畏れよ、我を   作:hi・mazin

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梅雨が明けて夏がやってきました。

すかさず投稿。








第二十八話 一応の和解、そして。

 

 

 

いや~リリルカイベントは強敵でしたね。

 

ベル君と別れた後、速攻でオークを始末した私はちょっと合流を遅らすため、わざわざオークの魔石を回収してからベル君を追いかけたんだけど……

 

いや~ハーレム型主人公ってスゴいわ、大量の蟻さんの死体の中心でもしっかりとラブコメできるんですから。

 

まあ、今回のヒロインは絶対的なピンチを颯爽と助けてもらう系なのでしょうがないが、私ならそんな殺伐とした場所でのラブコメは遠慮したいわ。

 

 

二人の邪魔をしたくなかった私は二人の抱擁が終わるまでひたすら蟻さんから魔石を回収していたら、また蟻さんが湧いてきたか。

 

まったく、人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて地獄に落ちろ、と昔から言われてるし私は二人に気をつかって内緒で蟻さんを処理するため【恐れよ、我を】をしてあげたら…ダンジョンに蟻さんの金切り声がまあ響くこと、ベル君もリリルカさんもビクッとして甘い雰囲気は終了してしまった…。

 

私は空気が悪くなる前に騒ぎの元凶たちに【命ず、輩を喰らえ】して残った奴は【命ず、自ら滅せよ】してダンジョン内をまた静かにした。

 

しかし、空気は良くはならず悪いものとなった。

 

解せぬ。

 

残存戦力の掃討が終わり私もベル君たちに合流したらリリルカさんが急に顔が青くなりガタガタ震えながら涙目でベル君にしがみ付いている。

 

恐らく私に今までの事を復讐されると思って恐怖しているのだろう、そういえばリリルカさんは先程(10階層)私の魔法を恐ろしいものと評価してたな、となると自分もさっきの蟻さんたちみたいにやられると勘違いして震えているのだろう。

 

「あ、あの、カメ子さん、リリの事許してもらえないでしょうか? その、問題はさっき二人で解決したというか…」

 

おいおいベル君、キミまで私のことを何だと思ってるんだい、そりゃあ顔にスースーする水ぽいものを掛けられ情けない悲鳴を上げてしまったが私は怒ってないよ。

むしろ無事にイベントが終了したことに安堵しているんだぜ、だから私は……

 

【…なんのこと?】

 

「え?」

 

【…リリルカさん新しい魔石…保管おねがい…】

 

そう、なんも無かったかのようにすっとぼけるのだ! どうせ何言っても変な感じで勘違いされるくらいなら全て無かった事にして水に流してしまいましょう、ちょうど水も被ったしね(笑)

 

「…どうしてですか? 何で何事もなかったようにするのですか? リリは悪いやつです…嘘ばかりついていたパルゥムですよ?」

 

え~(困惑)その件はさっきベル君とやったでしょう? 何で私でもう一度やり直してるんですか?

え、じゃあ私もベル君みたいな歯の浮くような甘いセリフを吐かなくちゃいけないの? そんなの私のキャラじゃないよ、女の子を誑かすのはベル君の領分だよ。

 

そんな捨てられた子犬のような瞳でこっちを見ないでください、ベル君はなんで固唾を飲むような顔で私を見ているんですか? あ~あ、変な誤解を避けるためにすっとぼけたのに結局私も何かいい感じのことを言わないといけないの?

 

【…闇の中の苦しさは…しってるから…】

 

うんうん、いいこと言ったぞ私。私もベル君と出会うまで一人で冒険してきたが【カースメーカーなりきりセット】のせいで肩身も狭いし、魔法はほかの冒険者から気味悪がられるし、イカレ女なる風評被害もうけた、まさに私の暗黒期だった。だから冷遇されてきたリリルカさんの気持ちはよくわかるぞ。

 

ん、二人とも私の言葉が胸に響きすぎて目が真ん丸になってますよ、さあ地上に帰りましょう。

 

その後地上に無事に帰りついたがリリルカさんは荷物を残し忽然と姿を消してしまった。

あまりにも突然だったためベル君は少し動揺していたがすぐに落ち着きを取り戻し『また会えますよね』と私に笑いかけた。

これから長い付き合いになる事は知っていたのでベル君には【…すぐに…】と短く返事を返すと彼は満足そうにうなずくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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と、言ういい話系の事件からリリルカさんが音信不通になりもう二日が過ぎた。そう二日も過ぎたのだ!

ぶっちゃけイベントとか好感度とか関係なしにリリルカさんには早く戦線復帰してもらいたい。

 

ベル君には黙ってるけど、この二日の収入はリリルカさんが居た頃より大きく収益を落としている。

 

別に私たちがサボってるわけでもモンスターの出が悪かったわけでもない、メタ的に言うとサポーターがいないせいでアイテムの最大所持数が下がった事で換金アイテムをそんなに持ち帰れなくなったのだ。

 

簡単に言うとベル君+私で最大所持数を20としよう、一個100ヴァリスで売れるアイテムを限界まで持ち帰っても2000ヴァリスの儲けしかない、で、リリルカさんが加入した時は最大所持数が+100されるので10000ヴァリスも儲けが違う計算になる、いろいろちょろまかされていたがそんなのは些細なものである。

 

ただでさえ貯蓄に余裕がない【ヘスティア・ファミリア】にとってはこの問題は決して小さくない。

 

ああ、リリルカさん何処にいるの⁉ ………って、いたぁぁぁぁぁ!!

