・世界に降り立つ→空中に出現。
・能力がほとんど封印されてた、空を飛べない!?→墜落。
・うそ、この星の環境、汚れすぎ?
「くろーい空、ひろーい奈落……こんなんでいい気分に浸れるかぁぁぁぁぁ!!」
と叫んだ後で気づいた。あるいは叫んだことで呼び寄せてしまったか。
何か飛んでくる。
――報:現在の権限レベルでは
だぁぁぁそうだったぁぁぁぁぁぁ!
魔導に頼れないことに気付いたので慌てて身を隠す。たとえ
岩間の陰に隠れてさらに雪の中に潜る。この雪が一人くらい簡単に覆い隠せるほど積もってるのは、さっき俺が墜落した現場を見て把握済み。潜った跡さえなければそうそう見つかるまい、そして跡をごまかすくらいは容易い。
そのかわり凍えるほど寒いしイライラするが、この際それは仕方がない。そういや俺の格好って春くらいの仕様だから雪景色の中では若干薄すぎて違和感あるかもな。
音と気配から察するに、飛んできた何か――
状況的に此処で何かがあったことは明白、墜落跡の雪が吹き飛んでるのまでごまかす時間はなかったし、探査機の持ち主も "何かあった" と判断するに違いない。さらに言うと、俺が探査機に気付いてから身を隠すまでの一瞬、探査機のカメラの解像度にもよるが姿を捉えられた可能性がある。そのつもりで動いたほうがいい。
まったく面倒くさい。俺は本質的に魔導士であってそれ以外の何者でもない。魔導が応用性ありすぎて何でもできるものの、魔導抜きでは隠密行動も含めてほぼあらゆることが門外漢のド素人なのだ。つまり今は【
それにしても、行けども行けども動植物はおろか、それらが居そうな痕跡すら見つからないって、どうなってんのかな。
まったく動植物と出くわさぬまま小一時間ほど経った。たまに岩が顔を出してるだけの寂しい雪原から、そこそこの規模のビル街……の廃墟。全てのビルがことごとく崩れてたり傾いたり沈んだりしている。何この、雪が1メートル以上も積もってなかったら、モヒカンが出てきて襲ってきそうな世紀末。
これってもしかして、
『道中ディストピアを思い返して話題にしたが、今度はそれか』
こんな文明ピンチなところに出くわす確率なんて、あんまりないはずなんだが。
『どちらかというと、アスカさんがやらかして文明ピンチにしちゃうことのほうが多かったですし』
ヒトを
『あと厨二はいってるし』
それ今何か関係あんのか!?
雑談は置いといて、廃墟をしばらく進んだ先に、ワゴン車とマイクロバスの中間くらいの乗り物が現れた。ただし駆動部はタイヤの代わりにキャタピラで、窓は前面にしか無くドアは後面にしかない。探査機は後端あたりの天井に着陸し、そして収納された。
キャタピラなのを除けばレントゲン車に似ている。ドアが後部にしかないのは防染のためだろうか、そうだとしたら中に人がいるかもしれない。声とか拾えないかな?
音を立てないよう天井に飛び乗り、中に向けて聞き耳を立ててみる。
「……」
「&%$#@¥?」
ビンゴ!
