IS スカイブルー・ティアーズ 作:ブレイブ(オルコッ党所属)
Q、セシリア、疾風のこと好きなの?
A、友人としては、恋愛感情はないです。
Q、それにしては感情でかくない?
A、自覚してるかは置いといて、疾風が約束通りたくましくなったことが嬉しいんです
Q、セシリアって疾風のこと好きなの?
A、自覚してるかは置いといて恋愛的なものはないです
セシリアとの同居生活は順調、というより凄く過ごしやすかった。
お互い適切な距離を保ち、ルールをしっかり決めて生活してるからストレスも感じず快適だ。
一夏と篠ノ之さんは、まあ結構波乱だという。一夏は結構ゲッソリしてたし、見捨てたことに恨み節をぶつけられたりした。
その後も色んなことがあった。
寮の管理人が織斑先生で周りが湧いたり。
一夏いわく織斑先生は実は私生活がだらしなかったり。そして即効シバかれたり。
あとこれが一番重要なのだが、一夏に専用機が来るという。データ取り云々とかで政府から直接支給されるとか。なんともスペシャルな待遇だ。
あと篠ノ之さんは案の定篠ノ之束博士の妹だった。しかし姉妹仲はあまり良くないらしく。篠ノ之博士の話題で詰められると「あの人は関係ない!!」と声を大にした。
あとセシリアが篠ノ之さんにちょっかいを掛けて睨まれた。あの眼光はヤバかったな、セシリア怯んでたぞ。色々苦労してそうだし、なかなか闇が深そうである。
が、そんな頑固者と思われた篠ノ之さんは思ったより柔軟だったらしい。
昼休みの時に一夏目当てで「ISのこと教えてあげる」と言ってきた3年生女子に対し「私が教えます。私は篠ノ之束の妹ですから」という必殺技で追い返したのだ。これには俺と一夏は「え? 関係ないんじゃなかったの?」と言いかけたが無言の圧で黙らされた。
絶好のからかいタイミングだったのにこの程度の圧で怯むとは、この疾風・レーデルハイト一生の不覚!!
ちなみに三年生女子は一夏が駄目なら俺をと勧誘してきたが。俺も必殺技「参考書丸暗記」で失礼させてもらった。明らかにお近づきかツバつけたい雰囲気だったしね、悪い人ではなさそうだったけど。
んで、一夏のコーチングは篠ノ之さんがすることになった。当初一夏は俺に教えて貰おうと思ったらしいが「敵に教えを請うとは何事だ! 放課後来い! 剣の腕を確かめてやる!」といってコーチに強制就任だ。
そんなこんなで3日たった。
俺の方は情報収集やらやれることをやったりした。本来一夏に割くはずだった時間も存分に使ってだ。セシリアとは同室だったが特に意見交換とかそういうのはなかった。セシリアから一度だけ操作のレクチャーを誘われたが。1回独力でやってみるということでお開きとなった。
一夏の方は、なんか更にぐったりしてた。篠ノ之さん結構鬼コーチだったりする?
後はそうだな。学食が超美味い! そして早い! 更に安い!!
国からお金がたんまり来てるのか価格がお手頃で。しかも国際色豊かなのか珍しい外国の料理が多くて目を引かれる。
時々スキンヘッドの男性コックが厨房に居る時があり。その人にメニュー欄にないメニューを言うと「あるよ」の一言で出して来て、次の日そのメニューがメニュー欄に並ぶという都市伝説がある。まだ俺はお目にかかれていない。
「やっぱり打鉄かなぁ。高機動パッケージで肉薄、いやでも盾増やして強引にパワーで。うーん、どっちもつけられないか、いやでもペイロードとバススロットがなぁ。いっそのことラファールで物量戦も……」
そんな俺の昼食はBLTサンド。
ベーコンは塩気が濃く、トマトとレタスはフレッシュ。パンも香ばしい。
何より片手で食べれるのが素晴らしい。
こういう風にタブレット片手にサクサク食べれるの最高。ありがとうサンドウィッチ伯爵ことエドワード・モンタギュー伯。
「調べるか食べるかどっちかにしたらどうだ不良生徒」
「モッ?」
2枚目のBLTサンドを食べようとした矢先、これまた珍しいお客様が鯖の味噌煮定食を持ってきた。
「こんにちは織斑先生。今日はお一人で?」
「まあな。相席してもいいか」
「どうぞどうぞ」
織斑先生が向かいの席に座ると周りが一気にザワついた。ほんと時の人だな、そして当然の如く来る嫉妬の目線。フハハハ、羨ましかろう。
「訓練機の詳細データか。ああ、確かレーデルハイトの専用機は」
「ええ。おかげで昨日は再起不能でした」
俺の専用機は政府からではなく親元のレーデルハイト工業から来ることとなった。
ISコアは政府配給だが、ガワはレーデルハイト工業が開発した第三世代技術の結晶が俺の下に届くはずだったのだが。
「第三世代技術の安定化が予想より大幅に遅れるらしく。ISが来るのは早くても二ヶ月後ですってあぁぁーー……おかげでISに乗れる回数は1週間に1回、良くて2回という……地獄です」
「ご愁傷さまだな。まあISの開発などそんなものだ。一人例外を除いてな」
「生徒約240人に対して練習機20機は数少なすぎますよ先生ー。なんとかなりませんかね」
「打診はしているが、むしろIS学園のコアを寄越せと遠回しにあの手この手だ」
それはお疲れ様です。ほんと足りねえなコア。467個って結構な数なのに世界単位だと少なすぎる
専用機をひょいっと貰える一夏が羨ましいですよほんと。
「ところで色々聞きたいことがあるんですけど宜しいですが? 3、4個ほど」
「本当に色々だな、食べ終わるまでなら良いぞ」
「ありがとうございます。暮桜っていま持ってますか?」
「いま私の手から離れている……そんなあからさまに残念な顔をするな」
おっと行けない。思わず顔が真っ白になっちまったよ。
そうかないかー!
生暮桜見たかったなー!
「どうして国家代表をお辞めになったので?」
「諸事情だ」
「何故IS学園で教鞭を?」
「諸事情だ」
「……一夏をISから必要以上に遠ざけたのは何故ですか?」
「諸事情だ」
「……私、なんか怒らせるようなこと言ってしまったでしょうか」
「ちゃんと聞いた上で答えている。単に答えられないだけだ」
その割には対応が冷たすぎる気がするのですが。
結婚願望とか聞いてやろうかな。
「諸事情、にしても一夏がああなって結果的にクラスの笑い者になってしまったのですが」
「私としても弟がISを動かすとは思わなかった。お前も含めてな」
「なにかISに近づくと危険なことでも?」
「そうだな。まかり間違ってもISに関する仕事には就いてほしくはなかったぐらいにはな」
答えを得たような、得てないような。
とりあえず弟さんのことを考えた上での行動というのは分かったかな?
