「ノンカリ(nonカリスマ)が調子乗ってんじゃねーぞ」


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第1話

 ここは家族団らんの食卓、――だった。

 

「もうおねーさま、いい加減にして!!」

 

 フランドール・スカーレットはガタンと立ち上がり、叫んだ!

 

「ミソスープに納豆入れるのはやめてって言ってるじゃん!!」

 

 実際に入れたのは咲夜であるが、入れさせたのは、

 

「この超絶ハーモニーが分からないなんて貧相な舌をお持ちなこと。本当にこのカリスマ溢れる私の妹なのかしら? ああ、残念残念」

 

 ドヤ顔で妹を煽るレミリア・スカーレットこの人、……いや吸血鬼である。

 

「ノンカリ(nonカリスマ)が調子乗ってんじゃねーぞ」

「ああ? 私のカリスマにケチつけよっての?」

「だからそのケチつけるカリスマが皆無だって言ってんの」

「俗人には感じることが出来ない程に膨れ上がったと、何故理解することが出来ないのかしら? ぬ○りひょんの孫でも読んだら? ああ、そうだったわ。その前に、あなた、狂気(笑)とかなんとかいう痛々しい属性持ちだったわね」

「ああああああ?」

「あああああああん?」

 

 こうしてフランドール・スカーレットは紅魔館から家出することになった。

 

 

 

 

 

 (困ったときの)博麗神社。

 

「だだだだーん! 脅威のフランちゃんだいしゅつげーん!!」

 

 霊夢の思考は一瞬止まったのち、高速で回転しはじめた。

 

「は? え? えぇ!? あ、あんた、……え、えぇ!?」

 

 フランは霊夢を指で指した。

 

「はい、しつもーん!」

「は?」

「ミソスープに入れる具材を答えよ!」

「い、いや、だから一体何なの? ていうかあんた外に、っていうか今晴れなんだけど」

「細かいことはいいの! いいから質問に答えて!」

「え、えぇ!? そんなこと急に言われたって……」

「あ、なに? もしかして具無し? もはやミソすら入れないタイプ? あーはいはいなんかごめんねごめんねー」

「ちょ、なに勝手に決めつけてるわけ? 私だって具くらいちゃんと入れるもん!」

「愛情とかそういうのは無しだよ」

「違うわよ!」

 

 霊夢はひねり出した。

 

「葉ものとかきのことか……」

「あー貧乏系ね。その辺でただでまかなえる感じの」

「うっさいわね!」

 

 同情しなくても金をくれ。

 いやそれより大事なこと、……はないかもしれないが、とりあえず聞いておかなければいけないことが霊夢にはあった。

 

「で、本当は何しに来たわけ?」

「だからミソスープの具を聞きに来たんだって」

「いやそれはもういいから」

「いやマジだって」

「おおまじ?」

「おおまじ」

 

 霊夢は肩を落とし、脱力した。

 

「……そんなのもっとこう、なんていうか、冷やかしにいくと私が喜びそうな所へ行きなさいよ」

 

 つい本音が出た。

 すぐにフォローする。

 

「……じゃなかった。さっさと家帰りなさい」

 

 霊夢が顔を上げると……。

 

「って、もういないし」

 

 爆弾のような存在だったが、ここにいないなら。

 

「……まぁいいか」

 

 霊夢はお茶でも飲もうかと思った。

 

 

 

 

 突撃となりのフランちゃん。

 

「ということで今回はミソが似合いそうな妙蓮寺に来てみましたー」

 

 門前でインタビュアーの如く。

 

「……なんか変なの来てるよ」

「姐さんに言っとく?」

「うーん……」

 

 聞こえない。聞こえない。

 都合のいいこと以外は聞こえない。

 

「ってことで、さっそく中に入ってみましょー!」

 

 フランちゃんは突撃した。

 

「あ、ちょ」

 

 すぐにそれは現れた。

 

「あら、これは可愛らしいお客さん。仏の教えに興味がおありかしら?」

 

 母性の塊のような存在。

 しかし、フランちゃんは屈しない。

 

「いんや。興味は、ミソスープの具、それのみにある!」

 

 びしっ!

 

「それ以上でもそれ以下でもなぁい!」

 

 聖は笑顔で困った。

 

「……当番制なので、色々変わりますが」

「貴女の好みを聞いているのデース! おっきいのが好き? それとも小さいの?」

「……一体何の話をしているのですか?」

「何だと思う?」

 

 母性、もとい聖は頬を赤らめた。

 それを見たフランちゃんはによによした。

 

「わー、煩悩まみれー」

 

 聖は咳払いをした。

 

「こほん。……私は、お豆腐などが」

「ぷるんぷるんだから?」

「大豆はとても良いものですので」

「胸が大きくなるから?」

 

 今までに経験したことがない類いのやりにくさがあった。

 

「これ以上どうするつもりかは知らないけどねー」

 

 困惑する聖をしり目に、フランちゃんは次はどうしようか考えはじめた。

 

「さって次はどこに冷やかし……、じゃなかった遊びに行こうかなー」

「……神子さんのところなんかおすすめしますよ。是非その感じで」

「まじ?」

「はい。"まじ"です」

「んじゃ、適当にぶらついてこ」

「……そうですか」

 

 聖は慈悲のある困り顔で見送った。

 

 

 

 

 

 困った時、そんな時、人外みんなの居所、博麗神社。

 

「ということで、帰ってまいりましたー!!」

 

 いえーい! と霊夢にハイタッチするフランちゃん。

 うげぇと、面倒くさそうな感じをあからさまに顔に表しながら霊夢はハイタッチに応えた。

 

「……何しに戻ってきたの」

「ネタが無くなったから戻ってきたの」

「帰れ」

「えー」

 

 霊夢はため息。

 

「今胡散臭いやつ来てるから、どうなっても知らないわよ」

「どんな臭いなのか興味深々!」

 

 と、ここで――。

 

「あら、呼んだかしら?」

 

 スキマ妖怪惨状。参上? いや惨状。

 

「呼んではいないけど、待ってはいた!」

「へぇ?」

「さぁ、答えるがいい」

 

 威圧感増々フランちゃん。

 

「ミソスープに入れるものといえば!?」

「けちゃっぷ」

 

 …………。

 

 フランちゃんは急に真顔になって紅魔館に帰りました。

 

 なんと美しく残酷な世界であろうか。

 あぁ、けちゃっぷけちゃっぷ。




けちゃっぷ派に対する憎悪をフルに込めて書きました。うそです。


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