バカと仲間とFクラス   作:八舞 六花

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少し時間が開いてしまいました、申し訳ないです。

今回は鳴神ソラ様のオリジナルキャラクターを1人出したいと思います。

Aクラスとの戦いです。戦闘は毎度のごとく技量がないので短めです。申し訳ないです。


7話:巨と炎とAクラス

放課後のチャイムが鳴り響き、明久達Fクラスは、Aクラスに向けて出発した。

 

他のクラスの生徒も、最高クラス対最低クラスの戦いに興味があるようで、帰宅していない生徒が大勢いた。そんな中で数人の生徒が話しかけにきた。

 

「佐久間様、本日の戦を私しっかりとこの目に焼き付けます。頑張って下さい」

 

すっかり莉苑の事を慕っている相模は、今回の戦いを最後まで観戦するようで、莉苑の横についた。莉苑本人はめんどくさそうにため息をついていた。誰かに慕われたりすることに慣れていないのだろう。

 

「吉井くん、頑張って下さい。僕も応援してます」

 

矢作も明久の戦闘をこの目でみたいそうであり、明久の横についた。

 

その後も、宏美と美子、小山に不動、平賀なども集まり、Fクラスはかなりの賑わいを見せていた。

 

そして、Aクラスの前に到着し、雄二が教室の扉を開ける。扉の向こうには、今回の戦いに参加する9人の生徒が立ち塞がっていた。

 

「……雄二、今回の戦い、私達は負けるわけにはいかない。吉井の提案してくれた勝った方が何でも1つ命令できるという権利を私は得てみせる」

 

「……おい明久、お前何言いやがったんだ?」

 

「え”っ、あーいやぁ、何か説得上手くいかなかったから何か適当にその場で思い浮かんだこと口走っちゃってさ、あははは」

 

「あぁきぃひぃさぁ!何めんどくさいことしてくれてんだよ! お前それでもウチの軍師様かっ!?」

 

明久と雄二の口喧嘩が始まる前に、秀吉とムッツリーニが止めに入る。雄二は深いため息をついて、霧島に向き合った。

 

「わかった、俺の出来ることであれば何でも言うことを聞こう。だが俺たちが勝ったら……わかってるよな?」

 

「……わかってる」

 

2人は握手をして、此度の戦闘での不正禁止を誓った。

 

両者が元に戻ると、Aクラス担任の高橋先生がフィールドを展開する。高橋先生のフィールドは特殊で、両者の合意の下であれば、即座に科目の変更ができる。今回の戦いにはうってつけの教師である。

 

第1回戦の出場者を考えている。対戦相手と科目選択の権利は奇数時にFクラス、偶数時にAクラスとなっているので、1回戦目の出場はどの科目でも戦える明久、朝陽、零奈、瑞希、莉苑を除いた3人が候補となった。

 

「……ならば、最初は俺が行く」

 

ムッツリーニがそう言ってフィールドに入る。ムッツリーニが対戦相手を指名しようとしたが、その前にある生徒がフィールドに入ってきた。

 

「キミが相手なら、当然相手はボクだよね、ムッツリーニくん?」

 

「……フッ、よく分かっているな、工藤愛子。だが、俺とお前には、天と地程の点数差がある。一瞬でけりをつける」

 

科目は当然保健体育であり、お互いの召喚獣がフィールドに現れた。

 

工藤 愛子:376点

 

土屋 康太:625点

 

点数差はムッツリーニが言った通り歴然であった。まず工藤に腕輪が付いていない時点で勝負は決したも同然であった。しかし、ここで工藤が仕掛けてきた。

 

「ムッツリーニくんはぁ……こういうの、興味あるのカナ?」

 

スカートの端をちょんと摘まんで、上に少し持ち上げる。その行動にムッツリーニだけではなく、Fクラス男子の大半が絶叫する。

 

「き、貴様工藤愛子……せ、正々堂々と勝負……ぐふぅ……」

 

「む、ムッツリーニィィィィ!!」

 