「私からも一つ良いだろうか」
「諸事情って言っても良いですか?」
「私は構わんぞ。人にされて嫌なことでもないのでな」
「入学初日にイエスしか認めないぞって言ってませんでした?」
「わかってるじゃないか」
まあ良いですよ。俺は織斑先生と違って意地悪ではないですからねヘーンだ!
「総合的にだが。お前はISの知識、専用機持ちを除いた中での操縦技術は他の女子生徒と比べても群を抜いている。しかも国際IS委員会加盟国の基本的な会話が可能。身体能力も抜きん出ている。もし仮にIS学園に通常入学を望んだとしても間違いなく合格を得られた事だろう」
「ありがとうございます。織斑先生ほどの御方にそう言って頂けるのは嬉しいです」
「何故そこまで詰め込めた。これほどベストを尽くすのは並大抵の事ではないだろう。まるでISを動かす為に動いたように見える」
確かに。男でありながら此処までやる人なんて世界広しと言えどそうは居ないだろう。
「昔、ある女の子と約束したんです。いつか2人でモンド・グロッソに出て競い合おうって。第一回モンド・グロッソの決勝戦で、貴方が優勝した時に」
「だがそれは不可能だ。ISは男には動かせなかった」
「ええ、子供が考えた叶うはずのない夢物語でした。それでもISを動かしたい、もし動かせても困ることのないように。覚えられること、出来ることは全部やりました」
「挫折したことはなかったのか」
「ありました。歳を取るにつれて現実が見えてきて、暇さえあれば工業にあるISに触れましたけど、駄目でしたね」
だがそれでも諦められなかった。
何処かに折り合いをつけて、メカニックとして大勢することも考えた。それが一番現実的だし、学んだことも無駄にはならない。
「それでもやっぱり諦めきれなかったんです。約束した女の子が頑張ってるのに、自分は挫けていられないって」
「そうか……」
「あと、単純に好きなんです。インフィニット・ストラトスが」
「男なのにか?」
「男なのにです。だってロマンがあるじゃないですか。あれで宇宙を目指せるなんて」
本来なら10年、下手すれば100年先でも届かなかった完璧な宇宙活動が手の届く場所にある。
それだけじゃない、モンド・グロッソというスポーツは老若男女違わず燃えるものだ。それ以外にもISというものは男心をくすぐる要素で溢れている。
男だって好きになって良いだろう。だってカッコいいんだから。
「大馬鹿者だな」
「あなたに脳を焼かれた一人ですから……まあ私に限らずですが。初日凄かったですよね、今もですけど」
織斑先生と談笑してるから周りから嫉妬の眼差しがドスドスと来ている。
もし一夏だったら冷や汗物だろうが、このレーデルハイトはむしろ愉悦に酔いしれている! あーサンドイッチ美味しいなあー!
「IS関連の素養にその図太さ。織斑とは正反対だな」
「女性人気もですけどね」
「大して気にしてないだろうに」
「アハハ、わかりますか」
正直女性人気が一夏に行ってくれて大変助かっている。
女性恐怖症という訳では無いが、今の御時世女性に迫られるのは必ずしもメリットばかりではないのだ。
「ふむ、中々面白い話を聞けた、礼を言おう」
「結局こっちの質問に答えてくれませんでしたね」
「答えれそうな範囲なら答えてやるぞ」
「えーーっと……家ではリラックスしてるというのは」
「ノーコメントだ」
語るに落ちると言うのですよ先生。
「ところで、織斑の指導役は篠ノ之がやってるらしいな」
「ええ。篠ノ之博士の妹ってキラーカード出してましたよ。よほど一夏を取られたくなかったんですかね?」
「さあな」
「しかし篠ノ之さんってISに詳しいんですか? 篠ノ之博士の妹さんですけど。あの様子だとISに大してよく思ってなさそうですが」
「一つ言えることがあるとすれば……あいつは正規の入学手順を通っていない」
「やはりそうですか……つまり?」
「察せ」
察しました。一夏本当に大丈夫かな。
「ごちそうさま。お前もさっさと食べて情報収集に勤しめ。マルチタスクは時に非効率だぞ」
「はい……」
うーん、改めて指摘されると恥ずかしいものがありますな。
俺もさっさとこの針のむしろから退散するとしますか。
「そう言えば……織斑と篠ノ之は放課後剣道場で打ち合いをしてるらしい。今日も行くらしいぞ」
「そのようですね」
「…………」
「…………」
ん? なんだろう。なんで織斑先生はじっと俺を見ているのだろうか。
あ、よく見たら一夏と織斑先生って顔似てるなぁ。雰囲気が全然違うからパッと見わかんないけど……そろそろ何か喋ってほしい。
「…………」
「…………」
「……一度見てくるといい。なんだ、知見が広まると思うぞ」
「……ああ」
成る程、そういうことか。
なんともなんとも、わかりづらい。
「織斑先生」
「なんだ」
「一夏の専用機ってどんなタイプです?」
「高機動近接型。得物は刀だ。ではな」
「はい」
織斑先生がトレイを持って去っていった。
俺も最後のサンドイッチを放り込んでその場を後にする。
「フフッ、まったく」
素直じゃないな、世界最強は。
ーーー◇ーーー
「まだまだだな一夏! もう一度だ!」
「あの箒さん。そろそろISの事を……」
「何度言えばわかる、それ以前の問題だと! 私に1勝するまで稽古は終わらないと思え!!」
「こっちはブランク3年なのに全国大会優勝者にいきなり勝てなんて無茶ぶりだろ……」
「負ける理由を探すなど男として情けないと思わないのか! さあ立て、そのナヨった性根を叩き直してやる!!」
マジで鬼スパルタだ。遠目から声だけでもわかる。
今日の見物人は1年生が4人、2年生が3人、3年生が2人。1年生のメンバーには相川さんとのほほんさんが居る。
「やっほー2人とも」
「あっ、レーちんだ〜」
「レーデルハイトくんも見物に来たの?」
「んーまあね」
「メェェェン!」
「ぐぅっ!」
「ドォォォォ!!」
「おあっ!」
篠ノ之さんの胴抜きが炸裂。一夏は尻もちをついた。
見事な一撃。迫力というか佇まいも只者ではない。確か全国大会優勝者だもんな。
「毎日あんな感じなんだよね。実戦形式の稽古で毎度毎度織斑くんが負けて」
「でも前より粘るようになったよね〜」
「てことはISのことは」
「やってないんじゃないかな。部屋でも稽古やら精神統一とかやってるみたい」
マジか、もう3日経ってるのにISノータッチかよ。
