クジュウリ皇子は焔と踊る   作:フーマ

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第三話 流行病のその後

 

 神さま・・・マシロさまとの出会いと、コゥハ草の採取を終えた僕はシス姉さんたちと再会。

 会うと同時にアヤメ姉から頬に強烈な平手打ちを食らった。

 涙をボロボロとこぼした彼女は「馬鹿・・・」と呟いて大声で泣き出す。

 いつも冷静で大声なんて出さないアヤメ姉がこんなに感情を爆発させるなんて初めてだった。

 本当に、本当に申し訳なくて僕はそれをただ、ごめん。としか返せなかった。

 

 シス姉さんは「私が叱るより、これが一番効くでしょ?」と僕の肩をポンポンと叩く。

 「もう二度とこんな真似はしないように。」と念を押された。

 シス姉さんは僕のわき腹を肘でつっつく。

 アヤメ姉に声をかけろって意味だろう。

 

 

「ごめんねアヤメ姉。約束する。・・・もう二度と、一人で考えなしで突っ走ったりしない」

 

「本当・・・?」

 

「うん。だからもう泣き止んで」

 

 

 

 

 

 アヤメ姉は僕が山向かうことを確信してたようで、すぐにシス姉さんに相談したらしい。

 動ける兵数名を選抜し、共に霊山に向かって、麓に僕のウォプタルのカントを見つけて確信。

 山頂を目指したらしい。

 

 

「積雪がなかった?」

 

「ええ。山を登り始めた途端、雪が止んだの。不思議よね。

 おかげで日が沈む前に無事に山を降りれそう」

 

「神さまが・・・助けてくれたんだ」

 

「神さま?」

 

 

 僕の呟きにシス姉さんは首を傾げる。

 

 

「神さまっていうとクジュウリの各地に伝わるマシロさまっていう神さま?」

 

「そう。それ。山頂でオルケの群れに囲まれたとき、助けてもらったんだ。

 仮面をつけたやさしそうなお兄さんだったよ」

 

 

 またまた~。とシス姉さんと兵達は笑うが、アヤメ姉は何か考え込んでるようだ。

 シス姉さんもその様子に気づく。

 

 

「どうしたのアヤメ?」

 

「え、ええ。レキさまの服、血まみれでオルケに噛まれた穴がたくさんあいてるのに一切傷がないから不思議だなって」

 

「あ、うん。神さまが扇を振るったら傷が塞がったんだ」

 

「ルルティエさまを救いたいっていうレキさまの願いを聞き届けてくれたのかもね」

 

 

 アヤメ姉のその言葉に僕は笑顔で返す。

 

 

「最後まで希望を捨てなかった者にこそ、道は開ける・・・か」

 

 

 頭から離れない神さまからもらった言葉。

 それを口にして考えてみるものの、今の僕にはその言葉の真意が分からなかった。

 だからとりあえずは最後まであきらめない気持ちを持とうと強く思った。

 

 

 

 

 

 

 

 下山する。ウォプタルのカントは僕の姿をみると頬を摺り寄せてくる。

 心配かけたようだ。カントを撫でて背に乗る。急ぎクジュウリ城下へ舞い戻る。

 着いた頃にはあたりは真っ暗だった。

 コゥハ草を薬師のムラジさまに手渡すと早速、特効薬作りに取り掛かった。

 手伝いをするアヤメ姉と別れ、僕はシス姉さんや兵達と城へと戻った。

 

 

「聞いたぞレキ。霊山に単独で行くとは。やるのぅ!」

 

「と、父さん痛いって!」

 

 

 父オーゼン皇は叱るどころか、むしろ誇らしげに僕の頭をワシャワシャと乱暴になでてくる。

 

 

「なにが、『やるのう!』ですか!?父上がそんなんだからレキが無茶するんでしょうが!!」

 

「あわびゅっ!?」

 

 

 シス姉さんの空中回し蹴りで父さんが吹っ飛ぶ。

 

 

「な、なにをするん!シス・・・まったくどんどん凶暴になりおって。

 母さんだって勇敢だと褒めるだろうに」

 

「父上も母上も、というか家族全員甘すぎるんです!」

 

「そういうお前はもっとおおらかに・・・いんや、なんでもない」

 

 

 ギロリとシス姉さんに睨まれて父さんは萎縮してしまう。

 うん、いつもの光景。ここでヤシュマ兄さんが関節技を決められたら完全にいつもの光景だ。

 無事に帰ってきたんだ、と改めて実感する。

 

 

「父さん、ルルティエの様子はどうなの?」

 

「相変わらず息が苦しそうじゃが、ムラジが特効薬を持ってきてくれれば・・・」

 

 

 

 お前が頑張ったんだからもう心配はいらんぞ。という父の言葉を受けてひとまず休息。

 

