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次は総合評価650ptを目指して頑張ります!
―――――9月25日 鉄華団 中央アフリカ共和国北部基地
無機質な色合いの続く基地内は、比較的新しい空間だった。多少の傷や、台車が通った跡こそあるが、都市部のオフィスビルと何ら遜色は無かった。それこそまともな組織であるかのように。
そんな基地内にて、昭弘たち7人は2つの部屋に分けられていた。昭弘・箒・一夏の3人、他4人といった具合に。
全員を同じ部屋にすし詰め、という訳にもいかない。そういう配慮もあるが、一番の理由は昭弘たち3人の扱いにあった。ブリュンヒルデの弟に天災の妹、そしてトネードのお気に入りである昭弘。他の4人とは人質としての毛色が違う、良く言えばVIPであった。
昭弘たちの部屋内は、比較的広い空間だった。寝具にシャワー、時計、洗面台にトイレ等、簡素ながらも生活に必要な最低限の物は揃っていた。空調も良く効いている。
食事に関しても、担当の職員が決まった時間に届けに訪れ、衛生面は約束されていた。
傍から見れば、何ら変哲の無い共同生活。監視カメラに盗聴器、そして手錠さえ無ければだが。
軟禁と監禁の中間のような状況。だがやはり、その様は監禁なのだろう。
「フンッ・・・フンッ・・・」
朝。そんな特殊な環境下でも、昭弘の低い息使いが空間を満たす。地面に着いた両の手は、手錠により不自由な状態だろうと関係無く、彼の巨体を一定間隔で上下させる。
例えこの場が空調の効かない灼熱地獄だったとしても、その動作は変わらないのだろう。
「フゥ・・・」
そうして朝のノルマを終えた昭弘に、箒と一夏が引き攣った表情で声を掛ける。
「よくこの状況で筋トレができるな昭弘」
「ホントにね、マジで見習いたい」
称賛とも皮肉とも取れる2人の言葉に対し、昭弘は荒い息を整えながら答える。
「こんな時だからこそだ」
そう短く答える昭弘。彼とて、頭と心の整理ができていないのだ。
鉄華団の復活、全世界へ向けた宣戦布告、それらを押し進めたトネードたちの思惑について。考えが浮かんではまた新たな考えに塗り潰され、それに応じて感情も変容していく。
そして遂には、IS学園の行く末も聞いてしまった。学園の為に戦うという正当性は、既に失われてしまったのだ。
それらの思考から少しでも脱却すべく、身体に染み付いた筋トレに身を任せる。そうやってどうにか平静を保てるよう誤魔化してるだけなのだ。
そうして昭弘は、入口近くの受話器を手に取る。
「オレだ。汗を拭きたいんで、シールドを解除してくれるか」
《・・・》
回線はリモコンを握っているであろう相手に繋がり、無言の応答が返ってくる。誰がリモコンを所持しているのか特定されない為だろう。
2~3秒後、昭弘の身体から一時的にシールドの反応が消えた。
露わとなった、肉の山脈を覆う生肌に、黒いタオルが滑り込んでいく。
(リモコンの操作範囲・・・詳しくないが、こんだけシールド解除が早いとなると、そう広くはない筈だ。そんでもって人質が女である以上、男に持たせるとも思えん。やっぱ向かいの部屋に居る職員の女か、それとも上階か下階の誰かか)
もしリモコンを奪取すれば、誰も昭弘たちを害することはできなくなる。
しかし仮にそれが成せたとして、手錠自体を解錠できるかは別だ。というより、解錠方法自体ない可能性もある。昭弘たちの心拍数が止まった時点で、トネードとスコールは死ぬのだから。加えてこの手錠がある以上、ISも展開できない。
車を強奪して逃げるにしても、MPS相手では一瞬で追いつかれる。第一、土地勘がまるで無い。
手を動かしながら、昭弘はそんな思案に耽っていた。
「監禁されてまだ2日目だというのに・・・適応の早いヤツだ」