篠ノ之博士の妹発言は何処に言ったんだ。あんな自信満々に言ってたのに。
織斑先生が俺を差し向ける訳だよ。これじゃノー知識ノー勉強でセシリアと戦うことになる。完全に自殺行為だな。
「お邪魔しまーす」
「邪魔するなら帰れ」
「あいよー」
「………あれ本当に帰った?」
「だと思ったか!」
「あ、戻ってきた」
「なんなんだお前は」
すまぬな、一度やってみたかったんだ。
「何をしに来た」
「いやー進捗どうかなって思ってさ。助けがいる頃かなと」
「お前の手は借りん。一夏は私が鍛える」
わーお、敵意というか邪魔をするなというオーラ凄い。触れれば斬れそうな鋭い気迫。
何が彼女を此処まで駆り立てるのだろう。幼馴染だから? いやそれだけとは思えない並々ならぬ決意を感じる。
それとも嫌われているのだろうか。
「でもISのこと何も進んでないと聞いたが」
「疾風からも言ってやってくれよ。箒のやつISより先ずは剣道だーって聞かないんだよ」
「ということだけど?」
「こいつは3年も剣を握らずすっかり腑抜けてしまった。剣の腕だけじゃなく性格もすっかり弱気になった。昔のこいつは馬鹿だったが勝ち気で男らしかった。同じ門下生として今の一夏は捨て置けん。故に正当だ!」
剣道を知らぬ俺には何が正当かは分からないが篠ノ之さんにも譲れない物があるのはわかった。
一夏も一夏でそんな篠ノ之さんの圧に強く出れないらしい。セシリアを舌戦で負かしたあの時のツリ目一夏くんは何処行ったのか。
して篠ノ之さんは話は終わりだ、とっとと去れと目線で訴えかけて来てる。
並の男でも怯むその棘視線をどこ吹く風と口を動かす。
「でもこのままじゃ一夏負けるぞ?」
「っ!」
「セシリアは強い。間違いなく今年入学した中で最強格だ。専用機は勿論のこと、知識、技量、判断能力。どれを取ってもスペシャルだ。今の一夏なら本気を出さなくても負ける可能性はある」
「私が間違ってるとでも?」
「これまで通り剣道を教えるだけなら勝てないな。下手すりゃ俺にすら負けるだろうね」
「お前なら勝たせられるというのか」
「さあどうだろ」
「なに!?」
「人にISを教えるなんて初めてだし。最後に物を言うのは一夏自身だ。まあ少なくとも、篠ノ之さんが教えるよりは勝率上がるかもね」
鋭い目が更に鋭くなった。
怒らせてしまった。挑発したのだから当たり前だ。逆の立場なら俺でもムッとする。
「良いだろう。そこまで言うなら……貴様が私から一夏を奪うというのなら。この私と勝負しろ!」
顔の前に竹刀の切っ先が向けられる。
あっぶな! あと数センチで掠ってたぞオイ。
あと奪うってなんか俺が考えてるニュアンスと差異がある気がするのは気の所為かな篠ノ之さんや。
「おい箒! 疾風は未経験だぞ! 未経験者相手にそれはフェアじゃないだろ!」
「一夏、これは私と疾風の問題だ。口を挟むな」
「いや俺当事者なんだが!?」
「いいから黙ってろ! どうするレーデルハイト。受けるのか、受けないのか? 断ってもいいぞ。それでお前が軟弱者と馬鹿にするつもりはない」
ふむ、中々賢いな篠ノ之さん。
この場のイニシアチブは間違いなく篠ノ之さん。その篠ノ之さんが出す条件が自分が絶対に勝てる条件。その上でフォローすると見せかけて逃げ道を示す、いや彼女の性格上どちらも本音なのだろうけども。
「条件はどちらかが勝利すればいいんだよな?」
「疾風!?」
「ああそうだ。もっとも、お前が私に勝てるとは思わんがな」
「あ、自覚はあったんだ。篠ノ之さんもやらしいねえ」
「う、五月蝿い! 受けるのか、受けないのか!」
「いいよ。受けて立とう」
「ならさっさと着替えろ!」
うーん、この打てば響く感じ。
凄い弄りがいがありそう。是非とも仲良くなりたいところだが、どうだろうかな。
「着替え方がわからないなら手伝ってやる」
「いやいいよ。これだけでいい」
手に取ったのは竹刀と面……以上!
「よっと。オー、結構視界狭まるんだな」
「ふざけているのか? それとも私の剣は当たらないとでも言うつもりか?」
「いやいや。ただ全部つけたらまともに動けなさそうだし、これで良い。もし怪我したとしても篠ノ之さんの責任になることはしないと約束する」
「後悔するぞ」
籠手もなし、胴もなし。
一見勝負する気がないと見られるが、これで良いんだ。
「んじゃ一夏。号令頼むわ」
「本当に大丈夫か? 箒はマジで強いぞ」
「任せな。ばっちり勝ってやるから……これで負けたらクソダサいな。そうなったら引き籠ろう」
「本当に大丈夫だよな!?」
後ろでギャラリーが見てるから半刻ほどで学園に噂が浸透するだろう尾ヒレはヒレ付きで。
セシリアにも白い目で見られるんじゃね? 死ねる。
(勝ってやるだと。馬鹿にしてくれる!!)
嘗められている、何も知らない部外者に。そう感じた彼女の中には明確な怒りがあった。
(少し痛い目に合わせてやる。狙うのは面だ。渾身の一撃を叩き込んでやる!!)
「それじゃ、準備はいいな」
「いつでも」
「どこでも」
「……始め!」
開始と同時に篠ノ之さんが動く。
近づくと同時に篠ノ之さんの圧が膨れ上がり、彼女が大きく見えたかと錯覚する。
(隙だらけだ、貰った!!)
篠ノ之さんは勝ちを確信する。
俺は面の中でニヤリと笑みを浮かべる篠ノ之さんに向けて。
「ウラァッ!」
「なっ!?」
持っていた竹刀を投擲!
面食らいながらも飛んできた竹刀を払い除ける。
「シュー!」
「なにぃ!?」
今度は被っていた面を篠ノ之さんに向かってシュー! 超☆エキサイティン!!
今度は身体に当てられて動きが止まった篠ノ之さんに突進。竹刀を持つ手首を握りしめ、身体ごと全力でぶつかる。
運動エネルギーはそのまま篠ノ之さんを背中から床に伏せた! そのままチョップを篠ノ之さんの面に当てた。
「あいたっ」
「はい、俺の勝ち」
「なっ……なあーーーー!!?」
篠ノ之さん絶叫。上に乗ってる俺を払い除け、面をかなぐり捨ててビシィッと指刺した。
「ひ、卑怯者!! あんなの剣道でもなんでもない! 無効だ無効!!」
「いやいや。俺は最初から剣道するなんて言ってないし、条件も剣道による勝ち負けじゃなくて勝利だけだっただろ? 一夏、どっちが勝ったように見えた?」
「え? えーっと、疾風ではあるけども……」
「一夏ぁ!!」
「俺に怒るなよ箒!!」
イエーイ! 奇策が見事に決まったぜ!
最高にハイッて奴だー!
