東方虚悪魔異聞(原作厨が原作キャラに憑依してしまう話) 作:イベリ子
正直それに見合う作品を書けているかは不安ですしプレッシャーですが、皆さんが好きと言って下さるので続けていけます。
これからも細々と更新していこうと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。
お行儀良く、しっかりと私達にお辞儀をしている赤髪の悪魔。
目を疑ったけど、そこにいるのは間違いなく私達が尾行して正体を自分の目で確認した、あのお嬢様と対峙していた強大な悪魔だ。……たぶん。そうだよね?
なぜ疑問形なのかというと、さっきまでと比べて余りにもその存在感が希薄だったから。それでも私達なんかよりも大きいけれど、明らかに同一人物とは思えないほどに違う。なんでだろう?ふつう強くて大きな人たちは、いくら力を抑えているといっても、不自然な感じが出るというか、そこからざわざわとした雰囲気を感じてしまう。でもこの人のはそういうのがなく元からこうだというか、こっちが自然なような感じ。そんなわけないのに、なんでそう感じるんだろう?
今のこの人は丁寧な口調とその所作、それに大きさからもまるで私達と同じで、誰かに仕えてる人みたいだ。
「……………そうね、あなたは私の使い魔だものね」
「え?」
「その通りですパチュリー様」
「ええ?」
なんだって?私と同じように悪魔の姿を見て固まっていたパチュリー様が言ったことに反応して、顔を上げた彼女は同意をしました。すっごく良い笑顔で。
……どういうこと?パチュリー様はお嬢様の友人なだけあってとっても強い方だけど、お嬢様の部屋から発せられていた気配と比べれば悪魔の方が絶対に大きい。それこそ神様でも現れたんじゃないかってくらいだったんだから。
なのにパチュリー様はこの悪魔が自分の使い魔だと言って、悪魔もそれに同意を示している。にこにこ嬉しそうに。わけがわからない。パチュリー様はなんでこんなのを使い魔にしたんですかとか、なんであなたはそんなに嬉しそうにしてるんですかとか言いたいけど、下手に口を出して注目されたくないのでとりあえず黙っていよう……。
「おや、その娘はいったい?」
「あー……あんたのお目付け役の妖精メイドよ」
「へ、お目付け役って何ですか私聞いてな「妖精メイド!」ひゃい!」
そっと後ろに隠れようとした私を無慈悲に突き出すパチュリー様。ついでにと言わんばかりに衝撃の事実を口に出し、私がそれに疑問を出そうとする前に目の前の悪魔から大きな反応が返って来て遮られてしまった。
「ほー、あなたが妖精メイド……!あ、突然申し訳ありません。はじめまして、私は名も無き小悪魔でございます」
「え、はいどうも。えーと、私は名も無き妖精メイドです」
「わあ……本当に働いているんですね……!」
「は、はあ」
とてもキラキラとした目でみられてちょっと恥ずかしい。確かに妖精がメイドとして雇われているのは珍しいかもしれないけれど、忙しい時とかに私達をちょっとした手伝いに雇うことなんてどこでもやっている。なにが彼女の気を引いたんだろう?しかもえっと、名も無き小悪魔?誰が?
「……小悪魔。さすがにレミィと会わせた時のあなたの態度を見た後で一人で活動させる気は私にはないわ。だけど使い魔としてやるべきことはやってもらう。
で、やってもらいたい仕事はここの本の整理よ。この子だけじゃなく、少なくとも一人は常に妖精メイドにつかせてあげるわ。下手なことはしないように」
「ええ、了解しました」
「……本当かしら。なんなら、その頭に直接教えてあげましょうか?」
私に対する小悪魔?さんの反応を訝しげに見ていたパチュリー様だったけど、しばらくして私を挟んだまま仕事の内容を伝え始める。というかお目付け役って一番危ないやつじゃないですか!しかもそんな口調で、マインドコントロールの魔術を起動しますとか小悪魔さん絶対怒るよこんなの、
「え、是非お願いします!」
「「は?」」
「え?」
思わずパチュリー様と声が合ってしまった。
本当に何を考えているんだろうこの方は?悪魔であるなら魔術を知らないということはないはずだし、もし仮に知らなかったとしてもパチュリー様が起動した魔術は精神に干渉するペンを取り出すという、私でも分かるくらいにあからさまな魔術なのだ。精神に干渉されることに全く抵抗を示さないなんてことあるわけない。
「なにかあったんですか?」
だけれど当の小悪魔さんはこんな調子。なにかあったんですかはこっちのセリフである。どう考えてもおかしいのはあなたの方です、と声を大にして言いたい。
「そうね。……あなたがいいならやってあげましょう。もともと用意していたものだし、使ってあげるわ」
「ありがとうございます!すいません、こういう魔術を使われるのは初めてだったのでつい興奮してしまって」
「そりゃそうでしょうね」
はあ、と使う側のパチュリー様が大きく溜め息をついて行われるマインドコントロール。しばらく行われるそれを私はぼけーっと見ているしか出来ないのであった。
でもこれでお目付け役とかの必要もなくなるし、私も元の場所に帰れるかな。
「じゃあ、一緒に整理頑張りましょう!」
(どうしてこうなった)
でもびっくりするくらい仕事が出来た。小悪魔さん凄い。
