どんな謀略においても、ある段階で被害者はうたがいを持ちはじめる。そしてふりかえってみると、すべてのできごとがとある方向へと収斂していることに気づく。 そうなった時点で被害者の目には、耐えがたいほど大きな損失が見えてきている。そして自分が罠にかけられたことを認めるのが屈辱なあまり、謀略の可能性を否定しようとする……というのが、あのときの父上の説明だった。だからゲームはそうなってもまだ当分つづく、と。
父上は、こういう失敗を二度とするな、という警告もしていた。
だがそのまえに、父上はミスター・エイヴァリーに、クッキーをすべて食べろと言った。その様子を見せられ、ドラコは泣いた。わずか数時間まえにドラコが父上からもらった大切なクッキー一瓶。それがミスター・エイヴァリーに一つのこらず巻きあげられたのだった。
だからグレゴリーから〈例のキス〉の話を聞いたとき、ドラコはおなじみの感触を腹の奥のほうで感じた。
ときには、ふりかえってみてやっと、なにかが見えてきたりもする……
(明かりのない教室——ここ数カ月、週一回つかわれているのだから、もはや
あのときハリーはグレンジャーを押しかえして、『キスはなし、って言っただろ!』、と言った。
ハリーはきっと、『彼女はぼくを困らせようとしてやっただけだ。このまえぼくにデートをさせたのとおなじやりくちだ』、とでも説明しようとするのだろう。
だが、実際になにが起きたかについては、すでに裏がとれている。グレンジャーはハリーを救うために、ディメンターの前にもどって自分の身をさらそうと決意していた。そして〈吸魂〉の深みに落ちたハリーに泣きながら口づけした。その口づけのおかげでハリーは正気をとりもどした。
これはもうライヴァル関係には思えない。友好的なライヴァル関係ですらない。
芝居ですら滅多に見られないような友情物語に思える。
ではなぜハリーはその友だちを城の氷の壁にのぼらせたのか?
ハリー・ポッターは友だち相手ならいつもそういうことをするとでも?
奇妙な謀略を解きあかすための技術を父上から聞いたことがある。それは
最終的には、ドラコとグレンジャーがいっしょになってハリー・ポッターと戦うことになった……そして、ドラコはグレンジャーに対して、それまでよりずっと友好的になれるようになった。
マルフォイ家の御曹司が
得をするだけでなく、まさにそういう種類の謀略をすることで有名なのは?
得をするだけでなく、ハリー・ポッターを裏であやつっている可能性があるのは?
ダンブルドアだ。
もしそうなら、ドラコは父上にすべてを話す必要がある。話したあとなにが起きるかは気にしていられないし、想像もつかない。というより、想像もつかないようなひどいことが起きる。 だからドラコは必死で最後の希望にすがって、こう見えているのはドラコの誤解にすぎない、という可能性を信じようとしている……
……という部分も、考えてみれば、ミスター・エイヴァリーから教わったとおりだ。
まだハリーを問いつめるつもりはない。 ドラコはまだ、ハリーに偽物だと見すかされないような実験を考えようとしている。 だがそこで、ハリーからのメッセージをヴィンセントが持ってきた。今週はいつもの土曜日を早めて金曜日に会いたいのだという。
だからドラコはこの暗い教室で、光のない水晶球を机にのせて、待っている。
時間がすぎた。
足音がちかづいてきた。
扉が軽くきしむ音を出しながら内むきに開き、フードつきのローブに身をつつんだハリー・ポッターがあらわれた。 ハリーが暗い教室に足をふみいれると、がっしりした扉はそのうしろで、かすかに音をたてて閉じた。
ドラコが水晶球をぽんとたたくと、教室が明るい緑色の光でてらされた。 緑色の光で机の列は床に影をおとし、椅子の背の曲面からの反射光がドラコにとどく。光子はこうやって、入射角とおなじ角度で反射してはねかえる。
教わったことのうち、すくなくともそこまでは嘘ではなさそうだ。
光がとどくとハリーはびくりとして一瞬とまったが、また歩きだした。 ドラコの机まで来たところで、「こんにちは」と小声で言って、ハリーはフードをおろす。「いつもとちがう時間だったのに、来てくれてありがとう——」
「かまわない。」とドラコは平坦な声で返事した。
ハリーは椅子を引きよせて、机の反対がわに座った。椅子の脚が床にあたって、キッと音をだした。 そして椅子を逆むきに回転させて、両うでを椅子の背にのせて、またがった。 少年は思案げに顔をしかめている。真剣な顔つきで、いつものハリー・ポッター以上に、やけに大人びて見える。
「今日は、とても大事な質問にこたえてもらいたい。でもそのまえに、もうひとつ二人でやるべきことがある。」とハリーが言った。
ドラコは無言でいた。すこしうんざりする気がした。 とっとと終わりにしてしまいたい、という気持ちもすこしあった。
「マグルが死ぬときに
「マグルには、たましいがないからだ。当然だろう。」 ドラコはそう言ってしまってから、それがハリーは立ち場上それを受けいれないかもしれないと気づいた。だが、どうでもいいことだ。それに、実際、当然の事実なのだから。
ハリーはおどろいた様子を見せなかった。 「大事な質問のほうに行くまえに、きみが〈
あまりに脈絡のない発言に、ドラコは一瞬困惑した。 またしても、予想不可能で理解不可能なハリー・ポッター、か。 これは相手をまごつかせる戦術として、わざとやっているのではないか、とときどき思いたくなる。
しかしハリーのことばが意味するところにぴんときて、ドラコは席から自分を押しだし、憤然として一息で立ちあがった。ここまでだ。もう終わりだ。 「ダンブルドアの下僕のようにか。」
「いや、サラザール・スリザリンのようにだ。」
それを聞いてドラコは扉にむけて一歩ふみだす途中で、つまずきそうになった。
ゆっくりと、ハリーのほうをふりかえる。
「どこからそんな発想をしているのか知らないが、それはまちがいだ。〈守護霊の魔法〉がグリフィンドールの呪文であることはだれでも知っている——」
「サラザール・スリザリンは有形の〈守護霊の魔法〉をかけることができた。」と言ってハリーはすばやく片手をローブのなかにいれ、本をとりだした。題は緑色の地に白文字で書かれているが、緑色の照明のもとではほとんど見えない。 「このあいだ〈守護霊の魔法〉について調べていたときに見つけたんだ。 そう言っている原典も見つけて、きみが信じない場合にそなえて、その本を借りてきた。 この本の著者はサラザールが〈守護霊〉を使えたことを
それから六回問いただそうとすると、そのたびにもっとバカげた理由がかえってきた。そこまで来てドラコは気づいた。ハリーも本に書かれていることについてだけはうそをつかない。 それでも、ハリーが両手でその本をひらいて、しおりを差してあった場所をみせたとき、ドラコは身をのりだして、ハリーの指がさしている部分をよく検分した。
そしてレイヴンクローの放った火が、
ドラコは読むのをやめて、見あげた。「それで?」
ハリーは本を閉じて、ポーチにしまった。 「〈カオス〉軍と〈
