やはり俺がボーダー隊員なのはまちがっているようでまちがっていない。   作:スキート

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第2話 比企谷隊

「あれ? 先輩。こんな所で何してるんですか?」

 

 

 

 亜麻色の髪色をしたゆるふわビッチ系女子、一色いろはがそこにいた。

 

 

「……お前こそ」

 

「私は時々この部屋の掃除にくるんですよー。いつかまた使うかも知れないのに汚いのは嫌じゃないですか?」

 

  成る程、だから1年近く大して使ってないこの部屋があまり汚れていないのか。これに関しては正直驚いた。

 

「…まぁ、そうだな」

 

「先輩も手伝ってくださいよー。今日はめぐり先輩来れないから大変なんですよー」

 

 城廻めぐり。比企谷隊のオペレーターにして癒しキャラの代表格といっても過言ではない。

 

というか少し申し訳ないな。俺の知らない間に掃除をしてくれてたなんて。

 

「ほら、先輩もやってください」

 

 一色に「早くしてくださいー」と言われ、俺は指示通りにテキパキと掃除を始める。

 

 暫しの沈黙。半年前の仲違い以来、俺と隊員の付き合いが悪くなってからかれこれ3ヶ月くらい話していないので、どう話せばいいのかわからなくなってしまった。多分一色もそうなのだろう。

 

「……ね、先輩」

 

 突如、一色が沈黙を破る。

 

「……何だ?」

 

「……もう、ランク戦やらないんですか?」

 

「……今の所はする気はない」

 

「この隊もB級最下位。先輩の個人(ソロ)総合だってずっとずっと上げて頑張ってたじゃないですか…」

 

「……そう、だな」

 

 俺はついつい言葉に詰まる。

 

 

 

一色の瞳には涙が溜まり、今にもこぼれ落ちそうだった。

 

俺はそんな一色を黙って見ることしか出来なかった。……一色は隊として活動したかったのだろう。あの時間か好きだったのだろう。

 

 

 

 

「……い、今まで頑張ってきたじゃないですか‼︎ A級にも上がったじゃないですか‼︎ こんな所で辞めちゃうんですか⁉︎」

 

「……………」

 

 一色から涙がこぼれ、俺は頭の中で投げかける言葉を探すも何も口に出すことは出来なかった。

 

俺は最低だ。女の子1人泣かせるまで追い込んでいるなんて気がつかなかった。

 

「…確かに半年前、私たちが喧嘩をしちゃってこうなったのはわかってるんです。でも……別に私たちは先輩を責めたかった訳じゃないんですよ……!」

 

「……あの時の俺がバカだったのはわかってんだよ。今になってみたら俺のことを思ってのことだってのもわかってる」

 

「……先輩は、小町ちゃんを助けたいんですよね…?」

 

「……ああ。助けたいに決まってる」

 

俺の声は震えていた。

 

 

 

 俺は今まで逃げていたのだ。小町を助けるつもりで今まで死に物狂いで力をつけてきた。もう何も失わないように、俺がこの手で守りきると決めた。半年前、俺は事故に会い、ボーダーの活動を暫く休んだ。

 

そして、その休んだ分を取り戻すために死に物狂いで働いて、入院してた時の勉強に追いつこうとして何度も徹夜をして頑張った。

 

けど、その結果体を壊し、隊員と仲違いを起こして、今までそれを見て見ぬ振りをしていた。

 

俺は、俺の手元には何もないのだと思っていた。

 

 けれど、小町を失ってからも俺は大切な物を手にいれているのだろう。大規模侵攻後に入ってきた新しいボーダーの仲間。そして何より、俺をここまで支えてきてくれ比企谷隊の3人。だがそれにも俺は向き合わなかったのだ。

 

「…でも、俺の今の力じゃ助けられない‼︎ 俺1人の力じゃ、守りたいもの1つも守れない‼︎」

 

 …『守れない』じゃない、『守ろうとしていない』んだ。A級のトップまで登りつめた俺は、きっと慢心していたのだろう。『今の俺なら何でも出来る』と。

 

「1人じゃないです‼︎ 先輩には色んな人たちが付いてます! 私たちだっています!」

 

「…一色」

 

「なんでもかんでも1人で背負わないでください‼︎ 私は先輩に憧れてボーダーに入ったんですよ‼︎ 情けない姿見せないでくださいよ‼︎」

 

 ここまで女の子に言わせて、男の俺が黙ってちゃカッコ悪いだろう。

 

