最初は遠慮して食べようともしなかったが注文を適当にして食べさせるとすごい勢いで食べ始める。
「誰も取りはしないから落ち着いてたべなよ...。」
途中何度か食べ物が喉に詰まりそうになるがそのたびにスープ類で流し込む。もはや食事と言うより作業に近いと思えてしまうほどの勢いだ。
スラムと聞いてまさかとは思ったけど、この様子じゃご飯もまともに食べてなかったな。
自分自身前の世界ではそこまで他人に興味を示さなかったが、何故ここまでこの子にあれこれしているのかふと疑問に思う。
自分も昔はこの子のように世界に何も期待をせず、死んだような目をしていただろう。だが自分はこの世界に転移して今では毎日が希望や楽しいことで溢れている。
それに異世界に来てから右も左も分からない自分に親切にしてくれた人達のお陰で今日こうして生きている。今まで蔑ろにしてきたものに助けられ異世界でも何とかやっていけてる。と自分でも自覚している。
だからこそなのだろうか?この子がこのまま元の生活に戻るのを嫌だと思うのは。これはただ目の前の子に昔の自分を重ねてるだけかもしれない。ただのお節介かもしれない。それでも自分がこの世界に来れて毎日に希望を持てるようになったみたいに、この子にもなってほしいと強く思う。
「普段はどんな生活をしてるのかな?」
最初は警戒をされていたがご飯を食べさせたからか、ある程度の会話はしてもらえるようになり気になっていたことを質問する。
「別に...全部が自給自足。」
端的に何事でもないように話しているが、その言葉の意味は現実の過酷さを訴えていた。
この子や他のスラムに住む子供たちに何かしてあげたい。しかし自分の事だけで精一杯な俺に何が出来るのか。悩み続けていたところふと視線に気づく。
「ん?どうかした?」
目の前の子は何かを決意したように話してくれる。
「ねぇ、お兄さんって冒険者の人だよね?私に冒険のこと教えてくれない?私冒険者になりたい!」
唐突にお願いをされ少し戸惑う。しかしこのお願いによりふと1つの方法を閃く。
あれ、もしかしてコレならこの子を救えるかもしれないし俺も少し楽になるか。いやもうコレ以外いい案なんかないだろ。
「それなら君もギルドに登録して冒険者になろう。ちょうどパーティーメンバー探してたんだ。」
「え?いいの!?」
「ああ、今日も1人でクエストを受けてたけど、もう1人いると楽だなって思ってたんだ。」
その日は日も落ち既に夜になっていたので翌朝ギルドに登録に向かうことを決め宿に帰ることにする。勿論スラムにこのまま帰らす訳にもいかず、宿代を代わりに払うと伝え2人で宿に帰るのであった。