柱なんてさっさとやめたい。   作:いろはにぼうし

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番外質問.妹様について教えてください。

氷柱 霙 :え? 白雪についてですか? そうですね。才能に溢れています。品行方正、才色兼備。まさに自慢の妹です。


十二支 兎:霙さん、なんか強めに洗脳でもされてんの?


十二支 兎は 誤解され絶望する。

大正○○年 !月 ■日

 

 あの老人の家を後にしたオレは、そのまま真っ直ぐ教えられた狭霧山に向かった。

 この山に住む育手の名前は、『鱗滝 左近次』。 元水柱。

 鬼殺隊の柱にはかならず水柱が居るが、その中でも群を抜いて強かったという。

 なんでもかつては相当修練を積んでいたのだとか。

 …ほんの少し、彼の弟子になった剣士候補に同情する。どれだけ厳しい訓練をさせられていることやら。

 そんなことを考えていると、山の麓に一軒の小屋が見えてきた。鱗滝さんの家だろうか。

 というか、狭霧山。怖い。

 ものすごく霧が深い上に、あれだけの標高になると、恐らく空気も薄い。

 よくもまぁ、こんな山の近くに住めるものだ。

 

 家の扉を数回たたく。

 

 すいませーん、業柱ですけどもー!

 

 普段はやめたいと思うが、業柱という立場はこういう時には便利である。

 藤の家とか、育手の家とか。

 いろいと説明する手間が省けるしね。

 

 しかし、オレの問いかけに返事は帰ってこない。

 どうやら留守だったようだ。

 仕方ない、家の前で待たせてもらおうかな。

 

 そう思い、地べたに座り込んだ。

 何気に今回は長旅だ。さすがに疲れてきた。

 ああ、桜花に逢いたい。

 今頃何をしているんだろうか?

 オレに会えなくて寂しくて、泣いてしまったりしていないだろうか?

 なぁ、ねぎま。お前ひとっ走り桜花の所まで飛んで様子見てきてくれない?

 

 「カァー!! 経費ノ無駄!! 体力ノ無駄!! ソンナ用件タチマチ御免!!」

 

 焼き鳥にしてあぶるぞ、てめぇ。塩だ、なんと塩で焼いてやるぞ。

 静かになったねぎまを見て、はぁ、と溜息をついた。

 

 

 口の中に鬼の味が広がった。

 

 

 

 

 オレは素早く立ち上がり、日輪刀を持つ。

 近い。相当近い位置に鬼が居る。

 なぜ今まで気付かなかったのか、職務怠慢だぞ、一応業柱。

 そう自分を叱責してみたが、理由はすぐに分かった。

 この味を発してる鬼からは、血の味がほとんどしない。

 信じられないことだが、全くと言っていいほど人を喰っていないような。

 そんな味だ。

 いや、そんな馬鹿な。

 鬼は人を喰わずにはいられないはずなのに。

 

 もう一度、空気を吸い込んで味の発生源を探す。

 …この、家の中。

 

 最悪の状況を想定すべきかもしれない。

 災厄による最悪の状況。

 中に居る鬼に、鱗滝さんもその弟子も殺されている可能性だ。

 

 家の引き戸を掴む。

 頭の中で、突入する段取りを組む。

 一、二、三で行こう。

 一、二の・・・

 

 まって。

 どうしよう。この中の鬼が過愚夜並に強かったらどうしよう。

 応援とか呼んだ方がいいかな。

 うん、1人でなんでもできるなんて、おごっちゃあいけない。

 

 よし、そうと決まればねぎま、ちょいと近くの柱の誰かと。

 え? 一番近いの悲鳴嶼さん?

 

 わかりました。行くよ。行けばいいんでしょ。

 

一、二の。

 

三――――。

 

 オレは思い切り引き戸を開いて中に飛び込んだ。

 日輪刀を構え辺りを警戒する。

 人の気配はない。

 荒らされた形跡もない。どうやらここで鬼が暴れた訳はなさそうだった。

 が、鬼の味は一層濃くなっている。

 

 素早く索敵し、ふと、囲炉裏のすぐそばに布団が敷いてあるのに気が付いた。

 危ないなぁ。火事になるぞ。

 と、その布団の枕部分に視線を持っていけば。

 

 居た。

 

 少女の鬼が、おもいきり爆睡している。

 

 ゑ?

 鬼って寝るの?

 

 柱になって二年と少し。

 新たな発見をしてしまった。

 

 恐る恐る、鬼の顔を覗き込んでみる。

 なんとも可愛らしい顔立ちだ。

 すこし田舎娘臭いが、成長すれば美しくなるだろう。桜花には劣るけど。

 桜花には劣るけども、うん、可愛い。

 

 

 しかし、鬼は鬼だ。

 いつ人を襲いだすとも限らない。ここで頸を斬っておくべきだろう。

 無抵抗の鬼を斬るのは初めてかもしれない。なんとも嫌な初体験だ。

 白い刃の切先を頸に向ける。

 

 悪く思うなよ。お前の牙が桜花に向かう可能性も否定できない。

 出会わなければ、無視できたのにな。

 

 

 オレは憐憫にも似た感情を抱きながら、刃を首に振り下ろした。

 

 

 

 「やめろ―――ッ!!」

 

 

 ぐきぃ!!と音がして。

 刃が首に届く寸前、オレの体は何か固いものにぶつかって吹き飛んだ。

 

 

 痛ァ!? 腰に直撃したァ!!