「というより、昭弘はあの後いろいろ連れ回されてたから、実質1日目みたいなものだけどね」
こういう所も、嘗て少年兵として過酷な環境を生き延びてきた賜物なのだろうと、箒と一夏はそんな感心を抱いた。無論、そんな昭弘の境遇を喜んで良い筈がないので、決して口には出さないが。
それより、一夏の「連れ回された」という言葉を拾い、箒は改めて訊くべきことを思い出す。
「・・・結局、あの
途端、水を飲んでいた昭弘の手が止まる。
瞬時に、頭の中で話して良い事と話すべきでない事とを分けていく。2人を動揺させないのは当然のこと、盗聴器の存在も加味すれば、あまりトネードたちを否定的に述べるのも不味い。
(一先ず、学園のことは伏せておくか。束の計画についても)
それだけを喉の奥へと隠した昭弘は、トネードとの会話について、なるべく掻い摘まんで2人に説明した。私情を挟まず、あくまで中立的に。
説明を終えた昭弘は、一息つくように水を口の中へと流し込む。その様子は、2人の更なる質問に備えているようでもあった。
対する2人は、ただ沈黙していた。
箒は、どこか沈痛な面持ちで俯いていた。それは、トネードたちの計画云々より、その「噛ませ犬」として利用される兵器を憂いるものだった。ISの産みの親、その妹であるが故に。
一夏に関しては、眉間に皺を寄せていた。今聞いたことを、心底後悔しているかのように。その瞳に侮蔑の色を浮かべながら、彼は吐き捨てるように呟いた。
「イカれてる」
当たり前の反応を示す一夏に対し、昭弘は心底安堵を覚えながらも、言葉を慎重に選んだ。
「まぁ・・・人殺しを前提にしている救済だからな。向こうさんの主張は分からんでもないが、肯定するには極端過ぎる」
しかしその言葉選びに、一夏が反応する。眉を顰めたその表情から、好意的な感情は見えなかった。
「さっきから随分と中立的に語るね昭弘。少し傾けば肯定しそうなくらいに」
「・・・」
嫌味とも取れる一夏の言葉に、沈黙で返す昭弘。それは敢えての沈黙なのか、反論する要素が見当たらないのか、判らないが故に一夏のもどかしさは増していく。
「・・・それで?箒はどう思ってるのさ」
もどかしさを解消するように、今度は箒へと矛先を変える一夏。
一夏が何を求めているのか、何となく昭弘には解った。それでも今の状況では、やはり沈黙でしか返せないのだ。
当然、箒だって解っていた。
「私は・・・」
だがやはり、一夏の求めには乗れなかった。幼馴染みだからこそ、正直な思いを言うべきだと彼女は判断した。
「ただ、悲しいと・・・そう思った。何故そんなことするのだろうって」
一夏の忌避感とも、昭弘の中立とも違うその言葉で、再び部屋中に沈黙が訪れる。今度のは突き刺さるような、皮膚を削り取られるような沈黙だった。
その静寂という激痛が、一夏の瞳を黒く濁していく。
痛みから逃れるように再び口を開こうとする一夏だが、昭弘の「一夏」という呼び声の方が早かった。
「あまり言い過ぎない方がいい。盗聴器のこと忘れんな」
そう諭されたことで、再び一夏の瞳に光が戻る。意識を取り戻したみたいに。
「・・・・・・分かってる。ごめんなさい2人とも」
落ち着いた一夏を見て安堵したのか、昭弘はゆっくりと立ち上がる。
「状況が状況だ、不安定になんのも仕方ねぇさ。隣の様子見てくるついでに、何か気晴らしになるもん持って来れないか掛け合ってみる」
「そうして貰えると、助かる」
人質の中で、昭弘だけは部屋の出入りがある程度許されていた。
トネードの御墨付き、そして三日月の元相棒という肩書きは、見張りの少年兵たちをそうさせるには十分だった。
彼等にとって昭弘だけが、先進人の枠から外れていた。
「・・・という訳で、部屋を一旦出たいんだが」
《勿論いいですよ。丁度良かった、今ラッシュさんが来てるんですよ。昭弘さんに挨拶しに来たみたいで》