「もう一度! もう一度だ! 今度はちゃんと剣道で勝負だ!!」
「良いよ。だけどここで勝ったとしても勝敗は一対一引き分けだ。次は俺が勝負内容を提示するが構わないな?」
「無効だ無効! こんな卑怯な手段で勝負に勝って、お前は男として恥ずかしくないのか!!」
「ない! 我が心に一点の曇りなし! 俺はルールに乗っ取り正当に勝負した! 明確なルールを設けず勝てる戦いと慢心するから負けたのだ! 穴だらけなルールを提示した己を恨むのだなぁ!! ハーハッハッハッハッハ!!」
「ぐ、ぐぬぬぬぬ」
「悪魔だ、悪魔が居る……」
あまりにも自信満々に言ってのける暫定卑怯者に返す言葉もなくぐぬる篠ノ之さん。一夏は高笑いを上げる俺に引いている。
例に漏れず後ろから「うわぁ……」って声が聞こえた。だが私は謝らない!!
「とまあ、ISの武器には剣の他に銃もある、ミサイルやグレネードもある。近接武器もナイフとか槍とかでかいブレード。殴る蹴る、タックルだったり投げたりもあり。一般常識じゃ測れない特殊な装備がある。基本的なルールに違反しなければ絡めて大歓迎。それがISバトルってもんだ」
「うわ、いきなり素に戻るな」
メリハリって大事だよね。
「剣だけでは勝てないのか」
「それが出来るのは織斑千冬か今の日本代表ぐらいかな」
うちの母さんも剣だけで戦えるが。あれは剣の戦いって言うには法外過ぎる。
「私が一夏に行った鍛錬は全て無駄だったということか」
「いや必要だよ。むしろ必須と言っていい」
「どういうことだ」
「一夏の専用機は高機動近接型で武器は刀なんだってさ」
「え、そうなのか?」
「……一夏、織斑先生からどんなの来るか聞いてないの?」
「えと、はい聞いてませんでしたすいません」
別に謝らなくていいけども。
あれか、箒との鍛錬と日中の授業についていくだけで頭いっぱいになってた感じか。
「ISにはイメージ・インターフェース、操縦者のイメージを直接ISの動きに連動されるシステムが搭載されている。一夏が剣の扱いをISに反映できたら、間違いなく武器になる。俺がISを教えるから、篠ノ之さんには引き続き剣の鍛錬をお願いしたいんだ」
「お前は。私から一夏を取り上げるんじゃなかったのか?」
「教えるのは上手いとは言ったよ。ISのことだけど」
「……お前言葉遊びが過ぎるんじゃないか?」
「ありがとう。実際勝負しろって言ってくれたでしょ?」
「全てお前の手のひらの上ってことか。くっ、情けない」
思った以上に精神的ダメージが出てる。ちょっと反省、後悔はしない。
「えーっと。つまりどうなったんだ?」
「剣道の鍛錬は継続。終わったあとにISの勉強だな」
「うげ! 前よりハードじゃないか!! 剣道で満身創痍のあとに頭に入るかな……」
「うーん。個人的には少し余力を残してくれるとたりがたいけど……どうだろう」
「……決定権はお前にある。考えといてやる」
よし。取り敢えず目処は立ったかな。
我ながらずる賢いことこの上ない。
「今日は此処までにする。そのあとは勉強とやらをすればいい」
「わかった。俺は着替えてくるよ。今日もありがとな箒」
「れ、礼などいらん。必要だからやってるだけだ」
「それでも言わせてくれ。稽古してくれてありがとう」
「フン。さっさと行け」
一夏が奥の方に行くのを見届けたあと、ムスッとしている篠ノ之さんに近づいて耳打ちをする。
「一つ聞きたいんだけど」
「なんだ」
「篠ノ之さんって一夏のこと好きなの?」
「なあっ!!?」
おう。そんな飛びのけるぐらい驚いてくれるとは。
顔も真っ赤っ赤でございます。
「なななななな何を、何を言っている! 私がそんな、あんな幼馴染ってだけの男をすすすすすすぅ!?」
「あ、図星なんだ。篠ノ之さんって本当に分かりやすいね。正直今の反応見るまでは確定じゃなかったけど」
「カマをかけたのか!?」
「いやーここまでノリノリで乗ってくるのは中々楽しいうおっ!?」
今こそ光る俺の動体視力!
竹刀一閃が空を斬り裂き、鼻先を掠めた。
「おい待てい! いま俺丸腰だぞ!?」
「五月蝿い! 人を小馬鹿にしおって! 1回斬られろ貴様!」
「此処での怪我はお前の責任になるぞ猫騙し!!」
「ぬっ!?」
必殺猫騙し! 某ヌルフフ漫画みたいにスタンさせることは出来ないが一瞬あれば十分よお! スポーツ精神など欠片もないが非常時なので不問とする!
怯んだ隙を見逃さずまたも手首を掴んでからの足払いで転倒、竹刀も頂いておこう!
「1度ならず2度までも! お前なんか武術でも嗜んでるのか!?」
「護身術と軍隊式格闘術をそれなりに。でも今のはさっきと比べて隙だらけも隙だらけだったから。それはそれとしていきなり斬りかかるのは凶暴過ぎない?」
「お前が人をからかうからだ!」
「生身に竹刀は怪我すると思うし道場的に考えて普通に破門物だと思うの」
「ぐっ………すまない。頭に血が登ってしまった」
初日のあれも篠ノ之さんがオーバーヒートした故なのかな。それともラキスケ故のあれなのか。
「篠ノ之さんが一夏をどう思うかは一度置いとくとして。勉強会だけど、篠ノ之さんも参加しない?」
「な、何故私も」
「だって篠ノ之さんもISそこまで詳しくないでしょ?」
「そんなことはない! 私は篠ノ之束の妹だぞ! ISのことなんて一から十まで網羅してるに決まってる!!」
「では問題。ISに乗る時に着るISスーツはなんのためにあるでしょうか」
「……」
「
「…………」
「ISは世代ごとに分かれてますが何世代まであるでしょうか」
「………………第三世代」
「正解は第四世代です。まだ机上の空論で理論しか出てないけどね」
「……参りました」
篠ノ之さんの完全に戦意喪失状態に。
なんかここまでやると普通に罪悪感という申し訳なさが出てくる。
「よくもまあ『篠ノ之束の妹ですから』って自信満々に言えたよね。一夏といい勝負だ」
「これ以上私を惨めにしないでくれないか!?」
だが言いたいことは言わせてもらう。
この疾風・レーデルハイト。容赦せん!!
