泣いたうさぎさん。   作:高任斎

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没ネタと、思いつきを再構成。
なので、本編とも、原作とも矛盾する部分があるのは目をつぶってください。

優しくない世界のネタも含みます。


ソラからこぼれた話。(本編と矛盾する部分あり)

 こぼれ話1:業の深い人種。

 

 

 お父様が苦しんでいる。

 研究が、うまくいってないのだろう。

 

 今だけは。

 せめて、良い夢を。

 私は、そう、願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……束さんが言うのもなんだけど、研究者って業が深い生き物なんだぁ」

 

 落ち込んだ私を、束様が慰めてくださった。

 

 うまくいったと思ったのに。

 お父様の喜ぶ顔を見られると思ったのに。

 

『ん?こんなにうまくいくはずがない……これは、幻覚の類か?』

 

 あっさり破られた。

 

「なんていうかさぁ……ふーちゃんって、地獄をのたうち回るのを楽しむ人種なんだよ、くーちゃん」

 

 束様も、そうなのですか?

 

「あ、束さん天才だから。そういうのはないね、うん。でもまあ、ふーちゃんのことだし?束さんにはわかっちゃうんだぁ」

 

 束様のドヤ顔に、少しイラッとしてしまいました。

 なので今夜は、いい夢を見せてあげようと思います。

 

 ええ、束様は妹である箒様が大好きでいらっしゃいますから……素敵な夢が見られることでしょう。

 

 

 

 次の日の朝、きれいに漂白された束さんが発見されたそうな。

 

 

 

 こぼれ話2:静かな怒り。

 

 

 研究の合間の気分転換。

 私の原点。

 

 複葉機に乗って、空へ……。

 

 攻撃された。

 撃墜された。

 

 束さんに対する襲撃。

 私が、迂闊だったことは認めよう。

 だが、しかし。

 

 武装もない、ただの複葉機を……攻撃、したか。

 無防備な翼を、空を、穢したな。

 

 

 

 

 クロエさん、この襲撃に関わったのは、どこのどちら様ですか?

 

「……大もとをたどれば、亡国機業(ファントムタスク)かと」

 

 ほう。

 

 

 

 

 

 束さん、ちょっといいかな。

 

「なになに、ふーちゃん。どーしたの?」

 

 この、企業に属する人間に向けて、メールを送ることってできるかな?

 

「えっと……何する気?ふーちゃん」

 

 嫌がらせです。

 

 

 

 上司の無茶ぶりに悩まされていませんか?

 同僚との人間関係に悩まされていませんか?

 すべての苦労を自分ひとり背負っているように感じたことはありませんか?

 割に合わないな、と感じたことはありませんか?

 あなたの上司や同僚が、たまにだけ優しい言葉をかけてくるような職場ではありませんか。

 

 目を閉じて、あなたの大事な人を思い浮かべてください。

 親、兄弟姉妹、子供、友人。

 あなたがしていることを、胸を張って報告できますか?

 

 あなたの苦労は、挺身は、本当に給与に反映されていますか?

 

 ……。

 ……。

 ……。

 

 

 

 

 

 

「ふーちゃん、これって何か意味あるの?いや、送れって言うなら送るけど」

 

 まあ、やってみないとわかりません……が。

 

 そのメールをですね。

 この、企業から送られたように偽装してください。

 できますか?

 

「できる、けど……」

 

 同じ亡国機業のグループなのに、仲の悪い企業があるんですね。

 なので、ここの連中には、ここからメールを。

 そしてここには、ここから。

 

「うわぁ……さすがの束さんも、ドン引きだよ」

 

 どんな集団にも、それを支える……貧乏くじをひかされるキーマンがいます。

 そのキーマンを狙い撃ちにできればいいんですけどね。(にっこり)

 

「まあ……確かに、あいつらうっとおしいし、やっちゃおうか」

 

 やっちゃいましょう。

 

 

 組織というものは、無駄を嫌う。

 余裕があるように見えても、案外、髪の毛の一本、水滴一粒で崩壊するバランスの上で成り立っていたりするものだ。

 現場の人間のがんばりで支えられていることも少なくない。

 

 なに、ほんのひとしずく。

 その心に迷いが生まれれば、働きは鈍る。

 

 バランス、崩れないといいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……勘違いするなよ。

 これは、始まり、だからね。

 

 絶対に許さん!