そんなことはいまはどうでもいい、と思ったので、ドラコはそう言った。 思いのほか、きつい声になってしまったようだった。
ハリーはそれを聞いても平然としている。 「じゃあ、あの最初のホウキのりの授業で、暴動が起きるのを止めたときの借りを、ここでかえしてもらおう。 ぼくはきみに〈守護霊の魔法〉を教える。あの借りを返したいなら、きみには誠意をもって挑戦してもらいたい。 マルフォイ家の名誉にかけてそうしてくれると期待しているよ。」
うんざりする気持ちがまた出てきた。 もっと別の状況下でだったなら、〈守護霊〉がグリフィンドールの呪文でない以上、貸し借りの精算として不当な要求ではない。だが……
「なぜだ?」
「サラザール・スリザリンとおなじことが、きみにできるかどうかを知るためだ。 これは実験なんだよ。だから、その意味は実験がおわるまでは教えられない。 さあ、どうする?」
……無害なことで借りを精算しておくのは、おそらくいい考えではある。ハリー・ポッターと縁を切るべきときがきているなら、なおさらだ。 「わかった。」
ハリーはローブのなかから杖をとりだし、球にあてた。 「〈守護霊の魔法〉には、ちょっとあわない色だな。これは〈死の呪い〉とちょうどおなじ緑色の光だから。 でも銀色なら、スリザリンの色でもあるんだよね? 『デュラク』」 光が消え、ハリーは〈帯光の魔法〉の最初の二段階をささやいて、かけなおした。二人のどちらも、呪文全体を自力でかけることはできない。 それからもう一度球をぽんとたたくと、部屋が銀色の光で満たされた。あかるいが、やわらかなかがやきだ。 机と椅子の列に色がよみがえり、黒髪に隠れてすこし汗をかいているハリーの顔の色ももどった。
そこまでかかって、ドラコはやっとハリーの発言の意味に気づいた。 「このまえにぼくと会ったあとで、〈死の呪い〉を見たんだな? いつ——なぜ——」
「〈守護霊の魔法〉をかけてみてくれ。」と言ってハリーはいつになく真剣な表情をした。「そのあとで教えよう。」
ドラコは両手を両目にあてて、銀色の光をさえぎった。 「きみのおかしさ加減はふつうの謀略を超えている、っていうことをすぐ忘れそうになるんだよな。」
ドラコはみずから課した暗黒のなかで、ハリーのせせら笑いを聞いた。
ドラコが予備動作の部分の予行練習をもう一度やるのを、ハリーはしっかりと見とどけた。一番覚えにくいのはこの部分であり、最後のふりかざす動作と詠唱は精密でなくてもいい。 最近三回の予行練習はハリーが見るかぎり、どれも完璧だった。 ミスター・ルーピンには言われなかったことだが、ハリーはなぜか、ドラコのひじの角度や足のむきがおかしい、などという修正指示を衝動的にしたくなった。 自分の思いこみにすぎなかったかもしれないし、多分そうなのだが、念のため言っておくことにした。
「よし。」とハリーはしずかに言った。 胸のあたりが緊張して、声をだすのがすこしむずかしい。 「ここにはディメンターはいないけど、問題ない。なくてもできる。 きみのお父さんと駅で話したとき、お父さんが世界で一番大切にしているのはきみだ、ということを聞いた。きみが傷つけられることがあれば、ほかの計画をすべて投げうってぼくに復讐する、と警告された。」
「え……?」 ドラコは声をつまらせたようだった。奇妙な表情をしている。 「なぜそんなことをぼくに言ってしまうんだ?」
「言ってもいいだろう?」と言ってハリーは表情をかえなかったが、ドラコがなにを考えているのかは、だいたいわかった。 ハリーはドラコを父親から引き離そうとしていた、だから二人の距離をちぢめるようなことを言うべきではない、と思っているのだろう。 「きみにも一番大事な人が一人いる。きみが〈守護霊の魔法〉のにどんなぬくもりと幸せのイメージが必要なのかははっきりとわかる。 そのことは、学校がはじまる日に、キングスクロス駅できみが話してくれた。 ホウキから落ちて肋骨を折ったときの話だ。 それまで感じたことがないほど痛くて、きみは死ぬかと思ったんだろう。 その恐怖が、目のまえにいるディメンターからからきていると思ってみてほしい。ディメンターは、ぼろぼろの黒いマントを着ていて、水死体のように見える。 それから〈守護霊の魔法〉をかけるんだ。ディメンターを追いはらうために杖をふりかざすとき、お父さんが心配するなというように、手をにぎってくれていると思ってみてほしい。 お父さんが自分をどれだけ愛しているかを考えて、自分がお父さんをどれだけ愛しているかを考えて、それを声にこめて、『エクスペクト・パトローナム』と言う。 借りをかえすためだけじゃなく、マルフォイ家の名誉のためにやってくれ。 きみはあの日あの駅で、ルシウスのことをいい父親だと言った。そのことばがうそではないと証明してくれ。 サラザール・スリザリンにできたことがきみにもできると証明してくれ。」
そしてハリーは一歩さがり、ドラコの後ろにまわって、ドラコの視界から身を隠した。空教室の前方にいるドラコのまえにあるのは、古びた教卓と黒板だけだ。
ドラコは奇妙な表情をしたまま、一度後ろを見返し、前をむいた。 ハリーはドラコが息をはいて、すうのを見た。 杖が一、二、三、四と宙を切る。 杖をドラコの指がなで、正確に所定の位置までいって——
ドラコは杖をおろした。
「いや、これではちょっと——イメージに集中できない。そうやって見られていると——」とドラコ。
それを聞くとハリーはドラコに背をむけて扉のほうにむけて歩きだした。 「一分したら、もどってくるよ。幸せのイメージを維持していてくれれば、〈守護霊〉は消えないから。」
ドラコの背後で、また扉がひらく音が聞こえた。
ハリーの足音が教室にはいってくる。だがドラコはそちらに顔をむけない。
ハリーもなにも言わない。沈黙がつづいた。
そしてやっと——
「これになんの意味があるんだ?」と言ってドラコはすこし声を震わせた。
「これできみがお父さんを愛している、ということがわかる。」と言うハリーの声がした。 予想どおりの答えだったので、ドラコはハリーのまえで泣かないようにつとめるのがやっとだった。 こんなうまい話があるか。できすぎている——
ドラコの目のまえの床には、光かがやくヘビがいる。このヘビには見おぼえがある。 アマガサヘビだ。あるときアブラクサス・マルフォイ卿が遠方からのみやげとして連れて帰ったというそのヘビを、以来父上はずっと屋敷のヘビ園に置いている。 噛まれてもあまり痛くないのがアマガサヘビの特徴だ、 ということも父上から聞いた。そしてだれの付き添いがあろうとも、このヘビをかわいがろうとしてはいけない、ときつく言われている。 このヘビの毒は神経毒であり、痛みを感じる間もなく、すばやくからだじゅうにひろがってしまい、 〈治癒の魔法〉を処置されても死に至ることがある。ほかのヘビを捕食するヘビでもある。 これほどスリザリン的な生物はいない。
だから父上のステッキの持ち手にはアマガサヘビが鋳造してあるのだ。
かがやくヘビはシュッと舌をだした。舌もやはり銀色だ。 そして
