東方白狼伝説   作:青森の桜前線

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↓布陣図を描いてみました(下手なのはご了承ください)。

【挿絵表示】


【人間軍1万(青)VS 妖怪軍10万(赤)】
鹿…鹿島健人隊
○ハ…狗剱ハク
九…九頭龍晴景隊
木…木花咲耶姫隊
大…大蛇族隊
鬼(上)…鬼門寺信虎隊
鬼(下)…鬼門寺虎千代隊
雑…寄せ集め

※妖怪軍の人数は、1ブロックにつき1万5千程(15000×7=105000)
 大まかなイメージ程度にどうぞ





第十九話 第二次人妖大戦

健人「…来たね」

 

 月軍後続部隊が到着し、正門前には約9千500の兵士が揃っていた。彼らは道幅いっぱいに横陣を敷き、その中央の戦列をほかのところより厚くした。最前列には銃剣隊を並べてその後ろと両翼の端には大きな盾と槍を持った重装歩兵を配置。その内側には攻撃特化の抜刀隊を備えさせ、後方では高台に登った射撃部隊がスコープを覗く。そして後方中央には司令部が置かれ副兵士長である塚原左之丞が全体の指揮を執る。一方、兵士長 鹿島健人は前方の銃剣隊の局地的な指揮を執りつつ、最前列から2列後方で遠くから迫ってくる妖怪軍を見ていた。その傍らには狗剱ハクが侍っている。

 

主「思ったんだが、師匠。アンタ一応この軍の大将なんだろ、こんな前線にいて大丈夫なのか?」

 

健人「ああ…、問題ないよ。僕はね…と、どうやらそう話してる時間もなさそうだ。…銃剣隊!構え!!」

 

 健人の指示に素早く反応し銃剣隊が射撃準備に入る。妖怪軍とは約200mの開きがある。

150m…手が震える。

100m…額に汗が伝う。

50m…互いの息が嫌にはっきりと聞こえる。

40m…息を吞む。

30m…

 

健人「撃てッッ!!!!」

 

 爆音とともに銃口から光の弾が一斉に発射される。

 

健人「前に出ろおお!!重装歩兵ッ!!!」

 

 それと同時に堅牢な鎧に身を包んだ重装歩兵が盾を前にして前線へ躍り出す。刹那___

 

「「「「ああああああああああッッッ!!!!」」」」

 

 この世の悪鬼羅刹を詰め込んだかのようなアポカリプティックサウンドが天空に木霊す。

妖怪軍約10万、人間軍約1万の、“第二次人妖大戦”がここに始まったのである。

 

 

 

健人「耐えろ!重装歩兵ぇ!銃剣隊は隙間から敵を狙い打て!!」

 

 妖怪軍の圧力に、何とか戦列は維持できているもののそれは徐々に押され始めていた。その時、後ろから太刀を担いだ兵士たちが駆けてくる、抜刀隊だ。

 

「兵士長!塚原副長のご命令で抜刀隊500!上がって参りました!」

 

 この隊の隊長と思わしき人物が健人に声を掛ける。健人はそれを聞き静かに口角を上げると、遠く後方の司令部を見やる。

 

健人「…そういう事だね、分かったよ塚原。そんじゃあ!反撃といこうかッ!!」

 

 そう叫ぶと健人は右手を挙げて手のひらを、表裏表裏とクルクル回し始めた。周囲から風が逆巻き彼の右腕に収縮される。

 

健人「少し下がってな、ハク君」

 

主「は、はい…」

 

 ハクが少し下がったのを確認した健人は垂直に跳び上がり、その風を纏った右腕を敵軍に向けて真横に薙ぎ払った。

 

健人「“大山風(おおやまじ)”」

 

 絹を裂くような甲高い音を発しながら、旋風が敵陣を切り裂き乱す。突然の出来事に妖怪たちは混乱して一瞬攻撃の手が緩む、その隙を、健人は見逃さなかった。

 

健人「敵陣が乱れたぞ!抜刀隊並びに銃剣隊は敵に突撃し、大いにかき乱せ!!」

 

 その合図とともに命令された兵士たちは敵を切り崩しにかかる。そして呆気にとられた妖怪たちの身体を斬り裂いていった。

 

 

「「おおおおおッ!!!」」

 

健人「…よし、僕たちも出るよ!ついてきて、ハク君!」

 

主「…! はいッ!!」

 

 ハクは健人とともに敵陣に跳び込む。辺りでは壮絶な戦闘が行なわれていた。

 

健人「はあッ!!」

 

 健人はその中を、針を通すように抜刀した刀で切り結んでいく。途中、彼が討ち漏らした敵がその後方を進むハクに襲い掛かることもあったが…

 

主「結界操術“紡氣練戦装(ぼうきれんせんそう)”!」

 

 健人から貰った脇差を結界操術で硬化させてそれを対処していった。

 

主「師匠!さっきのは師匠の能力なのか!…おりゃあッ!」

 

健人「せいッ!…ああ、そうだよ。“地震雷火事親父を引き起こす程度の能力”、まったく僕には過ぎた能力だ!」

 

主「…親父?」

 

健人「台風のことだよ。さあ!もっと前にいこうかあッ!!」

 

 

 そのまま前線を押し返していった人間軍であったが、ある地点でその進撃が止まる。

 

「何だコイツらは!」

「恐ろしく強いぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

~人間軍 司令部~

 

「塚原副長!前線部隊の進軍が止まりました!」

 

 その様子は後方の司令部からも見えていた。双眼鏡を持った兵士が塚原に報告する。

 

「鹿島兵長の能力による混乱と、抜刀・銃剣両隊の突撃により何とか前線を押し上げていった我が軍ですが…、止まりました。」

 

