アメリカのスペースシャトル"チャレンジャー号"。同機は7名の宇宙飛行士たちを乗せて1986年1月28日に打ち上げられた。そして、そのわずか73秒後に爆発して、空中でバラバラとなった。
乗組員7名全員が死亡し、アメリカ宇宙開発に残る大惨事となったこの事故だが、原因は何だったのだろうか。
それは、ひとえにNASA幹部らの怠慢だと言えよう。機体の欠陥を黙認し、技術者たちの警告を無視した。
そしてこの17年後、また悲劇が起こることになる…。
私たちはこれらの事故を、亡くなった宇宙飛行士たちを忘れてはいけない。
主「マスター!ダンゴ、3本もらえる?」
太陽が南中を通り過ぎ、緩やかな時が流れる昼下がり。人通りもまちまちな商店街の一角に炭の焼ける音が響く。その元である“マスター”と呼ばれる店主が営むダンゴ屋に、ハクは訪れていた。
マスター「おう、まいど!…ハク、お前さんもすっかりこの街に馴染んできたじゃねえか」
目線は両手でくるくると回すダンゴから外さずに、でも意識はしっかりとハクの方を向いている。職人だな、そう感心するハクは柔和な笑みを浮かべながら答えた。
主「はい、おかげ様で。何とか頑張ってます」
マス「いやあー、たっちゃんとこで修行してるって聞いた時は驚いたぜ…。あそこの道場はキツイだろお?」
主「ええ…でも自分のためですから。」
マス「くうーーーっ!えらいこというじゃねえか!ま、応援してるからよ………ほい、3本な」
主「ありがとうございます、…これお代です」
マス「おう!また来いよ!」
マスターからダンゴを受け取ったハクは、店の前の長椅子に腰かけながらダンゴを食べ始めた。思えば、妖怪のオレがこうやって人間に紛れてダンゴを食っているこの状況。あり得ないよな、本当…。数奇な運命ともいうべきか、何というか。
?「あら、ハクじゃない」
主「ん、…輝夜?」
声をかけてきたのは桃色の着物に綺麗なストレートがかかった黒髪の少女、永琳の教え子である蓬莱山輝夜であった。彼女はマスターに景気よく注文をし、自分はハクの隣へと腰かけた。
主「おまっ…、なんでここにいんだよ」
輝夜「あら、いちゃいけないのかしら?私ここのダンゴ好きなのよね」
主「そういう意味じゃねーよ。…お前一応はお嬢様なんだから、こういうのは召使いとかに買ってきてもらったらいいじゃん」
輝夜「お生憎様、そういうのは嫌いなの。……で、どうかしら?修行うまくいってる?」
主「んー…自分で言うのもなんだけど、順調だよ。この昼休憩が終わったら師匠と一騎打ちでさ………て、なんで修行の事知ってんの」
輝夜「えーりん」
主「しってた」
2人で笑い合うと丁度ダンゴが運ばれてきた。輝夜はお淑やかにはにかんで受け取ると、もぐもぐ食べ始めた。
輝夜「これよ、これ。この味が凝り固まった貴族お抱えの料理人には出せないのよね…ほんと」
休憩時間の終わりが近づいてきたハクは、立ち上がると残っていたダンゴを口の中に放り込んだ。それを急いで咀嚼し、輝夜に手を挙げて別れの挨拶をすると道場の方へ走って行った。
輝夜「…忙しないわね。まあ、明後日だものね…頑張りなさい、ハク」
~道場~
健人「やあッ!…はは、いいよいいよ!!」
主「くっ…、うらああッ!!」
ここの道場主である鹿島健人は高揚していた。
本当に、この子は、なんて子だ!僕が何十年もかけた剣術の数々をみるみるうちに吸収して、この僕に
健人「“
主「!」
健人は竹刀の柄を顔のすぐ横に近づけて切っ先は天井に向けた。道場の中に一瞬の静寂が訪れる。そしてそれを遮ったのは、振り下ろされた竹刀の
健人「!」
主「づッ!あぶねーーっ!!」
健人の竹刀は空を切った。
主「だりゃあッ!!!」
隙を突いたハクは横に薙ぎ、避けきれないと悟った健人はそれを竹刀で受け止めた。ハクは初めて健人に自分の攻撃を受け止めさせたのである。
依姫「うわああっ!!」
その時、傍で2人の打ち合いを見ていた依姫が大声を上げた。
主「うお!?て、どうしたんだよ依姫。んな大声出して…」
健人「………うん、打ち合いはここで一旦終了。ちょっと待っててねハク君」
主「え?あ、はい」
健人はそう言うと道場の奥へと引っ込んでいった。何してんだろとハクが思案していると、わなわなと肩を震わせた依姫がハクに近寄って来た。
依姫「す、」
主「“す”?」
依姫「すっっっごいですよハクさん!!!」
依姫が目をキラキラさせて前のめりにそう言う。一体何がすごいんだ?よくわからん。
依姫「すごいすごい!鹿島様に“一之太刀”を使わせるなんて、しかもそれをよけてしまうだなんてっ!私だってまだ使ってもらったことないのに…」
主「い、いやあ…あれはたまたまというか、偶然避けられただけで」
健人「戦場にたまたまも偶然もないよ、ハク君」
奥から健人が現れる。手には何やら脇差を持っていた。
依姫「あ!鹿島様、それって…」
健人「うん。おめでとうハク君、“鹿島の剣”無事に習得できたね」
主「へ?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。一瞬頭がフリーズするハクは、徐々にその機能を取り戻していった。
主「え、強そうな必殺技は?カッコいい奥義とかは?え、」
健人「……ハク君、一体どんなものを想像してたんだい…」
いやだってあんだけ勿体ぶられたらそりゃ期待もするでしょうよ!…ん?待てよ、まさか師匠の持っている刀がなんかすごい刀だったり。あり得る、あり得るぞ!
