やっぱりこういう日はふうにぼで(^^)/
私は一心不乱に双剣に見立てた2本の木刀を有明浜で振っていた。
「全く、相変わらずの鍛錬バカね」
「風!」
そこには、校章入りの通学鞄を持った私服姿の風が立っていた。
「何しに来たのよ?」
「うん? まあ、どーしてるかなーっと思ってね」
「何よそれ」
風とは久々の再会になる。
讃州中学を卒業する前こそ卒業してからも勇者部に入り浸るなんて…その、嬉しいことを言っちゃってくれていた。
でも、何だかんだ高校入学後は忙しいようで、新部長の樹に勇者部を任せてまだ部室に顔を出しには来ていなかったのだ。
「……」
私の剣舞をただ砂浜にしゃがんで見つめる風。
なんか、そんなにジッと見られると緊張するんですけど。
「なに、風? 言いたい事あるなら言いなさいよ」
「…ガッカリした?」
「は?」
「あんたじゃなくて、樹が部長でガッカリした?」
「別に。樹も慣れないなりに頑張ってくれてるし、頼りになる後輩よ」
私は木刀を砂浜に置き、トレーニングバック横のスポーツドリンクをあおる。
「そう。なら、安心だわ」
風が立ち上がりスカートについた砂を払う。
「なに?それだけ?」
「そうだけど?」
「やけにあっさりね」
「そうかしら」
本当にそれだけを聞くために来たのだろうか? 怪しい。
「…なんかあったでしょ、風」
すると、夏凜に背を向け歩きだそうとしていた風が足を止めた。
「ちぇー、やっぱり勘づかれたか」
「誰でも分かるわよ、このくらい!」
「やっぱりね。樹は自分のことが忙しいから気付いてないみたいだけど」
「まあ、樹は無理もないわね。で、結局なんなのよ?」
風は再び夏凜のそばに戻って砂浜に座る。
「よいしょ……。実は私、また高校でも勇者部作ろうと思うのよ」
「それって、まさかまた大赦の」
「違うわよ。純粋にボランティア活活動だけがお役目の勇者部よ。ただねー、新1年生がいきなり新しい部活作るなんてハードル高いのよ」
「でも、『なるべく諦めない』じゃないの?」
私も風の隣に座る。
「分かってるわよ。でも、やっぱり挫けそうになるのよ。2年前は大赦のお役目でもあったから、部員は最初から決まっていたようなもの。でも、今はゼロからのスタートよ。周りは知らない人ばかりだし、正直、どうしたら良いか分からないわ」
「樹には相談したの?」
「してないわ。あの子は部長と歌で手一杯よ。今のあの子に相談はできないわ」
たしかに樹は部長に就任したことで新しい仕事が増え、毎日忙しそうにしている。でも、楽しそうにしているし、歌の依頼が入った時なんかは友奈に以上の笑顔になることもある。
「もう少し樹のこと信じてあげたら? 樹は見かけ以上に芯が強い。それはあんたが1番分かってることなんじゃないの?」
「……」
それに、なにより……
「悩んだら相談なんでしょ?」
「……そうね。もう学校も違うし先輩として後輩達に心配はかけられないと思ったけど。うん、ダメね。ありがとう、夏凜」
えっと…なんか、面と向かって言われると恥ずかしいんだけど。
私は有明浜に響くさざなみの音としおらしい風を前にしたむず痒い空気感に耐えかね、2つの木刀の片方を風に投げ付けた。
「ちょ! 夏凜、危ないじゃない!」
「風、今から決闘するわよ!」
「は?」
風に考える暇も与えずひと息胸を空気で満たして一気に吐き出すと共にダッシュ! 一瞬両足が宙に浮き、次に砂浜を捉える時には頭の上から風目掛けて木刀を振り下ろしていた。風も慌てて木刀を顔の前で構えて対応してくる。さすが、元大剣使い。私の木刀を真正面から受けずに横に受け流して勢いを殺してきた。
「くっ! やるわね風」
「それはありがとう。でも、急に何よ」
正直、こんな事を言うのは柄じゃないんだけど……。
「風。私は的確なアドバイスは出来ないけどさ。……その、身体を動かしてスッキリする相手にはなってあげれるわ。だから、なんかモヤモヤしたらここに来なさい。私が相手になってあげる」
2回、さざ波の音がふたりの間を抜けて行き。
「……ふふふ」
微笑んだ風は私に木刀を預けると再び立ち上がった。
「ありがとう。頼りにしてるわよ、三好夏凜副部長!」
風はそう言い残して有明浜から去って行った。
全く、世話の焼ける犬先輩だこと。
……でも、久々に風と話せて楽しかったわね。
おわり