東方白狼伝説   作:青森の桜前線

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 木の葉が舞い落ちる時
 花が咲いた頃の面影を
 私は邪推してしまう
 姫のようなあの姿を
 懐かしんでしまう





第十一話 木花咲耶姫

主「づああああッ!!」

 

 ハクは餓狼の様に拳を振るう。仇だ、コイツは皆の仇なんだ。感情が前に出て焦点が合わない。攻撃に集中するあまりハクの体は隙だらけで、相手から狙い放題であった。しかし、

 

木花「ふはは!」

 

 彼女は狙わない。それどころかこの戦いをどこか楽しんでいる節さえ見受けられた。明らかに自分に対して手加減をしている。そのことに薄々気づいたハクは一旦距離を取り、相手との間合いをはかった。

 

主「…何で本気じゃねぇんだよ」

 

木花「…」

 

主「何で本気で戦ってくれないッ!?オレはお前を殺しに来たんだぞ!なのにッ」

 

 

木花「()()から、言われていてね!残念ながら君を殺すのはもう少し先なんだ。だが、」

 

 木花咲耶は刀を肩に掛けて言い放つ。

 

木花「力を、測ってこいとは言われていてね。…如何やらこの程度じゃ君の本気は見れないみたいだ。」

 

 そう言い終えると次第に周りの空気が重くなり、禍々しい力が目の前の彼女から垂れ流された。

 

(こうべ)を垂れ、腕を垂れ、髪を垂れ、ついには膝から崩れ落ちた。そして地獄の底から唸る様に一言。

 

 

木花「“刺誰咲くら(しだれざくら)”」

 

 彼女の髪の毛の一本一本がしなりのある桜の枝へと変化した。それらはそれぞれが別の意識をもっているかのようにうごめき、ハクの方へとその鋭利な先端を向けた。

 

主「ッ!結界!!」

 

 瞬間、それは彼に飛来した。

 

主「うおおおおォッ!!??」

 

 ハクは目の前に出せるだけのありったけの結界をはった。しかし、それらはいとも容易く枝によって破壊されてしまう。次々と新しい結界をはり防ぐも、このままでは埒が明かない。どうすれば…

 

その刹那であった。

 

 

 ドス、ハクの左肩に何かが刺さった。

 

主「ッッー!?があああああっ!!??」

 

 後ろから刺したであろう枝は、傷口にぐりぐりとその体を押し付けながら更に(えぐ)ろうとする。鮮血が辺りに飛び散る。

 

主「ああああッ!?クソォっ!」

 

 途端にハクはうずくまり、まだ動かせる反対の腕を自身の足に当てる。

 

主「“重力結界”ッ!!」

 

 彼の両足に掛かった結界がそこの重力を軽くする。無数の枝が迫る中、彼は既の所(すんでのところ)で抜け出した。

 

 

 

主「はあっ、はぁっ、はぁッ!」

 

 ハクは穿たれた肩をかばいながら膝立ちで立ち上がろうとする。しかし、そこには彼を逃がすまいとあの枝たちが迫ってきていた。

 

主「くッッ!!」

 

 ハクは枝に飲み込まれた。

 

 

木花「………。」

 

 木花咲耶は動かない。彼が死んだのか死んでいないのか、そのような些事は眼中にない。彼女が待っていたのはもっと別の何かだ。そう、そしてそれこそが、()()に見て来いと言われたものだった。

 

木花「ふははは…、きたか」

 

 木花咲耶が呟くのと同時に、枝の隙間から光が漏れ始めた。神々しいまでの光、それはハクが飲み込まれた所から発せられていた。

 

木花「…何という神力だ。矢張り君は」

 

 その時、どこからか飛来した矢が、木花咲耶が伸ばしている枝に深々と突き刺さった。

 

木花「ぬッ!?」(不味い、この矢は…!)

 

 携えていた刀を素早く抜き放ち、矢が刺さった枝の一本を斬り落とした。その衝撃で術は解かれて彼女の髪は通常の状態へと戻り、またハクが発していた光も収縮していった。

 

 

木花「…毒矢とは、懐かしいなあ。久方ぶりだというのに挨拶もなしとはね。いやはや」

 

?「そこを退きなさい」

 

 

 

木花「“八意君”」

 

 

永琳「………、貴女がなぜこんなところにいるのかしら」

 

木花「おやおや、それは此方の台詞(セリフ)ではないのかな?人間の君が、こんなところにいるなんて問題だろう?月の都の要人が。」

 

永琳「答えなさい。今度は何を企んでいるの。」

 

 ギリリッ、弓を引き相手との間合いを詰める永琳に、木花咲耶はひらひらと両手を振り敵意がないことを示した。

 

木花「何も」

 

永琳「………ッ」

 

