一方で別のところではあの人とあの人が再会して……?
**結城友奈**
19人の勇者と巫女でさらに賑やかになった勇者部。元の6人だけでも楽しかったけど、キツキツの勇者部部室に来る毎日はもっと楽しい!
私なんかは高嶋ちゃんとよくおしゃべりしてるけど、東郷さんもぐんちゃんと熱く語り合ってるし、風先輩たち上級生の3人も少し大人びた話をしてる時がある。樹ちゃんも下級生組のお姉さん役として頑張ってる。
「あれ? そういえば夏凜ちゃんと園ちゃんがいないなー」
そんな日々も気付けば1年が経った。
本当なら風先輩やせっちゃん、棗さんが卒業するはずだけど、この世界では神樹様の力で時間が止まっているから歳はとらない。
だから、風先輩はよく『永遠の17歳』ならぬ『永遠の15歳』ね! ……なんて言っているけど、私にはよく分からない。
すると、部室の扉が開き、竹刀を持った夏凜ちゃんが入って来た。
「友奈、剣道部の依頼の時間よ。準備できた?」
「あ、夏凜ちゃん。ごめーん、忘れてたよ」
「たっく、先行ってるわよ」
「待ってよー」
じゃあ、今日も元気に依頼こなして来ます!
**乃木園子(小学生)**
園子先輩は天才です~。
あ、これだと自分で自分を天才って言っているみたい。
まあ、いっか~。日向ぼっこが気持ち良ければそれでよし~!
「ああ~、絶好の日向ぼっこ日和だよ~」
「お布団もぬくぬくで気持ちいいです~」
「じゃあ、こうしたらもっとぬくぬくだ~!」
「わ~! 抱きつくの反則です~!」
今、私と園子先輩は二人で布団を屋上に敷いて寝転んでいる。
見上げる先の青空にも、ふわふわな雲たちが私たちと同じように寝転んでいる。あの雲さんもお布団みたいで気持ち良さそう~。
目を瞑って次に開けたらあの雲でスヤスヤしてたりしないかな~。
「ねえ、そのっちはこっちの世界、楽しい?」
「はい~。園子先輩とっておきの場所も教えてもらえて楽しいですよ~」
「そっか~……」
急に園子先輩の抱き締める力が強まった。
「……? 園子先輩?」
「……楽しい思い出、いっぱい作ろうね。私たちとも、わっしーやミノさんとも」
「はい……」
なんだろう。未来の自分だからかな。園子先輩、少し寂しそう。
私は園子先輩の胸に頭をつけてみた。
「園子先輩、私はまだまだここにいると思うし、居たいです。だから、いっぱいいっぱい遊んで、いっぱいいっぱいお昼寝しましょ~!」
「……そうだね。ありがとう、そのっち」
園子先輩の手が私の頭をナデナデしてくれる。
「えへへ~」
伝わって来る園子先輩の体温は何よりもぬくぬくでした~。
**安芸先生**
教育って難しいわね。
鷲尾さんたちや防人の指導をした実績を買われた私は大赦教育部門の部長に任命され、膨大な資料を前に頭を抱えていた。
今までは子供たち……という捉え方はしつつも、勇者や防人という『闘う集団』を監督することが主たる部分だった。
でも、来年度から任されるのは勇者や防人など関係ない、純粋な子たちの『担当教師』になることだ。
「私に出来るのかしら……」
「安芸神官」
「は、はい!」
すると、突然背後から呼ばれ、私は背筋を正す。
振り返ると、そこには大赦の仮面を付けた神官が立っていた。
ちなみに、神樹や天の神が退いた今も大赦の機能は続いている。私たちが『神官』と呼ばれていたり仮面が残っているのもそれが故だ。
「えっと……」
「ああ、仮面取らないと分からないですよね」
「あ、三好神官!」
私は慌てて席を立って一礼する。
そう。三好夏凜の実兄、三好春信神官だ。
大赦上層部の大半が神樹様の下に遣わした為、大赦内部の人事が大きく再編された。彼も年齢不相応の大出世をしたと噂には聞いていた為、もうお会いすることは無いと思っていたが、まさかこんな所でお会いすることになるとは。
「そんなかしこまらないで下さい。同期なんですから」
「す、すいません……」
三好神官は近くにあった空いている椅子を持って来ると私の隣に腰掛けた。
「まあ、安芸神官も座って下さい。どうですか、最近は」
「で、では失礼して。……そうですね」
今の立場は違えど、同期の頃と変わらない三好神官に安心した自分が居たのかもしれない。私は三好神官に教育者になる不安を少しずつ吐露した。
「なるほど……。私もお役目とか関係なく子供たちを指導したことは無いですから専門的なアドバイスは出来ませんけど、とりあえず根詰めるのは良くないですよ」
そう言うと、三好神官はポケットからスマホを取り出した。
「最近、『勇者・巫女を讃える会』というものが発足しましてね。簡単に言うと、歴代勇者と巫女の偉業を後世に伝え続けるための……いわば大人たちによる勇者部みたいものなんですけどね」
三好神官がアプリを立ち上げる。
すると……。
――結城友奈は勇者である 花結いのきらめき――
えっ?
この声は、鷲尾さん?
「ゲームなら大人から子供まで全国民に彼女たちの歴史を伝えやすいのでは、ということからこのゲームが作られたんです。よく作り込まれてますし、気晴らしにどうですか?」
「私がですか?」
「はい。楽しいですよ。あ、ちなみに私のホームリーダーは妹です」
渡されたスマホで少しプレイしてみた。
正直、あの子たちいつの間にこんなに写真撮って声を入れたのか不思議でならない。あの三ノ輪さんも……いる。
神樹様はもう居ないはず。でも、神樹様の力? 疑問は拭えない。
だけど、皆の眩しい笑顔と微笑ましい日常生活をのぞき見できるこのゲーム。おかげで、いつの間にかさっきまで悩んでいたことを忘れることが出来ていた。
「この子たちだけじゃない。これからの子たちのためにも、大人の私が頑張らなくては」
私は勇者のように強大な力は持っていない。巫女のように神聖な声を聞く力も持たない。
でも、私は大人だからこそ出来ることをして、子供たちの笑顔を未来永劫守っていこう。
「それが、私の『お役目』だから」
私はスマホを三好神官に返し、再び机に向かった。
おわり