「恥ずかしいことじゃないって。篠ノ之さんも俺と一夏と同じ特別入学だし、分からないならこれから覚えていけばいい。それに、一夏と一緒に居れる時間減らないから篠ノ之さんも得でしょ」
「……何故そこまでする。一夏だけに教えれば良いだろう。私に気を使う必要などない」
「別に理由はない。あえて理由付けるなら、2人の間に邪魔しちゃったからお詫びみたいな感じだ」
恐らく篠ノ之さんはIS学園に入ることを望んでいなかったと思う。そんな中、幼馴染の一夏と再会できたことは予想外の喜びだった。
だからこそ余計に熱が入っちゃうしから回るし、この前の先輩や俺という邪魔者が来たら反応してしまう。それが好きな人ならなおさらだ。
俺でさえセシリアと再会して同じクラスになった時は舞い上がった。
同室になるのは想定外だったけど結果オーライとする。
「ということでどうかな篠ノ之さん。そちらにとっても、悪い話ではないと思いますが?」
「なんだその勘に障る声色と喋り方は」
「癇に障るけど仕事は確かな声色と喋り方だぜ」
「……箒だ」
「ん?」
「名前で呼べ。お前に篠ノ之と呼ばれるのはなんだかむず痒い」
「別に篠ノ之束の妹みたいな扱いはしないぞ」
「いいから呼べ。私もお前のことは疾風と呼ぶ」
「わかったよ、箒さん」
「呼び捨てでいい」
「…了解だ箒。これから宜しく」
これで篠ノ之さん、もとい箒との距離感も縮まったかな。
結果的には最上の結果だ。よかった本当に。
「言っておくが。お前のことを信用したわけじゃないからな」
「酷い! さっきのあれやこれやは謝るから許してくれない?」
「許す許さないというか、なんかお前は胡散臭い」
「えー! 心外だぞそれは!?」
「眼鏡かけてるし」
「それだと山田先生も胡散臭くなるぞ!?」
「なんだなんだどうしたんだ?」
距離感は縮まったけど警戒されてる!?
自業自得だって? はいその通りだよこんちくしょうめ!!
ーーー◇ーーー
早速トラブルがあった。
「なんで練習機の予約してなかっただァーッ!? 許さん!! コォォォォォ」
「重ね重ねすいませんでした!」
「いや私も謝ろう。だからその特殊な呼吸法はやめろ疾風」
練習機の貸し出しについて一緒に織斑先生から説明聞いてたのにスッポリと忘れてやがったのだ一夏は。篠ノ之さんも以下同文。
これでは一度も実機の練習をせずにセシリアに挑むことになる。最悪俺のレンタル権を渡そうかとも思ったが折角の数少ないIS騎乗の機会を手放すのは精神的ダメージがデカすぎてどうしたものかと思った、その時!
「おりむー。私のレンタル権あげる〜。丁度レーちんと同じアリーナと時間帯だし〜」
「「ありがとうございますのほほん様!!」」
なんとのほほんさんが手を差し伸べてくれた!
彼女は数少ないISに乗る機会を自ら手放して俺たちを助けてくれたのだ!! なんて良い人なんだのほほんさん!!
本人曰く用事が入ったからいいよ〜と言ってくれたがそれでもありがたい! お礼に少しお高めのスイーツを奢ることを対価に一夏は練習機レンタル権を獲得した。
そのあと一夏の部屋で早速勉強会。ISの動きに必要なことを重点的にレクチャーしてあげた。
一夏はやはり飲み込みがよかったが。箒は少しだけ躓いた。箒は基礎知識と参考書をサラッと読んだぐらいで1年生平均より少し下ぐらいだが、必死に食らいついた。実直で真面目、そして努力を怠らない。中々教え甲斐がある生徒だ。
そんな箒に一夏はマジか箒って目で見て鳩尾を小突かれて悶絶した。
「さあ来ましたよ! 待ちに待ったISを動かせる日が!!」
「テンション高いな」
「何言ってんのさ! 専用機がない間は週に1回乗れればマシなんだから! 一夏はもうすぐ専用機来るんだろ? いいなー、いいなー!!」
「わかったわかった。時間ないんだから早く行こうぜ」
練習機をレンタルする方法は簡単。
事前に予約した練習機用ISの前にあるコンソールに学生証をタッチ、パスワードを入力してISのロックを外す。するとISが自動で操縦者受け入れ体勢を取る。
「足入れたあとに背中を預けたら自動的に装着されるからな、そう上手い上手い」
「ん?」
「どうした?」
「なんか初めて動かした時の電撃みたいな感覚がない。いやなんでもない、気のせいだろ」
「なんかあったら直ぐに言えよ」
一夏に続く形でISを着込む。
俺と一夏のISは打鉄だ。ラファールよりも動かしやすいからこれでよかった。
動きも問題なし、このままゲートからアリーナに飛び込んだ。
「うん、ちゃんと姿勢制御は出来てるな」
「おう。なんか変な感じだな。空中に居るのに地面に立ってるような安心感がある」
「IS側からそういう不快感とかそういうのを抑制してるからな。急降下しても胸がヒュってなる感じもしないし。超スピードでもGを感じにくくなる」
だから他の兵器と比べて操縦者の負担が本当に軽いのだ。
そして操作何度も低い。まさに理想的なパワードスーツの体現と言えるだろう。
「いまISはセミオートに設定されている。イメージがISを動かすからとにかくこう動きたい、身体の延長線上に動かすとイメージするんだ。操縦桿とフットペダルはあるけど。マニュアルじゃないから今は意識しなくてもいい」
「イメージ、イメージな」
「先ずは飛行だ。これがなければ何も出来ないからな。よっと」
スラスターに火を入れて上昇、アリーナシールドギリギリの高度まで一気に上昇する。
「おー」
「さ、此処まで来てみてくれ!」
「わかった」
一夏も上昇、してみるが動きが遅い。
「なんか疾風より遅いな! 自分の前方に角錐を展開させるイメージだっけか! やってるけどよくわからん!」
「あれは飽くまで力学的なイメージの例だから忘れていい! 背中にスラスターがあるからそこに力を込めて……そうだな、足に力を入れて思いっきりジャンプする勢いで来い!」
「疾風のところまでジャンプ……せー、のっ! うおーー!?」
ギュン! 俺の打鉄よりも全力のブーストで一夏の打鉄がこっちに来た!
このままでは天井のシールドにぶつかる!
「ストップ! 停止、ブレーキブレーキ!!」
「ぐっ! おお、止まった。思ったより敏感なんだな」
「ISって凄いでしょ。これでも高機動型ISと比べたら遅いんだよ」
「つまり俺の専用機はこれより早いのか。しかし翼っぽい翼もないのによく飛べるよな」
打鉄のアンロックユニットは肩の鎧のようなシールドユニット。背中にスラスターパーツはあるが、これだけで飛んでるわけではない。
そこらへんは難しい解釈や理論が出てくるが今は後回し。
「次はアリーナをぐるっとまわるぞ。俺のあとについてきてくれ。さっきみたいに全力じゃなくていいからな。イメージはグライダー、は乗ったことある?」
「ないけど滑空って感じだな。やってみよう」
機体を倒しながらアリーナ外周を飛ぶ、一夏も勘を掴んだのか問題なくついてきた。
アリーナを3周。そのあとは軽く鬼ごっこみたいに飛び回る。
「あっ! ちょっと待て! なんでそんな自在に飛べるんだよ!?」
「イメージだよイメージ! とにかくそこに行きたい、こう動くって常に頭に浮かべるんだ! はい鬼さんこちら! 手の鳴る方へ!」
「絶対追いついてやる!」
急上昇、かと思えば急降下。止まったと思えば急角度で逃げおおせたり。急にトリプルアクセルを決めたり、逆さ状態のままフヨフヨと飛び回って一夏を怖がらせました。
「いや自由過ぎるだろ!」
「ISは自由だぞ。これぐらい自在に動くから通常機動は慣れれば簡単に出来る」
「出来る人の簡単ほど信頼できるものはないな。本当に俺と同じぐらいしか乗ってないのか?」
「……実は入学するまで毎日レーデルハイト工業にあるISに乗って遊んでた」
「うわズリい!!」
失敬な。何がズルいんだ。
実家がIS企業で動かせる環境にあるのが悪いんだ。俺は悪くない……ていうか専用機来るまで休みに通えばいいんじゃないか? うわ何故気づけなかったんだ!!
