中の人の誕生日にかこつけ開催されたツイッター上のワンドロ(#シンフォギア版深夜の真剣創作60分一本勝負)で書きました。
(初出:2016/01/21)(他サイトと同時投稿です)
中の人の誕生日にかこつけ開催されたツイッター上のワンドロ(#シンフォギア版深夜の真剣創作60分一本勝負)で書きました。
企画主さま、企画をありがとうございました!
(初出:2016/01/21)(他サイトと同時投稿です)
それは何気ない一言だった。
「ボクの誕生日、ですか?」
「うん。いつ生まれなの?」
夏休みという学校の長い休みが終わり、響たち学生の制服が冬用のものに切り替わって、そろそろ一ヶ月という頃。
所用で本部を訪れていたらしい響が、エルフナインのいる分析室に顔を出した。
同じ学校に通う装者や友人たちとの近況や、先の事変の遺物の分析状況など話すうち、響は十一月に切り替わっている壁のカレンダーに目を留めたあと。
――エルフナインちゃんの誕生日って、いつ?
「ボクの生まれた日……ボクの場合、どの時点を生まれた日と定義すればいいのでしょう?」
「そ、そこからなんだ!? うーん、自分が自分になった日、とか……?」
響の反応は無理もない。元は人工的に造られた存在なのだから、馴染みがあるはずがなかった。
曖昧に出された響の仮定で考えてみると。
「記憶が曖昧です……あるとき目覚めて、気がついたらキャロルが目の前にいて……あれはいつのことだったろう……」
「そこも、わからないんだ……」
響の眉が下がる。
「キャロルの誕生日だったらわかるのですけど。ボクには複写されたキャロルの想い出がありますので」
キャロルの父のイザークは、その日だけは錬金術の研究の手を止めてキャロルと二人で過ごすようにしていた。
微笑ましく暖かな記憶として印象深いそんな日の日付を口にする。
へえ、と響はカレンダーに目をやり、ん、と何かに気がついたように、エルフナインに視線を戻した。
「その日って、エルフナインちゃんの誕生日とも言えなくないかな? エルフナインちゃんはキャロルちゃんを元にして生まれたようなものなんでしょう?」
「……キャロルはたしかに、ボクもまたパパの娘だと言っていました」
オリジナルのキャロルを素体として造られたホムンクルス同士だった。
出来損ないの娘、とは。オリジナルに忠実かつ全ての想い出を保持するキャロルとは違い、ほくろや異なる髪色など欠陥を備えた劣化コピーであることと、キャロルの想い出を一部しかインストールされていないことを言ったのだろう。
「双子、みたいなものだったりするのかな?」
よくわからなくてごめん、という風に響は困り笑いを浮かべる。
「キャロルとボクが生まれた日――」
双子というには語弊があった。けれどその言葉に思うものを感じて、胸に当てた手を軽く握る。
「それを言うなら、今では、あの日の方かもしれません」
「あの日?」
首を傾げる響に、エルフナインは頷く。
「キャロルとボクはあの日の夜に一度果てて、今の”ボクたち”という新しい存在が生まれたとも言えますから」
「あぁ、――」
察したように、響の瞳が瞠られた。
錬成された碧の獅子機の大爆発によって戦いが終結した三日後。
あの日の夜に臥せっていた病室で何があったかは既に話してあるから、言わんとすることを察したのだろう。
キャロルに想い出を採集されたあと、エルフナインの躯体は燃え果て、エルフナインの想い出を採集したキャロルの想い出もまたその最中に燃え尽きた。
エルフナインに複写されていたキャロルの想い出はキャロルの躯体に戻ることとなって、分けた想い出が元に還った形となった。
袂を分かちぬものが、再び集った。
分離と結合。
分解と再構築。
あの晩に起きたことは、死と再生にもなぞられる錬金術の操作そのものだった。
そして、閉じられた空間の中で分解と再構築の操作が行われるとき、全ての物質は保存され、何かが消滅するということはありえない。
だから、もしかすると。気配は感じられないけれど、この躯体のどこかに。
命題を満たす答えを探し続ける。
生きたいと願ったこの世界で生きて、父から託されたほんとうの命題の答えを追い求めることは、一人きりになった”ボクたち”の償いだと、エルフナインは思う。
人と人がわかり合うことが、父の目指した錬金術。
それには、人と人が繋がること。
繋ぐその手は。
「うん、きっとそうだね」
エルフナインの胸の手を、響が取って、手に握った。
屈託なく、目を細めて。
「あの日が、エルフナインちゃんたちの誕生日だ」
「はい……!」
いつかも握ってくれたその手を、こちらからも握り返した。
微笑み合っていたのもつかの間。笑顔だった響が、ん? と何かに気付いた風な顔になって。
「てことはエルフナインちゃん、生まれたばっかりってことになるんだ。そうすると出産……じゃない出生祝い? しようか?」
「も、もうだいぶ日にちが経っていますから」
今頃ですよ、と笑うと。解けた手の後に、今度は小指を差し出してきた。
「じゃあ来年、一回目のお誕生日お祝いしようね! 約束だよ!」
「……、はいっ」
響の小指に、自分も小指を絡める。
そうすることの意味を、まだ知らない。
けれど、教えられずとも自然とそうするものだと思えたこれもまた、命題の答えのかたちなのかもしれない。
お読みいただきありがとうございました。