七つの特異点を修復し、時間神殿の観測者を打ち倒した。
四つの亜種特異点を修復し、人類史に残った染みを修正した。
そして七つの異聞帯を滅ぼして、人類史を取り戻す……はずだった。

これは、全てを救ったはずのただの少年に与えられた、残酷な試練である。




注意事項
これは深夜、biwanoshinが思いついたネタを書きだしただけのものです。
そのため、その場のノリでガーッと書きだしただけのものであるため、穴だらけだと思います
「話の正しさ」よりも「その場のノリ」を重視しているので、穴まみれだと思います

それら全てを許容できると断言できる人だけ、ご覧ください

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さあ、皆の者!
時間を無駄にする準備はできたか!?
生ゴミへとダイブする覚悟はできたか!?
ありとあらゆる観点から見て何の意味も価値もないものへと触れる、その虚無へと旅立つ意思のあるものだけ、この先へ進むがよい!!!


堕落の獣、共感の英雄

 7つの世界を、滅ぼした。

 世界を救った少年に与えられたのは祝福ではなく、称賛でもなく、ただの日常ですらなく。救った世界を手に入れるため7つの人類史を滅ぼせという、あまりにも残酷な試練だった。

 

 それでも。それでも彼は。その少年は立ち上がり、(サーヴァント)を取った。もう一度、自分の生きた世界へ帰るために。真実を知ってなお、その全てを滅ぼすと決意した。

 そんな覚悟を読み取ったからこそ、英霊たちもそれに協力した。ただの少年でしかなかった彼が、この旅を続けると決意したからこそ。絶対的な正義ではなく対外的な悪となることを受け入れてしまった過ちがあったからこそ、彼らは少年の剣となることを良しとしたのだ。

 だが、その裏で。英霊たちはある種の危惧を抱いていた。彼らがその発想に至ったのは、当然の結末であったと言えるであろう。

 

 それを語るためにも、まずは彼らが最初に抱いた危惧を語ろうと思う。

 

 一つ目の旅。人類史を救うために行われたグランドオーダーの中で彼らが抱いたのは、少年が英霊として座へと迎えられることにならないだろうか、ということだ。

 

 はっきり言うまでもないが、少年の能力には英霊として座へ迎えられるだけのものは存在しない。本来であれば普通の家庭で生まれ、そのまま極々普通の人生を送り、何にも記録されない生涯を過ごしたことだろう。しかし、今回発生した異常事態が彼の人生に不相応な彩りを加えてしまった。

 

 能力は無く、祝福もなく。しかし功績だけは獲得してしまった。その功績(呪い)によって普通の死を迎えることもなく囚われてしまうのではないかと。それを危惧していたのだ。自分たちのように自らそうなる道を選んだわけではなく、生まれながらにそれだけのスペックを獲得していたわけでもないにもかかわらず、だ。

 

 されど、今回の旅路にて。彼らの危惧は、1段階上のものとなってしまった。ただ「人類史」を救うために明確な悪を滅ぼした旅から、「人類史」を救うために「人類史」を滅ぼす旅路へと。一度救ったが故に抱いたであろう人類史への愛を持って、人類史を滅ぼす修羅の道。人類を滅ぼすだけの人類愛。それはこれまでにも相対してきた、人類悪の在り方そのものだ。

 

 当然、彼はそれらとは異なる。

 

 原罪のⅡ・ビーストⅡ。己が子供たちのために夫すら切り捨てることを良しとし、にもかかわらず剣を向けられてしまった悲しき女神。ただ己が子供たちの母へと「回帰」したかった、女神ティアマト。

 

 原罪のⅠ・ビーストⅠ。人が本来抱くべき悲しみ、裏切り、略奪への負の感情。ソロモン王は受け入れたそれを目の当たりにし、このままの人類の未来に価値はないと結論し、死の概念の無い惑星を作り上げようと人類へ「憐憫」を抱いた、意志を持つ魔術式。人理焼却式・魔神王・ゲーティア。

 

 原罪のⅣ・ビーストⅣ。人間の競争と成長、妬みや悔しさを糧とし成長し手の付けられない害獣となる存在。カルデアという緊急事態中の限られた空間、そこに住む他者との「比較」をする余裕のない善の空間でのみ獣とならずに済んだ災厄の獣・キャスパリーグ。

 

 原罪のⅢ・ビーストⅢ/R。人類を救う救世主となれるだけの資質を有しながら、その全てを己の快楽のために使った女。自身のみが人間でありその他全ての人間は人の形をした虫でしかないと認識していたが故に、「人類()」への「愛欲・快楽」のため「人類(その他全ての虫)」を滅ぼさんとした魔性菩薩・殺生院キアラ。

 

 原罪のⅢ・ビーストⅢ/L。魔王としての側面、愛の神と言う性質によって選出された疑似サーヴァント。自らへ向ける愛を知らないにもかかわらず、他者へ向ける愛の全てを独占しようとした、「他者愛」のみを保有し人類を「堕落」へと導かんとする「愛欲」の獣。愛の神カーマ/魔王マーラ。

 

