柱なんてさっさとやめたい。   作:いろはにぼうし

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壱拾四.さくばんはおたのしみでしたね?

十二支 兎 :はっ!? えっ!? ちょ!? なっ!?

十二支 桜花:・・・・。

十二支 兎 :て、テメェなんてこというんだ!! とんでもねぇぞ!!

十二支 桜花:っ、あ、あの、兎さん!!

十二支 兎 :はい、黙らせるよ桜花! この質問かいた奴黙らせる!!

十二支 桜花:あ、あの…今晩、準備して待ってますから・・。早く帰ってきて、くださぃ、ね。

十二支 兎 :ごめんなさい。この質問、明日もう一回してください。


十二支 兎は 語り聞かせる。

 しばらく経って、火傷少年が男を一人連れて戻ってきた。

 天狗だ。天狗がいる。

 どういう事だよ、とお思いになるかもしれないが、鱗滝と名乗るその男。顔に常に天狗の面を付けているらしいのだ。そういえば、桜花の刀を打った刀鍛冶もなんだか奇妙な面を被った女だったと聞いている。

 熟練者は面を被る習わしでもあるのだろうか。知らなかった。

 桜花も実は昔お面被ってたりしたのかな。

 

 

 

 たとえば…、猫の面とか。

 

 

 

「兎さん、おかえりなさい、にゃあ!」

 

 

 

 

 うごふっ!?

 

 

「う、鱗滝さん! 大変です!! 十二支さんが鼻から血を吹きだして倒れました!!」

 

「放っておけ。手の施しようがない。そんな気がする」

 

「おじさーん。しっかりー。傷は深いよー?」

 

 

 鱗滝さんに手ぬぐいを借りる。鼻の血を押えながら、ようやく話をする体制に入れた。

 …しかしあのにゃんにゃん桜花は危険だ。脳内に封印しておこう。

 

 さて、鱗滝さん。まずは自己紹介だ。

 オレは十二支 兎。鬼殺隊の一員で、階級は柱。一応業柱って呼ばれてる。あなたの弟子、冨岡義勇くんとも面識がある。好きなものは妻と沢庵。

 

 「業柱。そうか、お前が噂の」

 

 どんな噂かとても気になるところではあるけれど。触れないぞ、触れてたまるか。

 

 「鱗滝さん、柱ってなんですか?」

 横から火傷の少年が口を挟んだ。鱗滝さんが、それに応える。

 

 「鬼殺隊の隊士にはそれぞれ強さに応じた階級がある。下から、癸(みずのと)、壬(みずのえ)、辛(かのと)、庚(かのえ)、己(つちのと)、戊(つちのえ)、丁(ひのと)、丙(ひのえ)、乙(きのと)、甲(きのえ)。さらに甲隊士が鬼を五十匹狩る、もしくは十二鬼月という格段強い鬼を狩ることで、階級は最上の柱に上がる。目の前の男はその一人だ、炭治朗。馬鹿に見えるが、馬鹿でも柱だ」

 

 どうも、馬鹿の柱です。でも嫁は可愛いよ。

 

「ぜひボクに紹介して」

 

 ひっこんでろ変態。

 

「むー」

 

「俺の友達の悪口を言わないでください!」

 

 …、火傷少年。悪い事は言わないから、あの娘はやめとけ。ねえ?

 

「やめない!」

 

「すまんが炭治朗、白雪。話が進まん。まずはこの男が何をしに来たのか確認しなければ」

 

「口を挟むのはやめます! ごめんなさい!」

 

 火傷少年、炭治朗というのか。いい名前だね。

 

「ありがとうございます」

 

 あ、そこは礼を言うんだ。良い子め。

 

 さて、本題に入ろう。

 鱗滝さん。オレはある人物に頼まれて、任務の合間にここに来た。でも、用があるのはあなたにではない。

 

「そうか。では誰に何の用だ」

 

 …まことに遺憾ながら。そこの変態に大切な話がある。

 

「えー? ボク?」

 

 氷柱 霙から預かりものだ。

 

「・・・・・」

 

 白雪ちゃんはなにも言わなくなった。表情は変わらない。それでも、最悪の可能性を考えているのかもしれない。

 自分の嘘を隠すことさえ出来ないオレに、彼女の本音が読み取れるはずなど無いのだろうけど。

 

「儂は席をはずそう」

 

 そう言って鱗滝さんは家から出て行った。立ち入るべき話ではないと判断したのだろう。

 残るは、炭治朗くんと眠ったままの鬼の少女。たしか、禰豆子ちゃんと言っただろうか。

 ややあって、炭治朗くんが口を開いた。

 

「白雪」

 

「うん」

 

「大事な話なんだな」

 

「たぶんねー」

 

「だいじょうぶなのか?」

 

「…たぶんねー」

 

「そうか」

 

 炭治朗くんが立ち上がる。そのまま出口に向かって歩き、そして戸に手を掛けながら白雪ちゃんに言葉を投げた。

 

「鱗滝さんと外で待ってる。全部終わったら、声をかけてくれ」

 

「わかったー」

 

「俺は、白雪が話したくないことは聞きたくないし、話したいことは全部聞いてあげたい。どっちに転んだとしても、俺と白雪は友達だからな」

 

「…うん」

 

「禰豆子も友達だ」

 

「そうだねー」

 

 アレは友達同士のじゃれあいかい?という言葉は呑みこんだ。邪魔はしたくない。

 

「だから、待ってるよ、白雪」

 

「あははー、ありがとう、炭治朗」

 

 そういって、炭治朗くんは家から出ていった。

 

 良い友達だな、白雪ちゃん。

 

「あはは、そうだねー。いい奴過ぎていろいろ心配だけどー」

 

 そうかい? しっかりした子じゃないか。

 

「心配だよー。すぐ人を信じるし、簡単な嘘にもひっかかるし、世間知らずだし、禰豆子ちゃんの事になるとすごく向う見ずになるし、身体をこわす勢いで修業するしー」

 

「だから、ボクがちゃんと見ててあげないとねー。その内炭治朗のこと好きになる可愛い女の子が泣いてるの、ボク見たくないしー」

 

 …変態だなんだと言って、悪かったな。

 さぁ、話そうか。覚悟はいいかい?