 ルルティエが心配だがまずはボロボロかつ汗まみれの体を清めることにした。

 青と白を基調とした着物は穴だらけで乾いた血で赤黒く染まっていた。

 傷が癒えても体にも乾いた血がベッタリ残ってる。

 こんな格好じゃルルティエ卒倒しちゃうもんな・・・。

 

 蒸し風呂に入って、僕は改めて自身の体や腕を見る。

 多少は筋肉がついてきたとはいえ、まだまだ武士とは程遠い貧弱な体つきだ。

 無駄のない細身の筋肉の鎧を身にまとっているヤシュマ兄さんには程遠い。

 

 それにしても・・・肉をえぐり骨にまで食い込んでいたオルケの牙。

 癒してもらったとはいえ、その傷痕は初めから存在しなかったように残っていない。

 もし残っていたら、体に障害を残していたかもしれない。

 そうなったらヤシュマ兄さんに並ぶ武士になるって夢は完全に頓挫していただろう。

 

 

(神さまは言ってた・・・僕の人生は苦難に満ちたものだって・・・。

 強くなろう。誰も悲しませないくらい。誰かを守れるように!)

 

 

 ふいにアヤメ姉の泣き顔が思い浮かぶ。

 頭を振るってそれを追い払う。

 

 

 

(もう泣かせるもんか)

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅くなりましたが特効薬です」

 

 

 蒸し風呂から出て新品の着物に着替え終え、女官さんの出してくれた晩御飯を食べ終える。

 ルルティエの部屋に行くとムラジさまが父さんとシス姉さんに特効薬を渡していた。

 

 

「ほらルルティエ、お薬よ。飲める?」

 

 

 朦朧とした意識の中でルルティエは小さく頷く。

 僕は後ろに回りルルティエの体をゆっくりと起こし、シス姉さんは薬の入った器をルルティエの口に近づける。

 少しずつだが飲み干すと、再び体を寝かせる。

 

 しばらく見守っていると、今まで荒かった寝息が嘘のように穏やかなものに変わる。

 

 

「もう、大丈夫ですな。即効性の万能薬ですからな。

 あとは日に1回ずつ同じように薬を飲めばたちまち回復するでしょう」

 

 

 ムラジさまの言葉に僕を含めた全員がほっと息をつく。

 

 

「無茶ではありましたが皇子の頑張りのおかげですな。

 皇子の採ってきてくださったコゥハ草のおかげで20人ほどの特効薬が作れそうです」

 

「あれだけ採っても20人なんですか・・・」

 

 

 革袋いっぱいに詰め込んだのだからもっと大勢の患者を救えると思ったけども全く足りないようだ。

 

 

「こればかりは近隣諸国の援助を待つしかありませぬ。

 まずは幼いもの、老いたものを中心に特効薬を処置します」

 

「うむ、頼んだぞ。苦労をかける」

 

 

 ムラジさまは父さんのねぎらいの言葉に頭をさげる。

 そして僕の方を見て「よく頑張ったね」という優しい目で微笑み、お辞儀をして退室する。

 

 

「これでひとまず安心ね。いろいろあったから疲れたでしょ?今日は早く寝なさい」

 

「姉さんは?」

 

「もう少しルルティエの様子見てから寝るわ。ほらほら男どもは出て行った」

 

 

 僕と父さんはルルティエの部屋から追い出される。

 部屋の前で立ち尽くす僕と父さん。

 父さんは二カッ笑って僕に拳を突き出す。

 僕も笑って、父さんの拳に自分の拳をぶつける。

 

 

「ほんに、よぉ頑張ったなあ。お前は自慢の息子だ」

 

「まだまだだよ。姉さんの言ってたように無茶して周りに迷惑かけたし・・・。

 それにアヤメ姉に泣かれたんだ。

 胸がもやもやするんだ・・・。もう泣かせたくない」

 

 

 それを聞いて父さんは、ガッハッハと豪快に笑い僕の背中をバンバンと叩く。

 

 

「いっちょまえに男になりおってからに。ムラジの孫娘のこと、惚れたか?」

 

「な、な・・・なっ!?」

 

「だったら一歩ずつでええ。強ぉなれ。力だけでなく心もな」

 

「・・・うん」

 

「それに安心せえ。アヤメとの縁、おとんは認めるけえ。ムラジも大歓迎だろうなあ」

 

「だ、だから父さん!そんなんじゃ!」

 

 

 ダッハッハ。と笑いながら父さんは自室へと戻っていく。

 そんないつもの父さんに安心しながら僕も自室へと戻って寝ることにする。

 

 

「ありがとう、父さん・・・」

 

 

 

 