木花「おっと!戯れだよ。そんな怖い顔しないで」

 

永琳「()はどこ!貴女がいるってことは彼もいるんでしょ!?」

 

木花「残念ながらここには居ないよ。ふふ、彼は、ちょっと“鬼ごっこ”をね。あ、意味が違うか」

 

 木花咲耶はそう微笑むと永琳の方へ向かって歩き出した。

 

永琳「近づかないでッ!」

 

木花「私はただ帰るだけだよ。君のせいで興ざめだ、まあ」

 

 木花咲耶はハクの方をチラりと見て口角を上げた。

 

木花「彼を一目見ただけでも得した気分だよ。じゃあ、()()()八意君。」

 

 彼女は永琳の横を通り、鬼の里の出口の方へ向かって行った。

 

 

 

 

 その場にのさばっていた重々しい神力が薄れていく。それと同時に永琳の体に入っていた力も抜けて、構えていた弓矢を下した。深呼吸して落ち着いた彼女は倒れているハクの元へと歩み寄る。肩の傷口を簡単に止血をして薬品を滲ませたガーゼで抑えて包帯で巻いていく。

 

永琳「…こんなに尻尾が汚れて、最悪だわ…。」

 

主「う、うぅ…」

 

永琳「あら、起きた?」

 

 ハクは目を覚ますと永琳の顔を見つめて涙を流した。仇を討てなかった。オレはアイツにまんまとやられて腕輪で永琳の元へ戻ったんだ、そう彼は思った。

 

主「くぅっ、くそおお…!!オレの不甲斐なし!軟弱者ォ!すまない、みんなァァッ!!!」

 

 空を見上げて慟哭した。その様子に何かを思った永琳はハクに話しかける。

 

永琳「…ねえ。貴方の仇ってさっきの女?」

 

主「………あ?さっきって、あれ」

 

 ハクは周りを見渡してここが鬼の里であることを理解すると、永琳の顔をじっと見て驚いた。

 

主「はあ!?何でここにいんの!?」

 

永琳「答えて」

 

主「え、あ、ああ…。さっきのかは知らんが長い刀持ってる女と、ソイツの仲間。」

 

永琳「…やっぱり」

 

主「やっぱりってなんだよ、ていうか本当に何でここn」

 

永琳「聞いて」

 

主「あ、はい。」

 

永琳「貴方の仇、木花咲耶姫ともう一人、“九頭龍(くずりゅう)晴景(はるかげ)”は十万年前の人妖大戦の首謀者なの。」

 

主「…!」

 

永琳「私も驚いたわ。貴方に付けた腕輪を介してそっちの状況は把握してはいたんだけど、まさか彼女たちがまた…。」

 

主「九頭龍晴景ェ!!!」

 

永琳「!?」

 

 ハクが急に立ち上がり声を張り上げた。

 

主「…ソイツが、ソイツが!父さんの仇なんだなッ!!」

 

永琳「え、ええ。可能性としては高いと思うわ。」

 

 と思ったら、突然意気消沈しハクはうなだれた。

 

主「そういえばオレ…、もうヤゴコロの奴隷だもんな。仇討ちなんて…、ははっ無理な話しかぁ」

 

永琳「待って、話は最後まで聞きなさい。その二人がまた“乱”を起こすようなら、彼らは私たち人間にとっても敵よ。だから、貴方を鍛えてあげる。貴女が強くなればいざという時は月の都の兵士たちと共に戦えるし、その中で貴方は仇を討つこともできるかもしれない。だから、前の契約は破棄ね。どうかしら?」

 

主「そ、そりゃあ願ってもない話だが…いいのか?アンタの研究は?」

 

永琳「それは勿論するわよ♪」

 

主(それはするんだ…)

 

主「ち、ちなみに、尻尾の契約の方は…」

 

永琳「え、破棄するわけないじゃない。何言っているのよ貴方」

 

主(どんだけ触りたいんだこの人…)

 

 

主「…分かった。いや、むしろこっちからお願いしますッ!」

 

 

 

永琳「わあ、やった!じゃあ早速触るわね…、砂でじゃりじゃりしてるけど気持ちいい~」

 

主(な、なんだこいつ~!)←ジョ○マン感

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




【補足】

木花咲耶姫:人妖大戦の首謀者の一人。種族は神。能力は“桜を操る程度の能力”。愛用する直刀の名は“布都御魂”(ふつのみたま)。落ち着き払い、礼節を重んじる性格。

九頭龍晴景:人妖大戦の首謀者の一人。種族は大蛇族。能力は“大地を割る程度の能力”。十万年前の大蛇族の長。

ジョ○マン:吉本興業所属のお笑いコンビ。独特のリズム感とシュールさで人気を集めている。面白くて好き。
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