十二支 兎 :趣味と言っていいかわからないけど、そうだなあ。うん、日記を書くことだな。
十二支 桜花:時間が空いた時には、そうですねぇ。縁側でお茶と吹雪饅頭を食べるのが楽しみです。
大正○○年 ▲月 ●日。
柱合会議。
それは半年に一度、10人いる柱が一同に介し、鬼を討つための情報を共有、ならびに対策、方針を決定づける会議。
全ての柱がお館様のもとに集い、悪鬼滅殺に向けて準備を行う場、とでも言おうか。
当然、業柱であるこのオレ、十二支 兎も召集の対象である。
かぁかぁうるさいぞ、ねぎま。わかってる、今回のオレは一味違う。
愛する妻の為、今日こそ勝利をもぎ取ってやる。
産屋敷。我らがお館様の住まう屋敷。すべての鬼殺を産みだした一族の住む屋敷。
足を運ぶのは何度目だろうか。
初めて来たときにはさすがに緊張を覚えたものだ。悲壮感さえあったようにも思う。
今あるのは憤りだけだけど。
門を開け、中に入る。
目指すのは中庭。
柱だからと言って、お館様と俺達では立場に天と地ほどの開きがある。
つまり、オレ達は中庭に立ってお館様を見上げながら会議をする訳だ。
座布団くらいくれよ。
そんな一言を言って不死川にぶん殴れたのは良い思い出だ。
あんな傷だらけのなりして忠義者だよね。
尊敬してるよ、いやホント。
中庭にたどり着くと先客が数名いた。
まぁ、遅刻したわけでもないし、許してくれるだろう。
すでに集まっている面々を見る。
岩柱・悲鳴嶼 行冥。
この人に関して言う事は2つだ。
でかい、怖い。
阿弥陀経をいつも唱え、両目からはいつも涙を流す。
じゃりじゃり、と数珠をすり合わす様がまた不気味。
オレ初対面でこの人のこと鬼だと思ったからね。
もう全力で逃げたからね、わき目もふらず。
アレは、うん。
オレが悪かったな。
「ああ、業柱が来た・・。まだ妄言を信じているのだろうか、可哀想に、可哀想に」
訂正、オレは悪くない。
いやこわいよ、これでビビるなってほうが無理でしょ。
水柱・冨岡 義勇。
友達の少ない子。
癸時代にオレがすこし鍛えてあげました。
知らぬ仲ではないし、一緒にすこしでも強くなろうとした間柄だ。
加えて、この間は馬鹿のせいでひどく迷惑をかけた。
一言、挨拶ぐらいはして然るべきだろう。
やぁ、冨岡君。元気?
「・・・・・・」
冨岡君は何も言わない。体調でも悪いのか、苦虫をかみつぶしたような顔をしている。
大丈夫か? しっかり食べてる? そうだ。こんどまた家に鮭大根食べにおいでよ。
なんだろうか。
葛藤している表情になった冨岡君であった。
「なんだ、十二支。冨岡は食事に招待しておいて、俺には挨拶もなしか? 大層偉くなったものだな」
む、このねちっこい感じ、略してねちかんを放ってくるのは。
中庭の松の木を見上げると、そこには一匹の蛇を連れた男。
蛇柱・伊黒 小芭内。
性格が大層ねちっこいお方。力は弱いが、実力は折り紙つき。
そしていつも松の木の上が指定席。おい、それお館様の木だぞ。
降りてこいよ、怪我しても知らんぞ。
「ふん。俺がこの程度で負傷すると? 気遣いはありがたいが、善良性の主張は鬼に足元をすくわれる原因だぞ。たいそうな余裕をみせてくれるじゃないか。それほど頂点の椅子は心地がいいか?」
心配してやってんだよ。ほんとに。信用無いなぁ。
「お前とくらべれば狐のほうがまだ信用できるさ。それよりもだ、十二支。俺が言ったことを覚えているか?」
え? なんか言ってたっけ?
「貴様のその間抜けぶりにはほとほと愛想が尽きる。そも、愛想など持ち合わせていないが。忘れたとは言わせない。忘れることなど許さない。貴様の呼吸についての話だ」
呼吸? ・・・ああ、『巳』の話か。
「そうだ。『巳』の呼吸とは許しがたい。俺の『蛇』と被っているじゃないか。いますぐにその名を捨てろ」
そうさなぁ。でもさ、蛇と巳じゃ、意味は同じだけど形が全然違うぜ?
仕組みも効果も違う訳だし。
「そう言う事を言っているんじゃない、ここにヘビが2匹いることが問題なのだ」
そういうもんなの?
