戦場黙示録 カイジ 〜 ザ・グレート・ウォー 〜   作:リースリット・ノエル

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第10話 ターニャの憂鬱

彼は現代日本を生きるサラリーマンだった。

 

会社のため、ひいては自分のため人の首を切るのが主な仕事。

 

誰もが嫌がり、煙たがる人事整理の業務を彼は、職責に忠実かつ極めて冷酷に社員を選別していった。

 

「リストラは面倒だ。だが仕事はきっちりとやる」

 

「それが自分の様な凡人には合理的かつ功利的だ。」

 

彼は自身の評価には辛辣かつネガティブであった。

 

先鋭なる天才達には比肩できす

努力で秀才達には敵わず

 

性格は歪み、コンプレックスの塊の様な人間であると自身を評している。

 

自分の能力には限界があり、やれる事も限りある事を自覚しながら本当に優秀な成功者たちと比べ劣等感に駆られる。

 

立つ土俵が違うのに、比べようとする自分の愚かさに嫌悪する。

 

それでありながら自分より能力に劣る他者を見下し、軽蔑し、高慢な虚勢とプライドを張る。

 

自分より立場が弱い者、出来が悪いものを物差しで比べ、あくまで自分は下ではなく上であると言い聞かせ、愚劣な優越感に浸る。

 

自己慢心的な現実の偽装。

所詮はどんぐりの背比べである事を自覚していながらである。

 

なんと曲がりくねった人間だろうか。

 

そんな彼でも日本橋で居を構える財閥系大企業でエリートの道を歩めたのは、彼が少年期に見つけ出した社会の法則とある「思想」の出会いがあった。

 

幼き頃に自分は凡人であると悟った彼は生きる上で必要な事は何かを考え、一つの結論を出す。

 

それは、ルールを守ること。

 

どんなに社会、組織の環境が変わってもルールが規定され、誰もがルールに従い、ルールの穴を探り、ルールを嗤いながらも人はルールに束縛される。

 

ルールに束縛され続けるのは嫌いだが、逆にルール無き自由を望むかと言えば答えはノーである。

 

無制限の自由に秩序は産まれず、暴力と破壊が渦巻き、そこに発展はない。

 

あるのは、野蛮さを剥き出しにした原始世界。

 

何も創れず、ただあるものを奪いあうのみの動物的弱肉強食。

 

結果、ルールとは今生きる文明社会システムの円滑化に不可欠な存在だということを学び、そこに恭順する。

 

両親に心配を掛けず、寧ろ期待させ

社会に認められ評価されるには、社会規範を重んじる「ルールを守る良い人間」を演じる事が重要であると。

 

その認識に拍車を掛けたのは、市場原理主義を標榜する「シカゴ学派」との出会い。

 

ルールと自由の関係性に「合理性」を持ち込んだ思想との接触は、彼を狂喜させ、学派の信奉者たる道を選ぶ。

 

彼に育まれたのは極端なまでに合理性を求める効率主義者で、文明人の自由主義者で個人主義者。

 

ルールを守り続ければ、レールに乗り続けることは出来る。

 

彼は順風満帆の人生を実現すべく、ルールに従いながら確実に実績を積み上げていく。

 

正当な労働対価が支払われる限り、職務内容は問題ではない。

 

一個の社会の歯車として、限りなく企業の倫理に従い、率先して利益を追求する。

 

企業論理の徒として生きるのが、彼にとって自分の器にあった最良の道であり合理的経済活動だった。

 

会社では効率的に仕事を捌き、掛け替えない余暇の時間では趣味の世界に浸り込む日々を過ごしていく。

 

自分にとって社会的意義と向上心を見出せる職場は、最高のマイルストーン。

 

趣味では、好みの分野で異様な知識欲を飽食し続ける。

 

限りない世界の広がりと数多に浮かぶ妄想を形にする作業は至福であり、現実の束縛感から解放される心のフロンティア。

 

2つの世界を行きしながら、彼にとって穏やかで充実した毎日が過ぎていく。

 

そして、企業への忠誠心と上司への忠実さを

評価され、昇進を重ね続ける。

 

30代に入る頃には人事部の課長となっていた。

 

引き続き会社と上司に忠節を尽くせば、既に築かれた部長というレールに乗り継ぐ事ができるだろう。

 

計画的に会社の地位は上がり、彼の労働対価はさらに飛躍する。

 

尊敬する両親との年収を追い抜くのは時間の問題。

 

会社からは引き続き本社で勤務でき、年間功労賞の受賞数をまた1つ更新できる。

 