ムッツリーニは案の定血の海に沈んでしまった。体がピクピクと痙攣しているため、Fクラス勢の迅速な蘇生が始まった。輸血パックから血液を放出し、ムッツリーニの体内に血を戻す。AEDを用い、ムッツリーニはゆっくりと起き上がった。制服は血塗れである。

 

「くっ……不覚っ! さっき代表が不正無しにと誓っていたのに不正ギリギリの行動をしてくるとは……っ!」

 

「あ、あっははは、ごめんね、ムッツリーニくん。悪気は無かったんだよ……ホントだよ? なんなら私の反則負けでもいいんだけど……」

 

「……それには及ばない。例えこんな状態でも、お前を倒すことなど、容易、だ、はぁはぁ……」

 

凄く格好いい台詞に聞こえるが、未だに鼻血は止まっておらず、危険な状態であることが伺えた。

 

その後結局ムッツリーニはその場に倒れてしまい、Aクラスの提案もあり、Fクラスに1勝が付いた。

 

第2回戦になり、Aクラスからは1人の女子生徒が立ち上がった。

 

「では、私が行きます」

 

「みほっちー、頑張れー!」

 

工藤にみほっちと呼ばれた生徒、佐藤美穂はフィールドにゆっくりと入った。選ばれたのは、美波だった。

 

「(やっぱり、勝てそうなところから攻めてくるよね……。実際美波はあれから少し成績は良くなったけど、まだまだAクラスには及ばないし、数学以外だったら負け試合だね、美波には悪いけど……)」

 

佐藤が選択した科目は、やはり数学ではなく、物理だった。美波は、何の抵抗もできずに大剣で真っ二つにされてしまった。

 

通常のAクラス対Fクラスの戦いならこれが普通なのであろう。Aクラスの生徒から罵声のようなものが飛んできた。調子に乗ってきたのにその程度か、などの容赦ない言葉が美波を攻め立てた。

 

「黙らんかっ!」

 

突如大きな声で制止が入った。声をあげたのは、天羽だった。その表情は怒りとしか形容できなかった。

 

「確かに、相手はFクラス。しかし、今は戦争中だ。相手に敬意を払うことは当然であろう、それすらもわからないのかたわけ者共がっ!」

 

天羽のその言葉に誰も声を出さなかった。彼の言っている事がわかったのだろう。そのまま美波に歩みより、肩を軽く叩いた。

 

「ウチの連中が悪いことをした。ここに立っていたということは、お前も何か得意な科目があったのだろう? そのことに自身を持ちたまえ。そして、努力をしてもう一度ここに来るが良い、わかったな?」

 

「あ、ありがとう、ございます。えっと、天羽さん」

 

そう言いながら美波はFクラス陣営に戻っていった。

 

「大丈夫、美波?」

 

「ええ、大丈夫よ。むしろやる気出たわ。アキ、戦争が終わってしっかり休息をとってから、またよろしく頼むわね?」

 

その言葉に明久は笑顔で了承した。そして、第3回戦になり、選択権がFクラスにきた。当然こちらから出すのは秀吉であり、科目は古典だ。

 

秀吉がフィールドに入り、相手を選択する。

 

「なら、姉上じゃのう。気心が知れた人の方がわしも楽じゃしのう」

 

優子がフィールドに入ってきた。お互いの召喚獣が場に出るが、見た目が本当に瓜二つである。服を同じにしたらどちらが秀吉でどちらが優子か分からなくなってしまいそうになるだろう。

 

木下 秀吉:410点

 

木下 優子:369点

 

「さすがは秀吉ね、古典だけは勝てそうにないわね」

 

「古典はわしの唯一の得意科目じゃしのう、そう簡単に越えられてはたまったもんじゃないわい!」

 

秀吉は自信の武器である薙刀を優子に向かって放り投げた。その薙刀を華麗に避けた優子は、丸腰の秀吉に自身の武器である槍で貫こうとした。

 

ガキンッという金属音が鳴り響き、優子は秀吉の手に薙刀が戻ってきていることに気がついた。

 

「姉上はあまり戦争に詳しくないから言っておくが、武器はフィールド外に出た場合は、持ち主の手元に戻ってくるのじゃ。今のはそういうことじゃの」

 

