病弱フランちゃん   作:猫の休日

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……壁|-°)チラッ
……壁|-°)じっ〜

……壁|-°)=⊃◯スッ
……壁|=〻ササッ


第2話 寂しい

 最近、姉様が部屋に来なくなった。

 いや、正確には来てるのだが、毎日来ていたのが数日おきに変わってきている。

 お父様とお母様に聞いてみたところ、何やら知り合いの魔法使いのところに出かけているらしい。パチュリーかな? と思ったが、どうやらその魔法使いは"幻界の魔法使い"と呼ばれる魔法使いらしい。呼び名から察するに、幻惑系統の魔法が得意なのだろう。

 そんな魔法使いに、姉様はなんの用事があるのだろうか……。

 

 とまぁ、そんな感じで最近少し寂しい思いをしている。

 お父様とお母様は毎日来てくれるが、忙しい身だしそんなに長くはいられない。だから、どうしても一人の時間が長くなってしまう。

 そんな時、理由のわからない漠然とした不安と、寂しさを覚える。

 

 今日は、お姉様、来てくれるかな……。

 

 

 

 

 

 

 痛い。

 今日は体全身が痛い。痛くて痛くて、眠れもしないし、だからといって体を動かすことすらできない。指を少し動かすだけで、全身を針で刺したような痛みが疾る。

 

「っ……」

 

 いつになったら、この痛みはなくなるのだろう。

 いつになったら、この苦しみはなくなるのだろう。

 

「痛い、痛い……いた、い……」

 

 ビキビキ、ビキビキと、体全身が軋む。痛みには慣れたはずだった。でも、この痛みは辛すぎる。涙が溢れて止まらない。

 

「痛い、痛いよぉ……」

 

 その日1日、ずーっとそんな調子で、その日は一睡もできなかった。

 そして、お姉さまは一度も姿を現さなかった。

 

 

 

 

 

 

 3日目。

 今日もお姉様は来てくれなかった。

 毎日欠かさずに来てくれたのに、今日は体が重たいだけだから、お姉様とたくさんお話できたし、何なら体を動かして遊ぶこともできた。体は重いと言っても、私は吸血鬼。このぐらいなら壁伝いに歩くことぐらいできる。外にだって出れた。

 でも、今日も、お姉様はこなかった。

 ……寂しい。

 

 

 

 

 

 

「寂しい……」

 

 ベッドに寝転びながら、ポツリと声を漏らす。

 今日の症状は体が重くなるのに加え、全身に謎の痣ができ、そこがジュクジュクと痛む。

 不思議な痣だった。黒……というよりかは紫に近い色合いで、まるでフランの体を覆いつくさんとばかりに、少しずつ、少しずつ蝕んでいくように広がっていく。

 お母様が持ってきてくれた、若い人間の女性、それも処女の血を飲み、吸血鬼特有の回復力で何とかその進行を遅くしているが、少しづつ、しかし確実にその痣は広がっている。

 この痣が全身に広がったとき、私はどうなるんだろうという恐怖。広い部屋に一人っきりという孤独感に、不安。そして何よりも、5日も姉に会っていないという寂しさから、今のフランはかつてない程に弱り切っている。

 

 そんな時、不意にドアのノックする音が聞こえた。そして、

 

「……フラン? 入るわよ」

 

 大好きな姉の声がした。

 久しぶりの姉の声に、スーっと、頬に流れる涙。

 

「フラン〜? ッ!!! フラン!」

 

 お姉様は私の姿を見るとすぐさま私の横まですっ飛んできて、私の腕を取る。

 そこには、ジュクジュクと躍動しながら少しずつ広がる痣があった。

 

「フラン大丈夫!? これは何!!?」

「分か……んない。……お姉様、体が重い…。痣が痛いの……。

 ……ねぇ、この痣が広がったら、私、死んじゃうのかなぁ……」

 

 ずっと、怖かった。この正体不明の痣が広がるのを、ただ眺めてることしかできないのは。吸血鬼だからこそ、滅多に感じることのない死の恐怖を、その片鱗を少しでも感じて。

 だからこそ出たその言葉に、レミリアは顔を真っ青にして、大慌てで部屋を出て行った。

 

