東方白狼伝説   作:青森の桜前線

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 僕らは、過去にどんなことがあったとしても
手を取り合っていかなければならない

 君たちは、僕らが何をしたとしても
手を取り合っていかなければならない

 名も知らぬ者たちよ、許してくれとは言わない
だが、これが人類なのだ

平和とは…掴むことのできない、幻か…





第十三話 早すぎる再会

永琳「ねえ、健人」

 

 ツクヨミの話も終わり、八意永琳と鹿島健人は揃って大階段を下りていた。それまでに会話のなかった二人だが、永琳が思い立ったかのように健人に話しかけた。

 

健人「んー、なに?永琳さん。」

 

永琳「貴方この後時間ある?あるなら私の家に来なさい」

 

 その言葉を受けた健人は、少しぎょっとして驚いた顔で横を向いた。

 

健人「…なに、もしかして誘ってるの?」

 

永琳「ばっ…!馬鹿じゃないの!?貴方とはただの幼なじみの関係で、そんなわけないじゃないっ!」

 

健人「ははは…冗談だよ。相談事でしょ?まったく、永琳さんはいじり甲斐があるなあ」

 

永琳「んぬぬ…。貴方のそういう所、ほんと嫌いだわ…。」

 

 

健人「…んで、君の家でってことは…ここで言えない話だよね?」

 

永琳「え、ええ…」

 

健人「わかった。お邪魔させてもらうよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

主「そういえばオレ、どこで待ってりゃいいんだ?」

 

 永琳の家に帰って来たハクがまず思ったことである。今までは地下の実験室で過ごしていたが、そこに自分から入るのは何か違う気がする(小並感)。かといってゴミの山に埋もれて過ごすのもなぁ…。

 

主「…仕方ねえ、片付けてやるか。」

 

 これからヤゴコロには世話になるんだ。これくらいやってやるか。

 

 

 

 

 

永琳「ただいま」

 

 しばらくして永琳が帰って来た。

 

主「おう、お帰りって、え?」

 

健人「おじゃましまー…、え?」

 

 

主・健「「ああーーーーっ!?ダンゴ屋の人ぉーー!!」」

 

永琳「え、なに?二人とも」

 

 

 

 

 

永琳「へえ、二人はもう会ってたんだ。」

 

 永琳がダンゴ屋での一件を聞き、微笑んだ。自分の知り合い同士が顔見知りで嬉しいのだろう。

 

主「いや、びっくりしたわ…。誰か連れて来るなら言ってくれよ」

 

健人「さっきの子がいるなんて聞いてないよ!え、なに永琳さん、隠し子?」

 

永琳「ち、違っ!…て、貴方またからかってるでしょ」

 

健人「あ、バレた?」

 

永琳「何回もやってればバレもするわよ!まったく…」

 

 そう掛け合いをする彼らは本当に仲がいいのだろう、呆れた顔をしながらも永琳に嫌がっている様子はなかった。

 

主(あれ?オレもしかして邪魔?)

 

 ハクは二人に置いてけぼりをくらいながらも、なんだいい人いるじゃん。そう思った。

 

 

永琳「…でね、ここからは真面目な話。昔からの付き合いで信頼できる健人だからお願いしたいことがあるの…。」

 

 永琳はキリっとした表情を浮かべると、健人に向き直ってハクを指しながら話し始めた。

 

永琳「まず…、この子は妖怪よ。」

 

 そう言った瞬間、健人を取り巻く空気が一変する。ピリピリと髪の毛が逆立つように目をかっ開き、体から殺気を飛ばす。それは明らかに先ほどまでの彼とは違い、昼下がりの朗らかな部屋から夏の夕立の直前のような、一触即発の空気感に変わっていた。

 

健人「…妖怪」

 

 一言に明らかな敵意を感じる。それを感じた永琳は息を吞み、ハクと健人との間を腕で遮った。

 

永琳「まって、この子は悪い子じゃないわ。ツクヨミ様の話にもあった木花咲耶姫と九頭龍晴景はこの子の仇よ。だから、貴方にはこの子を鍛えて欲しい、それが頼みごとよ。」

 

健人「………」

 

永琳「…っ、この子がいれば!人間と妖怪との懸け橋になるかもしれない!あの馬鹿げた()()()もなくせるかもしれない!た、確かに私情もあるわっ!私情もあるけど…、お願い!私に免じてこの子のことを鍛えてあげて!」

 

主「ヤ、ヤゴコロ…。」

 

 健人は未だ無言である。ふー、と一つ息を吐いて険しい顔をしながら永琳に近づいていく。怒られるのか、はたまたハクを害そうとしているのか、そう思った永琳は身構える。健人が手を伸ばす、覚悟を決めた永琳はハクの前に立ちはだかり、目をつぶった。

 

 

 

健人「…なーんてね」

 

永琳「っ………、え…?」

 

 健人は永琳の頭にぽんっと手をおくと、纏っていた殺気を離散させた。凍てつくような顔はどこへやら、すっかりいつもの温かい表情へと戻っていた。

 

健人「…また引っかかったね。その子は悪い子じゃない、ダンゴ屋で話してからわかってたよ」

 

永琳「じ、じゃあなんで…?」

 

健人「永琳さんがどれだけ本気なのかなーって思ってね、試してみた。はは…、そんだけ震えててもそこを動かなかったんだ。…本気なんだね?」

 

永琳「え、ええ。勿論よ…。」

 

 その言葉を聞くと、健人はとびきりの笑顔になった。

 

健人「じゃあ僕が言うことはない、君の覚悟に敬意を。協力しよう、友人としてね。」

 

永琳「…ありがとう、」

 

 

健人「ハク君」

 

 健人はハクの名前を呼んだ。あまりの出来事にぼーっとしていたハクはそれに気づかずにいた。

 

主「………」

 

健人「ハク君?」

 

主「…え?え、え、あ、ははいっ!?」

 

 こ、この人怖えーー!!何だよさっきの殺気!(洒落じゃない)

尋常じゃねえ―よ、やべえーよ、この人だけは怒らしちゃいけないよ!!