「ラッシュって確か・・・獅電のパイロットか?」
《そうですそうです!良く覚えてますね》
「そりゃまぁ・・・な」
受話器の隣に埋められたインターホン越しに、慣れた調子で話す見張りの隊員と昭弘。まるで鉄華団の一員であるかのように。
その様が、再び2人を変えていく。箒の表情が更に水底へと沈んでいき、一夏の瞳が暗黒へと落ちていく。
そんな2人を感じ取っても、部屋を出る寸前の昭弘にできることは、短く頭を下げることだけだった。
「悪いな2人とも。いつもオレばかり出て行っちまって・・・」
謝る昭弘に対し、2人は困ったような笑みを浮かべるだけだった。どこか張り付けたような笑みを。
今の2人を目に焼き付けるようにして、昭弘は部屋を後にする。
同時に、先の一夏を思い返していた。彼はあの時、自身と箒に「同意」を求めていたのだと。親友である自分に、賛同して欲しかったのだと。
だが、昭弘はこうも考えていた。例え盗聴器が無かったとしても、果たして本当に一夏に賛同していたのだろうかと。
「昭弘殿!ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません!」
昭弘が部屋を出ると、そんな快活な挨拶が待ち受けていた。
「改めまして、自分は獅電のパイロットを務めさせて貰っております『ラッシュ』と申します!」
「あ、ああ・・・宜しくな」
グイグイと来る、尊敬と興味を内包した相手の圧に、昭弘はたじろぐ。
ラッシュ。元からの名前なのか、それとも与えられたコードネームのようなものだろうか。他のアフリカ系の少年兵と同じく、黒い素肌の顔面からは、彼の年齢をいまいち予想できない昭弘。ただ、雰囲気だけで言えば一夏と同い年くらいか。髪型もどこか似通っている。
「何か不便なことはありませんか?いつでも申し付け下さい!昭弘殿の場合、人質なんて形だけですから!」
「ああ、それは隣の部屋を見てからにする。・・・ん?今なんて言った?」
何気無く放った言葉に食い付かれ、ラッシュは首を傾げながら答える。
「昨日、基地内を回っていたと噂に聞いたので・・・てっきり昭弘殿も入団するものかと」
とんだ早とちりをしているラッシュに、昭弘は溜め息混じりに答える。
「誤解だ、皆と同じ人質さ。本来、こうやって出入りしていい立場じゃねぇんだよ」
手錠を見せながら冷めた反応を示す昭弘に、ラッシュは残念そうに目尻を下げながらも、再びその目に輝きを灯す。
「そうですか・・・。けどまぁ、いつでも入団して下さい!オレも他の奴等も大歓迎ですから!」
めげないラッシュに、気まずそうに笑う昭弘。
すると、見張り役の隊員たちも声を掛けてくる。
「ラッシュさん、三日月さんに憧れてるんですよ。オレたち戦士の希望だって。その三日月さんの元相棒ってんだから、そりゃ気にもなりますよ」
「オイ・・・」
余計なことを言い放った隊員に、照れ臭そうに睨みを送るラッシュ。
そうして今度は頭を掻きながら、再び昭弘に向き直る。
「お恥ずかしながら、自分も元は使い捨ての少年兵だったもんで・・・日々盲目的に過ごしていました。けど、あの方々と・・・ミューゼル兄妹と出会って気付いたんです。何が正義で誰が悪なのか、この状況を打開するにはどうすれば良いか。そして・・・オレたちにはそれを成せる力があると、三日月さん自らが示して下さったんです。そんな止まらない彼の背中にオレたちは救われたし、今この時も救われてるんです」
真っ直ぐな瞳に、宝石のような光沢を乗せるラッシュ。力強いその目つきには、確かな意志が内包されているように、昭弘には思えた。
洗脳から脱却した人間は、誰しもこんな風に変わるのだろう。そう思えてしまう程の健全さを宿した瞳だった。