そこでドラコは気づいた——
「でも……」と言いながら、ドラコはまだ美しくかがやくヘビを見つめている。「きみは〈守護霊の魔法〉を使えない。」 自分が成功してはじめて、なぜこれがそれほど重要なことかがわかった。 邪悪な人でも〈守護霊の魔法〉をかけることはできる。ダンブルドアでさえ、できる。ひとつでも明るいものが自分のなかにあればいいのだ。 でもそうやって光かがやくものが、ハリー・ポッターのこころのなかには、ひとつもないのだとしたら——
「〈守護霊の魔法〉はそんなに単純な魔法じゃないんだ。」とハリーは真剣な声で言う。 「失敗した人がかならず悪人だとはかぎらない。不幸せな人だともかぎらない。 それはともかく、ぼくは実は使える。二回目にやったときに成功した。成功するには、ディメンターと対面した一回目のとき、なにを間違えていたかを気づく必要があった。 でも、その、ぼくの人生はときどき変になることがあって、ぼくの〈守護霊〉も普通とはちがってたから、これはいまのところ秘密ということにしてる——」
「それをただ信じろと言うのか?」
「信じられないならクィレル先生に聞けばいい。 ハリー・ポッターは有形の〈守護霊〉を作れるのか、ときいてくれ。ぼくから言われてそう質問しにきたと言えばいい。 クィレル先生にはぼくからの依頼だということを知らせておく。ほかのだれにもそのことは知らせない。」
へえ、今度は
光るヘビはあたまを前後にゆらし、実在しない獲物をさがしているように見えた。そして休もうとするかのように、とぐろを巻いた。
ハリーがそっと話しだした。 「スリザリン生が〈守護霊の魔法〉を教わらなくなったのは、いったいいつごろからだったんだろう。何年まえの、どの世代のことだったんだろう。 いったいいつから、抜け目なく野望を高くもつことは、冷酷で不幸せなのと同じことだと、みんなが考えるようになったのか。いつからスリザリン生自身もそう考えるようになったのか。 自分の生徒たちが〈守護霊の魔法〉の授業を無視するようになったと知ったら、サラザールは自分が生まれたことを後悔するだろうか? どこでまちがったんだろう。スリザリン寮はいつからこうなったんだろう。」
光りかがやく生物がふっと消えた。ドラコの内心の葛藤が高まって、この〈魔法〉を維持することができなくなった。 ドラコはぱっとハリーのほうを向いた。杖を向けないようにするには努力が必要だった。 「きみはスリザリン寮の、いや、サラザール・スリザリンのなにを知っているんだ? うちの寮に〈組わけ〉されてすらいないきみに、そんなことを言う権利があるとでも——」
その瞬間、ドラコはようやく気づいた。
「
……ハリー・ポッターの手にかかれば障害ではないのかもしれない。
「おもしろい仮説ではある。」と平然としてハリーが言う。「そういう説を思いついたのはきみで二人目だと言ったらおどろくかい? すくなくとも、ぼくの目のまえでそう言ったのは二人目だ——」
「スネイプだな。」とドラコは確信して言った。スリザリン寮監はバカではない。
「
ドラコはほとんど考えもせずにうなづいた。 ほかに選択肢はない。ノーと言うとでも?
「〈帽子〉が〈死ななかった男の子〉に用意した結果を、ダンブルドアが受けいれようとしなかった、というのがクィレル先生の考えだ。」
ハリーがそう言った瞬間、それが事実なのだとドラコにはわかった。当然の事実だ。 ダンブルドアはいったいだれをだませると思ったのだろう?
……いや、スネイプとクィレルをのぞいたホグウォーツの全員はだまされる。
ドラコは目まいのようなものを感じて、机によろめいて倒れかけ、すこし痛いほどのいきおいで腰かけた。 ハリーといると、一カ月に一回くらいの頻度でこういうことが起きる。一月になってからはまだだったから、そろそろ起きていいころだった。
自分ではレイヴンクローだと思いこんでいるかもしれないし思いこんでいないかもしれないこのスリザリン生は、さっきまで使っていた椅子にもどって、今度は横むきに座り、ドラコに熱い視線をむけた。
ドラコは自分がいまなにをするべきかよくわからないでいた。きみは実はレイヴンクローじゃない、スリザリンに行くはずだったのだ、とこの少年を説得すべきなのか…… いや、ハリーがダンブルドアと同盟しているのかどうかを探るべきか……この可能性は急にうすれて見えてきたが……しかし、となるとなぜハリーがあのようなお膳立てをドラコとグレンジャーに用意したのかがわからない……
ハリーのおかしさ加減はふつうの謀略を超えている、ということをまた思いだす必要がある。
「ハリー、きみはぼくと〈太陽〉軍司令官をわざと敵にまわすようなことをした。あれは、きみという敵に対してぼくらを協力させるためだったのか?」
ハリーはためらうことなく、うなづいた。世界で一番あたりまえのことだ、なにも恥ずかしいことではない、とでも言うように。
「あの手ぶくろで城の壁をよじのぼらせたのもすべて、ぼくとグレンジャーの距離をちかづけるためだったのか。 いや、それだけじゃない。 きみはとても長くこの謀略を準備してきた。
ハリーはまたうなづきをもって答えた。
「なぜこんなことをする?」
ハリーの両眉が一瞬あがった。扉をとじたこの教室じゅうに響くほどの、ドラコ自身の耳が痛むほどの悲鳴だというのに、ハリーの反応はそれだけだった。 なぜだ……。なぜハリー・ポッターはこういうやりかたをするんだ……。
そしてハリーがこたえた。「スリザリン生たちがもう一度〈守護霊の魔法〉を使えるようにさせるため。」
「パターンさ。」と言って、ハリーはとても真剣な、深刻そうな表情をした。 「これはスクイブの夫婦が子をつくると四分の一が魔法族になるのとおなじくらい、 単純で、見落としようがないパターンだから、どこを見ればいいかさえ知っていれば一瞬で気づく。 なのに、知らなければ、それが手がかりになっていることさえ気づけない。 スリザリン寮の病巣とおなじものは、マグル世界の歴史のなかにもあった。 あらかじめ予言してみようか。これは学校がはじまった一日目に、キングスクロス駅できみの話を聞いただけでも、ぼくにはぴったり当てられる予言だった。 きみのお父さんがやる決起集会にたむろする人のなかに、どんなにみじめな人たちがいるかをあててみよう。純血家系なのにマルフォイ邸の晩餐会には決して招待されないのがどういう人たちかをあててみよう。 この目で見たから言えるんじゃない。スリザリン寮でどういうパターンが生じているかさえ知っていれば、あてることができる——」
それから、ハリー・ポッターはするりと切断するような正確さで、パーキンソン家とモンタギュー家とボウル家の特徴を描写した。ドラコなら、あたりに〈開心術師〉がいる可能性を心配して、思考することすらはばかられるほどの言いかただった。侮辱ということすら生やさしい。各家の耳にはいれば、ハリーは殺される……