主「師匠!そのt「違うよ」 あっ違う…」
健人「ははは、ハク君も何だかんだ言ってまだ子供なんだね。ごほんっ。“鹿島の剣”とは…、もう君の中にあるものさ。」
主「?」
健人「君が今日まで僕に教えられてきた諸々のこと…、それを全て活かして僕の“一之太刀”を避ける、これが鹿島の剣の習得方法さ。」
健人「最強の技などなく、ましてや古今無双の奥義なんてものはない。だけど、“負けない剣”をつくることはできる。僕が教えたことを全て活かせば、どんな状況でも勝てはしないかもしれないけど、決して負けることはない。それが鹿島の剣の教えだよ」
主「………」
健人「で、これはその証。受け取ってくれるかな」
一変して真剣な面持ちとなったハクは差し出された脇差を一目し、片膝をついた。
主「有難く」
健人「うん」
依姫(いいなあ…。私も、もっとがんばらないと!)
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次の日。月の都は大忙しだった。
「おーい!そっち、終わったかー!」
「はい!」
「よーし!」
月への遷都前日であるためにロケットの開発者たちは各種点検に追われていた。
「八意様!第1、第2スラスターともに異常はありません。」
永琳「そう、ご苦労様。…ねえ!誰かデッキの操縦パネル動かせる人いる?動作確認がしたいのだけど」
「じ、自分っ行ってきます!」
若手の作業員が駆け足でロケットの乗り込み口に駆けていく。その様子を見ながら永琳は今日までの事を振り返っていた。
永琳(全4機のロケットは…大丈夫、明日に間に合う。問題は、九頭龍晴景たちか…。今日までに彼らに目立った動きがあったとは聞いていないし情報も漏れてないはず、おそらく大丈夫でしょう。)
永琳(…それにしても明日でお別れか。暫く会えなくなるわね、ハク。)
『八意様、デッキに到着いたしました。指示をお願いします!』
永琳「…ええ、分かったわ」
永琳(大丈夫よね………きっと)
~???~
「ほほほ…。準備は整っておるかえ?」
仄暗い洞窟の中にどこか気品の溢れた男性の声が響く。松明に照らされた彼の姿は貴族のようであったが、その下半身は大きな蛇であった。妖怪である。
木花「万事、順調だ。…
傍らに侍っていた木花咲耶姫はそう答える。それに強く頷くと彼は立ち上がった。
「…時は満ちた。では、行こうとするかの」
じめじめとした薄暗い洞窟を外へ出るために進む2人。やがて辺りの光量が多くなり、それにつれて地鳴りのように響く声が聞こえてくる。クレッシェンドしていくその大勢の声は、彼らが洞窟を出るのと同時に最高潮に達した。
「「「「 オッ!!オッ!!オッ!!オッ!! 」」」」
…見渡す限りの妖怪妖怪妖怪。その数、優に万を超えていた。
「皆の衆ーーーーッッッ!!!!」
彼が一言叫ぶと、辺りは一転虫の声も聞こえるような静寂に陥った。
「賽は…投げられた。我ら“
上げた右腕を前に振り下ろす。
「全軍ッ!前進!!!」
ザザッと妖怪たちが方向を変える。皆その眼は血走って静かな息遣いが聞こえる。
「目指すは血の境界線のその先、月の都である!」
月の都に戦火が迫っていた…。
【補足】
一之太刀(いちのたち):鹿島健人が使う、刀の柄を自身の顔の横に近づけて、切っ先を上に向ける構えのこと。ちなみにこれはあくまでも"構え"であり、ここから様々な技を繰り出すことが出る。本編でハクに対して繰り出したのはこの構えからのただの斬り下ろし。元ネタは戦国の剣豪 塚原卜伝(つかはらぼくでん)の"一之太刀(ひとつのたち)"。
鹿島の剣:"負けない剣"としてその名が通る。38の体捌きと56の手の内によって構成されている。これらを全て活かせれば、どのような状況でも打開できるとされる。
スラスター:ロケットの推進装置。
大蛇族:三大妖怪の一つに数えられる上半身が人、下半身が蛇の妖怪。人妖大戦を引き起こした首謀者の種族。