 彼らはその道とは異なる、もっと別の形をとることもできただけの存在でありながら、その在り方を選んだ者たちだ。にもかかわらず、彼が獲得してしまった特性はそれそのものではないか。

 だからこそ、そんな結末を警戒した。そんな終わりを想起した。そんな別れを覚悟した。

 

 あるものは、そうなってなお味方をするだけの覚悟を。

 あるものは、そうなった彼に滅ぼされるだけの覚悟を。

 あるものは、そうなった彼を滅ぼす覚悟を。

 

 しかし、結果として。彼らの覚悟は、不要なものとなったのだ。それ以上に残酷な結末を及ぼすことによって。

 

「なるほどな。確かに、言われてみれば。そうなるだけの素質を有していたというわけだ」

 

 そう言って彼は、一歩前に出る。否、一歩だけではない。もう一歩、もう一歩、と。自らが指揮した装甲車に背を向け、部下たちと距離を置き、心の距離を離していく。

 

「しかし、これは特殊な事象だったのだろうな。人類を愛したが故の結晶がカルデアスであり、ひいてはそれを保有するカルデアという組織であった。しかし物に愛が宿るわけもなく……であるのなら、それを担うものが必要だった」

 

 少年は彼を止めようとした。手を伸ばし、声をかけて。しかし、それは止められる。装甲車にてサポートをするスタッフでも、周囲に控える英霊からでも、隣で手を握る後輩からでもなく。他でもない、彼自身から。

 

「この場合、その選択肢は二つしかないだろうな。組織の行った功績を担うに足るのは、「実行した者」か「それを指示した者」か、だ」

 

 彼は視線でもって、少年を制した。その魂は既に塗り替えられ始めており。それ故に鋭く、冷たく、そして暖かくなった視線が、少年の足を止めた。

 

「ならばこれが、私の役割だろう。私自身の欲のために訪れ、あれだけの扱いをしたにもかかわらず……お前たちは、私を助けてくれたのだ。その恩は、返さねばなるまいな」

 

 十分に距離を取って。彼は―――ゴルドルフ・ムジークは振り返った。

 

「さて、そう言うわけで、だ。私はここに、カルデアの所長として最後の命令を下そうと思う。カルデア最後のマスターよ。眼前の人類悪を、滅ぼせ(・・・・・・・ ・・・)

 

 少年は、すぐにはそれに答えられない。当然だろう、これは彼にとって簡単に下せる決断ではない。

 

 味方であったはずの人物を倒したことは、ある。

 悪性蔓延る新宿にて、モリアーティを倒したのは自分であり。その出来事に、躊躇いなどなかった。

 だが、今回のそれはまるで異なる。モリアーティは初めからそのために動いており。だからこそ、それを倒すことをためらう理由がなかった。しかしゴルドルフは……まるで、そのつもりがなかったのだ。

 

 それでも、少年にはやる以外の選択肢がない。鼻を啜り、涙を袖で拭って、顔を上げる。クシャクシャの笑顔をゴルドに向けて……藤丸立香は、言った。

 

 ―――今まで、本当に、ありがとうございました―――

 ―――貴方はこれまでの所長と並ぶ、素晴らしい所長でした―――

 ―――大好きです、ゴルドルフ所長―――

 

 その言葉に。彼は、笑った。

 

「ハッ……まったく、そこは嘘でも「一番素晴らしい所長だった」と言わんか」

 

 そう言いながら。ゴルドルフが上げている顔は、この場にいる誰にも勝るほどにクシャクシャである。

 

 まだ一度も、他人に認められていない。まだ誰にも、愛されていない。

 

 そう絶叫した人物は、これまでに二人いた。一人目には、何もできず。何かをする暇もなく消滅してしまったのに対して。今回は、ちゃんと伝えたのだ。ちゃんと、伝えられたのだ。

 だからもう、彼らに迷いはない。頬を張り、令呪を掲げる。

 

「私はここに、人類を救うだけの力を持って、人類を滅ぼした功績を語ろう」

 

 そして。ゴルドルフもまた、自らの在り方を変革する。カルデアの行い全てを己の功績として騙り、取り込み、その在り方へと書き加える。否、その在り方を、塗り替える。

 

「顕現せよ。祝福せよ。ここに災害の獣、人類悪のひとつを成さん」

 

 膨大すぎる魔力が、その体を包み込む。肉が裂け、骨が砕け、そして構築しなおされるその苦痛を一身に受けながらも。彼は一切の悲鳴を上げることもなく、その詩を詠いあげる。

 

「地球を観測し、滅びの基点を算出し、それを救ったカルデアス。漂白された世界を虚数空間を経由することで渡り、基点となる人類史を滅ぼしたシャドウ・ボーダー。それら全てを取りまとめた人理継続保障機関フィニス・カルデアこそ、我が偉業である」

「令呪を持って命ずる。―――我がサーヴァント、その総力を持って人類悪・フィニス・カルデアを打ち滅ぼせ!」

 

 こうしてここに。人類悪の獣と人類史を救う英雄による最後の戦いが始まった。

 




はい、そこの君。今拾い上げた石は足元に捨てていきなさい。決してそれを投げてはいけないよ


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