未知なる世界を夢見て、宇宙へ旅立った男達がいた。
しかし、謎の事故により迷い込んだのは……映画の中だけにしかいない筈のゴジラが、大量に跋扈する謎の惑星だった。




はい。アニメゴジラ第二章を見た勢いで書いた、いつも通りの嘘予告でございます。もしかしたら誰か書くかもしれないという希望を込めて。


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PLANET OF GODZILLA

――映画としての『ゴジラ』が終わりを迎えてから、数十年が経過した未来。

 

 ゴジラの名は映画史に残る伝説として語り継がれる未来において、人類は遂に、未知なる世界へと飛び立とうとしていた。

 太陽系の更に外側、銀河の全てを知る為の旅。その先遣隊として選ばれた芹沢英司は、仲間達と共に宇宙(そら)へ旅立った。

 

――それは、人類の傲りだったのかもしれない。

 

 突如として、彼らの乗る宇宙船を大規模な次元振動が襲う。科学の進歩した未来でも今だに解明されていない次元の歪みは、彼らの想像を絶する世界へと誘う。

 

「此処は……どこだ?」

 

 見慣れているようで、見知った景色とはかけ離れた世界。あちこちに生えたビルのような建造物は未知の植物に覆われ、生物に関しても、おおよそ彼らの見知ったような哺乳類等はいない。

 いるのは、翼竜に、巨大化した虫。そして――

 

「あれは……ゴジラ? 本物?」

 

 映画の世界にしかいなかった筈の存在。放射能怪獣ゴジラ。

 それも――一体や二体どころではない。

 

「な――!? あ、あっちにもいるぞ!?」

「サイズや形状は違う。違うが……間違いなく、ゴジラだ」

「見ろ! 争い合ってる! 巻き添え喰うとやべぇぞ!」

 

 その光景は、まるで各作品の異なるゴジラ達が、スクリーンから飛び出して喧嘩を始めたかのようで。

 

 一体が雄叫びを上げれば、隙を突いてもう一体が尻尾で薙ぎ、そこに更なる一体が乱入し、炎や熱線を吐きだす。

 

――人間は、その世界では招かれざる客だったのかもしれない。

 

「待て! お前ら、人間か!?」

「そ、そうです! あの、貴方は――」

「俺か? 俺は……陸上自衛隊所属、権藤吾郎。()一佐だ」

 

 死に物狂いの逃避行の中で出会った、映画の中の死人。

 その出会いに驚く間もなく、状況は目まぐるしく動いていく。

 

「なんてこった……地球を捨てた、だって?」

「未来の人間は一体何やらかしたんだ?」

「少なくとも、タイムマシンを造って過去に向かった……わけじゃなさそうだな」

「……ゴジラのせいだ。奴さえ、いなければ……」

「そんな! ゴジラは人類の味方だぞ!?」

「怪獣ランドに住んでるんだ」

「あー、あったなそんなの」

「怪獣……ランド……?」

 

 過去と未来、様々な時代から迷い込んできた者達。

 その誰もがゴジラを知り――同時に、互いのゴジラ観にズレがある事を知る。

 

「他の怪獣は? モスラは? アンギラスは? 宇宙人もいないのか?」

「さぁな。どうも、この星にはゴジラと人類しか招かれないらしい」

「ビルサルドとエクシフならいるがな」

(ビルサルド……ブラックホール……エクシフ……エックス……いや、まさかな)

 

 この星に生きるのは、ゴジラという圧倒的強者と、人類という圧倒的弱者のみ。

 ゴジラ以外の脅威もいなければ、人類を守る存在もいない。

 

「大丈夫、少なくともこのゴジラは味方だよ」

「どうだかな」

「信用してもいいんじゃないか? 少なくとも、俺達の知ってるゴジラよか断然……うぅ」

「お前さんの言うゴジラってぇと……あれか。あの図体だけはデカいが、前足が異様に貧弱そうなの」

「馬鹿ッ! そう言ってたらまた進化するぞアイツ!」

「……100m級のヤツはともかく、あっちの推定味方の方に関しては心配するな。あれぐらいなら俺達で何とかなる」

(新人類、ミュータント。怪獣ともやり合える程の力を持つ人類。俺達の地球との決定的な差、か)

 