期待と安心を顔に滲ませる部長との握手。

拍手をしながら賞賛とエールを送る有能な部下達。

昇進の話をきき、顔を綻ばせ喜ぶ両親。

 

人生は、ますます順風満帆だった。

 

 

 

そのはずだった…

 

1人の無能をリストラしたあの日までは…

 

 

 

 

 

きっかけは北の雪国が始めた帝国に対する領土侵犯。

 

早く終わるはずだった小さな戦争。

 

だけど…北との小さな戦争がきっかけで、西の共和国の大攻勢が始まって、戦争が大きくなる。

 

広いラインの空の下に、幾千、幾万、幾十万の兵士達がいて

 

いろんな兵士達が、願いや想いを抱きながらそれぞれの国のために戦って死んでゆく

 

始まる消耗戦、積み上がる膨大な犠牲。

 

だけどそれぞれの国は、信じた想いが強すぎて、譲れなくなって

 

とめられなくなった想いが、ぶつかり合う

 

だってやるなら今しかなかったから

 

そして、どんなに人が死んでも、終わらない

 

どちらかが勝つまでは、決して

 

これから始まるのは、因縁深い2つの国が引けに引けなくなった戦争のお話。

 

航空魔導士リリカル・ターニャ、始まります!

 

やぁ、少し変わった挨拶だったかな?

 

どんなに綺麗に晴れたラインの青空でも陰鬱で、クソッタレな戦場に変わりはない。

 

そもそも、か弱き幼女をいと簡単に戦場に送り出すことが自体が間違っているのだ。

 

まだ、9歳だぞ?そう9歳だ!

 

アフリカの非道な反政府組織や中東で跋扈するテロ連合軍などの非正規武装組織ならいざ知らず、れっきとした正規軍がまだ9歳の幼女に「職務の遂行」を発動している。

 

他国軍なら発動に躊躇する。

いや、そもそも無垢な子供を兵士にしかも魔導師に選抜する事はしないのだ。

 

しかし、我が帝国は「各軍の入隊に際し適正能力あれば人種、地位、性別、そして年齢は関係ない。」と帝国軍法に明記されている。

 

さらに「魔導師として適正あると判断されたものは、これを徴集可能とし対象者は例外なく航空魔導兵士教育を施す国家義務が発生する。」とある。

 

つまり、魔導師として基準に満たす適正があれば子供でさえ、合法的に軍人として半ば強制的に戦力化されるという訳だ。

 

ちなみに魔導師としての適正検査は1年に2回、健康診断と並行され実施される。

対象は全国民。必ず施行される。

逃げようがない。

 

こんな現実は中々、受け入れがたい。

受け入れがたいが軍事国家たる帝国では平然とこのシステムが運用されている。

驚くほど、普通に。

誰か非難しろよ、叫べよと思う。

軍事統制国家なのに、なんで軍の入隊条件は極端にリベラルな方針なのかと。

せめて子供は選抜対象外にしろよと。

 

だが帝国は、子供であっても軍人として扱えるならば、関係ないという上、「見た目は子供だが、初級軍事訓練を修了したならば、それは大人と同等の扱いである。子供ではない。」という理屈を導き出すから素晴らしい。

 

だから魔導師として比較的高ランクの適正結果を引き出した私は逃れようなく軍に入隊せざる終えなかった。

 

だが逆に入隊拒否を出来たとしても将来の生活を勘案すれば、結果的に入隊を選ばなければならない。選択肢は始めからなかった。

 

何故か?

帝国は貧困が蔓延する新興国家だからだ。

軍事力は強大だが民間経済面は、芳しくはない。

 

それなりの社会保障制度があるのが救いだが、貧困層は困窮する生活を毎日過ごし活路を見出す希望が見えない現状がこの国にはある。

 

特に私がこの世界で明確に意識を持ち、知覚した時に見た現実は最悪のスタートだった。

 

孤児だった。修道院の慈悲活動のおかげで衣食住は最低限、保障はされていた。

だが、それも長くは続かない。

修道院も僅かな募金を元に運営していたから、増え続ける孤児達の生活を見続けるには

限界がある。

 

そもそも将来を築くための教育を受けられない。我が祖国、日本のように義務教育が徹底されていない。

 

それに孤児という捨てゴミの存在ではお先は真っ暗、確実である。

 

そんな社会環境の中だ。

教育を受けられ、衣食住が保障され、給料も貰え、幾つかの税金は免除され、能力あれば相応の地位につける軍に入隊するのはやむなしだった。

 