塚原「原因は分かるか?」

 

「はい、………っ」

 

塚原「どうした」

 

「…鬼です。鬼数百が我が軍と交戦中、その影響で停止したものと思われます…。」

 

 鬼。その言葉が兵士から漏れた瞬間、陣内にはどよめきが起こった。

 

「ま、まさかっ!何かの間違いではないのか!?」

 

「いえ…この目で確認する限り、情報に間違いはありません。」

 

「しかし!我らと鬼族は先の大戦を共に戦った盟友のはず!誇り高き彼らまでが我らに牙を剥くなどっ」

 

塚原「軍曹」

 

 その情報が信じられない一人の軍人が兵士に詰め寄る。それを見かねた塚原は言葉でその軍人を制止すると、彼はビクっと背筋を伸ばして塚原の方を見た。

 

塚原「戦場で重要なのは、過去に固執する御託よりも一つの事実である。違うか?」

 

 

「…すいません。出過ぎた真似でした」

 

塚原「フム…。では、他に何か分かるか?」

 

「ハッ、…前線部隊の後方に残った敵は粗方重装歩兵が殲滅し終えたようです。戦闘開始時の前線の位置まで押し戻せました。」

 

塚原「よし!では、重装歩兵を前線で戦っている兵士長の所まで押し上げ、前線の兵士たちを下がらせる。いいか!この戦の意義は勝つことに非ず、時間を稼ぐことに有る!民が退避するまでの辛抱だ。各々、それを忘れるでないぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 …場所は戻り、前線で戦うハクの所。

 

主「くそっ!」

 

 ハクは嘆いていた。

彼が戦っている相手は、鬼。つい先日まで共に祭りをしていた者たちである。ハクは永琳から施して貰った()()()()によって、その容姿、妖力までもが人間のそれと同じになっていた。そのため、彼らは目の前にいるのがハクだと気づかずにこうして襲ってきており、ハク自身の制止の声も聞かずにその強靭な拳を振り下ろしてくる。

 

主「何で鬼族がッ!九頭龍晴景に味方してんだよォッ!!」

 

 目の前で起こる状況に、ハクは混乱しながらも心の内では()()()()()()()()()()()()()と思っていた。

あれだけ蜜月な関係を築いていた白狼一族を殺した九頭龍晴景に与した、それだけの理由が!じゃないと説明がつかねぇーだろ、この状況!!

 

?『貴方たち、退きなさい!ここは私が出ます!』

 

 ___血と反吐が混ざり合うこの戦場おいて、そこだけ華が咲いていた。純白の華、深紅の華、流麗豪壮なる様にて。

 

主「…へへっ、ちっとは話しできそうなやつがでてきたじゃねーか」

 

 ハクはその華に向かって駆けて行った。

 

 

 

?「去ねッ!!」

 

 私、鬼門寺虎千代は焦っていた。前線に配備されると言われていたので、危険な目には遭うだろうと覚悟はしていたのだが、まさか敵の主力部隊が私たちの方へ向かって来るなんて思ってもみなかった。ましてや、最強妖怪の呼び声高い鬼族が相手の兵士たちとほぼ互角などと、誰が考えたことだろう。目の前で斬り伏せられる仲間たちを見て居ても立っても居られなくなった私は、他の鬼たちの制止も聞かずに最前線で戦っていた。

雑魚が雑魚が雑魚が雑魚がァ!貴様らに恨みはないが、私の仲間には指一本たりとも触れさせてなるものか!

 

虎千代「この私をッ殺せるものがおるかァッ!!」

 

?「ここにいるぞ」

 

 声がした方を向くと、そこには白髪の少年が立っていた。

 

虎千「…聞き間違いか、人の子よ。」

 

?「んにゃ、伝わった通りだが」

 

虎千「…ッ、なら!己が身体でッ試してみるがいいッ!!」

 

 虎千代はぐぐっと膝に力を入れて、爆音とともに大地を蹴り上げる。左手を前に構え、右手を握り拳にして脇に引く。

 

虎千(捉えたッ!)

 

 そう思った瞬間___、虎千代の身体を()()()()()が襲う。重心が左に傾くのを感じ何とか体勢を立て直そうとするが時すでに遅く、彼女の拳は少年の芯を捉えることができずに、彼が持っていた脇差の柄によっていなされた。慣性によってそのまま少年の横を通り過ぎた虎千代は、彼と背中を合わせになる。彼女の唇は小さく震えていた。

 

 

 

 

虎千「………ハク…ですか…?」

 

主「おせーよ、気付くの」

 

 その言葉が終わる前に、虎千代は後ろを向くハクの背中に抱きついていた。

 

 

 




【補足】

銃剣隊:月の都の最も一般的な兵科。光子弾を撃ち出すことができる長身の銃に、その先端には剣が付いている。近・中距離にわたって戦うことができる。

重装歩兵:月の都の兵科の一つ。兵科の中で最も防御力に優れており、槍による攻撃も可能。

抜刀隊:月の都の兵科の一つ。兵科の中で最も攻撃力に優れており、軽装の鎧に太刀を携える。軍の中でも一定の基準を満たした者だけがなれる精鋭部隊。

射撃部隊:月の都の兵科一つ。高台に登り、スコープ付きの銃で主に遠距離の敵を狙う。隊長クラスの狙撃や味方が退却する際の援護射撃など、様々なことができる。

アポカリプティックサウンド:2011年ごろから世界で発生するようになった謎の奇音現象。ヨハネの黙示録における世界終焉を告げるラッパの音になぞらえて名付けられた。

“地震雷火事親父を引き起こす程度の能力”:そのままの意味で、地震・雷・火事・大山風(台風)を引き起こせる。
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