バカと仲間とFクラス   作:八舞 六花

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今回はエクシリオン様のキャラクターを3人登場させました。まだ登場させられていないキャラクターもいるので、頑張っていきたいと思います。

6話はAクラスと戦う直前までの物語です。


6話:見栄と再会と忘却と

「選択制? どういうことだ吉井」

 

「今回はBクラスの生徒に結構いい感じで戦えてたとは僕も思ってるよ。でも、Aクラスはきっとそうはいかない。Aクラスには、代表を守る通称八武衆と言われている8人の成績上位者が存在しているんだ。その8人が同時に攻めてきた場合、僕達の勝利確率は0だ」

 

クラスは静まり返った。そう、今までが上手く行きすぎていたのだ。明久の策略通りに敵が動いていたり、操作に不馴れなために善戦できていたり、と今まで勝ててきた要因は運と相手の実力不足であった。

 

しかし、今回のAクラス戦ではそんなことは起きないであろう。圧倒的点数差で操作技術など関係なく押し潰してくるであろう。そして相手はAクラス。明久の策略が通じるかもわからない。そうなってくると正面からぶつかり合うのは愚の骨頂である、というのが明久の考えであった。

 

これを聞いて反論をする人はおらず、明久は話を進める。

 

「そこで、今回は一番勝利できる可能性が高いであろう作戦を練った。それがこの選択制。簡単に言えば一騎討ちだね。多分相手は一騎討ちに代表と八武衆を当ててくるだろうから、僕達も合計8人の選抜メンバーを決めて、ぶつかりたいと思う。ちなみに今考えているメンバーはこんな感じだよ」

 

代表:坂本 雄二

1:吉井 明久

2:姫路 瑞希

3:土屋 康太

4:木下 秀吉

5:島田 美波

6:佐久間 莉苑

7:天願 朝陽

 

黒板に8人の名前が書かれた。皆優秀な成績を修めた科目を有していて、あのAクラスにもひけをとらない程の高水準なメンバーに仕上がっている。

 

「だが、後1人どうしても決まらないんだ。誰でも良い、立候補者はいないかな?」

 

クラスは相変わらず静かなままだ。確かにこのメンバーの中に入ってAクラスに挑むなんてしたくないという人が殆どであろう。そんな中、1人立候補者が立ち上がった。

 

「あー、誰もやらないんだったらあたしやるよー……」

 

先程から卓袱台に伏していた零奈だった。

 

「えっと、園崎さんは何か得意な科目とかあるの?」

 

「んー、ない。ちなみに、苦手科目もない」

 

「今回の戦いは熾烈なものになると思うけど、大丈夫?」

 

「あー、大丈夫大丈夫。だけど、前回のテストやる気なかったから全部100点前後なんだよね。だからテストを受けてからでもいいんだったら全然構わないよー」

 

「わかった。宣戦布告まではまだ時間があるから、ゆっくりとは言わないけど、焦らずに受けてきてね」

 

Bクラスとの戦争で負傷が多かったため、宣戦布告は明日ではなく来週の月曜日に仕掛けるということになっていた。Dクラス、Bクラスと善戦し続けているが、やはり召喚獣を扱うというのは精神力を使うため、皆は満身創痍になっていた。それは当然先程あげた優秀者達も例外ではなかった。

 

「じゃあ、僕はまだ余裕があるから、補充テスト受けてきちゃうから、皆は先に帰っちゃっていいよ」

 

その明久の言葉を聞いて、Fクラスの男子の大半はその場からいなくなっていった。

 

「のう、明久よ。お主、無理しておらんか?」

 

「そうよ、アキ。最近少し頑張りすぎじゃない? たまにはゆっくり過ごすのも悪くはないんじゃないかしら?」

 

秀吉と美波は明久を心配しているようだ。確かにここ数日、明久は戦争の策を練るために、自分の睡眠時間を大幅に削っていた。

 

睡眠時間だけではない。習慣化していた朝のランニングも、趣味の料理やゲームなどにも全く手を付けずに策を練り続けていたのだ。

 

しかし、明久はニコッと笑って大丈夫だよ、と返し、教室から去っていった。

 

2人は明久の後ろ姿をただジッと眺めていた。

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……。皆を不安にさせない為に嘘ついちゃったけど、辛いなやっぱり……。戦争中も何度倒れそうになったか……。でも、皆の前で言っちゃったし、テス、トを……」

 

明久は、その場で倒れてしまった。意識がだんだんと薄れていく中、とある女子の声を耳にした。

 

