東方虚悪魔異聞(原作厨が原作キャラに憑依してしまう話)   作:イベリ子

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ランキングに乗るという予想外の事態に喜びつつも困惑しています。
内容やら更新速度やら色々あると思いますがどうかぶたないでください。

感想、誤字報告ありがとうございます。どうして誤字は発生するんだろう?


めんせつ

「それで、名乗るのは私だけかしら?」

 

 

 席を立たず、あくまで上位者としての立場を崩さないで問答を続けようとするレミリア。しかし、それに対して何も答えようとせずに笑いだけを返す小悪魔。無論この間もお互いに威圧を放ち続けておりこの問答自体が前哨戦の様相を呈してきていることは傍らから見ているパチュリーにも理解出来ていた。

 

 

「ッハ、ハ、ハハ、ハ……(口が動かない……はじめましてが……言えない……!)」

 

 

 その当人を除いて。

 

 

 

 

 事態は膠着。このまま続くならば戦闘(虐殺)は避けられないことはお互いに理解しており、レミリアは少しずつ相手へのプレッシャーのためと戦闘への移行のために放出する魔力を大きくし、あいさつを返せない自分の失礼さと少しずつ増しているレミリアの殺気に泣きそうになりながら死にたくない、どうにかしなければという気持ちで無意識に自分を大きく見せていく小悪魔。結果戦闘はすでに避けられないものであり、あとはどちらが先に動くかであると小悪魔以外が考えている中。その膠着を破るものがいた。

 

 

 

「いらっしゃいませ。紅魔館へようこそ」

 

 

 唐突に響く声。それは今まで三人しかいなかった食堂の奥、レミリアの隣から発せられていた。

 

 その登場はあまりにも因果を無視したものだった。この世界が映像作品としてあるとするならば、今まで影も形もなかった人物が唐突に部屋に出現していれば非難が殺到するだろうが、しかしそれを可能にする人物であるならば話は変わる。

 

 魔の存在が集まるこの部屋において、人間でありながらその存在感を全く失わない銀の影。女性としては高身長のその姿は、青と白の二色で構成されたメイド服で身を包んでおり、銀髪のボブカットの下から覗く赤い瞳は一直線に小悪魔を見つめている。

 

 

「咲夜。今は主人が応対しているのだけれど?」

 

「お嬢様は私が知る限り来賓の対応をしたことがありませんので。何か失礼なことを仕出かしているのではないかと心配で心配で」

 

「お前中々言うじゃないの」

 

 

 彼女の名前は十六夜咲夜。 この紅魔館に拾われ雇われている完全で瀟洒なメイドである。紅魔館唯一の人間であり、書籍など露出も多く「時間を操る程度の能力」という人間の枠に収まらないほどの強力な能力を持っていて将来はレミリアの指示などで異変に介入して自機として活躍する人気キャラだ。

 

 そして、そんな彼女を見たのならば。

 

 

 

(うわあああああああ生咲夜さんだあああああああああ生レミリアと咲夜の掛け合いだあああああああ!!可愛い!きれい!美しい!そしてレミリアとめっちゃ仲いいね忠誠心バリバリモードじゃなくてもこれはこれでよい!素晴らしいねうん!ずっと見ていたい!壁になりたい!欲を言えばれみりゃーのティーカップとかになりたい!)

 

 

 

 先ほどまで死の恐怖に怯えていたのに登場人物に会えただけでこの思考である。ミーハー魂ここに極まれり。しかし咲夜の登場によって緊張と恐怖から解放されたこととなる。それによって際限なく肥大した彼女の(外から見た)存在感が元に戻る。不気味な笑みも収まり、キラキラとした目で咲夜とレミリアを見つめている小悪魔。そんな小悪魔に対して戦意を滾らせることなど、彼女らには出来なかった。はぁ、とレミリアはため息をついて放出していた魔力を元に戻す。そうすれば小悪魔も自身に来ていた殺気とレミリアから出ていた紅いオーラが収まったことに気付き、先ほどまでの状況も思い出して慌ててあいさつを本人なりに小悪魔らしく……することは第二で、第一には機嫌を損ねないことを心がけて出来る限り丁寧に行うのだった。

 

 

 

 

「偉大なる吸血鬼にして紅魔館の主、レミリア・スカーレット様、はじめまして。お会い出来て光栄です。

 私は、あなた様のご友人たるパチュリー・ノーレッジ様に本日より仕えさせていただく名もない無力な悪魔でございます。ですので、私のことはどうか小悪魔とでもお呼びください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「中々面倒な奴を引き入れてくれたじゃない、パチェ」

 

 

 その後、咲夜とも自己紹介を済ませたあと、仕事を教えるからと「ヴワル魔法図書館から外出しない」「図書館内の物品に許可なく触れない」「紅魔館内の知的生命体に敵対しない」の契約を付け加えて先に小悪魔を図書館へと戻して、食堂に咲夜、レミィ、私の三人だけになった後の言葉である。

 

 

「申し訳ないとは思っているわよ」

 

