「はい、さようなら」
教え子達に暗殺され、殺せんせーは死ぬ……はずだった。
死の向こう側
「さようなら、殺せんせー」
「はい、さようなら」
1文字1文字噛み締めるように言った「さようなら」
微かに震える手でナイフを握り締めながら、潮田 渚は
ここに至るまでも、散々悩んだ。本当に殺せんせーを殺すのか。
エロくて、抜けてて、弱点も一杯あって……でも最高の先生だ。
だから、だからこそ天に任すのではなく、自分達で殺りたい。それが渚の、生徒達の辿り着いた結論だった。暗殺者とターゲットという関係こそが、自分達と殺せんせーを結んでいる絆なのだから。
渚は固く、ギュッとナイフを握る。殺せんせーは優しい目で生徒達を見つめていた。
もう言葉は必要無い。
感謝を込めて、全身全霊でナイフを刺す。それが自分たちなりの恩返しなのだから。
ネクタイの下の急所。これまでどれほど当てようと思っても、掠りもしなかったナイフは呆気ないほど簡単に刺さる。瞬間、殺せんせーが光る。眩しい光に包み込まれる中、渚は殺せんせーの声を聞いた気がした。
「卒業おめでとう」という声を。
殺せんせーだった光は、空へと上っていく。緊張の糸が切れて渚の目から再び涙が溢れ出した。体を二つに折って、咽び泣く。渚だけでは無い。他の生徒も皆、肩を震わせ泣いていた。
こうして渚達、E組は一足先に暗殺教室を卒業した。
◉◉◉
死ぬっというのはこういう感覚なのだろうか。
徐々に薄れていく意識の中、殺せんせーは言葉を紡ぐ。
「卒業おめでとう」
最後の言葉が届いたかどうかは定かでは無い。何故ならばそれを確認する前に、殺せんせーの視界は完全に闇に覆われたからだ。視界が闇に覆われると同時に、最後まで残っていた意識も消えていく。このまま消失するのだろうか。
最期に、生徒達の顔を一人一人思い浮かべていく。一年間で皆よく成長した。彼等なら、これからの未来で理不尽に見舞われてもその理不尽を乗り越えて生きていけるはずだ。
願わくば彼等の未来に幸多からんことを。
そして殺せんせーの意識は完全に消える。この瞬間をもって殺せんせーは完全に消滅した……はずだった。
不意に闇に一筋の光が差し込む。殺せんせーの意識は僅かにだが戻ってきた。無音のはずの空間に、誰かの叫び声が響く。まだ幼いその声は救いを求めていた。
助けを求めても救ってくれるヒーローはいない。
救いを求めながらも、世界を怨むその声。ヒーローはいない。誰も助けてはくれない。
近い未来闇に堕ちる少年の声に殺せんせーは反応していた。
世界にヒーローはいない。けれど……最高の先生ならばいるのだ。
こうして、何の因果か、死を迎えるはずだった殺せんせーは違う世界へと呼び寄せられることとなった。
殺せんせーってヒロアカ世界にマッチすると思うんですよねぇ