十二支 兎 :欲しいもの、欲しいものかぁ・・。うん。アレだね。桜花、ちょっとこっちに来て。
十二支 桜花:? なんですか、兎さん・・ひゃあっ!?
十二支 兎 :ああ、これこれ、疲れた時には膝枕ぁ。
十二支 桜花:ちょ、兎さん! 皆さん見てるんですからそういうのは・・・蜜璃さん!きゅんきゅんしてないで助けてくださいってばぁ!!
大正○○年 ▲月 ●日
「やぁ、お早う。みんな、召集に応じてくれてありがとう。顔ぶれが変わることなく、今回も柱合会議を行えることを嬉しく思う」
「てめぇらあぁあああああ!! ぶっころしてやるぅぅううううう!!」
「止めねーかァ! 落ち着け十二支ィ!!」
「止めるな不死川ァァ!! 男には退けない時がある!! つまり今だぁあああ!!」
「うむ!! 元気でいいな兎殿!! 感心だ!!」
「きぃいいさあああまぁあああああああ!?どの口がそんなこと言ってんだ!!」
「お館様の話を遮っちゃだめだよ」
「だまってろドチビ!!」
「きみ、斬るね」
「無一郎君、あんな喧嘩に飛び込んでいくのね。男らしいわ素敵だわ!」
「ねぇ、冨岡さん。やっぱりあの人馬鹿だと思いませんか? ねぇ?」
「否定できない」
「おい!? なんでオレまで派手に狙われなきゃならねぇんだ地味派手兎!?」
「黙りやがれくそ忍者が!! そもそもお前があんなこといいださなきゃあなぁ!?」
「やかましいぞうるさいぞ。お館様の前だ。礼儀さえもしらんのか?」
「伊黒殿! ではそこから降りてはどうだろうか!」
「ふざけるなよ煉獄。お前たちが起こした騒動で怪我をすることほど馬鹿らしいことはない。かすり傷でも俺に負わせてみろ。俺はお前たちを許さない」
「哀れなことだ。くだらぬ怒りに囚われて。可哀想に、可哀想に」
「桜花のどこがくだらねぇんだああん!? 斬っちゃうよ? 俺斬っちゃうからね!」
「随分と騒がしいけれど、今何が起きているのかな?」
「業柱が抜刀して炎柱と音柱に斬りかかり、それを風柱と霞柱が抑えています。炎柱は楽しそうにそれを見ています。音柱は業柱の射程から逃げようとしています。他の柱たちですが、恋柱・水柱・蛇柱・蟲柱は状況を俯瞰しています。岩柱は余計なひと言の所為でたった今標的に加わりました」
「お前の報告はいつも正確で助かるよ。さぁ、私の剣士たちには・・・というか兎にはそろそろ落ち着いて貰わないとね」
十二支 兎です。 はい、落ち着いています。落ち着きましたとも。
いやぁ。我ながら取り乱しました。お館様、もうしわけありません。
「・・・・・・・・」
みんなが凄い目で見てくる。やめて、そんな目で見ないで。
「兎。桜花の事をとても大切に思うのは、君の長所であり短所だよ。大切な人を想う心は、人を何処までも強くする。だけど大切な人を想う心は、どこまでも人を向う見ずにしてしまう」
お館様の言葉は、いつもなんだか心地よい。
しっとりと。
それでいて力強く耳に残る。
まぁ、それと鬼と戦いたくないと言うオレの気持ちは全く関係ないわけだけれど。
「さぁ、兎も落ち着いたところで柱合会議の続きを」
その前にお館様。恐れながら進言させていただきたいことがございます。
「何かな? 兎」
炎柱・煉獄 杏寿朗と音柱・宇随 天元。
両名の顔を思い切り殴らせていただいてもよろしいでしょうか?
「・・・・杏寿朗。天元。一度兎に謝った方がいいね」
二人が謝罪してきました。
許さない。
二人が頭を下げました。
宇随君、まだ頭が高いぞ。
二人が謝罪を形にしたいと言い出した。
桜花に吹雪饅頭と高級玉露持って謝りに行け。
純情な兎さんを浮気者扱いして申し訳ありませんでしたと言って詫びろ。
それで4分の3許してやる。
「兎。桜花をここに呼んで叱ってもらった方がいいかな?」
友よ! これからも仲良くやって行こうじゃないか!!
いざ! 悪鬼滅殺!!
「悪鬼滅殺!!」
「俺は時々お前が派手な病気なんじゃないかと思う」
わかりあったオレと杏寿朗を見て宇随君がそんなことを言っていた。
「さて、それでは本題に移ろう」
親方様のきりだした話は、明るい話とは言い難かった。
鬼殺隊の剣士の死亡数がどんどん増えてきている事。
中には異能を持たない鬼に食われてしまったり、狡猾な鬼にだまし討ちされたり。
慢心。油断。恐怖。
そういった感情が隊士たちの士気を下げ、死期を近づけてしまう。
「選別をもっと厳しくするべきかと。正しく強い者だけを、鬼殺の剣士として認めるのです」
不死川がそう発言した。
それに異を唱えたのは冨岡君だ。
「それでは選別の際に多くの人間が死ぬ。現状の解決にはつながらない」
「うむ! 現在の最終戦別でも多くの若者が散っている! これ以上は無理だ!!」
杏寿朗がそれに同調する。
うーん、もっと根本的な解決方法は無いだろうか・・。
鬼にお願いしてみます? 新人は狙わないように、って。
「ふざけるのなら帰ってください、業柱」
胡蝶ちゃんに叱られた。怖い。
続けて、胡蝶ちゃんは親方様に進言した。
「私には継子がおります。他の柱の皆さまも継子を育ててみてはいかがでしょう?」
継子とは、俺達柱が特別に育てる隊士のことだ。柱の技術、戦い方を俺達が直接叩き込む。
つまるところ、継子は柱の『予備』と言う訳だ。
「そうだね。本当は柱全員に継子を与えたいところなんだが」
そこまで言ってお館様は口をつぐんだ。
確かに、そこから先の言葉は言い辛いだろう。
そしてそういう言い辛いことをはっきりと口に出すのは、いつも決まって伊黒だった。
「お館様。無礼を承知でもうしあげるが、継子にするには、今の隊士たちはあまりに弱い。おそらく、いや確実に俺達からの修練を物には出来ないだろう」
「小芭内の言う通りだね。現状、君たちの継子になりうるような剣士は最終選抜を通過できていない。こればかりは才覚も関わってくる問題だからね」
継子、継子かぁ・・・。
そうだよなぁ、継子がいればオレもさっさとやめられるもんなぁ。
オレの一言に、全員が静まり返った。
お館様にいたっては溜息すらついている。
あ、あれ? オレ何かまずいこと言った?
