なんだかんだで能力貰って。
面白おかしく生きた男の物語。
目の前の荒野に、幾千幾万の兵士が集っていた。
その後方には、魔法に依って浮く戦艦。
まさしくここは戦場であり、まさしくここは、これまで俺が生きていた世界とは異なっていた。
「……神様って奴はすげえな。魔法なんてオカルトまで形にするなんて」
神様自体がオカルトだが、という言葉は飲み込む。
目の前に居たものを“オカルト”呼ばわりするのは、気が引けた。
「さて、折角だし、頂いた能力とやらを使ってみるか」
そう呟いた一瞬後には、俺の手には既にソレが握られていた。
それは、あまりにも大きすぎた。
それは、パンと呼ぶには余りに大きすぎ、鋭すぎた。
それはもはや、食用剣とでも呼ぶべきものだった。
「うん。出来るな。じゃあ、行きますか」
俺は、神様によって凶化……もとい強化された身体能力で、戦場に駆けていった。
――その手に全長100メートル程のパンを持って。
青山詠春が、怒りを抱いている。
それも、義憤だとかではなく、個人的な怒りを。
赤い翼の面々にとっては、それはとても珍しいことだった。
日本人らしく、普段から強い主張をしてこなかった詠春が。
まさか、個人的にたった一人の男に、怒りをぶつけるなんて。
「貴様……普通の剣を使え! よりにもよって、パンだと! ふざけるなぁ!」
「えー、俺はこれしか出せないんだが……」
その男は、桜拓馬と名乗った。
名前からすると、日本人なのであろうが、詠春とは反りが合わないようで……
「貴様の何が気に入らんかと言えば、そんなふざけた剣で、俺と対等に切りあえる所だな!」
「いや、身体能力に任せた剣術だから、褒められてもな……」
まぁ、確かに、赤い翼の面々として拓馬には一言申したい。
――何でパンで、刀と打ち合えるのか、と。
確かに。確かに、それはパンというよりは、剣と呼ぶべき形をしていたが、パンであることに変わりなし。
そんなパンが、刀と打ち合って金属音を響かせていたら、誰でも驚愕する。
「知ってるか? 北国には、人を撲殺出来るほどの堅さのパンが、実在するらしいぞ?」
「まさか、それがそうだとでも?」
「いやいや。これは俺の能力
その言葉に、詠瞬は切りかかるのを止めた。
そして、正眼に構えた刀の切っ先で、拓馬に続きを促す。
「この能力というのは、俺が想像した食べものを具現化するものだ。
俺が想像仕切ることさえ出来れば、どんなものでも、な」
この時、赤い翼に衝撃奔る――!
ナギ・スプリングフィールドが、拓馬に向かって走り出したのだ。
「その身体能力といい、お前強いな! 仲間になんねぇか?」
「女の子が居ないのがいささか残念だが……良いぜ。俺を仲間に入れてくれ」
そうして彼は、この後も戦い続け、幾つもの二つ名を付けられることになる。
『食用大剣』
『食の逆転』
『パンしか無ければパンで戦えば良い』
『食べ物を粗末にするんじゃありません!』
『パンに雷の暴風切り裂かれたんですけど』
なんかこう、他の面子と比べるとネタ的な物が多かったのは、ご愛嬌である。
そして彼らは、ラストダンジョ……墓守り人の宮殿に辿りついた。
「やあ、千の呪文の男。それに、忌々しい食用大剣……パンで替えの体を切られた時は、腸が煮えくり返ったよ……」
「パンに斬られるほど柔いのが悪い」
「君にとってはそうなのだろうね。だから、僕も容赦しない」
そして、ラスボ……造物主と出会う。
「食用大剣……この世界の法則を知った者よ」
「え? 法則? え、何?」
「食べ物で攻撃するという行為は、いかにも旧世界人が思うところの“魔法的”」
「いや、だから、法則って……?」
「魔法的なものが強化される魔法世界においては……」
「おい、ナギ。もういいから、撃て」
「千の雷!」
「……とまあ、こんな感じだな、拓馬の奴との関係は」
「はぁ、そうなんですか……」
「いやいやいやいや、二つ名にまともなの少なすぎだろ! 『食べ物を粗末にするんじゃありません!』ってもはや名前以前の問題だし!」
「それを言えば、ラカンさんの『剣が刺さんねーんだけど』でしたか? あれとどっこいでしょう」
「赤い翼としては、パンで魔法を切り裂かれることにびっくりしてたがな」
「あのにーちゃん、大戦の時からあんなんかいな……」