 

 

 

 こぼれ話3:箒の剣。

 

 

 相手より速く。

 相手より力強く。

 相手より鋭く。

 

 それは、絶対強者が目指す剣。

 

 ふっと、箒の口元から力みが消える。

 

 強さは欲しい。

 でも、自分より強い相手に負け、弱い相手に勝つような。

 

 そんな強さはいらない。

 

 

 中学3年。

 初めて、大会への出場が認められた。

 

 相手の強さを認める強さ。

 折れない強さ。

 守れる強さ。

 

 今の私には、この対戦相手を正面から押しつぶす強さがない。

 

 相手の目を見つめ。

 気合を入れる。

 

 ふっと。

 間合いを取るように。

 気を引いた。

 

 釣られた相手の胴を抜く。

 

 旗が上がる。

 うん。

 

 勝てて良かった。

 

 なあ、見ているか、一夏。

 それと、冬樹。

 

 私は、ここにいるぞ。

 違う名前を名乗っていても。

 お前たちにはわかるよな。

 

 

 

 

 

 

 

 後日。

 冬樹からお祝いの言葉が届き、喜ぶ箒。

 

 そして、ワクワクしながら一夏からの『何か』を待ち続ける箒。

 

 待ち続ける、箒。

 

 

 

 待ち続けたんや……。(涙) 

 

 

 

 こぼれ話4:エー〇をねらえ!

 

 

 ハイ〇ースされた。

 

 人間という生き物は、どんな環境にもなれるのだなと思う。

 抱えられたまま運ばれていく自分を、心静かに見つめることができる。

 

 まあ、相手が分かっているからというのもありますが。

 

 

 お久しぶりです、千冬さん。

 

「あ、ああ……私が言うのもなんだが、落ち着いているな」

 

 慣れてますから。

 

「な、慣れているのか……」

 

 ええ、先日は金髪美女のお誘いを受けましたし、その前は……。

 

 ふと、エムと名乗ったあの子に千冬さんの面影を見てしまった。

 ブリュンヒルデ。

 世界最強。

 本人を無視してのクローン……ありそうな話か。

 

「いや、すまん。慣れているからといって、こちらの無作法に腹を立てない理由などなかったな」

 

 黙った私を見て勘違いしたのか、千冬さんが頭を下げてきた。

 

 束さんの友達なら、孫のようなもの。

 気にしなくてもいいのだが、謝罪は受け取っておく。

 

「実は、一夏……私の弟のことなのだが」

 

 千冬さんの相談事。

 それは、一夏くん……束さんのいう、『いっくん』のことだった。

 

 姉として、保護者として。

 千冬さんの、深い愛情が伝わって来る。

 

 うん。

 

 千冬さんが一夏くんを心配するのと同じように。

 私は、千冬さんのことが心配になった。

 

 保護者にだって、支えてくれる誰かは必要なんですよ、『ちーちゃん』。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……束、アレはどこに行けば買えるんだ?」

「ふーちゃんは、売り物じゃないよ!?」

「そうか……そうだよな」

 

 千冬は、小さく頷き。

 束を見た。

 

「なあ束、どこに行けばアレをさらってこれるんだ?」

「ちーちゃん!?」

 

 千冬は、笑いながら束の肩を握った。

 

「なあ、束。責めているわけじゃないんだ……ただ、どこに行けばあれの類似品が手に入るか教えろと言ってるだけの話で……」

「ツッコミどころが多すぎるよ!?」

「なあ、束。私が我慢しているうちに、大人しく教えろ」

 

 

 束さんとちーちゃんは、どんなことでも話し合えるお友達です。

 

 

   

 こぼれ話5:とびだせ〇!

