今回はリクエストをいただきました!
感謝です!
「──さあ! 希! 出かけるわよ!」
玄関のドアを開け放ち、絵里が声高に叫んだ。
「絵里、うっさい」
「お、二人共いらっしゃい。まずはお茶にしよか〜」
二人に手を振った希は、マグカップを見せる。
「え、出かけないの……?」
肩透かしを食らったような絵里に、
「そんな焦る事ないじゃないの。今日一日たっぷりあるんだから」
にこはさっさと靴を脱いであがってしまう。
「それはそうだけど……せっかく久しぶりに会ったのに……」
「だからこそ、やん? まずは近況報告せんとな〜」
「……確かにそうね。希の言う通りだわ」
「チョコレートも買っておいたんよ?」
「ホント⁉︎ 食べる!」
「……相変わらず、丸め込むの上手いわねぇ」
にこの呆れ顔に、
「にこっちだってあしらい方上手やん。それに」
「それに?」
「──それだけ、みんな変わってないって事やん?」
希はウインク。にこは肩をすくめ、
「希は策士っぷりに磨きがかかった気がするわ」
「あ、ひどい」
「──ほー、にこっち、留年してなかったんやなぁ。意外」
「ぬぁんでよ!」
「にこ、私達いなくて本当に大丈夫なの? ちゃんと勉強してる?」
「絵里の場合、冗談なのか本気なのか分からないわ……。それに、専門学校だって言ったでしょ。そう簡単に留年してたまるか」
近況報告と言いつつ、にこをからかう二人。にこは若干げんなりしながら、お菓子をつまむ。
「あっ、にこ! それ私が食べたかったのに!」
「ふふん、食べた者勝ちよ」
「わざわざ手元に寄せておいたのよ⁉︎」
「にこの手の届く範囲だったのが運の尽きね」
「……もしかしてわざと?」
「えー? にこ分かんな〜い」
「……じゃあいいわ。残りは私が貰う!」
「ちょ、キープは卑怯よ!」
「性悪なチビっ子相手なら仕方ないわ」
「誰が性悪なチビっ子だ!」
騒ぐ二人を見ながら、希は小さく笑う。
それに目ざとく気付いたにこが、怪訝な視線を向ける。
「どうしたのよ。急に笑って」
「チョコレート美味しかったの?」
見当違いな疑問を飛ばす絵里に、にこが息を吐く。
「そんな訳ないでしょ……。いつからそんな天然キャラになったのよ」
「いやー、にこっちも絵里ちも、やっぱり変わらんなーと思って。別々の大学に進んで、あんまり会えんくなってしまったのにな〜」
マグカップを揺らしながら、希は小さく笑う。
「何よそれ、当たり前じゃない。卒業してからまだ何年も経ってないわよ」
「でも環境が変われば、心境の変化だってあるやん?」
「アイドル研究部を立ち上げて、みんな辞めて、最後の一年をμ'sとして駆け抜けたにこが、環境が変わったくらいでどうにかなると思った?」
「ん〜、そう言われると、確かにそうやんな」
「でしょ。にこの精神はそんなにヤワじゃないわよ」
「ホントにこっち、何も変化ないもんな〜。──背も胸も」
「おい」
にこがらしからぬ低い声を出した瞬間、
「──そうよ!」
突然、絵里が立ち上がった。
「うわビックリした。何よ急に……」
「絵里ち、どしたん?」
元生徒会の相棒として慣れっこだったのか、希は動じる事なく訊ねる。
「こんな事してる場合じゃないわよ! 今日という日は今日しかないんだから!」
胸を張っていい知った絵里に、
「哲学やん?」
「せっかく今日の為に、色々と計画して準備してきたんだもの! にこと一緒に!」
ビシッとにこを指差す絵里。
「……ほ〜、にこっちも?」
「……何よその目は」
「いやー、ウチにはそんな事一切言ってなかったのになって思っただけよ? 誕生日なんていつも通り、とか言っとった気がするな〜」
「うっさいわね! サプライズよサプライズ!」
にこは誤魔化すように立ち上がると、手早く空になった食器を片付ける。
「そんくらいウチがやるよ〜」
「いいから。希は出掛ける準備してきなさい」
にこはしっしと手を振ると、有無を言わせずキッチンへ向かってしまう。
「ありゃ、にこっち優しいやん」
「ふふっ。──にこ、どうしたら希に楽しんでもらえるか何度も相談してきたのよ?」
「へー、にこっち可愛いとこあるやん」
こっそり耳打ちした絵里に、
「余計な事言ってないで手伝いなさい絵里!」
にこから声が飛んだ。
「──あと、にこが可愛いのは当たり前でしょ〜」
「にこっち、そろそろそれキツいで?」
「どういう意味よ!」
「──で、結局どこ行くん?」
準備を終えた希は、靴を履きながら二人に訊ねた。
「色々よ。一日予定詰め込んであるんだから」
「全部、到着してからのお楽しみよ」
にこと絵里は悪戯っぽく笑い、はぐらかす。
「む……そう来たか。それなら、ウチの占いとカンで当ててみせるやん」
希は愛用のタロットカードを取り出す。
「当てられるもんなら当ててみなさいよ」
にこも勝気な笑みで腕組みすると、
「じゃあ、希が当てられたらお昼ご飯は私達の奢りね。もし外したら……その時は分かるわね?」
絵里もそれに乗っかる。
「……上等やん。ウチの本気、甘く見ない方がいいと思うで」
希も希で不敵な笑みを浮かべると、タロットカードに手を置く。
「──あ、でも先にこれだけ言わせてもらうわよ」
「そうね。それが先ね」
急に真面目なトーンで切り出すと、にこと絵里は一度目配せ。小さく頷くと、同時に息を吸う。
「?」
何事かと身構えた希に、
「「希、お誕生日おめでとう!」」
二人は取り出したクラッカーを盛大に鳴らす。
「……へっ?」
「まずはサプライズ成功ね」
「今日一日、休む暇ないくらい全力でお祝いするつもりよ。覚悟しててね」
「…………」
頭にクラッカーのテープを乗せた希は、
「……もう、そんな事言われたら、楽しみすぎて占いどころじゃないやん」
ゆっくりはにかむ。
「ありがと、にこっち、絵里ち」
「──あ、クラッカーのゴミはちゃんと片付けてな?」
「「はーい」」