病弱フランちゃん   作:猫の休日

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第1話 私という存在は

赤い満月が夜の闇を赤く照らすその日、ある館で、1つの化け物が生まれた。

両親と姉の持つような大きなコウモリの羽ではなく、まるで宝石のような羽が散りばめられた、怪異な翼。母親譲りの輝くような金髪をもち、赤い瞳が爛々と輝き、その化け物の特徴の1つでもある鋭い牙を持った……けれとも、とても弱々しい化け物だった。

 

 

 

 

 

 

私は、かつて人間だった。どのような人間だったか、思い出そうにも思い出すことができない。しかし、1つ言えることがある。

それは、私は死んだということだ。

 

感覚として、私は魂の螺旋の中を流れたのだと思う。まるで川の流れに流されるように、私は天の川のようにキラキラと光り輝く川を、ただひたすらに流れた。はっきりとは覚えていないが、そんな気がするのだ。

そして、気がついたとき、私は転生というものを果たした。いや、違う。私は恐らく、転生したのではない。憑依したのだ。この幼い少女に。

彼女の名前は、フランドール・スカーレット。母、フレイヤ・スカーレットから生まれた、人ならざるもの。東方プロジェクトに出てくる、誇り高き、吸血鬼。

 

絶望した。

フランに転生したからではない。400年間、地下に幽閉されるのを知っているからではない。狂気に飲まれ、破壊の限りを尽くそうとするからではない。

私が絶望したのは、1つの生を、奪い取ってしまったかもしれない。その可能性が、少なからずあるということに、絶望した。

私の意思で、憑依したわけではない。それは分かってる。そもそも、これが憑依で、もともとのフランの魂的なものが消滅したのかすら分からない。でも、確実に言えることは1つ。

このフランーー私は、原作通りのフランではない。

 

ありとあらゆるものを破壊する程度の能力。フランの能力だ。これは、私も備えている。違うのは、狂気に飲まれる訳ではなく、そもそも、1人で外出することが時々困難なくらいには、病弱ということだ。

…いや、病弱という表現は、適切ではない。これはどちらかというと、呪いに近いものだと私は思う。

 

どういうことか。

簡単に言うと、だいたい1日おきのペースで、私の症状が変わる。前の日はインフルエンザだったが、次の日は肺炎で、昨日は胃がん。そして今日は、手足が黒く変色し、まともに動かすことができない。

約1日おきに、こうして症状が変わる。ただの風邪の時もあれば、吸血鬼の体を持ってしても死にかけるほど重症の時もある。何の病気か分からないものもある。

何故こうなったのか。原因は不明で、生まれた時からこの状態は続いている。

これを呪いと言わずして、何と言えばいい?

 

しかし、母曰くこれは呪いといった類では無いらしい。

原因不明の正体不明。両親と姉は嘆き、悲しんだ。

 

だが、私には何なとなく、原因が分かる気がするのだ。

 

ここで、先ほどの話に戻る。つまり、憑依の話だ。

私が転生ではなく、憑依していて、それを知った人ならざる超常的な存在、俗に言う神のような存在が、そんな私に罰を下した。その罰が、この呪いのようなナニかで、生まれた時から続くこの呪いもどきの正体なのでは無いか。私は、そう思うのだ。

 

くだらない考えだ、馬鹿げてる……と、言い切れるだろうか? 一応、筋は通っていると思う。そして、転生という、あるはずが無い、けど、あれば良いなと思われてきたことをこの身に体験した今、私はこの考えを否定するだけの材料を持ち合わせてはいなかった。

 

もし、この考えが正しいのならばーー

 

 

 

 

「いつか、この体を返すからね…」

「……フラン?」

 

声に出してしまったのだろう。姉であるレミリアが、不思議そうな顔で近づいてくる。

 

「どうしたの? どこが痛い? しんどいの? 大丈夫?」

 

どうやら、何を言ったかまでは聞き取れなかったようだ。私は、そっと安堵の息を吐く。

 

「大丈夫だよ、お姉様。今日は手足の感覚がないだけで、とても楽なの!」

 

そう、笑顔で言ったはずなのに。

 

「そう…それは良かったわ。そうだ、絵本を取ってくるわね」

 

レミリアは私の黒く変色した手を握りしめ、顔をくしゃっと歪めそう言うと、慌てて部屋から出て行った。

 

「……上手く、笑えてなかったのかな………」

 

お姉様の笑顔が好きなのに、また、泣かせてしまった。

 

 

 

ねぇ、フラン? 貴方には、こんなに素敵なお姉様がいるのよ? 待っててね、出来るだけ早く、貴方にこの体を返せるよう、私は消えてみせるから。

だから、だからどうか、フランの魂よ、消えていないで。

 

 

 

◇sideレミリア

 

 

 

「今日は手足の感覚がないだけで、とても楽なの!」

 

その言葉を聞いた瞬間、目頭に熱いものが込み上げてくるのを感じた。

ダメだ、ここで泣いては。辛いのは、フランなんだから!

 

慌てて本を取ってくると言う適当な言い訳をつけて、急いで部屋から退出する。

そして、部屋を出ると同時に走り出し、階段を駆け上がってから、一気に感情が爆発させた。

 

「何なの…何なのよそれ! 手足の感覚がない!? それのどこが、楽だって言うのよ! 何でフランの手足が、あんなに黒いのよ! 何で!? 何で!! 何でそんなことを、笑顔で言えるのよ……」

 

行き場の無い怒りを、壁に叩き込む。壁を砕く音が何度も響くが関係ない。今はこの感情を、何かにぶつけたかった。何度も何度も殴り、思いっきり殴ろうとして、パシリと、腕を取られた。

 

振り向くと、そこにはお父様とお母様がいてーー………溢れる涙は止まらない。

 

「何で……」

 

足に力が入らず、その場に崩れ落ちるように座り込む。

 

「何で……フランがあんなに辛い目に合わないといけないの?」

 

それは、純粋な問いかけ。どこまでも残酷で理不尽なことに対しての、素朴な疑問。

故に、その姿は儚く、弱々しく、痛々しい。だが、それ以上にフランはーー。

 

手から血を流し、涙は頬を伝い、レミリアの目に映る感情は、一体何なのだろうか。怒り? 悲しみ? それとも、憎悪?

 

そんなレミリアを、両親はきつく抱きしめた。

 

 

 




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