 

「・・・うん」

 

 

 

 そしてオレは全てを話した。

 霙さんが桜花を助けるために命を張った事。

 鬼との戦いで、致命傷を負ったこと。

 なんとか一命を取り留めたものの、二度と剣士としては立てないと言う事。

 

 そして彼女が、自身の妹に一族の願いを託したと言う事。

 

 そっ、と彼女の前に山茶花の髪飾りを差し出す。

 白雪ちゃんはそれを手に取り、黙ってじっと見つめていた。

 

 「ねぇ、十二支さーん。聞いてもいいー?」

 

 何かな?

 

 「お姉ちゃんは、ボクに何か言ってたー?」

 

 具体的な言葉にはしなかったよ。

 でもきっとかけたい言葉はあったんだと思う。

 

「そっかー」

 

 オレはあくまで物を預かっただけだからね。

 本当に聞きたいことは、生き残って聞きに行きなよ。

 

「あはは、それもそっかー」

 

 そう言って彼女は髪飾りを懐にしまった。

 泣きはしない。

 けれどアレは笑ったふりにも見える。

 

 俺にはわからない。

 

 『お願いですッ・・! お願いですから、今、あなたの口から姉さんの名前を出さないでくださいっ!』

 

 女の子の笑ったふりを止めさせる方法がわからない。

 

 

 話は終わった。

 あの髪飾りをどうするか、ここから先どう生きるか、どう強くなるか。

 それは彼女次第。

 やがて来る最終選別。必死に修行を積んだ剣士候補。それぞれが決意を胸に刀を持って藤襲山(ふじかさねやま)に集まる。

 家族の為に。仲間の為に。名誉の為に。自分の為に。

 そんな決意を持った候補たちの、その大半が命を落とす場所。

 それが最終選別。

 それが鬼殺隊。

 

 そこで生き残れるかは、彼女次第。いや、彼女たち次第だ。

 

 

 

 やがて、夜が来た。

 鱗滝さんの家には寝息が三つ。

 きっちりと布団に入って眠る炭治朗くん。

 今朝方オレが斬りかかった時から微動だにしていない鬼の禰豆子ちゃん。

 ちゃっかり禰豆子ちゃんに抱き着いて眠る白雪ちゃん。なんて怖いもの知らずな。

 

 そういえば先程炭治朗くんと何か話していたようだが、何の話をしていたのだろうか。

 

 まぁ、それはそれとして、だ。

 今起きているのは二人。囲炉裏を挟んで向かい合う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さぁ、鱗滝さん。

 あそこで眠る『鬼』について。

 オレを納得させてみろ。

 

 

 

 

 




大正コソコソ噂話(偽)

 家から出てきたボクに、炭治朗は微笑むだけで詳しい事は何も聞かなかった。
 ただ一言

 「だいじょうぶか?」

 と、さっきと同じ質問をしてきただけ。

 「ちょっときついなー」

 なんてすこし本音を出してしまえば、炭治朗はボクに近づいて、水色の髪を優しく撫でてくれた。

 「あはは、ボクに気があるのかいー?」

 なんて茶化すと、炭治朗は

 「ああ、ごめん。オレの妹に花子ってのがいたんだけど…。甘えん坊の癖に強がりでさ。なかなかわがままを言ってくれないんだ。そういう時、こうやって頭を撫でてやると、嬉しそうに笑ってたんだ。…なんだか、白雪が欲しい物を我慢してるときの花子に見えてしまって。変だな、ごめんな」

 といって、寂しそうに笑った。

 ボクたちは我慢してばっかりだな。と、思ったけれど。それを言えば炭治朗は壊れてしまう気がしたから。

 口には出さない。だけど、我慢できないものもある。
 ごめんね、炭治朗。ボクはこれでも女の子だからさ。
 すこし、弱くなっちゃうときもある。

 とすっ、と顔を炭治朗の胸にうずめた。

 「し、白雪!? どうした! お腹が痛いのか!?」

 そんな訳ないだろ。馬鹿だなぁ。

 お姉ちゃん、頑張ったんだねぇ。痛かったよね。
 もう、刀が振るえないなんて。人を鬼から救えないなんて。
 悔しいね。

 「炭治朗、服がさー、焦げ臭いよー。目が痛いなぁ、涙がでそうだ」

 炭治朗は何も言わない。嘘の臭いも、炭治朗にはわかるのかな。

 「ほんとは可愛い女の子の胸元に飛び込みたいけどさー。今日は炭治朗で我慢だねー」

 「そうか、ごめんな。禰豆子が起きたら、思い切り一緒にあそんでいいからな」

 「あはは、その言葉、忘れるなよー、炭治朗」

 そして僕たちは互いに、どちらともなく、ぽつりとつぶやいた。

 




 「「強くなろう、一緒に」」













 そして遠く離れた蝶屋敷にて。


 「いや、私死んでませんからね!?」

 「ど、どうしたんですか、霙姉さん」

 「え? あ、ああ、ごめんなさいアオイ。なんだかいろんな勘違いを与えそうな会話をされているような、とても先を行かれたような・・そんな気がして」

 「?」


 炭治朗くんと白雪ちゃんはとっても仲良しだよ!
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