「じゃあ次は武器を出してみようか。ホロウィンドウの装備一覧を出してみて。何がある」
「えーっと、近接ブレード【葵】とアサルトライフル【焔備】だな」
「最初はブレードを出そうか。頭の中でイメージしたら量子変換でコールされる」
「何もないとこから出てくるなんてイメージしたことないぞ」
「最初は時間かかってもいいよ。さ、やってみて」
手を突きだして目を閉じる。
むむむと唸りながらイメージをひねり出す。右手に量子の光が集まるがなかなか形にはならない。
「やっぱむずい……」
「今から出す武器はどんなものだ? ブレードは何をして、何が出来る?」
「手に持って、斬ることが出来る」
「形はどんな感じ? 剣と言えば何を思い浮かべる。それをイメージして外に出せ」
「硬くて、真っすぐで、鋭い。強い、武器だ!」
光が急速に集まり大太刀のような近接ブレード、葵が一夏の手に収まった。
「やった、出来た!」
「今の感覚を忘れないで。慣れれば難しいことを考えずにこの武器を出したいってなるから。こんな風にね」
手にイメージを集めてコール。
先ほど出した一夏のように光が集まるのではなく。最初から光がブレードの形を作り、フィルムが剥がれるように近接ブレードが出てきた。
「はやっ!」
「いや遅い方だよ。理想としては0.5秒で出せるようにしないと」
「1秒もかからないのか……」
「ISの戦闘は速いからね。さっ、次は剣を振るってみよう。思いっきり来て良いよ。ISにはシールドバリアがあるから、多少のことじゃ人間は傷つかない」
「その安全性がISをスポーツたらしめる所以、だったよな」
おー、教科書にないことなのによく覚えてたな。
優秀な生徒で先生は嬉しいよ。
一夏が正眼の構えでブレードを構える。
うん、やっぱり立ち振る舞いが様になるな。打鉄が鎧武者みたいなISだからなおのことカッコいい。
「行くぞ」
「かかってきなさい」
「……せい!」
上段から一閃! ブレードを横にして受け止めて離れる。
そのまま右、左とブレードを振りながら連撃を決めてくる。先ほどの飛行操作とは違い迷いなく剣を振るえている。
バックステップで距離を離すと、一夏は自然な動作でブーストを使って距離を詰めてきた。
「良いね良いね! さっきより動き良いよ! じゃあそろそろ反撃しようかな!」
「うおっ!」
ハイジャンプでブレードを振り下ろし、突きの連撃。回り込んで慣性のまま一撃、ISごと回転してコマのように斬り刻む!
「いきなりテクニシャン過ぎる!」
「正攻法で勝てなさそうだからな! と思ったら真正面!」
「やらせるか!」
ギャリン! 金属同士がこすれ合い、火花が散る。
力は互角。鍔迫り合いの向こうで、お互いの目に自分の顔が映る。
「いいねぇ」
「ああ、疾風がハマるのもわかる気がするぜ!」
「っ!」
鍔迫り合いがズラされ、こっちの剣が上に逸らされた。
そのままガラ空きの胴に一閃。ヘックス状のシールドバリアが発動し、シールドが削られた。
「お見事! イメージがしっかり機体に反映されてたな!」
やはり箒との特訓は最適だった。剣を動かすイメージは幼少の頃から培われている。埋もれてしまった経験を箒が掘り起こしてくれた。少々スパルタがアレだったけど。
とにもかくにも、そのイメージのまま一夏は打鉄を操作できていた。
「次は空中で剣戟だ! 好きに動くから追ってきて斬ってこい!」
「よーし!」
一夏はいまノリに乗ってきている。この勢いは大事にしたい。
吸収力がいいならここで色々叩き込む!
「さあ斬ってこい!」
「行くぜ疾風!」
上昇した俺に向かって一夏が下から切り上げてくる。こっちもブレードを構えて迎撃……
タンッ!
「なっ!」
「うわっ!」
俺と一夏の間に2発の銃弾が通った。
なんだ、流れ弾か? それにしては狙いが。
「あら、羽虫かと思ったら男だったわ」
「なに?」
嘲るような声色で現れたのはラファール・リヴァイヴを纏う3人の女子だった。偉そうな女子が真ん中に、サイドのラファールが持つライフルから煙が出てるあたり撃ったのは取り巻きか。
てかいま羽虫って言った?
「いきなり撃ってくるなんて、マナーがなってないんじゃないですかね。てかあんたら誰」
「男なんかに名乗る名は……」
「あーいい、今出てきたわ」
真ん中の偉そうな女の名前は安城敬華、1年生。サイドは、おいおい3年生かよ。
「いまのは誤射か? 誤射なら気をつけてくれで済みますけども」
「どちらでも取っていいわ。あなた達はこれから地べたに這いつくばるのだから」
「俺たちなんか悪いことしましたかね」
「悪いこと? 男のくせにISを動かす以上に愚かなことがこの世にあるとでも言うのかしら」
「出会い頭に差別発言ぶちかますトリガーハッピーのオツムよりは賢いつもりだけど?」
あ、3人の目線が鋭くなった。沸点低いなー。
てかこいつら確定だな。女尊男卑主義者だ。おいおいIS学園にこんな低能な奴が入学出来たってマジ?
