東方白狼伝説   作:青森の桜前線

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はじめまして。




序章 神の子

 オノゴロ島で伊邪那岐(いざなき)伊邪那美(いざなみ)と共に天の御柱を廻る……。

 

 夫婦の契りを結び、子を生む。

 

 しかし、生まれたのは妖しい物の怪の()()()であった。

 

 ヒルコは葦の船に乗せられて海に流された…。

 

 

 

 

 

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~白狼の里~

 

「おぎゃあ…!おぎゃああああ!!」

 

 ほの暗い産屋に響く生命(いのち)の声。それを産み落とした者は大きくその肩を震わせて崩れた。となりで赤子を取り上げたおばあさんが「もう大丈夫、元気な男の子だよ」そう言って女性の背中を優しくさすった。

赤子の穢れを産湯で落としながら、おばあさんはその女性を元気づけるように言った。

 

「う~んっ、立派な尻尾だ。流石來寄(らいき)の子だねえ」

 

「……ふふっ。ありがとう…ございます」

 

そう絞り出すように呟いた。

 

 

 Ⅰ時間も経つとだいぶ落ち着いてきたようで、布団の上で我が子を抱いていた。

 

「それにしても…、本当にあの人にそっくり。」

 

 頬を撫でられると気持ちいのか、すうすうと息をたてながら眠っていた。その様が愛らしいのか喜ばしいのか、思わず顔がほころんだ。

そんな時だ。ドタドタドタとこちらへ走ってくる音が聞こえる。あの人だろう、そう思い待っていると、部屋の前でピタッと止まった。障子には旦那と思われる影と、もう一つ影があった。何事だと思案していると、向こうから声が聞こえてきて、戸惑いは笑いへと変わった。

 

『ちょっと旦那さん!ここでは静かにお願いしますって前から言っているじゃないですか!特に今は奥様がご出産なされたばかりなのですよ!ちゃんと父親としての自覚をですねぇ…』

 

『い、いや、うん…。分かった、分かったから!早く妻にあわせてくれぇぇ!!』

 

 

「ふふっ」

 

 まったく、賑やかな人。

 

「あなた、大丈夫ですよ。入ってきてください」

 

『おっ、そうか。んじゃ失礼するぞ』

 

『ちょっと!まだ話は終わって…』

 

 障子がスパッと開け放たれる。ちょうど夕暮れの光が差し込んできてまぶしかったが、すぐに目の前の最愛の人がわかるまでに回復した。その人は私のすぐ横に座り込んでからそっと手を取った。

 

「ありがとう、俺の子を生んでくれて。大変だっただろう…、男の俺じゃ計り知れないが。本当に、よくやった。」

 

 若干目を潤ませながら私の顔を見てそう言った。

 

「こちらこそ。あなたの子を生ませて貰って本当に良かったわ。心の底から」

 

 そうやり取りをしていると、今まで静かに眠っていた腕の中の子が突然泣き出した。

 

「…おぎゃあ、おぎゃあ!」

 

「まあまあ…!きっと、突然あなたが現れてびっくりしたのね」

 

「わははは!元気なことは良いことだ!どれ、父さんにも抱かせてくれ」

 

 私が彼に渡すと、すっと持ち上げ立ち上がった。慣れない腕の中なのか、泣き止まないが。

 

「おぎゃあ!おぎゃあ!」

 

「おおう、よしよし…」

 

「…そういえば、あなた。名前はもう決めたのですか?」

 

「む…、おお!そうであった。ああ、ちゃんと決めてきてあるぞ!」

 

 そう言うと彼は、一旦赤子を私の腕の中に戻して、懐から一枚の紙を取り出した。そして紙を広げると、さあ見てくれ!と言わんばかりに私の顔に近づけてきた。

 

「“ハク”…」

 

「そうだ。シンプルでいいだろ?この子には俺の跡を継がせたいからな…。内にも外にも、分かりやすく覚えやすい名前がいい。」

 

 どうだ?そう言うと彼はキラキラと顔を輝かせる。ハク、ハク…。

 

「ええ、すごく良いと思います。この子はこれからハクなのですね。ね、ハク。」

 

 腕の中でこの子がうなづいた気がした。

 

それからの一週間は、ここで過ごすことになった。食事や赤子のお世話など、必要なことはおばあさんが横で手伝いながら教えてくれた。夜には旦那が仕事から帰ってきて、その日の出来事を話した。包んでいる布を取り替える大変さや、お乳の後にはゲップをさせること。その他にも周りの先輩母たちから教わった豆知識など、一日を振り返りながら会話を楽しんだ。ある程度日が落ちてくると旦那は横になって、雑魚寝を始める。それを見ながら、私もハクを寝かしつけて、自分も眠りにつくのだ。

 

「おやすみなさい」

 

 願わくば、我が子に幸あらんことを。

 

 

 

 

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 『生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く

  死に死に死に、死んで死の終わりに冥し』

 

 弘法大師空海が自身の詩のなかに記した一節です。永夜抄で妹紅が言っていたセリフもこちらになります。

この世は車輪です。ぐるぐると廻りそれが絶えることも変わることもありません。ただ流れのなかを進むのです。地球も回ります。私たちも一緒に回ります。これに一体どんな意味があるのでしょうか。

 

 

 

 




 閲覧頂きありがとうございます、作者です。

小学校の頃は、物語を作るときに登場人物たちの会話だけが続いてしまうタイプの人間でした。今もそれを抜きにしても拙い文章ではありますが、是非これからも読んでいただけると幸いです。

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