リリーは私と違って多くのモノを持っている。
一度は挫折しかけるも無事取り戻したピアノの才能。
Aqoursの作曲をできる音楽感覚と作曲センス。
誰に対しても分け隔てなく接せれるやさしさ。
綺麗な髪に整った顔立ち、すらっとしたスタイル。
挙げればきりがない。そんなリリーは私に対しても優しくしてくれて、ライラプスの時以来、距離は縮まり私の趣味に付き合ってくれることも多々あった。
でも、いつかは私から離れて行ってしまう気がする。私は最近それが怖い。でも、それを言って心配かけるのも嫌。
そう思うようになってから、私はリリーに恋しているのだと気づいた。
「善子ちゃん、準備はいい?」
「もちろんよ。千歌の方こそ、途中で逃げるんじゃないわよ」
私と千歌はみとしーの前に立っていた。今から決戦に挑むように。
新年度になって早二ヶ月。リリーへの恋心はあるも、その気持ちを言えぬままこんなに経ってしまった。
千歌もまた私と同じような状態にある。
千歌の場合は曜のことが好きで、だけど告白してフラれるかもしれないから告白に至れない。互いに想い人がいるも告白できないから相談し合っている。だから、私の悩みを千歌にはどうにもできないし、千歌の悩みを私がどうにかすることもできない。
その結果、当たって砕けろという事で今日告白を決行することにした。フラれる可能性はあるけど、その時はその時。このままリリーへの気持ちを秘め続けるのは耐え切れなくなった。だから、今に至る。
一人だとヘタレそうだから千歌も巻き込んで。
私はリリーに、千歌は曜に告白するために二人を誘った。それぞれだとヘタレそうだけど、これならヘタレる訳には行かないし、何かあればフォローし合える。
「おはヨーソロー!」
「おはよう」
私と千歌は早めに水族館の入り口前に来て今日の予定を確認していると、バスから曜が降りて来て、向こうからリリーが歩いてやってきた。これで今日のメンバーはそろった訳ね。
「おはよ、二人とも」
「おはよー。じゃっ、行こっか」
挨拶を返すと早速中に入る。何度も来たことのある場所ではあるから新鮮味はないけど、最近はすっかりご無沙汰だったからまぁ楽しめなくはないと思う。
「あいかわらずセイウチ大きいわね」
「そうだね。内浦に来るまでは水族館はほとんど来たこと無かったし、結構距離が会って陸の上で寝てたから、ここでこうして泳いでるのを見て最初は驚いたっけ」
「へー。チカはここ以外でセイウチって見たこと無いから、ここのイメージしかないや」
「うんうん。この辺りだとセイウチはここにしかいないもんね」
入ってすぐのところにはセイウチの水槽があり、そんな会話をしながら水槽を眺める。私もここでしかセイウチを見たこと無いから、そのうちリリーが見たって言う水族館にも行ってみたいわね。できれば、リリーと一緒に。
「それにしても、ずっと泳いでるよね」
「まぁ、エサやりの時間になるとさすがに泳ぐの止めるけどね」
「でも、それ以外はずっと泳いでるような」
「よーちゃんみたいに泳ぐの好きなんじゃないの」
「確かに泳ぐのは好きだけど、ずっとは流石に……」
セイウチの水槽を後にすると、ウミガメの水槽、魚の水槽と見て行く。その度にたわいのない話をしていた。
「わぁー、綺麗」
「そうね。私はここが一番好きかも」
続いてやって来たのはクラゲの水槽。赤や青など様々な色にライトが変わることで、クラゲもその色に変わり幻想的で、何度見ても綺麗で目を奪われる。だから、みとしーだと一番お気に入りの場所がここ。
「私もそうかも。この景色はここだけだし、ここに居るとなんだか気持ちが落ち着く」
「暗いから?」
「うーん、それもあるけど。ゆらゆらと漂っているクラゲを見てると癒されるのと、やっぱり綺麗だからかな?」
クラゲを見ながらそう言うリリーの横顔がライトでほのかに見え、ここが狭めだからか想像以上にリリーとの距離が近くてドキドキする。
それと、この景色に負けないくらいリリーの顔も綺麗に映る。
「そう……リリーも綺麗よ」
「え?あ、ありがとう……よっちゃんも綺麗だよ」
「あ、うん。ありがと」
「「……」」
この景色もきれいだけど、リリーも綺麗だから思わず思ってたことが口から零れると、リリーは照れながらそう返した。思ったこととは言え、想像以上に恥ずかしい。あと、いきなりこんなことを言ったせいでリリーに変って思われてないよね?