「そもそもなんで織斑一夏が此処にいるのかしら。疾風・レーデルハイトしかいないと思ったのに。誰かからレンタル権を奪ったのんでしょ」
「これはちゃんと譲ってもらったんだ。卑怯なことなんてしてない」
「そうやって嘘をついてもバレバレなのよ。強引に脅して奪った? それとも人気なのを良いことにいやらしい手でも使ったのかしら?」
「そんなことしてねえ! さっきから勝手なことばっか言いやがって!」
「やめとけ一夏。こいつらは会話なんかしてない」
そもそも相互理解なんて言葉すら頭にない連中だ。
「悪いがこっちは取り込み中なんだ。そういうのはクラス対抗戦でやれよ。そんな偉ぶってるんなら当然クラス代表なんだろ?」
「………」
「あれ違うの? あっ、4組のクラス代表は更識さんって人だったか。これは失敬した。もはや時代遅れ希少種な純正ミサンドリーがクラスから支持されるわけないもんな。猿でもわかることだよな!」
「ギリッ!」
あ、歯ぎしり。
流石IS、集音性能もピッタリでございますな。
「どうやら、身の程とやらが理解できないようね」
「でけー言葉しか使えねえボキャ貧よりは上ってのはわかるな」
「ゴミみたいに増え肥えた男が偉そうに! 私たちはISを動かすことを許された選ばれた人種なのよ!!」
「世界に二人しかいない男性操縦者の方が貴重だと思うんだが」
「おっ、一夏鋭いね」
「貴様ぁっ!!」
おっーとこれにはぐうの音も出なーい。これは面白い、写真撮ってばら撒こうかな。
やっぱキレてる一夏は言動もキレッキレだな。嫌いじゃない。
『一夏、聞こえる?』
「うおっ、頭の中に声が」
『プライベート・チャネルって奴だ。想定外のレッスンだが、多体一戦闘は対セシリア戦において役に立つ』
『セシリアのIS、ブルー・ティアーズの第三世代兵装だっけ』
ブルー・ティアーズの第三世代兵装、それは自立稼働兵器。
ビットやファンネルのような移動砲台、てかそのもの。数ある第三世代でも最先端の最先端を行くSF技術の集大成だ。
『取り敢えず事実だけ言う。俺たちは勝てない』
『ええ!? そんなやる前から弱気なことを言うのか!?』
『相手3年生2人もいるんだぞ。たとえ専用機持っても怪しいよ。確実に勝つために安城は3年生連れてきたんだよ』
『汚えな……勝てないと分かってあんなに煽ったの?』
『ああいうの見ると天狗鼻へし折って今どんな気持ち? 今どんな気持ちする衝動が抑えられなくて』
ええ……って引いてるけどお前も煽ったんだから運命共同体だぞ一夏。
『話戻すけど。奴ら、というより安城は合法だがチキンな戦法を取った。奴らの目的は女に負ける男を演出すること。だから3年生は極力無視して安城をボコるぞ。奴を倒せれば俺たちの勝ち、奴の面目は丸潰れだ。打鉄には肩のシールドがある、上手くやれよ』
『……わかった。それで行こう』
『気楽に行こうぜ。ここで負けても俺たちに失うものなんてないさ』
女子連中から評価は下がるだろうけど些事だな。
逆に今は騒がしすぎるから落ち着いてくれるのは俺たちにとってはありがたいかもな。
「んじゃやろうか! 3年生の力を借りなきゃ勝負出来ない臆病リーダーさん!!」
「はあ!? ぶっ殺してやる!!」
駄目だね! ぶっ殺すと決めたならその時に行動終えてなきゃなあ!!
敵チーム散開、クロスファイアを仕掛けてくる。
だがこっちが狙うは安城一点のみ! 開幕イグニッション……
「お待ちなさい!」
「「っ!?」」
双方の間を斬り裂く4本の光条。
青白いレーザー、訓練機の武器が出せる代物ではない。それが出来るのはただ一人。
「セシリア!?」
「この馬鹿疾風! なに正面切ってやろうとしてるのです!」
ブルー・ティアーズ。イギリス第三世代ISを駆るはセシリア・オルコット。
蒼の機体にブロンドヘアーの金色が映えるその姿は正に戦乙女と呼ぶに相応しい美しさを放っていた。
「新入生2人に対して上級生を連れて一方的に痛めつけようなどと、恥ずかしくないのですか安城さん」
「オイコラー! 一方的ってまだ始まってもねえよ! こっからあのプライドだけが取り柄のクラス代表にもならねえ味噌っかす女のプライドをバキバキにへし折るんだよ! 邪魔するなセシリアぬおっほー!?」
「こじれるから貴方はいま喋らないで!」
こいつレーザー撃ちやがった! 肩の盾狙ってだけど!
だがこの程度で黙るとはって今度は胴体狙ってきた!
「セシリア・オルコット……なんであなたが邪魔をするのよ! あなたも彼らをよく思ってないはずでしょう!?」
「なにやら勘違いしてるみたいですが。わたくしがよく思っていないのは織斑一夏だけです、今のところは。それに、わたくしとあなたの卑怯なやり方とはなんの関係もありませんわ」
「フランチェスカ・ルクナバルトの姪であるあなたが男を庇うというの!?」
「わたくしはわたくしです。わたくしは自分の信念の元に行動しております。そこに叔母様の意思は関係ありませんわ!」
おーおーカッコいいなセシリア。
そして安城某はしてやられ顔。ごちそうさまです。
「それにこの場で疾風たちを負かしたとしても、評価が下がるのはあなたがたではなくて? こんなにギャラリーが多いようでは噂は瞬く間に広がることでしょう、悪い意味でも」
現在アリーナには結構な人が来ている。ほぼ俺ら目当てでだ。
練習機は誰がどの機体を使うかは調べれば簡単にわかる。目の前の3人やセシリアも俺が此処に居るのは知っていただろう。
「もしどうしてもやるとおっしゃるなら、彼らにはわたくしがつきますわ。このイギリス代表候補生、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズが!」
セシリアのISのウィングについたフィン状の機動砲台がアクティブ。
既に戦闘出力で何時でも発砲出来る状態だ。
一夏もブレードを構え直し、俺もライフルを左手にコール。
一触即発、収まった戦闘の空気が更に濃密に張り詰める。
「……やめた。興冷めも良いところだわ。命拾いしたわねゴミクズども」
「自己紹介どうも」
「命拾いはどっちだろうな」
「っ! 女に守られるなんて、情けない奴!」
お約束な捨て台詞を吐き、取り巻きを引き連れて安城はアリーナから出て行った。
落ち着いたように装っているが、機体の挙動が何処か覚束ない。普通にビビってるなアレ、ウケる。
貴重なISレンタル権使ってまで嫌がらせとは、暇な奴らだ。いや普通に迷惑だ。
「一応ありがとうを言っておこうか、オルコット」
「必要ありませんわ。別にあなたの為に来たわけではありませんので」
「俺の為にわざわざご足労頂きありがとうございます」
「半分はあなたがやらかさないか心配だったからですわよ。そもそも一夏さん、あなたが何故練習機を? レンタルしてませんでしたわよね?」
「のほほんさん、布仏さんが譲ってくれたんだよ。勝手に取ったわけじゃねえ」
「別にそこは疑ってませんわ。ですが安心しました。ろくに練習もしないことを負けた言い訳にされては堪りませんもの」
「言ってろ。試合に勝つのは俺だ」
「フフッ。残り少ない期日、しっかり励みなさいな」
用が済んだとセシリアも踵を返す。
その立ち振る舞い一つ一つに所作があり、同じ女性でありながら安城とは何もかも格が違った。
「どうよ。俺の幼馴染良い女でしょ」
「お前レーザー2回も食らってたじゃないか」
あれはじゃれつきみたいなんもんだ。
英国ジョーク英国ジョーク。
「無駄な時間過ごしちまった! 続きやるぞ続き! 対射撃戦の練習だ。来い一夏!」
「ああ!」
ーーー◇ーーー
「まさか一夏の専用機が試合当日まで来ないとは。てかまだ来てねえよ納期どうなってんだ納期ぃ!!」
「落ち着け疾風、なんでお前のほうが怒ってるんだ」
「そして怒りながら凄い勢いで何かを打ち込んでいる。器用だなお前」
前述の通り一夏の専用機がまだ来ていない。
対戦相手のセシリアは既にアリーナに待機している。そんな中俺は打鉄に乗った状態でギリギリまでプログラムやOSを煮詰めている。
練習機だからフォーマットとフィッティングも出来ねえからな! 苦肉の策だオラァ!!