『 日 本 語 で お k 』
いや無茶言うなよフルミ。異世界で日本語強要は無理があるぞ。
とはいえ解らんのは不便だ。転生だか召還だかの異世界モノによくある "言語チート" なんてもの俺にはない。現実は非情である。
まぁその分、俺には数多の世界を渡り歩いて覚えた数多くの言語知識があるので、新しい言語を推測・理解するのも慣れてるんで結構早いハズ。意外と世界を隔てても文字はともかく音声的には似ていることが多い、という妙な事実にも助けられる。あれか、生物の生体を利用するっていう共通事項があるんで、言語の多様性にある程度の限界があるのか。
で今の言葉、二つの故郷にあったいずれの言語とも違うが、旅道中で覚えたものの中には似ているっぽいものがいくつかある。それを参考に何回か聞いていれば解読できそうなんだが……
「……で間違いないみたい」
「やっぱり何かあったんだね。星屑?」
「それなら、雲が少しくらいおそうじできない? えっとほら、スカイスクレイパー計画だっけ」
「そういえば昔そんな計画あったね」
「失敗しちゃったみたいだけどね」
よっし何となく解るようになった。細部に些細な誤訳があったり、相手に俺が凄く訛って聞こえるかもしれないけど、そこはどうとでもなる。
「それよりも、これ見て。解像度のせいでぼやけてるけど、ここ」
「これは……爆心地から何か出た?」
あーやっぱり撮られてたか。ただ『誰か』ではなく『何か』なあたり解像度はお察し。
「プローブはあたりをくまなく探したけど、怪しいものは見つからなかったみたい」
「あんなところに隠れる場所なんてあったっけ?」
「ないはず。あのあたりは雪の上まで突き出てる大岩が少しあるだけ。いくらプローブのセンサーが貧弱でも、隠れるなんてまず無理」
「だよねぇ」
雪の中に隠れていれば見つからない程度の性能らしい、あの
「これがただのノイズならいいんだけど、もし何かが
「みんなが危ないかも。わたしが出る? プローブよりもちゃんと探せるよ?」
「そうだね……いや、今日は帰ろう。戦えるのは君しかいないんだ、危険かもしれないなら準備を怠らないほうがいい」
「でも、一晩も放置したら」
どうやら彼らにとって俺は大変な危険人物のようです。
『訂正するほど間違ってはいませんね』
そうなんだよなぁ何せ能力ほとんどを自ら封印とかいうマゾプレイが必要なっておい。
「一晩くらいじゃたいしたことにはならないよ。それより、子供たちにせがまれてなかった? 今日は遊んでほしいって」
「……そうだった」
大変な危険人物に思われていたのかと思いきや、子供たちと遊ぶほうを優先する程度にどうでも良かったみたいです。
でも悪いね、俺キミタチと接触することに決めちゃったんだ。帰るのはもう少し待ってもらえるかな。
こんこんこんこん、と車の天板をノックする。
中から息を呑むような驚くような反応が返ってきた。
「もすもすひねもす。聞こえるかな? 悪いが今の会話、少しばかり聞かせてもらったよ」
「……どちらさま?」
誰何の声。言葉はちゃんと通じているようだ。
「通りすがりの旅人さ。名はアスカ。さらに言えば、今あんたらが話してた爆心地のなんたらって、たぶんそれ俺な。
旅暮らしなんで世情に疎くてね、誰かに会って話を聞きたいと思ってたんだ。相手してくれると嬉しいんだけども」
車内が静かになる。返事は来ない。どう対応するか熟考してんだろうなぁ。相手から見れば素性の知れない怪しい人物、襲われるかもしれないんだし、そら悩むわ。
実のところ俺は無理に接触とか乱暴する気はないのだけど。せいぜいこっそり着け回すくらいで。拒否られたら表向きはそれっきり別れて、こっそり彼らとその仲間に
――問:封印の解除って自分の意思でできるの?
――答:本来は条件を満たすことで可能ですが、現在は最適化が未完了のため任意解封できません。
――問:最適化いつ終わるんだよこのポンコツ。
――答:固体名ウィルの体感時間における最適化完了までの所要時間は、現時点で予測不能です。
マジか。本来の目的まで損ねるんじゃ駄目じゃん。どうしたものか。
――答:なお【
やかましいわ。能力がユーモラスとか百害あって一利もないからホントやめて。
「わかった。今出る。少し待って」
とか考えてたら返事がきた。よっしゃ手応えあり。
と思わせつつ車走らせて逃げるつもりかもしれないけど、まぁ時速40キロくらいまでならたぶん何とか追える。いや追う必要ないのか。まあそうなったらそうなったで。
「了解」
俺は音を一切立てぬように車体の上から飛び降りて、車の背後に降りた。この車は出入り口がここにしかない、おそらく除染設備の配置とかそういう理由で。
あ、待ってる間に一応こっちも【
――問:本来の解除のための条件って何?