「ちょ、ちょっとキミ、大丈夫ッ?! 優子、男の子が倒れちゃってるから、一緒に保健室まで運ぼう?!」

 

「……ゆ、うこ?」

 

聞き覚えのある名前に、明久は顔をゆっくりとあげる。しかし、明久の視界に入ったのは、聞き覚えのある名前の人物ではなかった。いや、それ以前に人でもなかった。

 

「……お、おお。純白、の……」

 

「きゃっ!? ちょっと、ボク今日スパッツ履き忘れてるんだよっ!?」

 

すごく理不尽な理由で怒られながら、明久の意識は、闇に沈んだ。

 

 

 

 

明久は夢を見ていた。それはとても懐かしいものであった。

 

周りは、木々で囲まれていた。そこは図書館の脇にある自然公園であり、勉強で疲れた後に気分転換で散歩などをしていた明久にとっては思い出深い場所であった。そこにあるベンチである女の子を慰めていた。

 

そう、これはあの時の出来事である。

 

明久と、あの日から会うことがなくなった恩人でもあり先生でもあった存在……優子の最後の1日であった。

 

『ありがと、吉井、くん。少しだけど、元気が出たわ』

 

『うん、それならよかった。木下さん、辛いかもしれないけど弟くんのこと、しっかりと守って上げるんだよ?』

 

『うん、もちろんよ』

 

そう言った優子の頭を明久はゆっくりと撫でた。そして、何かを優子に囁いた。その言葉を聞いた優子は嬉しそうに笑いながら、うん、と返答していた。

 

明久は、夢の中で悩んでいた。このときに言った言葉を、どうしても思い出せなかったのだ。片隅にも残っていないような、完全に記憶から飛んでいるその言葉を明久は懸命に思い出そうとしていた。

 

「僕は、木下さんに、何て言ったんだ……? 思い出せない……。木下さん、に何を……。木下さん、木下さん……」

 

 

 

 

 

 

「きの、したさん……」

 

「うわぁ、目覚めて第一声が木下さん、だってよ優子! これは……ってうわっ?! 優子どうしたのさそんなに涙流して……?」

 

明久は視線を横にずらした。そこには、黄緑色の髪の毛の女子生徒と涙を流しながら明久を見つめる女子生徒がいた。

 

「きの、したさん……木下さん!?」

 

「明久くんっ!」

 

眠っていた明久に、優子は飛びかかった。そのままぎゅっと抱きしめ胸に顔を押し付け、ぐりぐりと擦りつけた。その姿はまるで飼い主に甘える猫のようであり、とても微笑ましい光景になっていた。

 

しかし、明久はこの状況に非常に困惑していた。もう片方の女子生徒はあらまぁと呟きながら事の成り行きを興味津々に眺めていた。

 

「き、木下さんどうしたの?!」

 

「明久くん……よかった、また会えた……。明久くん……!」

 

段々と抱きしめる力が強くなっていくのを感じた明久は優子を止めにかかった。しかし、中々力は弱まらず、明久の意識がまた消えかかった時に、もう1人の女子から制止の声がかかり、優子はハッとして明久から離れた。その顔は真っ赤になっていて、今していたことを思い返しているということがすぐにわかってしまう。

 

「ご、ごめんね明久くん。何年も会えなくて淋しかったのが、今爆発しちゃってたわ……」

 

「いや、いいんだけどさ、僕も会えて嬉しいしね。久しぶりだね、木下さん」

 

そう言うと、何故か優子は不機嫌そうに頬を膨らませた。何やら明久は言ってはいけないことを言ってしまったようである。あわあわしながら何がいけなかったのかを考えてみたが何も思い付かなかった。

 

「……もしかして、忘れちゃったの……?」

 

「……ごめん、この数年色々あったから記憶から飛んじゃっててさ……あははは」

 

笑って誤魔化そうとしたが、優子は悲しそうな目で明久を見つめていた。

 

「……まあ、覚えてないよね。あんな約束……」

 

「……? どうしたの木下さん?」

 

「いや、何でもないわ。今は思い出せなくてもいつか思い出させてあげるから安心してね、明久くん?」

 

何故か明久の部分だけを強調して言ってきた優子だが、明久は特に気にせず、別の話題に入る。

 

「えっと、2人はどこのクラス?」

 

「ボクはAクラスだよ! あ、優子もだよ!」

 

「そういう明久くんは? あんなに勉強したのにAクラスにいなかったから別の学校に行ったのかと思っていたのよ?」

 

「僕は、Fクラスだよ、木下さん」

 

優子は驚愕した。そして、小さく揺れだした。足で床をダンッと鳴らし、明久に近づいた。その目は怒りを宿していた。

 