 そして、すぐに戻ってきた姉の手には、清潔そうな布が握られていた。

 そして、

 

「このっ! 取れろ! 取れろ!」

 

 フランの腕を取り上げては、力の限り痣を拭き取ろうと擦った。

 

「お姉……様……」

「大丈夫よフラン! すぐにこんな痣、お姉ちゃんがとってあげるから!」

 

 そう言って、血走った目でひたすら私の腕を擦るお姉様に私は何も言えなかった。

 ただ、お姉様を不安にさせてしまった罪悪感で、胸が苦しい。

 きっと、今のお姉様は見えていないんだろう。痣を取るどころか、皮膚とその下の肉を、引きちぎるかのように擦っていることに。

 手に持つ白い布が、私の血で真っ赤になっていることに。

 

 どのくらいそうしていただろう。長かったような、短かったような。その間、お姉様はひたすら私に「大丈夫だからね、私がこんな痣なんかやっつけてやるんだから」といいながら、しかし再生した腕の取れない痣を見ては、「このっ! ……このぉおおおお!」と、また皮と肉をちぎりながらも擦る。

 それが終わったのは、お父様とお母様が、見知らぬ人間のお医者様のような人間を連れて、部屋に飛び込んできた時だった。

 

 

 

「何をしてるんだ! レミリア!」

 

お父様の怒鳴り声に、お姉様は、はっ、と、まるで今意識を取り戻したかのように、その瞳に理性を取り戻した。

 

「え……あ、え? あ、フラン? ち、ちがうの、ちがう、わたし、は……」

 

 目の焦点が合っていない。手に持っていた血に染まった布を取り落とす。レミリアの震える手も、真っ赤になる程の血が付いていた。

 私はすぐにその手を握り、笑顔を見せる。

 

「大丈夫。大丈夫だよお姉様。分かってる、分かってるから。ありがとうお姉様。私、お姉さまがきてくれただけで嬉しい」

 

「ッッ!!」

 

 その瞬間、お姉様は私の手を振り解き、一目散に部屋から出て行った。

 

「レミー!」

 

 その後を、お母様が走って追いかける。

 私は、ただそれを眺めることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 あの後、お父様が連れてきた人間のお医者様に私の症状を見てもらった。

 屋敷の専属医には分からなくても、もしかしたら人間の、それもその中で高名な医者ならば何か知っているかもしれないと、日が高いのにお父様とお母様が無理に拉致ってきたそうだ。

 お医者様は終始震えていたが、私の症状を見るなり私が吸血鬼なのを忘れたのか真剣に見てくださった。なるほど、確かにこのお医者様は高名なのだろう。

 しかし、残念なことに結果は不明のままだった。

 魔女のかける呪いに似たようなものがあるらしいが、それは広がりもしなければ痛みもないらしい。ただそこにあるだけで、その呪いがかけられて7日後、唐突にその者の命を奪うものらしい。つまり、似て非なるものだ。一応その呪いの解呪する呪文を唱えてもらったが、効果はない。念のためお父様も唱えたが結果は同じだった。

 

 お父様はまた何かあった時に直ぐに聞くためか、お医者様を殺さずに一旦町に返した。この屋敷に連れてくるために引越しの準備をさせるらしい。3日後に迎えに行くようだった。抵抗すれば殺す。助けを求めても殺す。全員だ。そう脅していた。

 

 

 そして、夜。

 遠くからお姉さまの泣き叫ぶ声が聞こえる。お姉様が悲しくて、悔しくて泣いている。そんな泣き声。私も、悲しくなる。辛くなる。お姉様、どうか泣かないで。

 私はその声を聞きたくなくて、強く、耳を塞いだ。

 




お待たせしました。(いや、本当に)
安西先生……書いてて、辛かったです。

もっと「フランちゃん可愛いやった〜!」をしたい……したい………。

あ、フランちゃんの痣は、NARUTOの呪印のイメージが1番近いです。
なんか最後力尽きて駆け足で書いてしまった……。
すまぬ。すまぬ……。

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