伊黒はこうなると大層ねちっこい。
会話もそこそこにオレは他の面々に目を向けた。
他に到着しているのはっと・・・。
恋柱・甘露寺蜜璃。
あっちこっちに目を向けて真っ赤になって照れている。
まぁ、アイツは大層惚れっぽいので伊黒に富岡に、そのほかいろいろと気移りして数刻に一度恋に落ちているのだろう。
かかわるとろくなことがない。
それにオレは今女性関係に関しては繊細になっているんだ。
悪く思うな、蜜璃。
風柱・不死川 実弥。
顔中傷だらけ・・というか、現在進行形で傷が増え続ける男。
恐らく、柱の中で最も鬼狩りに積極的。
いや、オレ以外の柱はみんな真剣に鬼を斬っている訳だけど。
不死川のそれはなんというか、うん。
強い憎悪と後悔の味がする。
一々人の過去に詮索を入れたりはしないが、不死川にはきっと、『なにか』あるのだろう。
それこそ、死んでも死にきれないほどに。
霞柱・時透 無一郎。
最年少の柱。オレと日輪刀の色がそっくり。
気が合うかな、と思って前に話しかけてみたら、あら不思議。
目が合いません。会話が成り立ちません。
それでも必死に構ってもらおうと目の前で手をバタバタさせたときに彼から出た言葉がこちら。
「ねぇ、いい大人が恥ずかしくないの?」
以降。俺は彼に対しての過干渉を止めました。
そして、いま来ている柱の中では最後の1人。
なぜ彼女の事を一番最後にしたのか。
答えは単純だ。
「あらあら、業柱の十二支さんじゃないですか。無理に来なくても良かったのに」
蟲柱・胡蝶しのぶ。
オレは彼女に嫌われている。
ねぇ、胡蝶ちゃん・・。久々に会ったんだし、もっとちゃんと話を・・。
「まぁ! 残念です! 私はあなたに話なんてないし顔だって見たくないので。むしろ私に当たり前のような顔してそんな質問してくるなんてどういう神経してるんですか?」
寂寥感に耐えられない。
冨岡君の左手を掴もう。
ね、ねぇねぇ冨岡君。お、オレ何かしたかな?
「ねぇ、冨岡さん。そんな人は放っておいてこっちでお話しませんか? ねぇ、冨岡さん。ねぇ」
胡蝶ちゃんが冨岡君の反対側の裾を掴んだ。
ねぇってば冨岡君。しの、胡蝶ちゃんずっと怒ってるよね、心当たりない?
「まぁ。本当に腹立たしいことを言いますね。ねぇ冨岡さん。無神経だと思いません?ねぇ。ねぇ」
ねぇ、返事してよ冨岡君。冨岡君はオレの味方だよね、ね?
「いいえ。冨岡さん。ここは私に味方してくれますよね? ね?」
冨岡君。
「冨岡さん」
義勇君。
「義勇さん」
とみっち。
「ぎっちゃん」
冨岡大明神。
「冨岡観音菩薩」
とみとみ。
「ぎゆぎゆ」
次の瞬間。
オレと胡蝶ちゃんは冨岡君に思い切り投げられて産屋敷の柵に激突した。
痛い、背中うった、涙が出る。
でも泣かない、男の子だから、いい大人だから!!
「・・・・・・・」
わかってます。冨岡君、いらついたんですね。
日輪刀から手を離してください。
「ほら、あなたのせいで冨岡さんが乱暴者扱いされてしまいます。ますます冨岡さん、嫌われてしまうじゃないですか」
「俺は嫌われてない」
そうだぞ! 冨岡君は嫌われてない!!ちょっと人づきあいが苦手な、可哀想な子なんだぞ!! いまはぐずぐずの人間関係だったとしても、みんなきっとわかってくれるよ!
なあ、冨岡君!!
なんだろうか。
冨岡君の目がなぜかどんどん死んでいくような。
おい蜜璃、何爆笑しそうになってんだよ。冨岡君に失礼でしょう!
ぶった斬るぞ、てめー。
「む! なんだ!! 俺達が一番最後なのか!!本当に申し訳ない!!」
「こいつは派手に失策だったな。やはり地味にいつもの道じゃなく、派手派手な近道を使うべきだった」
喜べ蜜璃。
標 的 変 更 だ。
大正コソコソ昔話(偽)
兎君と胡蝶さんは仲が悪く見えるけど、他の皆は裏で兄妹みたいだってからかってるよ。
それを聞かれた癸の剣士は今、蝶屋敷につるされてるよ。