「まとめると、彼ら自身に権力はないし、 富もない。 マグル生まれを憎むことができなければ、つまり彼らのお望みどおりマグル生まれがいなくなってしまえば、翌朝、自分たちはからっぽだとに気づかされてしまう。 でも、純血のほうが優れている、と言いつづけられるかぎりは、優越感を感じて、支配者階級の一員であるような気でいられる。 まちがってもきみのお父さんの晩餐会に招待されることがないとしても。自分の金庫がすっからかんだとしても。ホグウォーツでの自分の
「
「
「だったら、
ハリーはひたいから汗をぬぐった。 「そのときとは時代がかわったんだ! よく聞いてほしい。三百年まえには、偉大な科学者でも……サラザールに相当するような偉大な科学者でも、肌の色のちがいを理由に、ある種のマグルのことを劣等種だと言ったりした——」
「肌の色だと?」
「そう、血統のように大事なこととくらべたら、肌の色なんかにこだわるのはばかばかしい、って言いたくなるよね? でもそれから、世界のなにかが変わった。いまなら、偉大な科学者は肌の色にこだわらない。いまそんなことにこだわるのは、ぼくがさっき言った特徴にあてはまる負け組だけだ。 サラザール・スリザリンは当時ならだれもがする間違いをしていた。生まれそだった環境のおかげで信じていただけで、
「いや、それは……どこか変だ……」とドラコの口が言った。 ドラコの耳はそれを受けて、もっとましなことが言えないのか、と思った。
「なにが? ドラコ、きみはハーマイオニー・グレンジャーにはなんの問題もないと知っている。 きみは彼女を屋根から落とすまえに、ずいぶんためらったそうじゃないか。 〈落下低速の飲み薬〉を飲んでいるから、落ちても安全だと知っていたにもかかわらず。 なにか彼女にひどいことをされたからではなく、彼女がマグル生まれであるというだけの理由で、彼女を殺そうとするのはどんな人間だ? ただの女の子、一言たのめばよろこんで宿題の手つだいをしにきてくれるような女の子なんだぞ。」 ハリーは声をつまらせた。 「そんな女の子を死なせたいと思うのはどんな人間だ?」
父上なら——
自分が二つにわかれて、視野にあるものが二重に見えているような感じがする。『グレンジャーは泥血だから死ぬべきだ』と言っている自分と、屋根から落ちかけた女の子の手をつかむ自分とで、まるで複視のようにして——
「そして、ハーマイオニー・グレンジャーを死なせたくない人たちはみんな、死なせたいと言う人たちの仲間にはなりたがらない! いまのスリザリンはそういう風に見えている。有能な戦略家でも野心家でもなく、マグル生まれを憎むだけだと思われている! このあいだモラグに一シックルあげて、パドマがスリザリンに行かなかった理由を聞いてきてもらった。パドマにスリザリンの選択肢があったのは、知ってのとおりだ。 パドマはモラグを変な目で見て、パンジー・パーキンソンになる気はないから、ってこたえたそうだ。 わからないか? 二つ以上の寮に行けるような優秀な生徒、つまり
その話にはいやになるほど真実味があった。 パドマは本来スリザリンに来るはずだった……なのに実際来たのはパンジーだけだった。 父上がパーキンソン家のような家系を集会にあつめるのは、楽に支持がえられるからだが、スリザリンの名前をああいった家系にむすびつけることによって
「いや、それはできない——」と言いながら、ドラコは自分になにができないのかもわからない—— 「ぼくになにをしろと言うんだ?」
「どうやればスリザリン寮を治療できるかは、わからない。 でも、きみとぼくがいずれやらざるをえないことなのはわかる。 科学は何百年もかかってマグル世界に浸透していった。時間はかかったれれど、科学が強力になるにつれ、そういった憎悪は後退していった。」 ハリーの声が静かになった。 「なぜそうなったかはよくわからないけど、とにかくそれが歴史上起きたことだった。 まるで科学のなかに〈守護霊の魔法〉の光があるみたいに、あらゆる暗黒と狂気が追いだされた。すぐにではないけれど、科学が浸透していった先では、いずれそういうことが起きた。 〈啓蒙〉の光というのが当時のマグル世界での呼び名だ。 そうなったのは多分、真理を探求すること……
「考えさせてくれ。」とドラコは言ったが、すこしかすれた声が出た。そして両手に顔を乗せて、考えた。
ドラコはしばらく、両手で目をおおってなにも見えないようにして、しばらく考えた。音もハリーの息のほかは聞こえない。 ハリーの言うことは十分すじが通っているし、あきらかに真実味もある。だがいっぽうで、その裏でなにが起きているかを考えるなら、だれが見ても明白な、あの仮説がある……
しばらくしてから、ドラコはやっと顔をあげた。
「話としてはまともだ。」とドラコは静かに言った。
ハリーの顔に満面の笑みがうかんだ。
「じゃあ、」とドラコがつづける。「このあたりでぼくをダンブルドアのところに正式に連れていくつもりなのか?」
ドラコはとても気軽な言いかたでそう言った。
「あ、そうそう。実はちょうど、そのことを聞きたかったんだ——」とハリー。
ドラコの血が血管のなかで凍った。氷になってから、粉ごなになった——
「クィレル先生にあることを言われて、しばらく考えたんだけど、きみからどんな答えがもらえるにしても、もっと早くたずねなかったのがバカらしいのは、まあ、まちがいない。 グリフィンドールはみんなダンブルドアが聖者だと思ってる。ハッフルパフはみんな狂人あつかいしてる。レイヴンクローは、あれは狂人のふりにすぎないと気づいたのが自分たちだけだと思って自己満足してる。でもスリザリン生にはまだ聞いたことがなかった。 こんな見落としをするなんて、ぼくらしくない失敗だ。 でももし
……
……
……
「あのな……」とドラコはこれだけの状況にしては意外なほど落ちついた声で言う。「きみにそういうことをされるたびにぼくは、きっと事故でそうなったんだ、と自分に言い聞かせてるんだが。こんなことはいくらわざとやろうとしても、耳から血を垂らすほど必死になっても、できるものじゃない。 そう思いでもしないかぎり、きみのくびを締めにかかってるところだ。」
「へ?」
そして自分のくびを締めにかかっているところだ。ハリーはマグルといっしょに育ったのだし、それからダンブルドアの手でさりげなくスリザリンからレイヴンクローへとかすめとられてしまったのだし、ハリー本人がなにも気づいていないとしてもまったく不思議ではない。それなのにドラコは、ハリーに教えようともしなかった。
いや、それとも、ドラコがダンブルドアとやすやす同盟などしないということはハリーも知っているのかもしれない。これも自体がまたダンブルドアの作戦の一部なのかもしれない……。
だがもし、ハリーがほんとうにダンブルドアのことを知らないとすれば、なによりも優先すべきなのは、まず警告してやることだ。
すこし考えをまとめてから、ドラコは口をひらいた。 「そうだな。どこから話せばいいのやら。とりあえずこの話をしてみようか。」 深呼吸をする。この話には時間がかかる。 「ダンブルドアは自分の妹を殺した。だが追及をまぬがれた。というのも、ダンブルドアの弟はダンブルドアに不利な証言をしない理由があるからだ——」
