翌日の仕込みを終えた衛宮士郎は静かに佇む彼女を見かける。
これは――いつかの夜の話だ。
タグの細かいとこすごい気になりますがわかり易くするため触れませんでした。
タグに『アルトリア・ペンドラゴン』を入れたのは実験的な意味でpixivでは付けてません。
◇
「なんだもうこんな時間か」
既に夜半前。遠く、鈴虫が鳴いていた。
食器を洗い、方暇に柿なんかを剥いてやって、興が乗り朝飯の下ごしらえなんてしてたらこんな時間だ。
「さて、この辺にしとかないと。明日に響いちまう」
手早く片付け、唯一の光源を絶つ。
◇
廊下で伸びながら自室を目指す。
「――はあ」
まだ息は白くならないでも夜は冷える。
外に視線を向ければ、夏を終えた秋空が少しだけ寒そうだ。この辺は冬でも暖かい。なんていうけれど、そろそろTシャツ一枚だけってのも辛い時期だろうか。
もう一度カレンダーを捲れば暖房器具の出番かもしれない。
「そうなると、コタツは出しても藤ねえは出なくなるんだろうな」
頬が緩むのを感じるのだった。
さて明日の夕飯は揚出し豆腐にでもしようか。なんて考えながら部屋に入ろうと、ふいに視線を縁側へ向け――
「え、セイバー?」
いつからそこに居たのだろうか。
窓の外、セイバーは呆、と佇み空を見上げていた。
今のでこちらに気づいた彼女は頬に掛かった髪をかいて振り向く。
「シロウ。すいません、起こしてしまいましたか?」
「いや、これから布団に入る所。セイバーはどうしたんだよ」
隣りを譲られたので折角だから邪魔することにする。
隣にくれば石鹸の香りが漂ってきた。風呂上がりだったのか、金砂の髪は濡れそぼり上気したその頬は少しだけ赤く憂いに満ちた表情を浮かべていた。
そんな横顔を見てしまえばこちらの心拍数も数拍あがってしまうもの。
「はい。空を――眺めていました」
そう言うとセイバーは空を見上げた。それに釣られて頭を上げる。
しかし、明星が見えるわけでもなく、曇り模様。今日の星空は特別綺麗なわけでもなかった。
暫く眺めていたが一向に星は輝きを見失ったまま。
つい不躾な質問をしてしまう。
「えっと、綺麗か?」
きっと彼女の故郷であれば無駄な光源も無く、綺麗な星空を眺めることが出来ただろう。
セイバーは少し困った顔をする。
「……確かに、私の時代と比べればここは明るすぎる」
「そうだよなあ。ここら辺は街灯が少ないって言っても街中だし、見えづらいよな」
「そうですね……ですが」
ゆっくり庭へ降りコチラに向かいたった。
その表情は雲影で隠れており、よく見えない。
しかしセイバーに誘われたのか、将またそれが分かっていたのか、やがて雲が晴れた。随分と厚い、鈍重の塊だったのだろう。隠れていたソレが顔を覗かせる。
「――今夜は月が綺麗ですよ」
ゆっくりと姿を現すその月は輝きに満ちていた。これら、星々を束ねても霞むことすらないだろう。曇のなく、影もない。
しかし、その輝きに負けないほど――セイバーの笑顔は咲き誇る花のように満開だったのだ。
それは半年前に土蔵で見上げた光景に似ていた。それ随分昔に感じてしまうのは何故だろう。
『問おう、貴方が私のマスターか』
状況は違えどその仕草だけは変わらない。無駄なんてない。
「――ああ、本当にいい月だな」
今さら柄にもなく『死んでもいい』なんてロマンチストな事を思いついたがそんなのどうでも良くなるくらい。大きな月。
こうして俺たちは――いつまでも、眺めていた。
――――最後の夜が終わるまで。
――END/Re:start――
あらすじとタイトル書くの凄く苦手です。
あと「月が綺麗ですよ」のシーン。
イギリス紀行のセイバーイメージです。