「ご丁寧に説明ありがとね、ひ、で、よ、しっ!」

 

優子の蹴り上げで秀吉の体が空中に上がる。秀吉が体勢を立て直すよりも早く、優子は秀吉を掴みあげ、ランスで腹を突き刺した。

 

秀吉の点数が、優子の点数の3分の2程度まで低下し、万事休すかと思われたが、秀吉がニヤリと笑った。その瞬間に腕輪が光りだした。

 

フィールドが炎に包まれた。

 

「炎上じゃよ、姉上。わしが戦死するまで何をしても消えぬ」

 

優子の点数が徐々に減ってきている。

 

「じわじわ削っていくなんて、随分と趣味の悪い腕輪ね。私に信長の気持ちになれとでも言うのかしら?」

 

「何を言っておるのじゃ姉上。もう点数は200点ぐらいしかないぞ?」

 

そう、秀吉の腕輪炎上は、自分以外の全ての召喚獣に適用され、敵味方関係なくじわじわと点数を減らしていくのだが、時間が経てば経つ程、炎の勢いは増していき、最終的には1秒で10点以上削れるようになるというかなり破格の威力を持った腕輪なのである。

 

「くっ、まさか秀吉にここまで削られるとはね……。でも、点数はまだ私の方が上。一瞬でけりをつけるわ!」

 

優子の槍は的確に秀吉の体を貫いていく。仮にも秀吉は2度の戦争を経験し、且つ前線で勝ち抜く程の実力と操作技術を有しているのにも関わらずここまで当てることが出来るのは相当なセンスが優子にはあるのだろう。

 

しかし、秀吉もただやられているわけではない。防げる攻撃がきたならば防ぎ、瞬時にカウンターを仕掛ける。炎上の効果と相まって、中々の勢いで優子の点数を削っていく。

 

その今まで見た試合の中でも指折りの名勝負に、観戦している全ての生徒は言葉を発さず静かに見ていた。

 

両者の点数が50を切り、次の一撃で勝負が決まるという状況になった。お互い武器を構え、一瞬の静寂がフィールドを包み込んだ。

 

先に動き出したのは優子であった。しかし、自分の点数への焦りからか秀吉が動く前に勝負を決しようとしたのか、先程までとは違う少し短絡的な動きをしてしまう。

 

当然今までの経験が多い秀吉にとってその攻撃を避けるのは容易かった。そして、薙刀が優子の体を切り裂き、勝負が決した。

 

「やられたわ秀吉。でも、次戦うときはこんな簡単にはやられないわよ?」

 

「わかっておるわい。姉上に勝てたなどたまたまにすぎん。姉上は物覚えが良いからのう、すぐに抜かれてしまうわい」

 

「はいはい、お褒めいただき光栄でございますよ、秀吉様」

 

そう言いながら優子は秀吉の頭をポンポンと軽く叩き自分の居場所に戻っていった。

 

「秀吉、よくやったー!」

 

Fクラスの陣営からはそんな声が上がり、数名の生徒による愛の告白が起こった。当然粛清された。

 

 

 

 

第4回戦、相手の陣営からは久保が選ばれ、フィールドに入っていた。彼が対戦相手に選んだのは、瑞希であった。

 

「本当は吉井くんと一線……いや、1戦興じたかったのだが、彼女との約束があるからね」

 

「……久保くん、何言ってるの? なんで1戦って2回言ったのさ……?」

 

一時期噂になっていた久保利光の男好き疑惑は本当なのかもしれないと思った明久は、悪寒を感じ、数歩後ろに下がった。

 

「さあ姫路さん。君はそんな無粋なクラスにいる必要はないよ。この僕が君を華々しいAクラスに編入させてあげるよっ!」

 

どうやら久保の勝った際の言うことを聞いてもらうというのは瑞希をAクラスに入れることのようだ。それを聞いた明久は焦った。

 

今年のFクラスは猛者が多いとしても、主戦力の一人が減るのは大いに被害がある。この戦いへの緊張に、固唾を飲み込んだ。

 