――答:能力制限の解除条件は以下のとおりです。
・世界を脱出する準備中、もしくは脱出後
・世界に文明が一切ないことが確定後、もしくは滅亡後
・文明の能力水準が高く、能力封印の必要がないことが判明、確定した後
・行動者が存在維持の危機に陥っている場合
・今後の世界の存続について責任を持つことを決心した場合
・世界を滅ぼすと決意した場合
・その他、何らかの異常事態に陥り、必要となった場合
――上記をいずれか1つ以上達成し、その状態で【解封】を宣言することで能力制限が解除されます。
解放条件の中にスゲー物騒なのが混じってるんですがそれは……
『実際できちゃいそうですからね、惑星ふっ飛ばすくらい』
それ何てフリーザ様……って、やだヤダ絶対やりたくない!
てかアレか、【
『魔王ポジも似合いそうだもんなあ、オマエ』
ふははは、よく来たな脆弱な人間共よ。余にその力を示してみよ。気に入れば部下に取り立てて世界の半分をくれてやってもよいぞ。
って感じで?
『だいたい合ってる』
『普段より大人しいかもしれんな』
『レイジさんそれ、このまま居なくなっても文明存続可能的な意味で、ですか?』
『そうだ』
仲間の評価が辛辣すぎワロエナイ。てか普通に泣ける。
みんなして何なのさっきから。そんな悪辣に言われるほど各世界に悪影響してないよ?
まぁいいや。世界によってはホントに魔王やる破目になる可能性もあるし、今のうちに少しは立ち回り考えておこう。なお人類との融和は絶対方針です。
とか考えてたら戸が開いてヒトが出てきた。
「……え、生身?」
これが第一異世界人発見の瞬間であり、その第一声なのであった。
なお車上での会話は視認してないのでノーカンな。
◇【
対象が他の存在に見つからなくなる。パラメータ次第だが光学、音、匂い、赤外線等の遮断・誤魔化しにはじまり、気や魔力の感知の防止や、空間把握など異能による察知の防止、果ては『ここには居ない』と周囲の存在に思い込ませる向精神効果など、多彩な効果を発揮できる。
前回に引き続き、封印のせいで発動しなかった。
◇隠密的【
1.カメラなどセンサーをぶっ壊す
2.こっそり飛ばして離れた場所で炸裂させ、敵の目をそらす
3.障害物や壁を壊して道を開く
4.気付かれたくない相手を全てぶちのめせば隠れる必要がなくなる
◇
屋外は化学的にも放射能的にも汚染されている。生身で出たら健康に悪いどころの話ではない。
アスカはどう考えても真っ当な身体ではないため、汚染環境下でもただちに影響はない。
◇道中ディストピアを思い返して話題にした
プロローグ第三話のこと。
◇【
神業術の術式の1つ。
特定範囲内に指定したものが存在しないか探す。
この場合、探し物は莫迦監査の魂。
◇固体名ウィル
アスカの本名はウィルという。
本人は自己紹介回(プロローグ1話)で両方言ったつもりになっているが、本名のほうは言っていない。ハーフエルフの本名が日本語なわけないじゃん。
◇封印解除の条件
封印は以下いずれかの条件を1つ以上満たすと解除可能になる。
・世界を脱出する準備中、もしくは脱出後
・世界に文明が一切ないことが確定後、もしくは滅亡後
・文明の能力水準が高く、能力封印の必要がないことが判明、確定した後
・行動者が存在維持の危機に陥っている場合
・今後の世界の存続について責任を持つことを決心した場合
・世界を滅ぼすと決意した場合
・その他、何らかの異常事態に陥り、必要となった場合
解除可能の状態で【解封】を宣言することで、実際に制限解除となる。
宣言といっても口に出す必要はなく、心中で唱えればよい。
なお現時点では未だバグっていて、条件を満たしても解除不能。