「なんでよ!? あんなに一緒に勉強したのに……! 私との日々はそんな程度だったのね……!もう、知らないっ!」

 

「あ、優子ー! 待ってよぉ!」

 

そう叫びながら出ていった優子とそれを追ったもう1人の女子生徒を明久はボーッと目で追った。

 

怒られた理由、それは明久にでもすぐに理解できた。優子は大きな勘違いをしてしまっている。どうやら観察処分者という制度を知らないようである。

 

「と、とりあえず時間があるときに説明しないと……」

 

明久はゆっくりとベッドから降り、夕焼けと闇が混じりあった空の下、帰路についた。

 

 

 

 

 

 

ガチャッと勢いよく家の扉を開けた優子は自室に駆け込んだ。部屋に入ると、優子は再び涙を流した。

 

机の上に飾ってある1枚の写真を胸に抱き寄せ、自身を落ち着かせようとする。その写真は、明久と勉強をしているときに撮った唯一のツーショット写真であり、写真の中の明久は、満面の笑みを浮かべていた。

 

「……明久、くん……。久しぶりに会えたのに、こんなの悲しいよ……」

 

自分の想像していた事と真逆の人間になっていたことに、優子は深い悲しみを覚えていた。

 

そんな時、優子の部屋の扉をノックする音が聞こえた。この時間帯で家にいるのは弟の秀吉しかいないため、優子は部屋に招き入れた。

 

「……姉上、どうしたのじゃ? 泣いているなんて姉上らしくないではないか」

 

「……あなた、Fクラスだったわよね? 明……吉井くんって、どんな人だか教えてほしいわ」

 

「えっ、明久のことか? そうじゃのぅ、今日思ったことはバカということじゃな。いやーまさかあやつがあそこまでバカだったとは思わんかったわい」

 

その言葉を聞いて、優子の中にあった想像が確信に変わった。変わってしまったのだ、と優子は心を痛めた。

 

「まさかあやつが……」

 

秀吉が言葉を続けようとしたので、優子はそれを遮った。聞きたくなかったのだ。自分がこの数年間思い続けていた相手の現実を。

 

そのまま秀吉を部屋から追い出し、優子はベッドに倒れこんだ。そして、全てを忘れようと意識を闇に手放した。

 

 

 

 

 

週が変わり、月曜日、明久はAクラスに宣戦布告をしに行く役目を自らが受け持ち、Aクラスの教室に向かった。

 

Aクラスの目の前まで来ると、再びその大きさに驚いてしまう明久。教室をジッと見つめていると自分達のクラスとの待遇の差を感じ、少し悔しくなった。

 

そして、教室の扉を開けた。

 

「失礼します。Aクラス代表はいらっしゃいますか?」

 

突然の他クラス生徒の入室に、Aクラスの全員が明久を見ていた。そんな中、1人の女子生徒が手をあげた。

 

「……代表は、私。何か用、吉井?」

 

「あ、首席って霧島さんだったんだね」

 

Aクラス代表且つ学年首席の霧島翔子は静かに明久に近づいてきた。まるで日本人形かのように整った顔立ちと艶やかな黒髪をもった文月学園の中でもトップクラスの美人である。

 

そんな霧島は明久と1年の時に同じクラスであり、よく話をしたりしていた。霧島は普段他人と話すことは殆ど無かったが、何故か明久とだけはよく話していた。当時の霧島の話によると、話題の提示とか、お喋りが上手で楽しかったからということであり、特に恋愛的な意味はなかったようである。

 

「……吉井はどうしてここに?」

 

霧島は明久がここに来た理由を尋ねた。

 

「実は、僕達Fクラスと試験召喚戦争をしてほしいんだ」

 

「……やっぱり。予想通り」

 

今までの勢いや上位クラスを狙ってくるFクラスを見て、Aクラスにも攻めてくるであろうと予測していたようである。

 

「それで、普通の戦争じゃなくて、一騎討ちを希望したいんだけど、いいかな?」

 

Aクラス内がざわめき始めた。最下層であるFクラスの生徒がAクラス生徒に1対1で戦いを挑みたいと言い出したのだ。そして、明久は答えを聞かずに話を進めていく。

 

「9対9の選択制で勝負したいんだ。お互いがお互いの戦いたい相手を選択して、勝った方は残り、負けた方は抜ける……そして最後に残った人がいるクラスの勝ちっていう考えなんだけど、どうかな?」

 

「……しかし、その戦い方を選ぶということは、そちらに単体の戦闘に特化した人物が多くいるということだと思うの。それだと、私達にメリットがない」

 

