クジュウリ皇子は焔と踊る   作:フーマ

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人生初投稿です。
よろしくお願いします。


プロローグ・神の座のハク

 桜の花びらが舞う小高い丘。

 そこに皇族の眠る墓地がある。

 トゥスクル皇家の墓地。

 そのとあるひとつの墓石の前に、ひとりの青年が立っていた。

 

 

「トゥスクル女皇クオン、ここに眠る・・・か」

 

 

 ここには青年―――ハクが『人』であったときに共に過ごし、そして愛した女性が眠っている。

 

 

「遅くなったが全部終わった。会いに来たよクオン」

 

 

 ハクはヤマトでの最後の戦いの後、神の座につき旧人類のタタリ化からの解放に長い時間を費やした。

 トゥスクルやヤマトはもちろん、それ以外のヒトの住まない地に残された遺跡すら。

 すべてのタタリを浄化し終えた時には300年という年月が過ぎていた。

 

 神の座についてからは時の流れがあっという間だった。

 かつての仲間たちはすでに他界。

 その中でも、ヤマトの帝だったアンジュとトゥスクルの女皇クオンは長く生きていた。

 トゥスクルに限っては時折様子を見に来ていた。

 

 あの戦いの後、ハクオロが帰還。

 オボロはクオンに女皇の位を譲ったが、クオンも含め皆の総意でハクオロが皇に戻った。

 クオンとぎこちないながらも親子の絆を育んでいたのを覚えている。

 ハクオロは普通の人間に戻ったため、皆よりも老いるのがはやく、数十年後にはクオンが後を継ぎ、改めて女皇となった。

 クオンから皇の位を継いだのはハクオロとエルルゥの間に生まれた男子。

 クオンは生涯独身を貫いたようだ。

 現在はさらにその息子が皇になっている。

 

 ヤマトにいたってもトゥスクルとの友好は変わらず。

 仲間たちの最後に立ち会えなかったことが本当に悔やまれる。

 

 

「兄貴との約束。全部果たし終えたというのに、何だろうなこの寂しさは」

 

 

 自身はこれより悠久の時を生き、世界を見守り続けることになる。

 タタリの件に決着がついたら、ぐーたら寝て過ごすと決めていたのにハクの胸を占めるのは寂しさのみだった。

 

 

(願うことならまたクオンと、そして皆と・・・)

 

 

 だがそれは神の身だとしても適わぬこと。

 たとえ神だとしても時を越えることはできない。

 未来へは眠ることで可能。だが過去に戻ることは不可能なのだ。

 

 ハクは意識を上位空間へと延ばす。

 この瞬間、墓前に立っていたハクの姿は掻き消えた。

 

 

 

 

 

 何も無い星の輝く空間。

 例えるならば宇宙とも見えるその空間がハクの神としての自分だけの空間。

 ハクが念じると、複数の映像が目の前に姿を現す。

 

 人だった頃のハクとクオンの談笑する様子や、オシュトルの死の間際だったり、自身がオシュトルに成り代わり戦う姿だったり。

 いわゆる過去の記憶だ。

 また自身の記憶以外にも当時の他の場所の様子だって見ることが出来る。

 この能力で、タタリの居場所を全て探しつくした。

 

 だがたとえ過去を映像化できても、そこに転生し人生をやり直すなんて都合のいい事はできない。

 だがほんのわずかな時間なら介入できる。

 

 数分後にオルケに襲われそうな農夫に声をかけ事前に逃がすとか。

 歴史に大きく影響を及ぼさない小さな介入ならば大して神の力を使わずとも可能だ。

 

 

 これがハクが発見した自身が行使できる神の力のひとつ。

 そしてもうひとつ、ヒトそれぞれの生涯の詳細を知ることも出来る。

 

 

「自分"自身"は過去に戻り、歴史を変えるなんてマネはできない。

 だが何か条件が加われば自分が神とならず、人として生涯を終えるなんて結末が作れるんじゃないだろうか」

 

 

 確かにこの「今存在する自分」は神のままだろう。

 だがひとつくらい、自分が人として生きることの出来る並行世界くらい作れるのでは。

 

 ハクはそんなことを思いつき、ここよりしばらく文面化された仲間たちの生涯の詳細を読み漁る。

 面白いのはその歴史を歩んだ詳細のほかに、『もしあの時こうしていたらこうなった』というイフの歴史すら読めることだ。

 

 

 

「キウルは・・・すごいな。エンナカムイに拘ったが、拘りを捨てたら大臣にまで上り詰めていたか」

 

 

 戦後キウルはエンナカムイの皇になった。戦後の復興、そして祖国の発展と守護に人生を費やす。

 シノノンを妻に迎え、『エンナカムイの賢皇』と呼ばれるまで成長し、民に慕われ続けていた。

 だが彼はあくまでエンナカムイという地に留まったが、アンジュの要請に答えていればヤマトの更なる発展に貢献。

 

 

「やっぱり自分たちの弟はすごいよな、オシュトル」

 

 

 ハクは自慢の弟分の映像に微笑みかける。

 他の仲間たちの情報を読んでいくが、女性陣はハクのことを忘れられず皆独身を貫いているのが彼の心を深くえぐった。

 

 

「ん・・・こいつは」

 

 

 その中でハクはとある人物の詳細に目に止まった。

 自分とは一切の接点が無い人物。

 

 

「クジュウリ皇子レキ。ルルティエの2つ上の兄貴か」

 

 青年時の姿の映像が現れる。

 赤みかかった黒髪の長髪を後ろでひとつにまとめている穏やかな表情の男。

 ただ気になるのは、耳の形状がルルティエとはことなりエヴェンクルガのものとなっている。

 外見もそのためか、トウカに似ているように見える。

 

 

 クジュウリ皇オーゼンが第14子。ただし側室の子のため、ルルティエとは異母兄弟。

 幼少時、ルルティエの病を治すために吹雪く雪山に薬草を取りに行き、オルケの集団に襲われ重傷を負う。

 その怪我が原因で左半身が不自由になる。生涯をクジュウリの財政管理に費やす。

 

 

「妹思いの良い兄貴だ。だが、肝心なのは『もしも』も場合だ」

 

 

 もし幼少時重傷を負わなければ――――

 

 

「なんなんだこいつは。なんでこんな英傑は隠れてやがる。だがうまくすれば・・・」

 

 

 ハクはゴクリ、と息を飲む。

 ここまで歴史に関わる人物を助けるなんてマネすれば歴史介入に相当の神の力を使用することになるかもしれない。

 だがやる価値はある。

 

 

 ハクは映像を更なる過去、ルルティエが幼少時の高熱に襲われた時期にまで巻き戻す。

 雪山を捜索。

 オルケの群れに囲まれがけに追い詰められた少年の姿。

 

 

「さてぶっつけ本番。もしもの世界を作ってみようじゃないか」

 

 

 ハクの体は光に包まれ神の空間から姿が掻き消える。

 皇子レキの詳細データの項目が写ったままだが。

 

 

 もし幼少時、重傷を負わなければ―――

 

 八柱将ヴライからオシュトルを守り抜き、采配師ハクと並び戦乱を戦い抜いたエンナカムイ軍副将。

 『焔の将』として人々からうわたれる存在となりえる人物。

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