なんだかんだで転生して。
なんだかんだで能力貰って。
面白おかしく生きた男の物語。

1 / 1
にじファンで公開してた奴をホントにちょっとだけ修正して投稿。



それは食べることが出来ます

 

 

目の前の荒野に、幾千幾万の兵士が集っていた。

その後方には、魔法に依って浮く戦艦。

まさしくここは戦場であり、まさしくここは、これまで俺が生きていた世界とは異なっていた。

 

 

「……神様って奴はすげえな。魔法なんてオカルトまで形にするなんて」

 

 

神様自体がオカルトだが、という言葉は飲み込む。

目の前に居たものを“オカルト”呼ばわりするのは、気が引けた。

 

 

「さて、折角だし、頂いた能力とやらを使ってみるか」

 

 

そう呟いた一瞬後には、俺の手には既にソレが握られていた。

 

それは、あまりにも大きすぎた。

それは、パンと呼ぶには余りに大きすぎ、鋭すぎた。

それはもはや、食用剣とでも呼ぶべきものだった。

 

 

「うん。出来るな。じゃあ、行きますか」

 

 

俺は、神様によって凶化……もとい強化された身体能力で、戦場に駆けていった。

――その手に全長100メートル程のパンを持って。

 

 

 

 

 

 

 

 

青山詠春が、怒りを抱いている。

それも、義憤だとかではなく、個人的な怒りを。

 

赤い翼の面々にとっては、それはとても珍しいことだった。

日本人らしく、普段から強い主張をしてこなかった詠春が。

まさか、個人的にたった一人の男に、怒りをぶつけるなんて。

 

 

「貴様……普通の剣を使え! よりにもよって、パンだと! ふざけるなぁ!」

 

「えー、俺はこれしか出せないんだが……」

 

 

その男は、桜拓馬と名乗った。

名前からすると、日本人なのであろうが、詠春とは反りが合わないようで……

 

 

「貴様の何が気に入らんかと言えば、そんなふざけた剣で、俺と対等に切りあえる所だな!」

 

「いや、身体能力に任せた剣術だから、褒められてもな……」

 

 

まぁ、確かに、赤い翼の面々として拓馬には一言申したい。

――何でパンで、刀と打ち合えるのか、と。

 

 

確かに。確かに、それはパンというよりは、剣と呼ぶべき形をしていたが、パンであることに変わりなし。

そんなパンが、刀と打ち合って金属音を響かせていたら、誰でも驚愕する。

 

 

「知ってるか? 北国には、人を撲殺出来るほどの堅さのパンが、実在するらしいぞ?」

 

「まさか、それがそうだとでも?」

 

「いやいや。これは俺の能力『夢の食べ物』(フードオブユートピア)によるものだ」

 

 

その言葉に、詠瞬は切りかかるのを止めた。

そして、正眼に構えた刀の切っ先で、拓馬に続きを促す。

 

 

「この能力というのは、俺が想像した食べものを具現化するものだ。

俺が想像仕切ることさえ出来れば、どんなものでも、な」

 

 

この時、赤い翼に衝撃奔る――!

ナギ・スプリングフィールドが、拓馬に向かって走り出したのだ。

 

 

「その身体能力といい、お前強いな! 仲間になんねぇか?」

 

「女の子が居ないのがいささか残念だが……良いぜ。俺を仲間に入れてくれ」

 

 

 

 

そうして彼は、この後も戦い続け、幾つもの二つ名を付けられることになる。

 

『食用大剣』

『食の逆転』

『パンしか無ければパンで戦えば良い』

『食べ物を粗末にするんじゃありません!』

『パンに雷の暴風切り裂かれたんですけど』

 

なんかこう、他の面子と比べるとネタ的な物が多かったのは、ご愛嬌である。

 

 

 

 

 

 

そして彼らは、ラストダンジョ……墓守り人の宮殿に辿りついた。

 

 

「やあ、千の呪文の男。それに、忌々しい食用大剣……パンで替えの体を切られた時は、腸が煮えくり返ったよ……」

 

「パンに斬られるほど柔いのが悪い」

 

「君にとってはそうなのだろうね。だから、僕も容赦しない」

 

 

そして、ラスボ……造物主と出会う。

 

 

「食用大剣……この世界の法則を知った者よ」

 

「え? 法則? え、何?」

 

「食べ物で攻撃するという行為は、いかにも旧世界人が思うところの“魔法的”」

 

「いや、だから、法則って……?」

 

「魔法的なものが強化される魔法世界においては……」

 

「おい、ナギ。もういいから、撃て」

 

「千の雷!」

 

 

 

 

 

 

 

「……とまあ、こんな感じだな、拓馬の奴との関係は」

 

「はぁ、そうなんですか……」

 

「いやいやいやいや、二つ名にまともなの少なすぎだろ! 『食べ物を粗末にするんじゃありません!』ってもはや名前以前の問題だし!」

 

「それを言えば、ラカンさんの『剣が刺さんねーんだけど』でしたか? あれとどっこいでしょう」

 

「赤い翼としては、パンで魔法を切り裂かれることにびっくりしてたがな」

 

「あのにーちゃん、大戦の時からあんなんかいな……」

 

 

 

 

 


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。