ハリーはその話を聞くほどに、不安と狼狽が強まった。 自分ではこころの準備はできていると思っていた。純血主義者がわの話は、すこし割りびいて受けとらなければならない、ということはわかっていた。 だがやっかいなことに、相当な割りびきをしてもなお、いい話には聞こえない。
ダンブルドアの父親は子どもに〈許されざる呪い〉を使ったとして有罪になり、アズカバンで死んだ。 これはまったくダンブルドア自身の罪ではないが、公的な記録にのこる話だ。 あとで確認をとれば、一連の話がすべて根も葉もない純血主義者による作り話かどうかがわかる。
ダンブルドアの母親は謎の死をとげ、そのすぐあとに妹が死んだ。妹の死の原因は殺人であると〈闇ばらい〉が判定した。 妹はそれまでにマグルの残虐な暴力にあっていて、そのことをけっして口にしなかったとされている。この様子は
ハリーは最初のほうで何度か割りこみをかけた。それを受けてドラコは基本的な原理を体得したらしく、観察された事実をまず言ってから、そのあとで自分の推論を言うようになった。
「——だから、ぼくがそう言ってるだけじゃないぞ。わかるだろう? スリザリン生ならみんなわかっている。 ダンブルドアはグリンデルヴァルトとの対決を遅らせて、自分が一番よく見えるときまで待った。グリンデルヴァルトがヨーロッパの大半を蹂躙して、歴史上最悪の〈闇の魔術師〉だという評判をきずいて、
「ちょっと時間をくれ。」と言って、ハリーは目をとじて考えた。
スターリン時代のロシアについて西側諸国で言われていたこともきっとこれくらいひどかっただろうが、あちらの噂はどれも真実ではなかった。 しかし純血主義者も完全なでっちあげをしたりすればさすがにバレていたはず……だろうか? 『
ハリーは目をひらいた。ドラコがじっと期待する目でこちらを見ていた。
「つまり、ダンブルドアと同盟しにいくのか、ときみがさっき聞いたのは、試していただけだったのか。」
ドラコはうなづいた。
「そのまえの、話としてはまともだ、というせりふも——」
「まともな話に聞こえはするよ。 でもきみが信用できるかどうかがわからない。
一本とられた、と言ってにやりと笑っていられればよかったのだが、ハリーにはできなかった。落胆が大きすぎた。
ハリーはかわりにこう言った。「たしかにそうだ。おたがいさまだから、ぼくは文句を言えない。 じゃあ〈名前を言ってはいけない例の男〉については? 噂されているほどの悪人じゃない、とか?」
そう聞いてドラコは苦にがしげな表情をした。 「つまり、父上の陣営をよく見せて、ダンブルドアの陣営をわるく見せるためだけにこう言っているんだと思うのか。ぼくは父上に言われたことをそのまま信じているだけだ、と思っているのか。」
「そういう可能性も想定の範囲内にある。」とハリーは中立的に言った。
ドラコの声が低くなり、熱をおびた。 「彼らだって知っていた。父上も、父上の仲間もみんな知っていた。 〈闇の王〉は邪悪だと
ドラコはハリーをしっかりと見つめている。ハリーは視線をあわせながら、考えようとした。 自分自身についての物語で、自分を悪役とみなす人などいない——もしかするとヴォルデモート卿や、ベラトリクスはそうしたかもしれないが、ドラコはまずしない。 〈死食い人〉が悪であったことは、問うまでもない。 問うべきは、〈死食い人〉
「納得していないんだな。」とドラコが言った。 不安そうで、同時にすこし怒ってもいる。 おどろくことではない。 ドラコはきっと、このすべてを信じているのだろうから。
「ぼくは納得
ドラコが口をひらこうとしたので、ハリーは言った。 「いや、無理だろう。マルフォイ家の名誉を汚すなよ。 きみはまだそこまで強くない。それはわかっているはずだ。 よく聞いてほしい。ぼく自身、いろいろあやしげなことがありそうだと気づいてはいる。 でもどれも
ドラコの息があらくなった。 「わかった。ダンブルドアがなにをしたか、話そう。」 不安定な声でそう言うと、ドラコはローブから杖をとりだし、「〈
「昔、ずっと昔、ナルシッサという女性がいた。スリザリン寮の歴史上、一番美人で、あたまがよく、抜け目のない女子生徒だった。 父上は彼女を愛し、結婚した。彼女は〈死食い人〉にならなかった。戦闘に参加してもいない。それが、ただ父上を愛したというだけで——」 ドラコはそこで口をつぐんだ。泣いている。
ハリーは不吉な予感がした。 ドラコの口から
ドラコの声は悲鳴になった。
やわらかな銀色の光に満ちた教室に、少年が一人いて、もう一人の少年をじっと見ている。もう一人の少年は声をあげて泣き、ローブのそでで両目を必死にぬぐっている。
ハリーは、判断を先のばしにして中立をたもつのがむずかしくなった。あまりに感情的な話なので、こうなるとドラコに同情して自分も涙をながすか、そうでなければその話がうそであると
『母上は自分の寝室で、ダンブルドアに焼かれて死んだ!』
というのは……
……ダンブルドアの流儀らしくない……
……だがこう何度も同じことを思ったあとでは、『流儀』という概念そのものが信用できるのか、うたがわしくなってくる。
「ど……どんなにひどい苦痛だったか。」と言うドラコの声が震えている。 「父上は一度も話してくれたことがないし、だれも父上のまえで話さない。けれどミスター・マクネアが教えてくれた。寝室はどこも焦げあとだらけで、それだけで、母上がダンブルドアに
「ドラコ……」と言いながらハリーは声をかすれたままにした。いまは落ちついた口調はふさわしくない。 「質問すること自体申し訳ないんだけど、これは
「ダンブルドア自身が、やったと言った。これは警告だと、父上に言ったんだ! 父上は〈閉心術師〉だから〈真実薬〉ありの証言ができない。ダンブルドアを裁判にかけることもできなかった。 ダンブルドアが公然とすべてを否定したのを聞いてからは、父上の協力者でさえ信じようとしなかった。でもぼくらは知っている。〈死食い人〉たちは知っている。父上がうそを言うべき理由はなにもない。父上なら
ただし、もちろん、ルシウスが自分でやったのであれば……そしてダンブルドアになすりつけると都合がいいと思ったのであれば、話は別だ。
だが……それはそれで
しばらくしてドラコは泣きやんで、ハリーのほうを見た。 「返事はどうした? これだけ邪悪なら満足か、ミスター・ポッター?」 ドラコは吐きすてるような口調でそう言った。
ハリーは椅子の背にのせた自分の両手に視線をおとした。 ドラコの目を見るのに、その生なましすぎる痛みを直視するのに、耐えられなくなった。そしてそっと口をひらいた。 「そんな話だとは思わなかった。いまはもう、どう考えていいかわからない。」
「
「ぼくは〈闇の王〉に両親を殺されたときのことを思いだした。 一度目にディメンターと対面したときに、自分の最悪の記憶を思いだした。 これほどの時間がたっているのに。 二人が死ぬときの声を聞いた。 ぼくを殺さないでと、お母さんが〈闇の王〉に懇願するのを聞いた。 『どうかハリーだけは。わたしを、殺すならわたしを!』と言っていた。 〈闇の王〉はそれをあざけって、笑った。 それから、緑色の閃光が——」