「別にパチェに対して怒ってるわけじゃないさ、どちらかというと同情している。

 

 で、あいつは一体何者?」

 

 

 そういって鋭い目でこちらを見てくる。付き合いだけは無駄に長いから、彼女が自分への敵意を疑っている、ということではないだろう。ただ純粋に謎なのだ。魔力が無い悪魔ということはほぼ死んでいるのと同義であることを、同族であるからこそよく理解している。そしてひとかけらほどの魔力しかないのにも関わらず吸血鬼である自分に対して同等に対峙する『名もない小悪魔』が、どうしても不可解なのだろう。

 だが、

 

 

「そんなことを言われてもねえ。私もほんの少し前に会ったばかりだし。むしろあの対応からいってレミィの方が何か関係あるんじゃないの?」

 

「知らないわよあんな赤い変な奴。それを言うなら明らかに私と闘う意思を見せていたのに姿を出しただけで戦意を抑えてみせた咲夜こそ知り合いなんじゃない?」

 

「ええ、私ですか?」

 

 

 私たちのお茶を用意していた咲夜が予想外だ、と声をあげた。

 

 

「知りませんよ。私ここに来るまでお嬢様方みたいな人外と仲良くしてたことありませんし」

 

「じゃあ殺し回ってた時に逃した奴なんじゃない?」

 

「それであんなキラキラした目で見られるの?」

 

 

 話にならない、と首を振りつつ私のカップにお茶を注ぐ。大分メイド稼業が板についてきたようである。

 咲夜がこの館に来たのは一年ほど前、レミィが幻想郷を支配するために手下を集めている時にその首謀者の首を取りに来たのが咲夜なのだと聞いた。咲夜は幻想郷の生まれではない。彼女もまた、人間でありながら世界に忘れ去られてこの幻想郷へと飲み込まれた。そして自分すら忘れた名前、そのアイデンティティーを取り戻すために最も注目を集めていた妖怪を殺しにレミィへと挑み、敗北して……そして気に入られて、十六夜咲夜と名前を与えられてメイドとして雇い始めた。

 何故そうなったのかは分からないし、レミィに聞いても「運命が囁いたのよ」と言うだけ。まあ居候であるし、友人の決断にとくに何を言うつもりもないが、明らかに人外だけでなく同族である人間とも戦い、殺すための体術や時を操るという規格外の能力を持つなど、面倒事の臭いしかしないものをよくもまあ受け入れるものだ、と思わなくもない。

 しかし今咲夜以上の見えてる面倒事を引き入れてしまったのは私である。咲夜の我関せずといった態度に、道理は通っていないが少しモヤモヤするものを感じるのも事実であるので、そういえば、と彼女をからかうことにした。

 

 

「咲夜。あなたさっきはよくアイツの前に出てきたわよね」

 

 

 さっ、と目を逸らす咲夜。人ならざる身であるこの私でもあの二人の間に立とうとは思えなかった。そこに時を止めてまで介入しようとし、レミィの側へと立った。今の彼女の目は青く、先ほどの赤い瞳ではなくなっている。あれは彼女が本気で戦おうとした時の合図であり、あの小悪魔の戦意を収める判断が予想外だったということは、

 

 

「なんだかんだ、あなたもここに馴染んで愛着も湧いてきたんじゃない?」

 

「……………まあ、雇い主に死なれると私の日々の食事も無くなってしまいますしね」

 

「別にレミィのことについては言ってないけど」

 

「ぐっ」

 

 

 赤面して睨み付けてくる咲夜を、澄ました顔でスルーする。随分と人間みが出てきたものだと思う。はじめて顔を合わせた時には人形のようだと思っていたのに。

 

「その辺にしといてくれ、パチェ」

 

 保護者に釘を刺されたので、この程度にしておく。レミィも口には出さないが柔らかい微笑みを浮かべて咲夜を見ていて、咲夜はそんな彼女からますます顔を赤くして目を合わせないように顔を背けている。

 

 

「しかし、アイツの反応を見るに間違いなく私達の誰かが目的なのでしょうね」

 

 

 話を戻すために口を開く。そうね、とレミィが同意を示して、

 

「けれど実際、ヒントが少なすぎるわね。ただ小悪魔の方も私と……どちらかというと私と咲夜に対して積極的に敵対しようとはしないみたいだし、泳がしておくしかないんじゃない?」

 

「他人事ね」

 

「他人事よ」

 

「はあ……まあ契約を結んだ以上、こちらからの一方的な破棄を行えば面倒なことになるのは確かだしね。とりあえずはなんとか面倒をみるわよ」

 

「よろしく頼むわ」

 

 

 

 全くもって、とんだ面倒事を抱え込んでしまったものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ま、なんにしても小悪魔が自由に動き回らず図書館に閉じ込められてるっていうのが救いかしら。契約をさっさと結んでくれたパチェに感謝ね」

 

「ええ、本当に」

 

「はっ倒すわよ」

 

 




(司書ってなにするんだろ……)
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