「……oh」

「言うな。やっぱマグロ食ってるようなのは……」

「馬鹿! こっちにそのマグロ食ってるようなのの一頭が味方にいるだろうが! ブレス吐くし!」

 

「……自己増殖する特殊金属、ナノメタル。それを利用したメカゴジラ、ね」

「ウチんとこの機龍は、最初に出現したゴジラの骨を利用してたけど……そのナノメタルとかいうの、暴走の危険性は……」

 

「あ、あれも……ゴジラだってのか……?」

「山だ……山が動いてる……」

 

 かつて対峙したゴジラの差、そして人類の差。

 

――そして、世界の真実。

 

「馬鹿な、この、この建物は……議事堂!?」

「偶然なんかじゃなかったんだ。ここは……紛れもなく、地球だったんだ!」

 

『……ここは、本来なら滅びている筈の地球。かつて行われた実験により、怪獣、そしてゴジラが存在する世界と繋がってしまった』

『本来なら、あっちの世界から怪獣を押し付けられたこの世界は、とっくの昔に無くなって、忘却された(OBLIVION)世界になる……筈だったのだけれど』

「まさか、この世界はあらゆる可能性のゴジラと、それに類するものを呼び寄せているのか!?」

 

 真実を知り、そしてこの世界の人類の痕跡を見、彼らは迷う。元の世界への帰還か、ここでゴジラと戦うか。

 

「俺はよ、もう死んだ身だ。ゴジラの口ン中に薬ぶっこんでな。実はと言えば、ここはあの世なんじゃないかって、まだ思っちまってるんだ」

「俺の意志は、変わらない。ゴジラを倒す。その為に地球に戻って来たんだ!」

「ここが、お前の地球でなくてもか? どうやらゴジラは、そんなのお構いなしに殺し合ってるようだが」

 

「人がゴジラを越える? そんな事、人間を辞めでもしない限り、不可能だろうよ」

「どうだかな。ビルサルドさんよ、そっちは既に諦めた事かも知らんが……尚更、地球人を舐めてもらっちゃ困るぜ」

「人の手で生まれた存在なら、人の手で終わらせる事もできる。それは既に、旧き時代の人間が証明済みだ」

 

 不屈の闘志。ゴジラに立ち向かった人々の想いは、更なる出会いをもたらす。

 

「ああ、この世界に来て思い知ったさ。やっぱり、ゴジラは強いって。ゴジラには昔、何度も助けられた……っと、すまない。君は……」

「……そうだな。奴のせいで、僕の友達は……そして、僕も……」

「けれど、このまま立ち止まってるわけにはいかないんじゃないか?」

「僕は、敗北者だ。悪党には勝っても、ゴジラには勝てない」

「……それでも、別の世界の人類は、諦めずに戦ってる。彼らにとってのヒーローはいない。だけど、それでも立ち向かったんだ。それなのに、人々を救う立場にある我々が、こんなところで立ち止まってていいのかと、そうも思うんだ」

「…………」

「もう一度、立ち上がってみないか? ヒーローという希望を知らない彼らに、本当のヒーローってやつを教える為に」

 

「あれは、ゾーンファイターに……ヒーローゼロ!?」

「なんだ、それは? あの巨人の名前らしいが」

「古い特撮番組の主役に、古いコミックの主役だよ! ……うわぁ、懐かしいなぁ」

 

 かつて、ゴジラと共に戦ったヒーロー。

 かつて、ゴジラに敗北したヒーロー。

 

 二人のヒーローが、人類の為に再び立ち上がる。

 

――やがて、ゴジラ達は集う。

 

 過去から未来に至るまでのゴジラ達が、殺し合う。

 人という種への憎悪を起源とする怪物達が、人をそっちのけにして殺し合う。まるで、最初から彼らなどいないかのように。

 時を越えた怒り(RAGE ACROSS TIME)が、地球を焼く。

 

「……まるで戦争だな」

「人の戦争ならまだ良かったんだがな。見ろ。周りにいるのは、怒り狂って熱線を吐く核弾頭ばかりだ」

 

「……こうなったら、生き残る方法は一つだ。なるべく物資を温存しつつ、ゴジラ共を同士討ちさせる」

「生き残った奴が、俺達の敵になるってワケだ」

「……できれば人類側のゴジラに勝ってほしいもんだが、それは贅沢ってもんかね」

「ゴジラの強さは実にシンプルだ。人類への殺意の高さ。それが、自分と同じ化け物を殺しうる力にも繋がる」

 