それから、二人とも照れて沈黙が流れる。
「あっ、こんなところに居たー」
「千歌ちゃーん」
そして、沈黙をクラゲ水槽の外に置いて来てた千歌と曜によって破られたのだった。
~☆~
「はい、拍手」
ぺチぺチ
パチパチ
クラゲ水槽を出た後、私とリリーの間で微妙な空気が流れつつ、なんだかんだでショースタジアムでショーが始まるという事でショースタジアムにやって来てショースタジアムにやってきた。
私たちは真ん中の辺りからショーを見ていた。
ステージにはアシカがパフォーマンスしていて、鼻先でラケットを支えてみせて、アシカが拍手して私たちに拍手を強要し、拍手の音が鳴り響く。
「わー、すごいバランス感覚だなぁ。しいたけでもできるかな?」
「うーん、どうだろ?難易度高そうだけど。でも、見てみたいかも」
「そっか。じゃぁ、帰ったらやってみよーっと」
「リリーもプレリュードにやらせてみるの?」
「あはは。流石にあの子じゃ無理かな?しいたけちゃんくらい大きくないと」
クラゲの水槽から時間が経ったおかげか、流石にもう照れも無くなり普通に喋れるようになり、そんなことをしゃべりながらショーは進んで行く。トレーナーが輪っかを投げれば、器用に首を動かしてキャッチしていき、全てキャッチしてみせる。その後いくつかやると、アシカからトドにチェンジする。ただ、トドは特にできる物がなく、ベロを出すだけだった。
「前来た時もこれだけだったけ?」
「そうだねぇ。流石にアシカみたいに器用に動けるって訳でもないから、そもそもできる物が少ないからね」
「それでいいの?」
「いいんじゃない?ベロ出してるの可愛いよ?」
トドに対する評価は各々で、リリーはそう評価していた。果たして可愛いのか?時々リリーの思う可愛いと私の思う可愛いに差がある気がする。
そんなことを考えていると、続いてイルカのターンになる。
プールに入って来るなり、プールを縦横無尽にすいすい泳ぐ。やっぱり、ショーだと一番イルカが輝いてるわね。
トレーナーが腕を振り上げると、イルカが三頭同時に跳び、綺麗にそろっていたことで拍手が起こる。
その後、水面に投げられた輪っかを口先に引っ掛けて運んだり、ヒレでボールを挟んだりと、多種の演技をすると、いよいよ最後の種目に入る。水面から五、六メートルの位置に下げられたボールに跳んでタッチするというもので、一頭がプールを勢いよく泳いで助走をつけ、勢いよくボールに向かって跳ぶ。勢いは十分で、ボールに見事にタッチすると、今日一番の拍手が鳴り響き、ショーが終了した。
「何回見ても、やっぱりすごいよね。あの高さを跳ぶって」
「それもだけど、トレーナーの指示をちゃんと理解して動くのもすごいわよね」
「だねー。さて、この後どうする?」
「まだ行ってない、ペンギンとかの方行こー」
「了解であります。二人もそれでいい?」
「うん」
「ええ」
「それじゃぁ、ヨーソロー」
行き先を決めると、曜がそう言って早足にペンギンとかがいるエリアに向かい、私たちはそれを追いかける。
アシカの海やペンギン、フラミンゴを見ながら歩くと、千歌がそばに寄って来る。
「善子ちゃん。そろそろだね」
「ええ。もうじき見終わるし、決行ね」
「できそう?」
「ええ。今日一緒に居てやっぱり好きだなぁって思った。だから」
「そっか。私も」
ここを見終えれば、みとしーの見るエリアは踏破したことになり、もうじき約束の時が来る。回り終えたらやろうと二人で決めていたから。
千歌に言った通り、リリーといてもっと一緒に居たいと思った。もっといろんな場所に行きたいと思った。
だから、私はリリーともう一歩進んだ関係になりたい。
「よっちゃん、千歌ちゃん。何話してるの?」
「なんでもないわ」
「うんうん。この後どうしよっかーってね」
「私はお昼食べたいかな?」
「そうだね。もうすぐお昼の時間だね」
「そうね……ねぇ、その前に一つお願いがあるんだけど」
~☆~
「やっぱり、ここは何度見ても綺麗だね」
「そうね」
私とリリーはクラゲの水槽に戻って来た。千歌と曜は近くにはいない。今きっと別の場所にいる。
大事な話があると言ってリリーを連れ出し、リリーは特に何も言わずに来てくれた。
「……それで、話って?」
「うん。リリー、私ね。リリーのことが好き。リリーに恋してる」
胸がドキドキする。告白すれば今の関係からは嫌でも変わってしまう。でも、もう決めたから、踏み出す。
だから、リリーに聞かれて私は切り出す。
告白するならここと決めていた。一番好きなここで。
「初めて会った時、綺麗だなぁって印象で、優しい先輩って感じだった。それから、次第に惹かれてた。リリーの弾くピアノの音色が好き。すらっとしたその指が好き。堕天使が出ても普通に接してくれるその優しさが好き。挙げればきりがないけど、とにかくリリーの全てが好き!リリーのことを愛してる。だから、私と付き合ってください!」
私は私のリリーに対する想いを言葉した。リリーの返答がどうなのかはわからないけど、ちゃんと想いは伝えられた。
「……そっか。よっちゃん、私の事好きだったんだ」
「うん。リリーと一緒に居ると胸がドキドキする。だから、リリーともっと一緒に居たいって思ったの」
「うん。ありがとう、よっちゃん」
「答え聞いていい?」
リリーは私の言葉をちゃんと聞いてくれた。でも、まだ告白が受け入れられたのかわからないから、胸はドキドキしたまま。
「そうだね。返事しないとね」