選択された科目は、総合科目。実力が一番表れる科目である。

 

久保利光:4300点

 

総合科目では、4000点を越える場合に腕輪が支給されるのだが、どうやら久保はそれを越えているようで、明久の不安が一気に高まった。

 

しかし、瑞希の点数は、そんな久保を越えていたのだった。

 

姫路瑞希:4670点

 

「なっ!? そ、その点数は……!?」

 

驚きで固まっていた久保に、瑞希は容赦なく熱線をぶちこんだ。もろにくらった久保の召喚獣は跡形もなく消し飛んでいた。

 

「今、あなたはFクラスをバカにしましたね!? 許せません。Fクラスは確かに騒がしくて貴方には迷惑に映るかもしれませんが、私は騒がしくも元気のあるこのFクラスが大好きなんですっ! 私のお願いはFクラスへの謝罪です。久保くん、貴方ならわかってくれますよね?」

 

「こ、この僕が? Fクラスで吉井くん以外に頭を下げる……? こ、こんな屈辱は生まれて始めてだ……! 悪いが、後にしてくれ。少し気分を落ち着かせてくる」

 

そう言って久保はAクラスから逃げるように出ていった。当然、納得のいかない瑞希はその後を追いかけていった。

 

彼女のFクラスへの愛を知った明久は、意外だと思いながらも嬉しく感じていた。

 

 

 

 

 

「中々にいいペースだね、坂本くん」

 

「ああ、そうだな。だが吉井、今出てきている木下姉に工藤、佐藤、久保の4人は、八武衆でも下位の4人だ。これからはかなりきつい戦いになるだろうが、勝算はあるか?」

 

「ふふ、それを言ったら僕たちだってそうだよ。まだまだ上位の精鋭揃いだし、こっちは3勝。正直いけるかもしれないね、この戦い」

 

明久は不敵な笑みを浮かべていた。しかし、明久は侮っていた。下位とその上に、そこまで大きな差があるわけないというのが明久の本心であった。しかし、それが一瞬で崩れ去ったのだった。

 

「では、貴方にしましょう、そこの、目付きの少しきつい貴方っ」

 

フィールドには1人の女子生徒が立っていた。その女子生徒を見や否や、Fクラスの男子勢から歓喜の声が上がった。

 

「私は及川彩目、よろしくね?」

 

身長が雄二と同等くらい、もしくはそれ以上という高身長かつ瑞希よりも大きいのではないか、という程の胸を持った女子生徒、及川が優しく挨拶をした。

 

その穏やかな物腰で屈託の無い笑顔の挨拶を見て、Fクラスは血に染まった。当然、鼻血である。

 

目付きの少し悪い男子……莉苑を指名した彼女は、さらに言葉を続ける。

 

「本当は、彼のことが気になってはいるんだけど、天羽君がやりたそうにしてたから、次に興味のある君にしたんだよ、何かごめんね……」

 

フィールドに入った莉苑は頭をかきながら別に、と答えた。

 

彼は特に色恋沙汰、女子と関わるようなことを自ら渇望していない。というか、戦闘以外にさほど文月学園に求めているものはない。

 

彼が欲するのは己を満足させてくれる強者であり、強者であるならば男女問わない。

 

莉苑は召喚獣を呼び出した。科目は再び数学で、莉苑の点数は古典の秀吉の点数を越え、Aクラスからはざわめきが起きた。

 

しかし、及川は笑みを崩さなかった。気づくと彼女は時すでに召喚獣を呼び出しており、その点数を見た莉苑は体を震わせた。

 

 

佐久間莉苑:474点

 

及川彩目:598点

 

 

「なっ!?」

 

明久は声をあげる。理数系の莉苑の点数を越える生徒がいることに驚きを隠せなかった。

 

Aクラスの陣営には余裕の表情を浮かべる生徒が多数いた。召喚獣の点数はHPという役割以外にも、攻撃力の高さを表していて、それは例え数値が下がっても、攻撃力低下のデバフを受けなければ弱体しない。莉苑は常に点数600近くの攻撃力の相手と交戦しなければいけないという状況に陥っていた。