 

大きなリュック背負って壁に背を預け寂しそうに佇んでいた。

 

無表情がデフォな私でもこの時ばかりは口角がわずかに反応した…気がする。

 

「カメ子さん、僕ちょっと行ってきます!」

 

そう言うとベル君はサポーターである彼女に半人前の冒険者である自分を売り込み始める。

まあ、所謂初めて会った日のオマージュである。

 

ベル君に心を許しきってるリリルカさんにとってはこの再現はかなりのロマンスではないだろうか?

まさに好感度MAXの相手に追い打ち、死体蹴り、オーバーキル等々である。

 

ま、そんな事はさて置き、これで私たちの収入は右肩上がりに増えることだろう、しかも今回からは金銭をちょろまかされたり、お使いで定価の倍以上ボラれることもなくなるので、実質の収益倍増フラグである。

 

さ~て、女神様のためにも頑張ってお金をためるぞ~!

 

 

 

 

 

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…なんて意気込んでいた時が懐かしい…

 

今日は女神様とリリルカさんの初対面の日でお洒落なオープンカフェのお店に来ている、原作から二人の空気が悪いのは知ってたし、どうせ私には関係ないことだしベル君だけが気まずいだけだと思ったけど…なんか私がいるせいか原作よりベル君が居心地悪そうにしている。

 

ぶっすぅぅっと如何にも機嫌が悪いですよとリリルカさんと目も合わせない女神様。

 

ズゥーン…っと如何にも気まずい様子で視線がしたにいってるリリルカさん。

 

ボーっとして二人の険悪な空気など気にせず我関せずとベル君が買ってきた果実水を飲んでる私。

 

ベル君はこの空気を払しょくするため二人の仲を取り持ち、尚且つ私を話の輪に加えるという高度なミッションを遂行しなければならないのだ。

 

すまんなベル君、もうちょっとしたらお話が進むと思うからそれまで気まずい思いをしていてくれたまえ。

 

「正直に言うとねサポーター君、ボクは君のことが嫌いだ。ベル君に付き纏ってほしくないと思ってる。」

 

おっと、ついに場が動き始めましたね、もっとも女神様の言葉はベル君の望んだ展開とは違うようで、慌てて言葉を挟もうとするが女神様に手で制されてしまう。

 

「ベル君を好き放題たぶらかして、それが今では手の平を返したように取り入ろうとしてさ、カメ子君が悪い影響を受けそうだよ。」

 

おお女神様ベル君だけではなく、ちゃんと私のことも考えててくれたんですね。

でも大丈夫ですよ女神様、私の精神は女神様が思ってるより幼くも、軟でもないんですよ、リリルカさん程度で変な影響なんて受けませんよ。

 

ま、結局この会合は女神様がリリルカさんの本質を見るための場であり、大好きなベル君を取られないようにするためリリルカさんに釘をさすことが目的なのだ。

 

「それじゃあサポーター君、これからもよろしく頼むよ……ボクのベル君をね!!」

 

ほら、もうメッキが剥がれた。さっきまで【疑似神の審判】やら【満足するまで恩をかえせばいい】などカッコいいセリフを言っていた女神様はどこかに行ってしまい、ベル君の腕にしがみつきながら勝ち誇った笑みを浮かべている。

 

しかし、リリルカさんも負けていなかった。バァン!と叩きながらゆらりと椅子から立ち上がり……

 

「あッ! ありがとうございます……これで……これでこれからも一緒にいられますねリリにはお優しいベル様っ!」

 

うんしってた(真顔)  二人はベル君の腕にぷにょんぽにょんしたモノを押し付けながらキャーキャー言い争いを始め、ベル君はデレデレしながら困った顔をしているが、決して二人を引きはがさなかった。

 

はー(溜息)お店の中で人の迷惑も考えずにこんな痴話げんかを始めるのはほんと勘弁してもらいたい、周りのお客さんからもしっかり目撃されているんですよ。

 

ハッキリ言ってくっそ恥ずかしい!

 

あまりにも恥ずかしかったから机の上のシュガーケースから角砂糖を二つ取り出し恋愛脳女神様と実はベル君より年上サポーターのおでこに投げつけた。

 

「イッタイ! カメ子君一体何のつもりだい!」

 

「いたた、カメ子様リリが何をしたというんですか?」

 

【…人前で…はずかしい…】

 

まったく、はしゃぎすぎだよ、ベル君から二人が離れたからベル君の手を引いて二人から引き離し私がいた席まで連れてきた。

 

【…ケンカするなら…わたしがもらう…】

 

そう言ってベル君にギューと抱き着くと女神様とリリルカさんはもう絶対に人の目があるところではさっきみたいな醜態はさらさないと約束してくれた。

 

これにて一件落着ってね。

 

 






その夜【ヘスティア・ファミリア】にて…

女神様「カメ子君はさ、ベル君のこと…どう思ってるんだい」

カメ子ちゃん「…スキ…」(原作主人公的に)

ベル君「カメ子さんって、あんなに細かったんだ…」

こんな感じの夜でした。

<では、次回までお別れです>

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