そんな彼にとって鉄華団とは、誰よりも尊敬できるリーダー、そして志を同じくする家族と共に過ごす大切な居場所なのだ。昭弘にとってのIS学園と同じように。
今のラッシュを見ていると、昭弘の中の芯がますます左右に揺らいでいく。
同時に、昨日の光景が昭弘の奥深くに蘇る。鉄の華のマークと、団員の前でメイスを高々と掲げる白いバルバトスが。
不覚にも、眩しさと一体感を覚えてしまったあの瞬間が。
「ただ、これもお恥ずかしいんですが、三日月さんが何考えてんのか分からない時もあって。だから三日月さんを誰よりも理解している人に、入団して貰えたらと・・・オレはそう考えてます」
言いながら、ラッシュは昭弘に熱い視線を送る。彼もまた、考えていることはトネードと同じなのだ。そして恐らく、今この場に居る見張りの隊員も、他の団員たちでさえも。
鉄華団が、昭弘という人材を欲している。それままるで、昭弘という最後のピースにより、鉄華団が完成するかのようであった。
それでも尚、自分は断ることができるのだろうか。そう思いながら、昭弘はらしくもない曖昧な返事をすることにした。
「・・・・・・考えてはおくが、良い返事は期待しないでくれ」
そう言って、昭弘は逃げるように踵を返した。IS学園の生徒たちが囚われている部屋へと。
本音たちの部屋の前に立ち、見張りに用件を伝える昭弘。部屋を出る時と同じく、見張りの隊員は快く通してくれた。
ただ昭弘であるが故に。
そうして室内に踏み入る昭弘。
軽く見回した所、昭弘たちの部屋と大きな違いは無く、最低限のものは揃っていた。
「アキヒ~」 「アル兄」 「どうもでーす!」
「オウ」
手錠を掛けられている以外、普段通りな3人を見て一先ず安心する昭弘。見た所、隊員たちやスミルに何かされた様子も無さそうだ。
当然、半分は互いを励ます為の空元気だということも、昭弘自身重々承知している。スミルとの一件もある為、本音に対しては尚更だろう。
「それと・・・」
もう1人の人物に視線を向け、困惑気味になる昭弘。初対面であるのと、本音と同じ苗字というのもあり、どう声を掛けるべきか迷っているのだ。
「虚でいいわ、紛らわしいでしょうし。改めて宜しくね、アルトランドくん」
本音とは真逆で、いかにも生徒会に居そうなピシッとした印象を受ける生徒であった。どこぞの生徒会長にも見習って欲しいものだと、そう思う昭弘であった。
「ハイ、宜しくです」
そう言い、手錠しながら器用に握手をする2人。まさかこんな形で対面の握手をすることになるとは、人生分からないものだなと、昭弘はそんな感慨に浸った。
挨拶も早々に、本題に入る昭弘。
「皆、少しは慣れたか?何か入り用な物があったら言ってくれ」
昭弘の問いに、相川が我先にと答える。
「寝袋とか初めてだったんで、まだちょっと眠れないですかねぇ。あとトイレが少し汚い!」
すると昭弘は、寝袋とトイレを確認してみる。
成程確かに、見てみるとかなり使い古された寝袋だった。触った感じも、決して柔らかくはない。トイレに関しても、昭弘たちの部屋のそれと比べると、不衛生なように思えた。
ついでに部屋を再度じっくり見渡してみると、細部に傷や汚れがあり、洗面台も水垢やカビが目立った。
改めて、自分たち3人が優遇されていることに、申し訳無く感じる昭弘。彼はこの程度の汚れやボロい寝袋でも一切気にしないので、正直交換してやりたいとも思った。
次いで、虚も要望をつらつらと述べる。
「私はそうね・・・何でも良いから本があると嬉しいわ。それとこれは駄目元だけれど、ラジオとか」
「私もお姉ちゃんと同じで~」
「私もですかね」
全員の要望を聞き、小さく頷いた昭弘は部屋を後にするべく立ち上がる。
「あのっ、昭弘さん」
そう相川に呼び止められ、昭弘はゆっくりと振り向く。その動作はまるで、どこか予測していたような落ち着きぶりだった。