ハリーはドラコに視線をもどした。
「ぼくらはこのままけんかしつづけてもいい。 きみは、ぼくのお母さんは死んで当然だったと言う。ジェイムズは〈死食い人〉を殺したから、ジェイムズの妻は死ぬべきだと。 でも
からだのなかで怒りが煮えたぎって、ドラコは部屋を飛びでてしまわないようにすのがやっとだった。 それをとめてくれたのは、これが決定的な瞬間だという認識、友情のわずかな残滓、そしてちらりとまたたく同情の光だった。ドラコは
二人はしばらく無言のままだった。
「我慢しなくていいよ。ドラコ、言いたいなら言ってくれ。ぼくは怒らないから—— もしかすると、ナルシッサの死のほうがリリーの死よりずっとひどかった、 くらべものにもならないほどひどかった、と思ってるんじゃないか?」
「こちらも愚かだった。これまで……これまで、ずっと忘れてしまっていた。きみは〈死食い人〉に両親を殺された。だからぼくがダンブルドアと憎むのとおなじように、きみは〈死食い人〉を憎んでいておかしくない。」 なのにハリーはなにも言わなかった。ドラコが〈死食い人〉の話をしたときでさえ、
「いや、ぼくはそうは——そういうことじゃないんだよ。どうやって説明すればいいのかわからないけど、ただ、そういう風に考えても……」 ハリーは声をつまらせた。 「いくらそういうことを考えても、〈守護霊の魔法〉は使えない……」
ドラコは急に胸がしめつけられるように感じた。不本意だったが、そう感じた。 「きみは自分の両親のことを
「だからって、きみとぼくは敵どうしになる必要があるのか?」 こんどはハリーのほうも声をあらげた。 「ぼくら自身のあいだで、おたがいを敵にするようなできごとがあったか? ぼくは、そういうこりかたまった思考をするつもりはない! 正義のために
ハリーの目になみだが見えた。
ドラコはまた怒りを感じた。 「ダンブルドアは母上を
「その点については反論しない。でもリリー・ポッターの死も悲しいことだったと言えないか? すくなくともこの一点だけは認められないか?」
「それは……」 ドラコはまたどう言えばいいか分からなくなった。 「ハリー、きみの気持ちはわかる。でも、わかってくれないか。リリー・ポッターの死が
「ドラコ、きみは〈死食い人〉もときにはまちがうんだと認めてくれないと! そうでなければ、科学者として進歩することはできない。自分がさからえない権威というのは、進歩をとめる障害物だ。 変化がいつも改善を意味するわけではないけれど、改善はいつも変化だ。やりかたを変化させないかぎり、改善はやってこない。そうやってはじめて、なにかを他人よりうまくできる可能性がうまれる! きみのお父さんについてもおなじだ。 お父さんがやったなにかについて、まちがいだったと言える必要がある。お父さんも
こういうことは父上からすでに警告されている。ホグウォーツに入学する直前の一カ月、毎夜眠るまえに警告された。こういう目標をもつ人がいるのだと警告された。
「ぼくを父上から離れさせようとしているんだな。」
「きみの
ここが重要なのだということが、だんだんはっきりしてきた。だんたんはっきりしてきているにもかかわらず、ハリーを相手にするときはとても注意する必要がある。ハリーの論法は
「ちがうんだって。そこは単純に勘違いだ。」 ハリーは深く息をすった。 「ぼくはダンブルドアがだれか知らなかった。〈闇の王〉がだれかも知らなかった。〈死食い人〉のことも、両親がどうやって死んだかも知らなかった。ホグウォーツに来る日の三日まえ、きみと服屋であったあの日に、はじめて知ったんだ。 そもそもダンブルドアはマグル科学をよく思っていない。すくなくとも、本人のことばどおりなら。このことは以前本人に聞いてみる機会があった。 きみを通じて〈死食い人〉に復讐するなんてことは、いままで考えたこともなかった。きみに言われるまで一度も思いつかなかった。 ぼくは服屋できみにあったときマルフォイ家のことを知らなかった。それで、きみと気が合った。」
そのあと長く沈黙がつづいた。
「できればきみを信頼したい。」というドラコの声は震えている。 「きみがうそをついていないとわかる方法さえあれば、ずっと簡単なんだが——」
そう言ってからドラコははっと気づいた。
ハリー・ポッターがこの話を本気で言っているかどうか、本気でスリザリン寮を治療しようと言っているのかどうか、母上が死んだことは悲しいと言っているのかどうか、たしかめる方法がある。
非合法なやりかたではある。それに父上の助けを借りることにならざるをえないから、
「よし。決定的な実験の方法を思いついた。」とドラコ。
「どんな方法?」
「きみに〈真実薬〉を一滴飲んでもらう。 一滴だけだ。それで、うそはつけなくなる。でも回答を強制するほどの強さではない。 どこから調達するかは決めてないが、安全性はきっと保証する——」
「あの……」と言ってハリーは無力そうな表情をした。「ドラコ、あの、ちょっと——」
「やめたほうがいいぞ。」 ドラコの声はかたく静かだ。 「ことわるなら、それ自体がもう実験結果だ。」
「いや、ぼくは〈閉心術師〉だから——」
「今度はなにをふざけたことを——」
「ミスター・ベスターに訓練してもらった。 クィレル先生のお膳立てだ。 もちろん、調達してくれるなら、〈真実薬〉を一滴飲むのはかまわない。 ただぼくは〈閉心術師〉だということを警告しておきたかっただけだ。 完全な〈閉心術師〉とまでは言えないけど、遮断はちゃんとできている、とミスター・ベスターは言っていた。だから多分〈真実薬〉には対抗できる。」
「きみはまだホグウォーツ一年生だろうが! そんなのはおかしすぎる!」
「信頼できる〈開心術師〉をだれか知っている? 実演してみせてもいいよ——申し訳ないとは思うけど、ほら、こうやって自分から話したんだからちょっとは認めてくれないか? なにも言わずにやらせてもよかったんだから。」
「なぜだ? ハリー、なぜきみはいつもそうなんだ? なぜいつもそうやって不可能なことをしてむちゃくちゃにするんだ? それとその笑顔もやめろ。笑いごとじゃない!」
「ごめん、ごめん。笑いごとじゃないのはわかってるよ、ただ——」
ドラコは自分を落ちつかせるのにしばらくかかった。
でもハリーが言っていることはただしい。 ハリーはなにも言わずに、ドラコから〈真実薬〉を飲ませられていてもよかった。 〈閉心術師〉だというのが事実ならば、だが……。 〈開心〉をさせる人のこころあたりはないが、すくなくともクィレル先生に事実なのかたずねることはできる……。 ドラコは
そこでドラコはハリーがクィレル先生に聞けと言ったもうひとつのことを思いだし、別の実験を思いついた。
「きみにはわかっているはずだ。」とドラコは言う。「ぼくにとってどれだけの代償を意味するのかは、わかっているはずだ。仮にマグル生まれこそスリザリン寮の病巣だと認めたらどうなるか。リリー・ポッターの死は悲しいことだと認めたらどうなるか。 それも
