傾いていた太陽ももう僅かしか姿を見せず辺りは薄暗く視界を阻んでいる。先程見つけた二人組のあとをバレないように追いかける。暫くすると街と森の間に小さく汚い小屋のようなものが建っていた。
「つい追いかけてきたもののどうしよう?」
二人組が小屋の中に子供を連れて入る。やはり子供は無理やり連れてこられたようで抵抗しているものの男達に無理やり中に放りこまれる。
さすがに街まで戻ってギルドや衛兵に伝える時間は無さそうだな。現状槍持って突入しかねぇか。
覚悟を決め購入したての槍をスマホから取り出す。取り出す時に初心者の槍と書かれており急に不安になってきたのはここだけの話。
勢いよく扉を蹴り開ける。
「意外と簡単に開くもんなんだな。」
「てめぇナニモンだ!」
「ふざけたマネしやがって。シメてやる。」
部屋の中にはロープで手足を結ばれ身動きがとれない状態の子供と二人組の3人だけだった。
よかった。2人だけなら何とかなりそうだ。前の世界で格闘ヲタの友人から、街中で犯人と遭遇した時の対処法を聞いててよかったぜ。
槍を構えたまま片手を背中に隠す。聞いた話によるとコレにより相手は背中に何をもっているのか?と下手に動けなくなり場の支配ができるとのこと。
「野郎、背中に何か持ってやがるぞ。気をつけろ!」
「おうよ。」
相手もナイフとサーベルの如何にも盗賊みたいな武器を構え様子を伺う。
互いに武器を構え膠着状態が続く。次の瞬間背後から素早く手を相手に向け、予め起動させていたスマホのカメラのシャッターを切る。
「ぐわっ!」
「な、何だ!?」
カメラのシャッター音とフラッシュにやられ2人組に隙ができる。そこに力一杯フルスイングした槍を2人のガラ空きの腹部に叩きつける。
「「グハッ!」」
2人組を近くにあったロープで縛り、捕えられていた子供を解放する。
「どこか痛いところや怪我してないかい?」
「...大丈夫です。」
何やら少し警戒されているようだ。攫われてきて目の前であんな戦闘があれば当然の結果かもしれないが少し傷つく。
街に戻り捕まえた二人組を衛兵さんに引渡し報告を済ませる。捕えられていた子はどうやらスラムに住んでいるらしく、既に両親は亡くなっているとのこと。悲しい事にこの世界では良くあることなのだそうだ。街側としてもスラムの現状を何とかしようとなっているらしいが手の付けようがないので現在のままとなっているらしい。
その結果この街に限らず世界ではスラムで人攫いが活発になり幼い頃より奴隷として売られることも少なくないそうだ。
「この子はどうなるんですかね?」
「うーん。街側としても何も出来ないのが現実でね。そのままスラムに戻るしかないな。」
衛兵さんから悲しい現実を聞かされる。正直そんな事考えた事も無かったが人の命がお金で買える。それがこの世界では通用することにやるせなさを感じる。
その時にぐぅーと何とも可愛らしい音が夕食を食べてないことを告げる。聞かれたのが恥ずかしいのか音の正体である子は顔を真っ赤にしている。
「そう言えば俺も腹減ったな〜。奢るからご飯食べに行こうか?」
「......うん。」
恥ずかしくても空腹には勝てなかったようだ。顔を赤くしたままのその子を連れて近くの飲食店に入る。
さて、とりあえずご飯に誘ったはいいけどこのあとまた攫われるかもしれない場所に返すのもなぁ。本当にどうしたものか?