「ところでお前の打鉄変なの付いてないか?」
「変なの言うな。これは打鉄専用高機動パッケージの鉄風だ。パッケージは分かるよな?」
「ISの追加装備だろ? 専用機のは更に特化されたもので……オートミールだったか」
「違うぞ一夏、オートクレールだ」
「オートクチュールな」
一夏だと飯で箒だと剣になっちまう。
まだまだ教え甲斐があるぜ、楽しいね。
「お、織斑くん織斑くん織斑くん!!」
慌てようが実に様になっているのは我らが副担任山田真耶先生だ。
もうなんか転びそうというか何故転ばないのかわからない慌てっぷりで、ついでにグレートバレーが凄い勢いで揺れている。ごちそうさまです。
「山田先生落ち着いてください。深呼吸深呼吸」
「は、はい! すーーはーー」
「はいそこで止めて」
「むぐっ!」
「いや止めるな止めるな。山田先生も馬鹿正直に従わないで下さい」
「プハッ。織斑くん酷いです! 教師をからかって!」
「すいません、つい」
「ついで教師を弄ぶなアホ」
スパァン! 今日も快音が響いております。
そして例のごとくお姉さん呼びして再びスパァン! いい加減慣れなさいよ弟。
「いてぇ……木魚みたいに弟の頭をポンポンと。そんなんだから嫁の貰い手がないんだよ」
「フン。人に言う前に自分の相手を見つけることだな。そしたら考えてやる」
「だってよ箒。頑張れ!」
「余計なお世話だバカモン!」
「なんで箒が頑張るんだ? 結婚するのか?」
「セイッ!」
「ごふぉ!!」
箒の拳が鳩尾にめり込んだ
余談だが一夏はどうしようもないほどの朴念仁でした、マル。
「だ、大丈夫ですか織斑くん!」
「大丈夫です。それで山田先生、御用は」
「そ、それでですね! 来ました! 織斑くんの専用機が!」
「え、来たんですか! 間に合った!」
「はい! こちらです!」
案内されたのは搬入口。丁度来たのか、ガコンと言う音ととも重厚なドアが開く。
「これが……」
「はい! 織斑くんの専用IS【白式】です!」
そこにあったのは、白より眩い銀の鎧。
日本製だからか打鉄の意匠が、いやどちらかというとフォルムは日本国家代表の白鉄に近い。
量産型ではない世界に一つだけ、織斑一夏の為に作られた467機のうちの一つ。
「ボサッとするな、さっさと乗り込め」
「は、はい」
導かれるように白式に乗り込む一夏。
腕と足がロックされ、胸アーマーが装着。圧縮空気が抜かれる。一夏の眼前にホロウィンドウが表示、アンロックユニットである一対の翼が本体から離れ宙を浮く。
「どうだ一夏、気分は悪くないか?」
「大丈夫だ千冬姉、問題ない。よろしくな、白式」
何気に織斑先生が一夏を名前で呼び、そんな一夏の呼び名に珍しくツッコミを入れていない。
今この瞬間だけ教師と生徒ではなく、単なる姉弟としての空気がそこにあった。
「一夏、フィッティングはどうだ。終わりそう?」
「いや、凄い遅い。とてもじゃないが間に合わないな」
「了解。じゃあ予定通り俺が先だな。ファーストシフトしてない状態でセシリアに挑むなんて自殺行為だからな」
ウェポンコンテナに立てかけてある焔備を2丁手に取り、アリーナゲートに向かう。
「一夏、俺の動きは見なくていい。セシリアの動きを頭に叩き込んどけ」
「わかった……疾風」
「ん?」
「勝てよ」
「当然!」
軽い足取りでゲートカタパルトに踏み込む。
電磁レール正常、ゲートオープン。システムオールグリーン。
「しゃあ! 疾風・レーデルハイト! 打鉄鉄風、出るぞっ!!」
カタパルト始動! 軽いGを直ぐ様ISが補正し、鈍色の体躯がアリーナに向けて弾き出された。
アリーナに出て目に入ったのは蒼。
幼馴染にしてライバルが駆るイギリスの最新鋭機、ブルー・ティアーズ。
手にはレーザーライフル、スターライトMkⅢが握られている。
「時間ギリギリですわよ。女性を待たせるのは褒められたものではありませんね」
「一夏の専用機が丁度来てな、ギリギリまで引き延ばしたのはすまないと思ってる」
「あなたが先に来たのはフィッティングまでの時間稼ぎかしら?」
「それもある。けど本命はお前のファーストバトルを譲るわけには行けないって思ったのさ。練習機じゃ約不足だろうが。お相手願いますかな、マドモアゼル」
「いいでしょう。わたくしの初陣を飾ることを許可致しますわ」
ブルー・ティアーズに乗るセシリアに、インフィニット・ストラトスに乗って相対している。
ああ、最高の日だな。俺はこの日を生涯忘れることはないだろう。
「戦意充分、と言ったところですわね」
「ああ。楽しもうぜセシリアッ! 俺の初白星を飾らせてもらう!!」
「望むところですわ疾風! 完膚なきまでに勝利して見せましょう!!」
試合開始のゴングが鳴る。
スターライトMkⅢのレーザーと焔備の実弾が交差する。
夢の続きが始まる。
全てを追い越す速度を持って。
IS二次で一夏に打鉄乗せるって無くない?少なくとも見たことない。どうも、新境地を開拓したかもしれない。作者のブレイブです。
いや実際そんなことないでしょうけどね。どんだけあると思ってんのよIS二次創作。ざっと百人はいるって一夏打鉄。
はい、スカイブルー・イーグルはお預けです。なので打鉄でバトルオン!打鉄も名機だぜ、ていうかセシリア戦で専用機じゃないのも珍しいよな。そもそも打鉄事態出番があまりない、ラファールもだけど。
そしてなんか懐かしいような懐かしくないような安城さん登場。多分もうでないでしょう、忘れてください。
今回のお話がよかったら高評価!コメントを宜しくです!
次回疾風VSセシリアIF戦、お楽しみに!