……ああ。本当にカッコ悪い。カッコ悪すぎて自分でも反吐がでるくらいだ。

 

「……すまん一色。見苦しいとこ見せた」

 

 俺は顔を上げた。俺は一色に『気づかせてもらった』。…いや、『気づいていたけど気づかないフリをしていた』のだ。

 

 何もしなくてどうする。何もしなかったら小町は帰ってこない。やって後悔するのとやらないで後悔するのでは全くもって意味合いが違う。

 

「わかればいいんですよ。ぐすっ。ほんとめんどくさいですね」

 

 一色はまだ溢れる涙を拭いながらそう言った。

 

「ああ。すまん。生憎そういう性分なんでな」

 

  俺は涙が止まった一色を見据えて真面目な口調で話す。

 

「面倒かけたな一色。ありがとう」

 

 俺はすぐさま玉狛支部に走り出す。何となくだが、今すぐやらないといけない気がした。

 

 

 

 

 逃げるのはもうやめだ。

 

 

 俺は半年前、選んだ選択肢を間違えたのだ。

 

 

 間違えたことに気づかず、また間違った道を正しいと思い込み進んで行く。

 

 

 そうやって人は、いつしか本当に戻れなくなるのだろう。

 

 

 

 だが、間違いに気づければ話は違うのかも知れない。

 

 

 

 進むしかないんだ。例えこの選択が間違っていたとしても、周りのみんなからしてみれば最適解ではない答えを選んだとしても。

 

 

 

 きっと、間違え探しをしても見つからないのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────何故なら、俺が導き出したその答えを間違いなどとは思っていないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 【ISSIKI IROHA SIDE】

 

「いろはちゃん。遅れてごめんね」

 

 比企谷隊の隊室に、オペレーターであるめぐり先輩が入ってきた。

 

「あれ? 来れるようになったんですか?」

 

「うん。どうにかね。で、それより来る途中に比企谷くんが猛ダッシュでどっかいったんだけど、どうしたの?」

 

「…先輩が漸くやる気になったんです」

 

 私がそう言うと、めぐり先輩は驚いたような表情を見せ、少し涙ぐむ。

 

「ほ、ほんとに?」

 

「はい!」

 

「よ、よかったぁ……」

 

 きっと、めぐり先輩も私と同じ気持ちだったのだろう。それは、ここにはいない陽乃先輩も同じだろう。陽乃先輩もこの隊の隊員でNo.4攻撃手(アタッカー)として有名だ。

 

「さっさと掃除しちゃいましょう! めぐり先輩‼︎」

 

「うん! 私たちがしっかりと支えないとね!」

 

 これが、比企谷隊再始動の大きな一歩になるだろう。そのためには、この部屋もさっさと掃除して、私も強くならなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 。。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は早速玉狛支部に戻ってきた。それは、ある奴に稽古をつけてもらうため。

 

「桐絵、お前に頼みがある」

 

 俺が稽古を付けて貰おうとしてる相手は、No.3攻撃手(アタッカー)である小南桐絵である。

 

「ど、どうしたのよ? そんなに改まって」

 

「俺に稽古をつけて欲しい」

 

 俺がそう言うと、桐絵の表情が少し曇る。

 

「……いろはちゃん達とは仲直りしたの?」

 

「うぐ……一色は大丈夫だが雪ノ下先輩と城廻先輩はまだ…」

 

「…今度会ったらすぐに謝りなさいよ」

 

「…おう」

 

少し気まずい空気が流れたが、桐絵がこっちをじっと見つめ仕切り直すような言葉を俺にかける。

 

「ま、いいわ! あんたのその腐りきった根性、叩き直してくれるわ!」

 

「ああ。助かる」

 

 

 

 ─×─×─×─

 

 

 

「はぁ? こんだけできてあんた半年のブランクがあったって訳⁉︎」

 

「…はぁはぁ。そうだが」

 

 結果は4-6。桐絵に勝ち越される結果となった。

 

「ふざけんじゃないわよ。何が私に「稽古つけてくれ」よ。こんなんなら忍田さんのところに行ってきなさいよ」

 

「…行くならお前に勝ってからだ」

 

「ふんっ! 生意気ね! まぁいいわ。しっかりとその根性叩き直してボコボコにしてやるわ! 覚悟しなさい!」

 

「…お、お手柔らかに」

 

 こうして俺の修行の日々が始まる。もう一度大切なものを取り戻すための長い長い日々が。

 

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