だがこの世界で生きる上では恩恵は多く受けているから、判断は間違いではなかった。

 

しかし軍人になったならば、職務遂行・義務の履行が必然と発生する。

 

24時間365日、命令あれば即参集。

 

起こる事態に即応し国家の尖兵として銃を持ち出撃せねばならない。

 

帝国軍人になった瞬間、自らの体、命は帝国所有財産となるから拒めはしない。

 

しかも魔導師になったのなら尚更である。

 

だから私は今、ラインの空を飛んでいる。

最前線だ。最悪である。

 

 

だから少しは憂鬱な気分をライトな形に切り替えようかと思ってな。

ふわっとしたあらすじを述べて見たんだがどうかな諸君。

 

元は大学受験に忙殺されていた学生の頃に見たとある魔法少女アニメの走り書きだ。

 

そうそう、全国の女の子ではなく、大きい男の子を魅了した大人気アニメだ。

 

私もハマった、ハマりにハマって一時期は同人誌でも出そうかと思ったほどだ。

 

実際出した。大学の時にいたサークルと協力してな。あれはやり過ぎたかもしれないが、やり切った感があるから後悔はしていない。

 

どんなものを出したって?

それは特定機密事項 第Ⅲ項に批准するから公開は出来ない。

 

時と条件を満たせば、いずれ明らかになる事もあるだろう。

 

とまぁ、偏屈な私でさえどっぷり浸かる面白さがこの作品にはあった。

 

今までの魔法少女に対する概念が大きく変わり…新しい路線を確立したアニメの1つだと言っても過言ではない。

 

いや改悪されたと言ってもいいだろうな。

 

友達になりたいと願う少女とお母さんに認められたいと願う少女の間で生起するガチバトルは非常に破壊的かつ、強引だ。

 

わからないならば、わからせてやると言わんばかりに放たれる砲撃魔法による広範囲制圧術式のシーンは圧巻だ。

威力は戦術核とほぼ変わらない。

 

なんせ軽く一つの町を消し飛ばせる程の威力なのだから。

そのシーンを見た時は、「魔法少女とは?」と首を傾げたよ。

 

純真な魔法少女という皮を被った人型大量破壊兵器の登場は、斬新であるのは事実だったが…

 

いやはや、話が逸れて申し訳ない。

たまには過去の話をしたくなるものだ。

 

人間、辛くて過酷な環境に置かれると楽しく充実していた過去の記憶を思い出す傾向にありがちだ。

 

大体、補正がかかり美化されているのは内緒だ。

 

それ以上にあの頃の世界に帰りたいなぁ…という気持ちの表れでもある。

 

実際、帰りたい。

だが物理的に不可能だ。やむ終えない。

 

時間は巻き戻せはしない。

それはわかっている。

 

だが、あの頃に見た作品はDVDやネット配信の動画で見ることは出来る。

 

しかし、それも出来ない。叶わない。

 

それは何故か?

ここが現実と似て異なる異世界であり、私は転生者であるからだ。

 

何故、転生したのかって?

色々経緯があるのだが、非常に胸糞悪くなる事だから仕事が落ち着いたら話しておこう。

 

とはいえ、いつ仕事が落ちつくのかは未定だ。

 

空を翔けめぐりながら、眼下の地上世界を見ればわかる。

 

いくつもの師団が、集団となり前進を続ける

 

我が帝国領内に軍靴と戦車のエンジン音を轟かせながら、公然と侵略中だ。

 

フランソワ共和国の大攻勢だ。

全国境線から同時に雪崩れ込んできて、帝国は押されに押されジリ貧の状態だ。

 

かく言う「戦線は逼迫し、予断は許さない状態」とはこの事を指す。間違いない。

 

こんな状況だ。

こんな私でさえ、駆り出されるのはやむ終えないとも言える。

ガキの手でも借りたいのだ。

そこまで追い込まれている現状がここにある。

 

まるで大戦末期のドイツ軍か、大戦初期のソ連軍みたいな状態か。

 

とにかく給料分の仕事をしなければ、労働対価に準じた働きを示さねば、シビアな評価で有名な帝国軍という企業では生き残れない。

 

一抹の不安があるが、目の前の仕事を効率的かつ労力は最小限に行わなければならない。

 

さぁ…行こう、明日に繋がる出世のために戦功を上げ、いずれは後方勤務という安寧のイスを手に入れるために

 





ようやく、ターニャ登場!
ただそれだけ、なのだが…
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