今回の副題は“IQ400の本気”。本気でサブタイトルにしようかと悩みましたが、シリアスブレイクもいいとこなので自重しました。
さて、次回はいよいよ千暁の仕返しが始まります。今回はその導入です。
“怪盗キッド”のプライド
―――――翌朝、警視庁。
昨夜のルパン三世によるダイヤ盗難事件の捜査会議が行われる中、
適当な捜査員を眠らせ、用具入れに閉じ込めてトイレで入れ替わったのだ。
(濡れ衣は晴れたみたいだけど…。)
既に警視庁の発表により、昨夜の“怪盗キッド”がルパン三世の変装である事は一般市民にも告知されていた。それにより“怪盗キッドの発砲”という汚名は晴れたが、今度は“怪盗キッドが名前と姿を使われた”という屈辱を知られた事になる。
少しでもルパン三世の情報を得る為に捜査会議に紛れ込んだものの、そこでもたらされた情報は
(わざわざ“
ともすると剣呑になりそうな表情をポーカーフェイスに保ちつつ、
トレンチコートとソフト帽に身を包んだ壮年の男。ICPO‐国際刑事警察機構に所属する、ただ1人のルパン三世専属捜査官、銭形幸一警部。
そして、銭形が言うには今回ルパン三世が狙うのは“チェリーサファイア”と呼ばれる宝石。
そしてその根拠は…
「メールが来た。」
「「「「「「えっ?」」」」」」
銭形の答えに、
「メ、メールが来るんですか?」
「来るよ。返信は出来んがな。」
驚く目暮に銭形が自身の携帯を開いて見せた。
「見る?」
「見ます!」
「見たいです!」
一斉に銭形の携帯に群がる刑事たちに
「お~、絵文字!」
「とっつぁん、おひさ~、だって。」
「アドレス、フジコLOVEだって~!」
(アドレスが手に入るとは思わなかったな…。)
思いがけない情報に、内心ほくそ笑みながらもそのアドレスを頭に叩き込む。
本当にそのアドレスから送信されているが、妨害によりメールの返信が出来ないのか。
或いはそのアドレスは単なるブラフなのか。
どちらにしても、ネット上には痕跡が残る。わずかでも痕跡が残っているのなら、それを追う事は
上手くいけばハッキングでルパン三世の使う端末を特定し、そこから情報を抜き出す事も出来るだろう。
大した情報は得られないと思っていたが、意外な収穫だった。それだけでも忍び込んだ成果があるというものだ。
(中森警部への“借り”もあるしね…。)
ルパン三世のせいで月島がめちゃくちゃになってしまった為、指揮を執っていた中森は責任を取らされ現在謹慎中なのだ。
お陰で青子も落ち込んでいた。その点でもルパン三世は許し難い。
決意も新たにこれからの行動を決めながら、捜査会議が終わるのを待つ。
―――――黒羽家、
「さて、どうしてやろうかな…。」
自室のパソコンで、USBメモリにコピーしたデータを眺めながら
捜査会議終了後、何食わぬ顔で警視庁を出た
いつ足が付いてもすぐに捨てる事が出来るように、最低限の設備しか無いそれらは、万が一があっても
それらのアジトは、犯行前の下見や犯行後の小休憩に主に利用しているが、時折偽名と複数のIDを使って株取引などで怪しまれない程度に稼ぎ、怪盗としての資金にしているのだ。
そして、そのうちの最も新しいアジト‐月ごとに更新を行う単身赴任者向けアパートの一室で、
端末内のデータをそっくりコピーし、ルパン三世に気付かれないうちにハッキングを終了させた。所要時間はわずか4分足らず。海外の複数のサーバーを経由した為、仮にハッキングに気が付いても
念の為、ハッキングに使用したアジトももう廃棄した。元々長期出張者や単身赴任者向けの月ごとに更新するアパートである為、大家も急な退去には慣れているし、いちいち詮索もしてこない。
荷物は残したままだが、個人的な物は一切置いていないし、アジトを後にする前に徹底的に掃除をしてきた為、証拠になりそうなものは髪の毛1本すら残さなかった。
他のアジトも同じような形式のアパートがほとんどである為、万が一の場合はすぐに引き上げられるようにしているのだ。
“チェリーサファイア”の秘密も、ルパン三世の真の目的も、そしてこれから狙うつもりの獲物も全てが分かった。何なら、ルパン三世の目的そのものを邪魔しても良かったのだが、下手をすれば
ルパン三世の出した予告状の日付は明日。となると、近日中に全ての片を付けるつもりだろう。
(3日…、いやルパン三世が本気を出すなら2日もあれば十分……。)
奪われたヴェスパニア鉱石を奪い返すのに、そこまでの時間はかけられないだろうから。
世界の軍事的バランスをひっくり返しかねない、究極のステルス能力を秘めた鉱石。それが盗まれ、軍事国家に売り渡されようとしているとなれば一大事。
一瞬、ルパン三世よりも先に盗んでしまおうか、という考えが全く無かったかと言えば嘘になる。ヴェスパニア鉱石があれば、今後の“仕事”は一層楽なものとなるだろう。
しかし、
あの鉱石は、下手をすれば第三次世界大戦を引き起こしかねない、危険な兵器にもなり得る。このまま一般的には知られる事の無いまま、そっとしておいた方が良い。
世界の為にも、ヴェスパニアの国民たちの為にも。
ルパン三世に任せれば、適切な方法で処分するに違い無い。
あくまでもルパン三世の目的そのものは邪魔する事無く、しかし一泡吹かせてやる方法…。
「ちょっとねちっこいけど、まぁ良いか……。」
『 月が弓張りし夜
3度目の
“セレネの微笑み”を頂きに参上します。
怪盗キッド
PS.
“紛い物”とは違う、本物の“ショー”をお魅せいたしましょう。 』
――――――――半日後、大阪府警に直接予告状を送り付けた
一先ず適当に変装し、老夫婦としてチェックインしたホテルの一室で、
「いいえ。“怪盗キッド”の名が
詫びる
いつもなら急な計画には
まぁ、それも無理も無い。
“怪盗キッド”は、
それは
世界情勢の安定の為にルパン三世の邪魔をする事は出来ない。
しかし、泣き寝入りするなど“怪盗キッド”のプライドが許さない。
せめてルパン三世に恥をかかせる位の事はしないと気が済まなかった。
あの予告状はその表れ。
暗に“お前の変装はその程度”“猿真似とは違う“芸術”を魅せてやる”という思いを込めているのだ。最後の1文にそれが十二分に表れている。
そして、今回
本来ならば“ビッグジュエル”専門の“怪盗キッド”が狙う獲物では無いが、“セレネの微笑み”はルパン三世が今回密かに盗もうと計画していた、歴史的にも大いに価値のある宝石だった。
盗もうとしていた宝石を横取りされた挙句に、自分の変装を
ルパン三世にとっては、否自身の“仕事”にプライドを持っている泥棒ならばさぞかし屈辱だろう。
まして、最初に“怪盗キッド”の名に泥を塗ったのはルパン三世が先。それを更にやり返す事など出来まい。仮にやれば裏社会中の笑い者である。
「見てなさいよ…!絶対に赤ッ恥かかせてあげるんだから………!」
「その意気でございます、お嬢様!!!」
決意も新たに、
予告状を暗号風にしてみたんですが、意味が分かった方いらっしゃいますかね…?
一応、次回答え合わせあります。
PS.もっとがっつりルパンの邪魔とかさせようと思ったんですが、下手に邪魔するとコナン世界でガチに第三次世界大戦とか勃発しかねないので平和的?解決法に落ち着きました。