──────
「じゃあ、ここを真っ直ぐ、ちょうどあなたの背の高さ位の場所。具体的に言えば下から5段目の棚の端にMagical Realism って本を見つけるまで進んでください。そうしたら、左に曲がっていってもらって461と書いてある書架を見つけて、この本をしまってください。どう、大丈夫?」
「ええと、真っ直ぐいって、マジカル…ええと…」
「そうだね、メモをするからちょっと待っててもらっていいかな」
「そ、そこまでしてもらわなくても!」
「いやいや、慣れるまでは無理をしないでいいんですよ。まずは一つ、しっかりとやってみましょう!」
「わ、分かりました、頑張ります!」
この使い魔を召喚してから3日が過ぎて、元々私しかいなかったこの図書館には良く声が響くようになった。
原因ははっきりしている。あの小悪魔である。私が彼女に仕事内容を精神に直接書き付けた後、妖精メイドに仕事を手伝わせることを要求してきた。何を企んでいるにしても、頭数が増えればそれだけ私が監視しなくてはいけない時間は減るだろうと許可したのが間違いだったのか。こいつのせいで逃げ出した妖精メイド達を咲夜が引っ張ってきたりなにがあったか忘れて戻ってきたりした中から数人連れてきて、何をさせるのか見てやろうと思っていたら本当に妖精メイドたちを使って本の整理をしはじめた。しかも、妙に手際が良い。
いくら妖精達を働かせようと思っても彼女達はひたすらに自由であり知能も低いので、しても無駄な努力になることが多い。しかし小悪魔は、妖精達があの威圧を知っていて指示を聞きやすいこともあるだろうが、まずはお茶会や休憩などで気を引く。出来るかどうかを確認もし、難しそうでもサポートを行って達成する喜びを味わわせる。そして気づけば……
「小悪魔さま!おっきな本運べましたー!」
「小悪魔さん!次の本はどこに運べばいいですか?」
「小悪魔さーん!噛みついてきた本やっつけましたー!」
「悪魔のねえちゃん!私も初めて運べたぞ!」
「小悪魔さま!今日はみんなでもう30冊も片付けたので、お茶会にしましょう!」
「そうですね。今日は皆さん頑張ってたので、一緒に休憩しましょうか」
『はーい!』
この有り様である。……小悪魔が魅了などの魔術を使っていないかはもう6回確認したが、なんの魔術も使っていないことは明らかである。最初妖精メイドに会わせた反応からして初対面に違いないと思うのだが、なぜこんなにも人を使うのが上手いのだろうか?
彼女は本当に訳がわからない存在だ。私やレミィの前で見せたあの強大さがあれば、人を従えることも、私に従うことも不必要だろう。けれど実際は私の使い魔になって、妖精達の機嫌を伺いながら過ごしている。空も飛ばずに。
小悪魔は妖精メイドと会ってからあの威圧だけでなく、魔力の行使や飛行を一度も行っていない。おそらくではあるが、今彼女が行っている無力である擬態の為だと考えれる。
妖精達は大きな力に敏感だ。彼女達は今なんの気兼ねなしに小悪魔へと話しかけているが、本来ならばそれはあり得ない。力を抑えるというのは言うのは簡単だが行うのは非常に難しい。そもそも幻想の存在である私達は、自分が強い存在であると認識していなければその強さを失ってしまうからだ。けれど小悪魔はそんなことに頓着せず、ただ妖精達を遠ざけないように力の行使を一切やめて、共に私からの仕事をこなそうとしている。
一体、なんのために?
「───パチュリー様。紅茶、いかがですか?」
はっと顔をあげる。そうすると、赤髪の悪魔が屈託のない目を細めて、満足そうに、得意そうに、罪もなく無邪気にニコニコと微笑み続けている。
ああ、全く。
「そうね、頂くわ」
本来ならば、こんなことは思索する必要がないことだ。私が彼女にブレインコントロールを使った際に全て暴いてしまえば良かったのだから。
ブレインコントロールは私が専門にしているわけでもなく、小悪魔の力なら意思だけでプロテクトされることもあっただろう。けれど、彼女の意識には一切の抵抗がなかった。その全てを、私に投げ出していたのだ。
罠という可能性を考えなかったわけではない。けれど第一は、私が無垢な好意を寄せてくる彼女の内を暴くのがなんとなく気に入らなかったのだ。
だってそれだけでなく。彼女は、ずっと変わらない。私といるとき、妖精メイドといるとき、咲夜が現れたとき、その全てで彼女はいつだってニコニコと本当に嬉しそうに笑顔でいるのだ。
溜め息を吐く。本当に面倒なものを呼び出してしまったものだと思う。ただ者ではない力を持ちながらあっさりと全権を委ねて、混じりけのない好意を私達に向けながらその正体が一切わからないし話す気配も今のところなし。面倒なことだらけだ。
ただ。まあ。
机に妖精メイド達が集まって談笑している。その中心となっているのはあの怪しい使い魔で、いつも通りの満面の笑みだ。私が遠ざけていた喧騒が続いている。咲夜が来たときも思ったが、随分とうるさくなったものだ。けれど、
「落ち着くわね」
彼女が淹れた紅茶を飲み、その家族の団欒のような喧騒を眺めるこの時間は、嫌いではない。
ここからは各キャラの交流をしてから紅魔郷に入りたいと思います。
このお話は最後のまとめ方が雑な気がするので書き直すかもです。