 それから1週間後、ヤシュマ兄さんがエンナカムイから物資援助を受けて帰ってきた。

 またその2日後、母さんが帝都から薬草や特効薬そのものを買い付けて帰還。

 他の兄達やお供をした豪族たちも近隣諸国からの協力を取り付けることに成功。

 多くの薬師たちが各州の援助に回っているそうだ。 

 特効薬が十分な数確保でき、クジュウリ各地の薬師たちに広まる。あっという間にはやり病は終息していった。

 

 

「お兄さま、お茶が入りました」

 

「ルルティエが入れてくれたの?ありがとう」

 

「お母さまに教わりました」

 

 

 ヤシュマ兄さんが帰還したころにはルルティエは全快していた。

 ムラジさまの出してきた算術の宿題に頭を悩ましているときに、ルルティエの出してくれたお茶が嬉しい。

 

 

「ど、どうでしょうか・・・?」

 

「うん。美味しいよ」

 

「お兄さま、今回はその・・・本当に迷惑をかけました」

 

「迷惑なんて思うもんか。妹をどんな時だって助ける。それが兄ちゃんってものだよ」

 

 

 ルルティエは僕の言葉に嬉しそうに微笑む。

 ああ、なんて可愛いんだろう。僕の妹は神さまだって魅了するはずだ。

 

 

「それでお兄さま、すこし相談事があるんですが・・・」

 

「どうしたの?」

 

 

 ルルティエは突然立ち上がって、部屋の外へ行く。

 そしてすぐに入ってくるが、抱えているのは小さなホロロン鳥だ。

 

 

「ココポと名づけました。お母さまが世話をしてみなさいって・・・」

 

 

 そういえば母さんは帝都で特効薬以外にもいろいろ仕入れてたっけ。

 ルルティエの情操教育のために小動物も仕入れていたようだ。

 

 

「ココポかぁ。僕はレキ。よろしく」

 

 

 ココポという名のホロロン鳥は小さく首を傾げさえずる。

 それにしても"小さな"ホロロン鳥だな。生まれたばかりではないようだが平均のサイズよりやや小さい。

 

 ・・・それが後日、あんなに巨大に成長するなんてこのときの僕には想像すらしていなかった。

 

 

 

「それで相談事って?」

 

「お世話の仕方が分からないです・・・どうしたらいいでしょうか」

 

「愛情を持って接する、とか?」

 

「具体的にはどうすればいいんでしょうか」

 

 

 うーん・・・ルルティエの力になりたいけども、さっぱり分からない。

 動物の世話なんてウォプタルのカントくらいしかしたことがない。

 そうかウォプタル!

 

 

「ここはやっぱり専門家に聞くべきかな」

 

「専門家、ですか?」

 

 

 ルルティエとココポは小さく首を傾げる。

 

 

 

 

 

「それで私に尋ねに来た、わけね」

 

 

 ウォプタルに餌やりをしているシス姉さんのところを訪れた。

 姉さんは動物好き。

 言ってしまえば可愛いもの好きなため、ウォプタルの飼育の責任者としての立場にいる。

 広大なクジュウリを移動するにはウォプタルは欠かせない。

 母さんが帝都から新たに3頭連れて帰ってきたため姉さんはその飼育で忙しいようだ。

 

 

「母上はルルティエ一人で育てろ、なんて言ってないわけだしいいわ。私も協力するわ」

 

「ありがとうシスお姉さま!」

 

 

 ルルティエに微笑みかけられシス姉さんはデレデレだ。

 ココポはルルティエと、彼女と親しそうなシス姉さんを交互に見ている。

 

 

 

「私はシスよー。よろしくねココポ」

 

 

 姉さんはココポに指を出す。握手のつもりなんだろうが―――

 

 

 ガリッ

 

 

 嫉妬に駆られたココポは姉さんの指に思いっきり噛み付いた。

 

 

 

 

「何すんのこの馬鹿ドリーーーー!!」

 

 

 

 姉さんの絶叫が城中にこだました。

 これが姉さんとココポの間で繰り広げられる通称・百年戦争の始まりだということは僕とルルティエだけが知っている。

 

 

 




 本編だとココポって滅多に人に懐かない。
 ハクにいきなり懐いたことにルルティエはびっくりしてましたね。
 アニメ版だとマロロとはライバルみたいな間柄でしたし

 あとオーゼン皇の方言まじりの言葉使いが良く分かりません。
 西郷どん見てても薩摩弁とも違うっぽいし。
 ゲーム再プレイしてても登場シーンが少なくて掴みづらい。
 違和感あると思いますが、流してもらえるとありがたいです。


(オリジナルキャラ設定)
アヤメ 少年時代編のメインヒロイン。2歳年上の幼なじみで薬師見習い。希望の花言葉をもつアヤメが名の由来。
ムラジ アヤメの祖父でクジュウリの老薬師。オーゼンの相談役。有事の際は采配師も兼ねる。

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