 

 そのまま俺は家の水がめに突っ込んだ。粉々になった瓶からはい出し、相手の姿を確認する。

 少年だった。赤みがかった髪と、瞳。こういう特徴をなんというのだったか。たしか・・赫灼だったか。顔の左上にはやけどの跡がある。表情は敵意むき出し。怖い。

 なんだろう、オレ何かしたかな。

 

 ねぇ、火傷の少年。オレ何かしたかい? ねぇってば。

 

 「白々しい!! オレの妹を斬る気だっただろう! 物盗りめ!!」

 

 誤解だよ。オレはただ鬼を退治しようと・・・妹?

 

 さっき鬼が寝ていた布団をみる。

 さきほどの鬼は健在だ。そして気が付かなかったが、いつの間にかもう1人人間が入って来ている。

 

 「うんうんー。こわかったねぇ、禰豆子ちゃん。大丈夫だよー、今日はボクが手と足と胸と顔とお尻を撫でながら一緒に寝てあげるからねー。よしよしー」

 

 爆睡中の鬼に話しかけているのは、水色の髪の少女だった。なんだか寒そうな着流しを着ている。少女よ、背中とへそが丸出しだが、恥ずかしくないのかい。

 っていうか、さっきからあの子表情がヤバいよ。

 涎出てるよ、目が怪しく光ってるよ。

 って言うかあの顔。あの髪色。まさかな。

 

 火傷少年、あの娘先に止めた方が良くない?

 

 「すまない白雪! オレは今この物盗り退治に忙しいからそのまま禰豆子を守っていてくれないか!!」

 

 「了解ー。じゃあもっと近くで守らないとー・・・・・ぐへ、ぐへへへへへ」

 

 おーい、火傷少年。

 アイツ布団に入って行ったぞ。

 守る気ないよ、だって常識すら守れてなさそうだもの。

 

 「物盗りがオレの友達を馬鹿にするな!! 白雪は良い奴だ! 今だってああやって妹を守ってくれている! あなたも見習ってまじめに働いたらどうなんだ!」

 

 本気? ねぇ。本気で言ってる? ねぇってば。

 

 「大体恥ずかしくないのか! 眠っているだけの女の子を斬りつけにするなんて!」

 

 ・・・ねぇ、もしかしてさ。気付いてない?

 君はここの家の主を知ってるかい?

 

 「鱗滝さんがどうかしたのか?」

 

 なるほど。じゃあ、鬼だって知ってるだろう?

 少年、残酷なこと言うようだけれど。

 君の妹は、もう人間じゃない。

 人食い鬼だ。だから、オレはそれを退治しようと

 

 「禰豆子は人を襲ったりしない!!」

 

 ・・・は?

 

 「妹が鬼になったのは知ってる! もう半年も前の話だ! その間、誰も襲ってない!!」

 

 ・・・、半年前。

 鬼になった妹。

 鱗滝さんの知り合いの少年。

 

 思い出すのは、半年前に鮭大根を家でご馳走したときの記憶。

 

 

『あの兄妹は、他とは違う。何となくだが、そう感じた。だから兄を、鱗滝さんのところへ・・・』

 

 

 少年、冨岡義勇を知っているか?

 

 その質問に少年は戸惑いながらも答えた。

 

 

「・・・半年前に、俺と妹をここに紹介してくれた人だ。あなたは・・冨岡さんの知り合いなのか?」

 

 

 なるほど、なるほど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうすんだ冨岡君。これ、ばれたら真面目に不味いぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とりあえず、目の前の少年の誤解を解かなくては。

 

 火傷少年。悪かったね。

 オレは冨岡義勇の同僚で、十二支 兎と言う。

 すまないが、鱗滝さんを呼んできてくれないか。

 話を聞きたいんだ。

 信用できないなら、この刀は君に預ける。

 どうかな。

 

 そう言って、オレは日輪刀を鞘にしまい、少年に向かって投げ渡した。

 少年はわたわたとそれを受け取った。

 

 「そう言う事だったら。わかりました、鱗滝さんを呼んできます」

 

 とまぁ、なんとも素直な少年はそう言って家を出て行った。

 

 さて、あと1つ確かめたいことがある。

 

 

 これはただの勘だ。髪色と顔から判断した、唯の勘。

 お願いします、外れていますように。

 

 おい、布団の中の変態少女。

 

 

 「ハァ、ハァ。ハァー・・・んー? ボクのことー?」

 

 おい。お前何息荒げてんの?

 やばいよ? ほんとやばいよ?

 布団の中で何してたの? 何触ってたの? その子ならびに兄の許可ちゃんととってるの?

 

 「煩いおじさんだなー。もー」

 

 おじッ・・!?

 

 

 軽い衝撃を受けながらも、オレは意を決して問うた。

 

 

 

 君の名字と、名前。あと姉がいるならその人の名前も教えろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー? ボクは氷柱 白雪。姉様の名前は氷柱 霙。姉様も可愛いんだー。あいたーい」

 

 

 

 

 オレはその日、久しぶりに膝から崩れ落ちた。

 遺伝子よ、仕事をしてくれよ。

 




大正コソコソ噂話(偽)

胡蝶 しのぶ
「ねぇねぇ、冨岡さん。私に何か隠してる事ありません? ねぇねぇ」

冨岡 義勇
「ない」

胡蝶 しのぶ
「ほんとですかぁ? じゃあなにか隠し事がばれたら私の言う事なんでもきいてくださいねぇ」

冨岡 義勇
「・・・・・」
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