霧島の正論に明久は答えあぐねる。確かにその通りなのだ。これはFクラスが勝つための作戦であり、Aクラスにとっては危険な作戦である。それを簡単に承認する訳はなく、明久は頭を捻る。

 

「なら、勝った方が負けた人に1つ何でも命令できるっていうのはどう?」

 

「……! そちらのクラスの代表って、確か雄二?」

 

「そうだけど、それがどうしたの、霧島さん?」

 

「受けるわ、その内容で。でもあり相手が吉井だとしても容赦はしない」

 

「ふふ、当然だよ。それじゃ、開戦は今日の放課後にAクラスで」

 

そう言って明久は教室から出ていった。

 

そして、優子が霧島に近づき、明久について聞いた。そこで、出た言葉は最初に自分が望んでいた言葉であり、観察処分者という称号を得てしまったが故にFクラス入りをしているということも聞き、優子はその場に崩れ落ちた。

 

「ちょ、優子! どうしたのさ!」

 

「愛子……明久くんに、嫌われちゃったよ……」

 

「あのねぇ優子……深く考えすぎじゃない? もしそんなにあれだったら謝ってくればいいじゃん。ボクは彼のことそんなに知らないけどさ、そんな簡単に人を嫌いになるような人じゃないと、ボクは思うけどね?」

 

その言葉を聞いて立ち上がった優子は明久の後を追いかけていった。その後ろ姿を微笑みながら眺めていた工藤にある男女が声をかけた。

 

「ふっ、工藤よ。お前は相変わらずお人好しだな」

 

「本当だよね、でも愛子のその優しさ、私は大好きだよー」

 

声をかけた男子は、天羽来覇……Aクラスの八武衆の一角を担っている男であり、振り分け試験の結果は霧島には及ばなかったが、学年次席というかなりな好成績を修めた優等生であり、本人もこれは努力の賜物だと自信を持って言っている。

 

そして女子は、多嘉良命……同じくAクラスの八武衆の一角を担っている人物であり、天真爛漫という言葉がとても似合う明るい少女。見た目はかなりほっそりとしているが、すごく着痩せするタイプであり、胸はかなり大きめである。

 

「あぁ、来覇くんに命ちゃん。お人好しっていうか、優子は放っておけないんだよねぇ。なんかこう、守ってあげたくなるような……わかるかな?」

 

「わかるわかる、優子ちゃんは守ってあげたくなるよね!」

 

「確かに、木下はどこか儚げな感じがあるからな。……さて、代表さん、あの男がよく俺に話してくれていた吉井という男か」

 

天羽は霧島に近づき、先程の男が噂の明久であるかの確認をとる。

 

「……そう」

 

「確かに、話をしっかりと進めてくるし、話が上手いというのは感じたが、思っていたよりも貧相な体つきだったな。そこは少し期待はずれだったな」

 

その言葉を聞いた霧島は、普段からは考えられない程の大きな声で、その言葉に異を唱えた。そう彼女は知っているのだ、振り分け試験の本当の結果を。自分が本当はこの座にいるはずではないということを。

 

「ならばあの男、この俺がぶちのめしてやるさ。俺は男子の最高得点者、誰にも負けはしないさ」

 

高笑いをして天羽は自分の席に戻っていった。これだけ見ると印象は最悪なのだが、彼はこのAクラスの中で嫌っているものがいないという程の人気者であった。

 

天羽は自信家で他人を見下すような発言が目立つ人物だが、リーダーシップ、キャプテン気質な性格であり、皆を引っ張っていくことができる人物であり、例え自分より劣っていたとしても仲間であれば見捨てるようなことはせず、敵でも実力を兼ね備えていれば、下位のクラスでも敬意を表す真面目で熱血漢な男である。

 

その性格があってか、クラスでの彼の人気は非常に高く、皆から信頼されている。

 

実は朝陽とも親友と呼べる間柄であり、彼からも明久という人物は面白い、という話をきいていた。

 

「(吉井明久……霧島や朝陽にここまで推されているその実力……この俺が試してやろう)」

 

天羽はそう言いながら、先程明久が入ってきた教室の入り口をジッと眺めていた。

 

 

 

 

 

 

「はぁっ、はぁっ……明久くんっ!」

 

「あ、あれ木下さん、どうしたの?」

 

Fクラスの教室が見え始めていた時に、優子は明久に追い付いた。先週の一件もあり、明久は一瞬ビクッとするも、すぐに優子と向き合った。

 

優子は明久に対して、頭を下げた。

 

