柱なんてさっさとやめたい。   作:いろはにぼうし

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夜の空
流るる帯に
君想ふ。


番外編其ノ肆 十二支夫婦は 星に願う。

大正○○年 七月七日。

 

 今日は七月七日。七夕だ。

 業屋敷から見える夜空は、雲一つなく美しい。

 そこには、星の海があった。

 真っ黒の絵の具の上に、たくさんの白、赤。

 とても高い位置にある筈なのに、温かい光に包まれている気になって、オレは柄にもなく空に向かってほほえんでいた。

 

 桜花、来てみなよ。

 

 「・・はい、どうかしましたか? 兎さん」

 

 屋敷の奥からパタパタとやってきた桜花を見て、にっ、と笑って見せる。

 空を指さして、そっちを見るように誘導した。

 つられて顔を上にあげた桜花の瞳に、満点の星空と、天の川が写り込んだ。

 

 「まぁ・・・!」

 

 嬉しそうに、本当に嬉しそうに桜花が微笑む。

 綺麗です、すごく。

 そう言って桜花はオレの隣に座った。

 

 短冊でも用意しておけば良かったかな。

 

 「そうですね。こんなに綺麗な星空なら、なんでも願いが叶いそうです」

 

 ためしに言うだけ言ってみるか、願い事。

 

 「え? ここでですか?」

 

 そうそう、どうせ頼むだけならタダなんだし。

 

 「えっと。そのぉ」

 

 なんだよ、そんなにやましい願い事でもあんのかい?

 

 「そ、そんなんじゃありませんよ! ただ、その・・万一誰かに聞かれたりでもしたら」

 

 恥ずかしくて、と顔を逸らす桜花。

 ・・・確かに、否定はできない。

 

 大概こういう時にはいつもいつもジャマが入る。

 杏寿朗とか、隠の方とか。あと杏寿朗とか杏寿朗とか。

 許すまじ炎柱。

 

 そうだ、いいことを思いついた。

 桜花、ちょっとこっちに来て。

 

 「? なんですか? 兎さ、きゃ!?」

 

 そこまで桜花が言ったところで、オレは桜花の体を思い切り抱き寄せ、持ち上げる。

 もちろん、乱暴にはしない。

 足を右手で、胴を左手で支える。

 これなら、安定して桜花を抱きかかえられる。

 桜花は、突然の事に驚いた様子だったが、やがて恐る恐るオレの首に手をまわして、しっかりと捕まった。

 

 じゃ、行くか。

 

 足に力を込めて、オレは高く、跳躍した。

 桜花に負担がかからないように、優しく飛ぶ。

 そしてそのまま、屋敷の屋根の上に、ゆっくりと着地した。

 

 これ、すごく難しい技術。あとで桜花にそれを教えてほめられたい。

 

 桜花、空がさっきより近くなったぞ。

 

 桜花が、ゆっくりと空を見る。

 うん、やっぱり星は二人で見た方がきれいだな。

 それを教えてくれたアイツは、もういないけど。

 それでも、届けられたものはきっとある。

 

 なぁ桜花。ここなら星とオレ以外、誰も聞いてない。

 ここなら言えるだろ?

 桜花の願い事。

 

 それを聞いて桜花はすこし頬を紅に染める。

 「わ、笑いませんか?」

 

 笑う訳ないだろ。蜜璃じゃあるまいし。

 

 「えっと、その・・」

 

 

 

 桜花はよほど恥ずかしかったのか、誰も見ていないのにもかかわらずひっそりと、オレの耳元まで口を寄せて囁いた。

 

 「う、兎さんと、もっと近くで、ずっと一緒に居たい・・」

 

 

 思わずにやけてしまったオレは悪くないと思う。

 

 「あ、あーッ! わ、笑いましたね!! 笑わないって言ったのにー!!」

 

 憤慨したように腕の中で暴れる桜花。

 可愛い。

 どうしよう。 

 オレの嫁がこんなにも可愛い。

 可愛いなぁ。なんだか意味わかんないくらい可愛い。

 

 桜花、ありがとう。

 オレの願いも聞いてくれるか?

 

 

 すると桜花は不思議そうにオレを見つめた。

 

 なぁ、天の川よ。

 満点の星空よ。

 今から言う事、誰にも言うなよな。

 

 

 

 

 

 

 50年後の桜花が、オレの隣で笑ってくれていますように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『桜花、桜花!』

 

 『何ですか、カナエ。私は早く鬼を斬りに行きたいのですが』

 

 『何言ってるの。今日は七夕よ、今日くらい星を見て過ごさなきゃ!』

 

 『? しかし、星を見ても鬼の弱点は・・・』

 

 『もー、今日はそういうのいいんだってば! あ、兎! 兎もいっしょに星をみましょう!』

 

 『星・・。そういえば、しっかり見たことないけど。急にどうしたんだよ』

 

 『もー、兎も桜花も浪漫ってものが足りないわ。ね、そんなんじゃいつまでたっても結婚相手も見つからないわよー?』

 

 『『ほっといてくれ!(ください!!)』』

 

 『わぁ、仲良しね二人とも。いいなぁ、二人が仲良くしてると絵になるわ』

 

 『勘違いしないでください、私は十二支さんの強さに興味があるだけですから』

 

 『う・・面と向かって言われると、堪えるもんがあるなぁ』

 

 『大丈夫よ兎、桜花は照れてるだけだもん』

 

 『カナエーーーーッ!!』

 

 『そうなの? だとしたらやばいよ、ときめきとめられない』

 

 『心臓ごと止めてください! まったく、こんなことが一体何の役に立つと・・』

 

 『桜花、兎。見てみて。空』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『『うわぁ・・・綺麗』』

 

 『ふふ、やっぱり息ぴったり。お似合いよ、二人とも』

 

 『ッ!? か、からかわないでくださいカナエ!』

 

 『そうだぞ。桜花さんほど綺麗な人なら、きっといい人が見つかるよ。オレみたいに弱い奴とそんな噂がたったら失礼じゃないか・・・痛い!!な、なにするの、桜花さん!! なんで鞘で叩いてくんの!?』

 

 『あなたって人は、あなたって人は!! 人の気も知らないで!!』

 

 『なんのこと・・痛い痛い!! 今年入って一番の痛みかも!!』

 

 

 『ふふ、兎はいつも直球にモノ言うんだから。桜花ももっと素直になればいいのに。そうしたら、すぐにでも』

 

 『カナエもいい加減にしなさい!!』

 

 『えー?』

 

 

 

 

 『兎、やっぱり桜花が好きなんだね。うんうん、それならこれからもカナエさんが頑張って二人を応援してあげようね。 桜花は可愛いもの、可愛い子は幸せにならなきゃ。

・・・はぁ。大分無理したかなぁ』

 

 

 

 

 

 

 

 『大丈夫。大丈夫。 私は桜花の親友だもの。応援できるよ。うん。応援できる!

  うん、うん・・・うんッ・・・なに? しのぶ。え? な、泣いてないわよ、あはは』

 




大正コソコソ噂話(偽)

氷柱 霙の願い事。
「彼氏彼氏彼氏、高身長、男前、剣術達者、高収入!!」

氷柱 白雪の願い事。
「可愛い女の子がボクの事を好きになってくれますように」

過愚夜の願い事
「兎ちゃんぅ、兎ちゃんぅ....うふふふふふぅ」
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