愚痴だよ! ただの愚痴じゃん!
「もういいです。だまってください」
胡蝶ちゃんが怒っている。もの凄く怒っている。
喉の奥が焼けるような味だ。
もうこれは、憎悪の味と言ってもいいかもしれない。
「兎。その話は追々またしよう。そうだね、まずは育手に鴉を送って状況を知らせてもらおう。現状の剣士候補たちの成長を確認しておく必要があるからね」
お館様がそう言って締めくくった。
しかしわからない。
なぜそんなにもみんな怒っているのだろうか?
オレが抜けた穴ぐらいすぐに埋められるだろうに。
あ、ところでお館様。先日お出しした辞表なのですが・・・
「ああ。あれなら返すよ。兎、これからも業柱として励んでくれ」
ちくしょう。
「毎回毎回。一体どういうつもりだ、貴様」
夜まで続いた柱合会議の後、オレに声をかけたのは伊黒だった。
なんの話?
「とぼけるな。いつまで柱をやめたいなどと妄言を吐き散らすつもりだ。先の会議でも言っていただろう。俺達は今、鬼に対して圧倒的に戦力不足。ここ数年で何人柱が死んだ?鬼舞辻にはたどり着いてすらいないのに。上弦を一匹も減らすことさえできぬまま。鬼を討つには刀が必要だ。お前たちと言う刀がな」
・・・そうだな。何人も仲間が死んだ。食われて、死んだ。
だからこそ、オレはさっさと柱なんてやめたいんだよ。
わかるだろ? 死ぬの、怖いじゃん。
「・・・・お前にはほとほと失望させられるな。本当にくだらない感情で動く。頭痛がしそうだ」
結構結構。同僚に嫌われるのは辛いけど、命には代えられないからさ。
それに。
鬼を斬るために刀を握ったら、オレ達だって悪鬼と同じだよ。
伊黒、一生懸命なのはいいけどさ。
そもそも何のために鬼を斬るのか、ちゃんと考えてるか?
「ふん・・・。まて、何処に行く、話はまだ終わっていないぞ。何処に行こうとしている? 逃がしはしない」
なんだよ、ねちっこいやつだな。
「失礼なことをいうな。先の戦力不足の話だ。お前は解決策を知っているだろう?」
知らんよ。若輩が育つのを待つしかない。
胡蝶ちゃんところのカナヲちゃんなんかは有望株だろ。
「とぼけるな。解っているだろう? 俺が何を言いたいか。 わからないなどとは言わせないぞ」
わからないよ。伊黒。
皆目見当もつかない。
だから、それ以上言うな。
「『仇散華(あだちりばな)』はいつ戦線に戻せる。さっさとあの女に日輪刀を持たせて鬼を斬らせ・・・・」
なぁ。伊黒。
オレは黙れと言った。確かに言ったぞ、それ以上言うなと。
それでも口を開いたお前が悪いと思う。うん。
日輪刀がこすれる音がする。
オレの純白の刃を止めたのは、赤い刃だった。
なぁ、どけよ杏寿朗。
オレはそこの蛇野郎を斬る。
「ダメだ! 兎殿!! 落ち着いてはくれないだろうか!! 隊士同士の斬り合いはご法度だ!」
なおさら退け。オレと斬り合うか?
「困った! オレは兎殿から一本取ったことが無いからな!! きっとあっという間にやられてしまう!! だが!! ともに研鑽を重ねた仲間が人斬りに堕ちる様は見たくないからな!!」
鬼を斬ってる段階でオレ達は人斬りも同義だ。
これ以上は堕ちない。安心しろよ。
さぁ、そこを退け!!
「そうまであの機械剣士が大事か、十二支」
「伊黒殿!! 今は口を開かない方がいい!!」
もういい。邪魔し続けるならお前ごと・・・・
そのとき、空からねぎまの声が響いた。
「カァー!! カァー!! 敵襲!! 敵襲!!『業屋敷』ニ襲撃者アリ!! 丙隊士、氷柱 霙(つらら みぞれ)交戦中! 業屋敷内状況、現在不明!! 繰リ返ス!『業屋敷』ニ・・・」
オレはすぐに産屋敷を飛び出した。
後ろから杏寿朗や蜜璃の叫ぶ声が聞こえたような気がしたけれど。
その時のオレには、聞こえていなかった。
大正コソコソ噂話(偽)
冨岡君は兎君が継子が欲しいって言った時、その継子に本気で同情したんだって。
鬼を連れた少年とか気に入ってそうで嫌だなぁ、って思ったんだって。