相川の表情は先程と打って変わって、不安で歪んでいた。やはり、最初の元気は無理をしていただけのようだ。
そう思い返しながら、昭弘は相川の次なる言葉を待った。
答える前、彼女は自身の手錠へと視線を落とす。自身が囚われの身、言わば囚人の身であることを噛み締めるように。
そうして視線を上げないまま、力無く答え始めた。
「みんな・・・こうなるんですかね」
相川の言葉に、本音も谷本も視線を落とす。
昭弘だけは変わらず、何も言わずに相川の言葉を待った。
「解りますよ、織斑先生の授業受けてますから。連中が企んでることくらい」
相川の言う授業とは「現代社会とIS」という科目だろう。ISが人間社会に与える恩恵及び影響、それにより今後変化していく世界情勢について学ぶことができる。千冬の授業というのもあって、相川は人一倍熱心に履修していた。
だからこそ彼女には解るのだ。千冬と新兵器を戦わせるという、その事前情報だけで。例え外部から隔絶されたこの部屋に居ようとも。誰が恩恵を受けていて、誰が搾取されているのか。その歪んだ構造を産み出している元凶は何なのか。それを是正するにはどうしたら良いのか。
「結局私たちって・・・467機のISに、ずっと依存してきた訳じゃないですか。その「ツケ」がいよいよ回ってきたのかなって」
自分たちも恩恵を受けていた側なのだと、相川の語り口にはそういったものが含まれていた。
彼女自身、直接口には出さないが、まるで自分たち恵まれた人間が悪であるかのような。そう捉えられる言葉だった。
そのことを、昭弘は否定しなければならない。IS学園に身を置く者として、相川たちの学友として。
だが、それが相川の求めている答えとは限らないのもまた事実だった。
そもそも昭弘自身、明確な答えを述べる資格なんてないのだ。彼もまた、何が正しいのか分からず揺れているのだから。
「ツケ・・・か、そうなんだろうな。だが少なくとも、お前たちに罪は無い。実際問題、そこにISが467機在るんだから、興味を惹かれるのは自然的なものだ。例えそれが歪んだ構造を生み出していたとしても。尤も、それでもISを好きでいられるかって話だが」
今の昭弘には、そう答えるので精一杯だった。
相川も少し落ち着いたようには見えるが、完全には納得しきれていない様子だった。本音と谷本も、同様の反応を見せた。
肯定とも、否定とも取れる言葉。どっち付かずな返答は、昭弘自身の心境を写しているかのようであった。
そして唯一、先程から昭弘に鋭い視線を送っている虚は、この場の空気を切り裂くように訊ねた。
「アルトランドくん、まだ私はアナタのことをよく知らないから、失礼を承知で訊ねるわね。アナタは・・・私たちの「味方」なのよね?」
瞬間、昭弘は呼吸を忘れたように目を見開く。或いは何かを射貫かれたみたいに。相川たちもまた、一斉に虚へと振り向く。
そんな一瞬の動揺を振り払うと、彼は普段の仏頂面で答える。そうとしか答えられないが故に。
「・・・・・・当たり前じゃないですか」
幾ばくかの間の後、そう誰もが安心するような言葉を送り出す昭弘。自分自身にも言い聞かせるかのように。
対する虚もまた、昭弘の瞳を探るように凝視した後、短く了解した。
「そう・・・ならいいの。重ねて謝罪するわ、ごめんなさい」
「いえ・・・それじゃあそろそろ、失礼します」
そう言って昭弘はラッシュの時と同じく、まるでその場から逃げるように退室していった。
その後ろ姿を、虚は先程と変わらず凝視していた。他の隊員たちと同じニオイのする男の背中を。
そして、1人だけ比較的自由に出入りできる、監禁ではなく軟禁状態である男の背中を。
蜃気楼のように揺れている、筋肉青年の背中を。
次の話も内容だけは頭で固まってるので、早めに投稿できるかと思います。
今回の話の続き、みたいになると思います。