 

「ごめんね、私数学が大の得意なの。後は理系科目と保健体育とか、ね?」

 

「及川さんっ! 俺に保健体育教えて下さいっ!!」

 

「お、お前ずるいぞっ! 及川さん、俺にもお願いしますっ!!」

 

「お、俺は、その、実技のほ……」

 

「異端者め、成敗っ!」

 

Fクラスのバカ共が騒ぎ立ててしまい、教師が介入し、場を収めた。

 

「え、えっと、Fクラスの代表さん、なんかごめんなさい……」

 

「いや、気にするな。得意科目を言っただけで興奮しちまうこいつらが全面的に悪い。続けてくれ」

 

その言葉をきき、及川は莉苑に向き合う。

 

莉苑の顔を見た彼女は、目を見開いた。そう、笑っていたのだ。

 

「あっははははっ!! さっすがAクラスの八武衆……相模よりも楽しめそうじゃねぇか!!」

 

「なっ!? 佐久間様、いけません! そんな乳袋よりも私の方がきっと強いはずですっ! お気を確かに!」

 

「ち、乳袋ぉ!? 酷くないっ!?」

 

莉苑の言葉を聞いた相模が声を荒げて自分を推すが、その時に及川を表現した乳袋という言葉に彼女も声を荒げる。

 

しかし莉苑は気にせず話を進める。時すでに彼は、戦闘中の通常状態、暴走兵器モードになっていた。

 

「俺を越えるその実力……是非見せてもらおうじゃねえか! いくぜっ!」

 

早速硬化を使用した莉苑は突撃した。豹変ぶりを見て戸惑っていた及川は数回の切り裂きを食らい、距離をとった。

 

「へぇ、戦闘で性格変わるんだ。中々に面白い人だねー! じゃあ私も容赦なくいくよー!」

 

及川の腕輪が光り、辺りに強い光が広がった。

 

そこにいたのは、及川……なのだが、大きさが違った。

 

「で、でっけぇぇぇ!?」

 

及川の体は巨大化していた。それも倍や3倍どころではない。廊下で戦っていたら通せんぼできるであろうという程の巨体であった。当然体が大きくなるということは胸も大きくなるわけであり、Fクラスからは様々な言葉が飛び交っていた。粗方性的な戯言であったが。

 

しかし、莉苑は余裕の表情を浮かべていた。そう、彼からしてみれば、それは的がでかくなる、つまりは勝ちやすくなるということになる。何の戸惑いもなく斬りかかる。しかし、攻撃は効かなかった。

 

「あ? 全然点数が削れねぇ……。何なんだ、その力ぁ!?」

 

「私の能力は見ての通り巨大化。200点消費っていうかなり危険な能力なんだけど、攻撃による被ダメージが極端に少なくなるの」

 

そう、それが彼女の腕輪の最強の力。どんな攻撃でもダメージを極端に下げるのだ。例え点数1000点の召喚獣に攻撃力アップのバフをかけたとしても、その攻撃はほぼ無効化される。さらに大きくなっていることにより、武器も巨大化し、リーチが凄まじくのびている。それにプラスし攻撃力も上昇している。そのあまりにも強い能力に、あの莉苑ですら一瞬焦りを覚えていた。

 

「(どうすればいい……? あんだけチートみてぇな能力だ。きっと何か相当なリスクがあるはずだ……。そいつを見極めねぇとな)」

 

普段真面目に考えずに特攻する癖のある彼が、ここまで真剣に物事を考えるのは珍しいことである。それほどまでに目の前の及川は脅威的であったのだ。

 

お互いの召喚獣が全く動かない静かな状態がフィールドに起こっていた。どちらも動こうとしない、それを見て莉苑は1つの考えにたどり着いた。

 

「(これが本当なら、相手がなかなか攻撃してこないのも納得だが、気づかないふりをしておくか)」

 

「あぁくそ! じっとしてんのは性に合わねぇ、いくぜっ及川さんよぉ!」

 

莉苑が動いたのを見て、及川は巨大な農業用フォークを振り回した。

 