「ごめん、明久くん! 最近のあなたのこと、私全然知らなくて……ちゃんと理由があったのに、ごめん!」

 

そんな優子に明久はゆっくりと歩みより、肩を抱いた。あの日、あの時のように。その瞬間、明久は思い出せなかったあの言葉が一言一句、正確に頭の中に浮かんだ。

 

『「次に会う時は、お互い名前で呼び会おう」』

 

優子は小さくえっ……と、呟いた。ゆっくりと頭をあげ、明久の目を見た。

 

『「その時は先生と教え子じゃなくて、友達として 」』

 

優子の目から、また涙が流れ出した。そして、お互いにゆっくりと離れ、見つめあった。

 

『「こうやって手を伸ばして、握りあうんだ」』

 

明久の伸ばした手を、優子は静かに掴んだ。

 

「遅くなったけど、やっと会えたね、優子」

 

「明久、くん!」

 

保健室のベッドでの抱きつきと同じくらいの力で、優子は明久を抱きしめた。明久は照れながらもその抱きつきを受け止めた。

 

「……! 異端者だ、須川!」

 

「まあ、待て。今日はそんな気分じゃねぇから、行こうぜ」

 

「え、お、おう」

 

須川は何かを感じ取ったのか、その2人には触れずに、教室へと戻っていった。

 

 

 

 

その後、2人は数分間抱きあっていたが、今日の戦争の準備があるため、一旦別れることになった。詳しい話なども出来ていなかったため、今度改めて時間をとるという約束をして、2人はお互いの教室に帰っていった。

 

その2人の事をある人物が目撃していた。

 

「木下さん……吉井くんとあんなに仲が良いなんて……羨ましいわ」

 

Cクラス代表の小山だった。廊下の角から眺めていた小山は、優子に大きな嫉妬をしていた。

 

結局Bクラス戦の後に根本と別れた彼女だが、あの時見た明久の強さに心惹かれてしまったようで、軽くストーカーと化していた。そんな彼女に1人の女子生徒が声をかける。

 

「代表、何してるんですか」

 

「ひゃっ!? なんだ多嘉良さんか、驚かさないでよ」

 

多嘉良未幸。Aクラスの多嘉良命の双子の妹で、容姿は瓜二つで、見分ける方法は頭のアホ毛の方向に胸のサイズである。しかしそれもそこまで大差があるわけでもなく、2年の大抵の生徒は見分けがついていない。朝陽と不動は中学からの友人であり、不動に関しては、片想いをしている。そのため、不動が片想いをしている小山のことをライバル視している。

 

「驚かすつもりは無かったのですけど……先程の男女に何か興味でも?」

 

「……あの男子、吉井明久くんと言うのだけど、私今彼が気になっているんだけど、どうしようかと思ってね……」

 

この言葉を聞いて、ガッツポーズを内心浮かべていた。これは良いチャンスである、と思い、小山を励ます。

 

「相手に例え好きな人がいても、諦めるのはもったいないですよ。自分が本当に好きなら尚更です」

 

「……そうよね。ありがとう多嘉良さん、少し元気が出たわ!」

 

そう言いながら小山は笑顔で教室まで戻っていった。その後ろ姿を見ながら、未幸はニヤッと悪い笑みを浮かべた。

 

「はぁ、これで私に大きなチャンスが廻ってきたわ……! お姉ちゃん、私絶対に不動くんと付き合って見せるわっ!」

 

そう言いながら、軽くスキップをしながら未幸も教室に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

「さて、皆準備はいいか? 相手はあのAクラス。しかも八武衆に代表だ。勝てる可能性は低い。だが、これで勝つことができれば俺達の生活は一気に華やかになる。全力で行くぞ!」

 

雄二の言葉にクラスの士気が大きく上がった。しかし、この中で実際に戦争を行うのは9人だけなのだが、誰もそれに関しては口にしなかった。

 

「あー、私もテストは無事に終わったから、安心してねー」

 

相変わらずの緩い声で零奈は言う。意外にも自信があるようなので明久は期待を寄せていた。

 

準備は整った。最後の戦いの火蓋を切る時がきたのだ。

 

「さあ、俺達の戦争を始めよう!」

 

 

 

 

 

……to be continued




誰 だ こ れ

書いててキャラ崩壊すさまじいな、と思いました。正直これでENDでも綺麗に終わりそうだな、と感じました。しかしまだまだ終わりません。

明久が、約束を思い出すまでが早すぎる件について。

今回は諸事情でキャラクター紹介を延期します。申し訳ないです。

※誤字脱字、矛盾点、修正点ございましたらご報告下さい。
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