫。あなたへの隔意も支配欲も知略もこの決定には一つも関係ないわ。

 

 いい? 私達妖怪は人の幻想に左右される。その代表となる強き妖怪の支配者が、強く、賢く、カッコよく無くてどうするの! あなたは裏方に回るドールマスターを気取っているようだけど、策謀を巡らせて不気味がらせるのが最も強き妖怪だなんて真っ平御免! 

 

 このレミリア・スカーレットは誰であろうと拒まない。まともな魔女も神みたいな怪物も忘れられた殺人鬼も世界を崩壊させ得る不発弾も、私はこの館に受け入れるわ。懐が広いほうがカッコイイから! そして私は目立つわ、タイトルロールで居たいから!」

 

 

 朗々と歌い上げるように言葉を続ける紅い悪魔、レミリア・スカーレット。そして呆気に取られたまま話を聞いていた少女、八雲紫にその眼差しと指先を向ける。

 

 

「謹慎処分が終わるって? 業務連絡ご苦労。であればその処分が終わる時刻を覚えておきな。それこそがこのヴラドの末裔、レミリア・スカーレットが幻想郷に妖怪の支配者として名を知らしめる時となるだろうさ!」

 

「あらあら、500歳児のお子様はもうお眠の時間だったのかしら? 寝言が少々過ぎるようね。……まあ、処分自体に変更はありません。藍、説明をしておいて」

 

 

 宣誓を受けても表情を変えない八雲紫が腰掛けている空間から、導師服に身を包んだ9本の尾を持つ狐の少女が顔を出す。

 

 

「かしこまりました。では、こちらを」

 

「おや、もうお帰りかい? 急用と言って割り込んで来たり要件を従者に任せたり、随分勝手が得意なのね?」

 

「私どもは自分勝手に生きるもの、なのでしょう? 他にも急用を抱えておりますので、これにて御免」

 

 

 皮肉を意にも介せず空間のスキマに吸い込まれるように姿を消す八雲紫。それを見てつまらなそうに鼻を鳴らすレミリアは、従者である八雲藍に目を向ける。

 

 

「それで? 私に何をさせたいって?」

 

「ああ、お前には異変を起こしてもらう。新しい幻想郷のルール、スペルカードルールでな」

 

「はあ? 異変ってのは問題を起こすってことなのは分かるけど、何よそのスペルカードってのは」

 

「それを説明する。いいか、スペルカードというのは……」

 

 

 

「はあ、飛び道具を使った遊び。弾幕ごっこ? 弾幕を張るってことね。それで人間と闘うぅ?殺すでしょそんなの」

 

 

「で、ルールとして技に名前を付けて回数制限も決めてやる、と。ふんふん、いいじゃない私名前付けるの得意よ」

 

 

「美しさを競う! 何よあのスキマ妖怪分かってるじゃない、戦闘に置いて何より大事なのは華ってことよね!」

 

 

「なるほどね。避けきった方の勝ちってのが大前提にすることで実力差があっても勝ちの目を作ってあげる、と。実力があるものは如何に美しくそれでいて避ける可能性がある弾幕を作れるか、で余裕と誇りを表すのね!」

 

 

 

「理解したわ。めっっっっちゃくちゃ面白そうね! やるやる、やるわ! 明日から異変始まるまで紅魔館全員弾幕ごっこ練習期間よ!!」

 

 

 

 

 

「(コイツ本当にさっきまで紫様に宣戦布告してたのと同じ妖怪か……?)」

 

 

 

 

 




 レミリアは主人公っぽいカッコ良さにしたいです。うちの主人公主人公っぽくないので……

 次話から異変のつもりだったんですが、ちょっとシリアスに疲れたのでまた小話みたいなのを入れてからになるかも。

紅魔館メンバーのざっくり紹介

  • 作品ページに載せた方がいい
  • 活動報告の方がいい
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