リーチが大きくなったことにより、フォークを振るスピードはかなり遅く、莉苑は簡単に避けた。そして、一瞬で彼女の点数を確認した。そして、推測が確信に変わった。

 

「(なるほどねぇ、ならもう少しやっておくか)」

 

莉苑は再び攻撃を仕掛ける。当然、それを止めようと及川は攻撃を繰り出す。再び避ける。それを何度か繰り返すと、他の生徒も気づき始めた。彼女の点数が減り続けていることに。

 

及川の腕輪はそれこそかなり強力な部類になるだろう。しかしその代償として攻撃、そして移動をする度に20点のダメージを受け続けるのだ。しかし、移動は少し例外があり、止まることがなければ消費は20点のまま動き続けることができる。しかし、今回の戦闘が初の実戦であり、召喚獣を長く動かし続けることはかなり困難であり、移動に関しても今回はかなり消費することになるだろう。

 

「実戦を積めば、こいつは化けるな……。今はまだ未完成だが、完成した日には俺でも手がつけられねぇかもな」

 

莉苑はそう言いながら同じ行動を繰り返していた。だが、攻略法を得て油断したのか、彼は及川の一撃をもろにくらってしまった。その一撃を受けた瞬間、彼の点数は一気に戦死ギリギリまでに減らされていた。

 

「硬化した俺に一撃で戦死ギリギリまでの点数を与えるとはな……だが、まだ負けては……ん?」

 

莉苑の召喚獣は、先程までいた地点にいなかった。辺りをくまなく探すと、フィールドの端という扱いになっている教室の壁にめり込んでいた。普段は円形のフィールドなのだが、大きすぎて教室の壁に阻害されているためそのような扱いになっている。

 

そこにいた莉苑は点数が0になっていた。

 

「なるほどなぁ……仰け反りはしねぇが風圧には勝てなかったってわけか。こりゃ意外な弱点が発覚しちまったなぁ」

 

点数ギリギリまでに減らされていたため、壁に激突した衝撃で、点数が0になってしまったのだ。それに気づいた莉苑は苦笑した。そして、戦った及川のところまで歩いていき、手を伸ばした。

 

「あんたは回数こなしたら絶対に化ける。Fクラスの暴走兵器と呼ばれてる俺が言うんだ、自信持て」

 

「……ありがとう、目付きのわりに普段は優しいんだね?」

 

「目付きは生まれつきだ、言うんじゃねぇ」

 

少し怒りながらも莉苑は自分の陣地に戻っていった。そして、及川も己の陣地に帰った。

 

「……彩目、勝利おめでとう。正直この1勝は大きいわ」

 

「ありがとうございます、代表。……しかし、あの佐久間くんという人物ですらこの強さなのに、代表の語る吉井くんというのはそんなに強い人なの?」

 

「……正直、吉井とは戦いたくない。きっと、今の私達で彼に勝てる人は、0」

 

その言葉を聞いていた天羽が、目を見開いた。

 

「おい、代表さんよ、そりゃどういうことだ? 俺が負けるとでもいうのか?」

 

「……ええ、彼には勝てない。吉井は天羽よりも上を行っている人物」

 

「ふっ、こりゃ楽しみだなぁ? 代表がそこまで言うんだ、良い意味で期待を裏切らなきゃなぁ?」

 

天羽の笑みを遠くから見た明久は、一瞬雄二と最初に出会った時のような恐怖を感じた。

 

「(彼は……やはり要注意人物だね。きっと僕を選んでくるし、負けるわけにはいかないな)」

 

明久は、ジッと天羽を見続けていた……。

 

 

 

 

 

 

……to be continued




翔子の謎なほどの明久推し。しかしタグの通り明久とは何も起きません。

一気に5回戦まで、進みました。原作キャラの戦闘は比較的に短くしています。元々が短いですが。

オリジナルキャラクター紹介は次にまとまった機会にやろうと思います。次回でAクラスとの戦いに決着が着くと思います。

※誤字脱字、修正点、矛盾点等がありましたらご報告下さい。
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