 右を向いてもゴジラ。左を向いてもゴジラ。そして、味方にもゴジラ。三つ巴どころの話ではない混沌の大乱戦。

 そんな中もたらされる、ゴジラ攻略の鍵。それは、この世界のどこかにあるかもしれない、悪魔の発明。

 

水中酸素破壊剤(オキシジェン・デストロイヤー)……しかしアレは、確か実際には実現不可能なデマという話だったけど」

「機龍の時もそんな事言ってたなぁ、オタクら」

「しかし、それはそちらにとってもそうなんだろう?」

「……恐らく、存在はしたんだ。確かに初代ゴジラは滅ぼされたんだから。だが、オキシジェン・デストロイヤーの生成方法を知る人間は……」

 

 全ての始まりにして、初めて人間に負けたゴジラ。

 その謎を追い求める人間達。

 彼らを他所に、戦いは遂に、最終局面へと向かって行く。

 

「……なんだ。こうして見ると、壮観だな」

「ここまで数多くのゴジラを葬り去り、戦い抜いた、ゴジラの中のゴジラ、ね」

 

 遂に始まる、最終決戦。

 

 向かい合うは、同じ名を冠しながら、起源を異にするゴジラ達。

 

――原初のゴジラに最も近く、皮肉にも人の手により進化を続け、最後は地球の自然そのものにより臨界まで達したゴジラ。

 

――脅威足り得る敵も無いままに、ひたすらに人の作るエネルギーを憎み続けたゴジラ。

 

――植物を起源とし、遥かな時を生きた事で他のゴジラを圧倒する巨大さを手に入れたゴジラ。

 

 言葉は交わさない。ゴジラ達は、熱線を交わす。我こそが真の怪獣王であると、この星の支配者(RULER OF EARTH)であると、証明するかのように。

 

 

 

「この戦いを、終わらせる」

 

「我々人型生物が、ゴジラに成り代わる」

 

「新たな漂流物だと?」

 

「このマーク……組織名は……『S.H.I.E.L.D.』?」

 

「こいつは……サムライ型のロボット?」

 

「『赤い』、『浪人』……レッドローニン……」

 

「――新手のゴジラ!?」

 

「馬鹿な、アイツは――」

 

「駄目だ! こっちの武器も、ゴジラの熱線も歯が立たねぇ!」

 

「そんな――人の怨念が、このゴジラを形作ったとでも言うのか!?」

 

「ゴジラは……人がいる限り、不滅なのか?」

 

 

 

 

「やれやれ。地獄に落ちたのかと思えば、気づけば地上に逆戻りとは。しかし、いつから地上は地獄が生温く感じるような世界になってしまったんだ?」

 

『……――――』

 

「……ああ、君も来てしまったのか。……参ったな。そもそもの話、地獄に行くのは私一人だけだと思っていたのに。君には、何の罪もないというのに。君は、天国に行くべきだった」

 

『―――――』

 

「今更、か。そうだな。既に終わった事をどうこう言っても仕方がない。……しかし、だからこそ不思議なのさ。何故、既に終わった筈の我々が、地獄からここにやって来てしまったのかと。イタリアの叙事詩では、案内人に導かれた旅人は地獄から天国へ行き、そして現世へと戻ったというのに」

 

『…………』

 

「だが、理由なら一つは分かっている。私が、ただ一人ゴジラを倒した人間だから。それを踏まえた上で、私がこの地球でやるべき事は、恐らく一つしかない」

 

『―――――――』

 

「……ああ。無駄話はこれぐらいにしておこう。どうせ考えても意味のない事だ。行動は、さっさと起こすに限る。かつて学んだ事だ。……行こうか、ジュニア」

 

 

 

 

 





お節介な解説
ゾーンファイターと一緒に登場したヒーローゼロは、れっきとした原作ありきのキャラ。
かつてダークホースコミックにおいて活躍したヒーローで、言うなればウルトラマンのようなキャラ。
詳しくは各々で調べて下さい(というのも、以前知り合いに読ませてもらったきりで、詳しい内容がどうだったのか忘れてしまった為)


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