 

 

『あなたは〇〇でいなさい』

 

 ずっと、心に刺さったトゲのようなもの。

 

 それが、抜けた……そんな気がした。

 

『うさぎさんシリーズ』と呼ばれる動画群。

『空の夢、空の旅』を同じシリーズとみなすかどうかの議論は、今も決着がつかない。

 

 なお、うさぎさんシリーズのメイド少女と明らかに同一人物でありながら、『空中舞姫くーちゃん』シリーズは、別系統ということで意見が一致している。

 

 

 何はともあれ。

 この少女、もともと少しばかりオタク趣味があったのだが……このうさぎさんシリーズにどハマリした。

 

 無意識のうちに、『映画化はいつですか?』などと書き込んでしまう程度には。

 

 知らない場所。

 未知の世界。

 新たなソラ。

 

 姉へのコンプレックスと、実家の重苦しさ。

 

 一種の逃避も重なって、彼女は……。

 

「待って、〇ちゃん!あれは!あれはダメだから!近づいちゃダメ!ウチの実家的に、本気でまずいから!」

 

 

 生まれて初めての、ガチの姉妹ゲンカが勃発した。

 

 なお、友情は芽生えなかった様子。

 

 

 

 

 ひとりの少女が、卵の殻を破り、空を見上げ始めた。

 

 空のむこう。

 まだ見ぬソラ。

 

 

 

 こぼれ話6:モッピーはみんなに愛される。

 

 

 要人保護プログラムによって、短期間での転校を繰り返し。

 たどり着いたのが、ここか。

 

 IS学園。

 

 適正はそれほど高くない。

 

 つまり。

 篠ノ之束の妹だから。

 私は、ここにねじ込まれた。

 

 

 とじていた目を開き、起立する。

 

 

 篠ノ之箒だ。

 特技といっていいか、趣味と言っていいのか……剣を少し嗜んでいる。

 

 教室内が、ざわつく。

 耳に飛び込んでくる単語。

 

『篠ノ之束の……』『篠ノ之博士の……』『身内?』などなど。

 

 仕方ない。

 受け入れる。

 その上で。

 

 

 篠ノ之束は、私の姉にあたる。

 私のIS適正はそれほど高くない。

 要人である姉の家族の保護の一環として、私はこの学園にねじ込まれた。

 

 私自身、思うところはある。

 しかし、重要なのは……。

 

 私をねじ込んだことにより、合格枠からはじかれたであろう、誰かだ。

 

 静まりかえる、教室。

 不思議と、私の心も静かだ。

 

 私は、篠ノ之束の妹というだけで、誰かの席を奪った。

 もちろん、その誰かは、合格ラインのボーダーラインにいた誰かなのだろう。

 このIS学園において、優秀とは言えない誰かなのかもしれない。

 でも、一線級のIS操縦者になれたかどうか、一流の整備士、開発研究者になれたかどうかは問題ではないと私は思う。

 

 私は、篠ノ之束の妹というだけで、誰かの学ぶ機会を奪ってしまった。

 その、だれかの夢を、思いを、希望を……。

 

 一瞬、友の顔が浮かんだ。

 

 ……ソラを踏みにじって、私はこの場所にいることを許された。

 

 私がここにいるのは、篠ノ之博士の妹として、保護されるためだ。

 だが、それでも。

 私は、この場にいる誰よりも真摯にISと向き合う必要がある。

 その、義務がある。

 そう、思っている。

 

 頭を下げた。

 これ以上の言葉は無用。

 あとは、行動で示すしかない。

 

 

 乾いた音。

 

 顔を上げる。

 

 金髪碧眼の、イギリスの代表候補が……手を叩いていた。

 遅れて。

 誰かが。

 続いて、みんなが。

 

 拍手が、広がっていく。

 暖かな音が教室の中を満たしていく。

 

 私はただ、覚悟を口にしただけで。

 まだ何も、なしてはいないのに。

 

 頭を下げた。

 

 胸に、刻もう。

 この光景を。

 この拍手を。

 魂に刻み込み、歩んでいこう。

 

 この、IS学園で。

 




モッピー愛されてるよ、だって、モッピーだもん!

というわけで、おまけというかNG集というか。
これにてお開きでございます。

それではみなさま。
また、別のソラの下でお会いしましょう!

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