ハリーはなにも言わない。賢明な選択だ。
「お返しとして、きみからもらいたいものがある。そのまえにひとつ、実験で検証してみたいこともある——」
ドラコはいくつかの肖像画に指示されて来た場所のドアを押して開けた。今回は正解だった。 そのさきにあったのは石造りの狭い空間で、眼前には夜空がひらけている。 このあいだハリーを落とした屋根などとちがって、小さいがちゃんとした中庭だ。ちゃんとした欄干もあり、石壁の緻密な細工は継ぎ目なく床までつづいている……。 いったいどうすればこれだけの
雲はなく、寒ざむしい冬の夜空。暗くなる時間は生徒の門限よりずっとはやい。そろそろ一月も終わりだ。
透きとおった大気のむこうで、星ぼしはあかるくかがやいている。
星のしたにいるほうがやりやすい、というのがハリーの意見だった。
ドラコは胸に杖をあて、なれた手つきで指をうごかし、「サーモス」と言った。 心臓の位置から温熱がひろがる。風は顔にふきつけているが、寒さは感じなくなった。
「サーモス」と、うしろでハリーの声がした。
二人はいっしょに欄干まで歩き、はるか下の地面を見おろした。 ドラコは自分がいる塔が外部に露出している塔なのか、見さだめようとしたが、いまの自分は、ホグウォーツ城が外部からどう見えるのかを思いうかべられないようだった。 だが眼下の地上の景色はいつもかわらない。〈禁断の森〉のへりがうっすらと見え、ホグウォーツ湖はあかるい月光を映している。
「そういえば。」 ハリーがとなりで両腕を欄干にあずけて、話しはじめた。 「マグルがうまくやれていないことがひとつある。夜に照明を消さないことだ。 一カ月に一度でも、一年に十五分でも、やればいいのに。 光子は大気中に散らばって、あかるい星でさえ覆いかくしてしまう。どんな都市からも離れた場所でないと、夜らしい空はちっとも見えない。 ホグウォーツ城の上の空を一度見たら、マグル都市に住んで星を見られなくなることはとても考えられなくなる。 この夜空の星を一度見たら、マグル都市で一生をすごしたいとはまず思わなくなる。」
ドラコがちらりと目をやると、ハリーはくびをのばして、暗黒の空を横断する〈天の川〉の方向をじっと見あげていた。
「でももちろん、」とハリーはやはり静かな声で言う。「
二人は無言になり、ドラコは返事を期待されていることに気づいた。 「いままで考えたことはなかった。」 意識的にそうしたわけではないが、ハリーとおなじくらい声がひそやかになった。 「ほんとうに人間にそんなことができると思うのか?」
「簡単ではないと思う。でもぼくは、地球で一生を終えるつもりはない。」
一笑に付していい発言だった。魔法すら使わずに地球を離れたマグルがすでにいる、ということを知るまえのドラコなら、きっとそうしていた。
「きみのテストに合格するために、ぼくは自分にとってそれがなにを意味するかを言う。これまでに説明しようとした簡略版じゃない、その思考の全体を。 でもそれがおなじ思考であって、一般化したにすぎないことはわかるはずだ。 その思考というのはこうだ。星ぼしを旅するとき、ぼくたちはだれかに出会うかもしれない。そういうだれかが仮にいたとして、まずまちがいなく、ぼくたちのようなすがたはしていない。 宇宙には、水晶から生まれるものもいるかもしれないし、脈うつ巨大な肉塊かもしれない……いや、考えてみれば、魔法力でできたものかもしれない。 それだけの異物を相手に、どうやって
そう言ってからハリーは杖をあげた。ドラコは向きをかえ、事前の約束どおり、目をそむけた。 石畳、そして石壁にはめられたドアのほうを見た。 こうやって見ないこと、ハリーから聞いた話をだれにもしないこと、そして今夜のできごとすべてを秘密にすることをドラコは約束していた。なぜそこまで秘密にすべきことなのかは分からなかった。
「ぼくには夢がある。」とハリーの声がした。「いつか、意識を有する生命が自分の色や形や材質や親ではなく、自分自身の精神のパターンによって評価される日がくる。 いつか水晶人と仲よくなれるとしたら、いまマグル生まれと仲よくなれないのはバカらしすぎるだろう? マグル生まれはぼくたちと似たすがたで、似た思考をしていて、水晶人から見ればちがいなんかない。 星ぼしに出かけようというとき、スリザリン寮をむしばむ憎悪を連れていくことなんか、まったく考えられないだろう? 生命はすべて尊い。思考し、自我があり、死にたくないと思うことができる存在はすべて尊い。 リリー・ポッターの命もそうだった。ナルシッサ・マルフォイの命もそうだった。いまとなっては遅すぎるけれど、二人が死んだことは悲しい。 でも、たたかって守るべき命はまだほかにある。 きみの命も、ぼくの命も、ハーマイオニー・グレンジャーの命も、地球上のすべての命も、それ以外のすべての命も、守る価値がある。エクスペクト・パトローナム!」
そして光があった。
その光ですべてが銀色になった。石畳にも、石壁にも、ドアにも、欄干にもまばゆい光が反射して、ほとんど見えなくなった。空気自体がかがやくように見え、その光はさらに、どんどんあかるくなっていく——
光が消えたとき、ドラコは痛烈な衝撃を感じて、無意識にローブのなかに手をやりハンカチをとった。そのときはじめて、自分が泣いていることに気づいた。
「これが実験結果だ。」とハリーの声が静かに言う。「いま言っていたことは本気だよ。」
ドラコはゆっくりと向きをかえてハリーに対面する。ハリーはもう杖を下げていた。
「なにか……なにかトリックがあるんだろう?」 あんな衝撃をまた投げつけられたらたまらない。 「〈守護霊〉が——あそこまであかるくなるはずは——」 だがあれは、たしかに〈守護霊〉の光だった。一度そう気づくと、とてもほかのものには見えなくなる。
「あれは
ドラコはもうわからなくなった。真の強者はだれか、真の正義はなにかがわからなくなった。 複視。複視だ。 ハリーの理想論は弱さだ、と言いたくなる。ハッフルパフ的なバカげたうそだ。支配者が民衆をなだめるために使ううそだ。そんなことを信じるなんてハリーは愚かだ。愚かな考えをまじめに受けとって、ありえないほど高く持ちあげて、星ぼしにまで投影している——
そしてそれは美しく、ひそやかで、謎めいていて、かがやかしい——
「ぼくも、いつか、あの〈守護霊の魔法〉をつかえるようになるか?」とドラコは小声で言った。
「つねに真理をもとめていれば、そしてぬくもりあるイメージができたときに拒否しないでいれば、きっとできる。 だれでも、進みつづけさえすれば、どこにでもいけるとぼくは思う。星ぼしにでも。」
ドラコはもう一度ハンカチで両目をぬぐった。
「もう中にもどったほうがいい。」とドラコは安定しない声で言う。「だれかに見られたかもしれない。あれだけの光だ——」
ハリーはうなづいて歩きだし、扉を通った。ドラコはもう一度だけ夜空を見あげて、そのあとにつづいた。