 

健人「? …まあいいや。これからは僕が君のお師匠さんね。師匠、なんて呼んでくださいな」

 

主「う、うっす!師匠!よろしくお願いしまっす!師匠!」

 

健人「…君、なんかキャラ変わってない?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 そんな訳で、俺は鹿島健人っていう人のもとで修行することになった。なんでもこの人実は結構すごい人らしくて、月の都の全兵士を統轄する"兵士長"という役職に就いている。いわば軍事のトップみたいな存在だ。そんな人との親交がある永琳もまた、すごいお偉いさんなんだろうな、そう改めて思った。

 

師匠は道場も持っているらしく、そこでの鍛錬が決まった。一応オレが妖怪だってことは永琳と師匠以外には秘密ってことになったので、リスクを減らすためにオレを完全に人化させる薬を永琳は作ってくれた(家を綺麗にしたお礼だってさ)。妖力を霊力に変換することはもちろん、耳や尻尾も無くすことができるようになった。やったぜ!って喜んでたら、永琳がうなだれて後悔してた。いや、お前が作ったんやろがい。

 

というわけで。修行初日を迎えたオレは師匠の道場へと急いでいた。

 

主「いやあー、自由に動けるっていいな!フードも被らなくて済むし清々しいぜ…」

 

 都の風を感じて走るハク。久しぶりの開放的な世界に胸を躍らせるが、それでも彼の心は陰っていた。

 

主(師匠…、タケ爺…。)

 

 ハクの最初の師である杖つきの好々爺“タケ爺”。彼はあの日朧山にて父と共に戦い、死んだ。彼の教えはハクの体に染み付いており、特に結界操術を扱う時、タケ爺の姿が脳裏をよぎる。ハクに新しい師匠ができた今、彼のことを思わずにはいられなかった。

 

主(タケ爺。オレがどれだけ歳をとろうとも、あなたから受けた教えを忘れることはありません。冥福を…、そしてあなたの無念をオレが晴らします。見守っていてください。)

 

 手を合わせて天に祈る。立ち止まり閉眼す。

ハクは改めて誓ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

『キエイ!!はあッ!セイ!セヤッ!』

 

 覇気のこもった掛け声が聞こえる。それに伴い激しい打ち合いの音も聞こえる。ここがそうなのだろう、そう確信したハクは道場の戸を開け放つ。

 

 そこでは自分よりも年下の少女が師匠相手に打ち合っていた。

 

?「はあああッ!!」

 

 鋭い一撃が炸裂する。紫髪のポニーテールがその後を追うようになびき、彼女の素早い剣技を強調した。

 

健人「相変わらず猛々しいねえー」

 

 それを子猫をじゃらすかのようにいなす健人。どうやら稽古中らしい。どうやって声を声をかけたらよいものか、そのようなことを思案していると、ハクの存在に気づいた健人は少女の持っていた竹刀を弾き飛ばした。

 

 

?「ああっ!?」

 

健人「…来たね。ようこそハク君、我が道場へ!さあ、こちらに来なさい」

 

 健人に促されハクは彼の傍へと歩み寄る。目の前には息を切らした少女がこちらを見ており、健人はハクの肩に手を置いた。

 

健人「紹介しよう、ハク君。彼女はウチの門下生である“綿月(わたつきの)依姫(よりひめ)”。若干10歳の身でありながら、なかなかの剣の使い手だよ」

 

 そう師匠に目の前の少女について説明されると、依姫と呼ばれた少女は息を整えて正座し、両手を前についた。

 

依姫「紹介にあずかりました、綿月依姫です。まだまだいたらぬ身ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。」

 

主「あ、はい。こちらこそ、どうも…」

 

 依姫のあまりに低く礼儀正しい態度に、ハクも思わず正座して頭を下げた。その傍から見れば滑稽な姿に、健人はクスリと笑い二人の肩に手を置いた。

 

健人「んじゃまあ、みんなで頑張っていこうか」

 

主「はい!」

依姫「はい!」

 

健人「うんうん♪」

 

 こうしてここでの修行が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 




【補足】

 今回は完全につなぎの一話でした。東方キャラがなかなか登場しない本作ですが、無事に2人目の綿月依姫が登場しました。次回からはもっと会話シーンも多くなると思いますので、お楽しみに。

 文章が単調になってしまうのが最近の悩みです。戦闘シーンがあれば盛り上がるのですが…、会話シーンでもなんとか盛り上がるようにしたいなぁ。

 タグに「アンチ・ヘイト」を入れたほうが良いのでしょうか?これからのストーリー展開上、原作キャラが精神的に酷い目に遭ってしまうかもしれません。
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