〈死ななかった男の子〉とは何者だろう。すでに〈閉心術〉ができて、真の形態の〈守護霊の魔法〉を使えて、ほかにもいろいろ奇妙なことができるこの少年は何者だろうか。 ハリーの〈守護霊〉はどんな〈守護霊〉なのか。なぜ他人に見せてはならないのか。
ドラコはどの問いも口にしなかった。ハリーは
二人は教室までもどる手間をはぶいて、廊下の小さな
ドラコは〈音消〉の障壁をつくってから、無言でたずねるようにハリーのほうを見た。
「ずっと考えてたんだけど、やるよ。でも五つ条件がある——」
「
「そう。五つ。こういう誓いのことばっていうのは、うっかり自分から大失敗を招こうとするようなものじゃないか。ほら、もし芝居でこういう場面があったなら、あとで誤算が発生するものと決まってるだろう——」
「でもこれは芝居じゃない! ダンブルドアは母上を殺した。 ダンブルドアは邪悪だ。 きみはいつもそういう言いかたをする。でも複雑に考える必要はなにもない。」
「ドラコ……」と言うハリーの声が慎重になった。「ぼくが
「問題ない。」 この条件は安全そうだ、とドラコは思った。
「条件その二。ぼくが誓うのは、合理主義者としての自分の能力を公正に適用してナルシッサを殺した真犯人の正体を調べあげて、見つかった人物をぼくの敵と見なすことだ。 それがダンブルドアであれ、ほかのだれかであれ。 ぼくは合理主義者としてできるかぎりのことをして、純粋に公正な判断をするようにつとめると保証する。 同意できる?」
「気にいらない。」とドラコは言った。 実際、気にいらない。ハリーがダンブルドア陣営につくのを防ぐというのが、こうやって誓わせるそもそもの目的だ。 とはいえ、公正にやりさえすれば、ハリーは遠からずダンブルドアの正体に気づくだろう。公正にやらないなら、それで誓いをやぶったことになる……。「でも同意しよう。」
「条件その三。ナルシッサは
ドラコは冷静さをうしないかけたが、なんとか持ちこたえた。
「条件その四。もしナルシッサ本人が悪事に手をそめていたなら、たとえば、ナルシッサがだれかの子どもを〈
「どうも、あとで使える逃げ道を用意しているみたいにしか聞こえないんだが——」
「ドラコ、ぼくは善人を敵と宣言したくないんだ。きみのためでも、だれのためであっても。 その相手がほんとうに悪なんだと信じられる必要がある。 でも、仮にナルシッサ本人がなにも邪悪なことをしていなくて、ルシウスと恋に落ちて妻でありつづけただけなら、だれがナルシッサを寝室で生きたまま焼いたのだとしても、そいつは善人じゃないと思う。 その犯人がダンブルドアだったとしても、ほかのだれかだったとしても、ぼくはそいつを敵と宣言する。きみが自分の意思でぼくを誓いから解放しないかぎり、そうする。 ここまでしておけば、きっと芝居にあるような誤算はふせげるんじゃないかと思う。」
「不本意だが、わかった。 きみはぼくの母を殺した人を敵と宣言すると誓う。そしてぼくは——」
ハリーは待っている。ドラコがもう一度声をだそうと努力するあいだ、辛抱づよい表情をして待っている。
「マグル生まれへの憎悪というスリザリン寮の問題をきみが解決しようとするのを手つだう。」 そしてドラコは小声になって最後のひとことを言った。 「そして、リリー・ポッターが死んだことは悲しいと認める。」
「誓約は成立した。」とハリーが言った。
それで決着がついた。
間隙がすこし広がったことにドラコは気づいた。いや、すこしではなく、かなりの幅になった。 自分が漂流をはじめたような、喪失の感覚がある。岸からどんどん離れ、ふるさとからどんどん離れていく……
「ちょっと待ってくれ。」と言ってドラコはハリーに背をむけ、自分を落ちつかせようとした。このテストはどうしてもしておかなければ。そして、不安や恥ずかしさのせいで失敗しないようにしたい。
ドラコは杖をかかげ、〈守護霊の魔法〉の開始姿勢をとった。
ホウキから落ちたときのことを思いだす。あの痛みを、恐怖を思いだす。それが背のたかいマントすがたの水死体のような人影から来ていると想像する。
そしてドラコは目を閉じた。そうすると、自分の冷たい小さな手をつつむ、父上の力強くあたたかな手のことが、ありありと思いだせる。
もうこわがることはないぞ、わたしがついている……
杖を思いきりふりかざし、恐怖を散らそうとしたとき、ドラコはその強さにおどろいた。 そのときドラコは、自分は
目をあけると、光かがやくヘビがこちらを見かえしていた。さきほどと変わらないあかるさだ。
うしろで、ハリーがほっとしたように息をはくのが聞こえた。
ドラコは白い光をじっとのぞきこんだ。 けっきょく、すべてがダメになってしまったわけではないらしい。
しばらくしてハリーが口をひらいた。「ところで、〈守護霊〉を使ってメッセージを送るやりかたの仮説があるんだけど、テストしてみない?」
「ぼくがおどろくようなやりかたか? 今日はもうこれ以上、おどろかされるのはごめんだぞ。」
この方法はとくに奇妙ではないし、ドラコがすこしでもショックを受けそうなおそれはまったくない、というのがハリーの主張だった。そう聞いてなぜか、ドラコは余計に不安になった。 だが、緊急時にメッセージを送る手段があるのがどれだけ重要かは、ドラコにもわかっていた。
鍵となるのは——すくなくとも、ハリーの仮説では——よい知らせを広めたいという意思、つまり自分が〈
「ハリーへの伝言だ。」とドラコは発光するヘビに言う。ハリーは教室の反対がわにいて、ほんの数歩しか離れていないのだが。「その、緑色のサルに気をつけろ、と。」 これは昔ドラコが見た芝居で使われていた暗号だった。
それから、父上がドラコのことをいつも気にかけてくれるということを、ちょうどキングスクロス駅で話したときのように、ハリーに知らせたいと願った。 ただ今回はことばで表現しようとせず、幸せのイメージそのものを通じて言おうとした。
光るヘビが部屋のなかを這っていく。石畳のうえというより、空中を這っているように見えた。 そしてハリーまでのみじかい旅路を終えると——
——ヘビは『緑色のサルに気をつけろ』とハリーに言った。奇妙な声だったが、おそらく他人にはドラコの声がこういう風に聞こえているのだろう。
「フスー ススー シュシュースススス」とハリーが言った。
ヘビは床を這ってドラコのところにもどってきた。
「メッセージはたしかに受けとった、とハリーは言っている。」と光るアマガサヘビがドラコの声で言った。
「ふう。〈守護霊〉と話すのは変な気分だね。」
……
……
……
……
「なんでそんな目でぼくを見てるの?」と〈スリザリンの継承者〉が言った。
余波:
ハリーはドラコをじっと見て言った。
「でも、それは
「い……いや。」 ドラコは顔面をやや蒼白にして言う。まだことばをつかえさせてはいるが、すくなくとも先ほどまでのように意味不明にごにょごにょ言うだけではなくなった。 「きみは〈
……
……
……
……
……
「まさか、ヘビって意識があったの?」
原作品の著者:J. K. Rowling
ファンフィクションの著者:Eliezer Yudkowsky