戦場黙示録 カイジ   作:リースリット・ノエル
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第13話 意見具申

「…?…了解した。しばし待たれたい。」

 

管制官は、少々戸惑いつつもターニャが求める情報を提示する。

 

「ベーガル05…よ…ホークアイ03。コルマール管区…は第169歩…師団の第230…兵連隊が展開中…装備火器…ついては…10.5…榴弾砲24…門、15㎝重…榴弾…12門を装備…」

ノイズが混じり、途切れ掠れながらの報告ではあったが大まかな陣容は理解できた。

 

「(一個砲兵連隊か…対応するには可能な戦力と見るべきか?)」

 

第169歩兵師団の第230砲兵連隊に配備されているのは恐らく10.5㎝榴弾砲と15㎝重野戦榴弾砲ならば、射程共に最大9キロ以上を誇る。

 

最大装薬で砲撃すれば、砲架(大砲の砲身を載せる台)に負担はかなり掛かるのが一応は届く距離内にはある筈だ。

 

これならばキンツハイムとジゴルスハイム間の平原で展開する敵師団砲兵に対し砲撃は可能…

 

だが、長距離射撃になればなるほど、散布界(射撃した砲弾や銃弾が散らばる範囲)が広くなるのがネックではあるが、この際大きな問題ではない。

 

そこは砲兵隊の練度と戦術の兼ね合いでカバー出来るだろう。

 

敵砲兵隊と距離が近いホウッセンとローゲルバッハの砲兵隊にやらせる必要もなかろう。

彼等は別の使い方がある。

 

彼等が防御戦で参加するにしても、その前に味方師団の砲兵連隊にやらせれば良い。

 

「ホークアイ03よりベーガル05。内容了解。」

 

コルマール管区の師団がどのような形で防御戦闘を展開しているかは、私は知りようがないし判断すべき立場にいない。

 

各部隊の現場指揮官達が連携し、状況に沿った戦術を立て適切な判断を下してくれる。

 

一介の魔導師で駒でしかない自身ならば、無駄な口を挟まず、淡々と敵勢力の状況を報告しておけば良い。

 

命令に忠実かつ実直に業務を遂行すれば良い…余計な事はなるべく避けるべき。

 

そう思っていた時期が私にもありました。

約10分前までは。

 

しかしながら…しかしながらだ。

だからと言って「何もせずには、いられない。」

 

状況がそうさせるのだ。

 

恐らくだが、コルマール管区でマトモな偵察活動をしているのは私だけだ。

 

ベーガル05は「眼が足りてない」といったが、眼が無いのが正確だろう。

 

かれこれ30分以上この空域を滞空しているが…一向に味方魔導師を視認出来ていない。

普通は、複数の魔導師がいる筈なのだが…

 

各警戒班の哨戒空域が広いためだと考えた。

だが魔導探知機には10マイル圏内近づく味方反応は無しだった。

 

電波障害による弊害も可能性としてあるが、魔導探知機は多少のノイズが見られるものの動作は正常だった。

 

何故だろうか?

私なりに様々な可能性を考えたが結論は出なく、ただ一つ言える事は…私ぐらいしか、いや私しかコルマール管区D-10戦域の偵察任務活動をしてない…

 

という事は、眼下の味方部隊は敵部隊の全体的な規模、動きを理解しきれていない可能性がある。

 

もちろん斥候を出して、敵情偵察は活発にやっているだろうが、コルマール管区の周辺は葡萄畑が広がる平坦な土地のため、平面的な情報しか得られない。

 

前衛の敵はわかっても、後衛の敵の布陣は分かりづらいし、不明確だ。

 

師団はどこまで情報収集出来ているかは、不明だが…実際、微妙なところだろう。

 

ならば、敵情や地形を空から俯瞰的に把握できる立場の魔導師が有効的な情報と戦術的助言が可能だ。

 

であるならば…私が動くしかない。

現場部隊の管轄に干渉しない程度に

 

「ホークアイ03よりベーガル05。訓令第3条に基づき意見具申。第230砲兵連隊を使用した敵増強師団砲兵に対する戦術阻止射撃を推奨されたい。…観測員は私が行う。」

 

あくまでも敵砲兵を叩き、戦術上の優位を実現する為の一つの意見を一士官が述べる権限が認められる程度には帝国軍は寛容だ。

 

それが採用されるか、されないかは別として

選択出来る手段を提示するのは問題ない。

 

そして、意見をいったからには発言者は必要な責務を果たすべく行動しなければ、ならない。

 

言い出しっぺは率先して行動すべき。

自分が出来うる仕事をやらねばならない。

 

それを勘案して現状、私に出来る仕事は前進観測員だ。

 

ノルデン北方戦線では単独観測任務で砲兵隊の着弾観測、誘導射撃を行える程度には練度はある。

 

その後、協商連合の魔導師中隊に捕捉され、酷い目にあったが…

 

…本来は、これも避けるべきリスクだ。

正直…死ぬほど嫌だ…だが帝国軍人は、いざとなったら逃げてはならない。

 

時には、リスクを背負って必要と思う任務に励まなければならない…

 

 

 

 

 

……………今までリスクしか無い事だけしかしてない気がするが…それも命に関わったレベルで…まぁ、仕方がない………と思う……

 

 

 

 

いや!無用に考えては、いけない!

 

「やれる時にやれる事をすべき」と提唱したストール・マニングス大尉の言った通りに実践せねば、ならないだろう。

 

 

「……ベーガル05よ…ホークアイ…03。当官で…その手段の是非につい…判断で…ない。だが第169…歩兵師団…本部に打診し…確認する。」

 

意見具申は、意見具申。

私や彼には決定権はないのだから、当たり前だ。

 

それを判断するのは、私より圧倒的に優秀な人材が集まる師団本部の高級幕僚達である。

 

「ホークアイ03、了解。」

 

とにかく、まずは第1段階は完了。

次はどうでるか?

大体、わかってはいる…恐らくは…

 

「ベーガル05…よりホークアイ03…第169歩兵師団…長よりお…呼…の催促だ。師…長は、D83…戦域指揮所にいる…直ちに…向かわれたい。」

 

予想した通りだ。

ノイズ混じりで音切れの無線状態。

それを考えれば、詳細な内容については、直に話した方が早いとの判断になる。

 

「ホークアイ03よりベーガル05。了解、協力に感謝する。」

 

ターニャは、僅かな時間であったが、お互いに危険な情勢下の中で勤務した彼に軽く礼を述べる。

 

「ホークアイ03…こちらこそ…協力に…感謝する…色…と助かった…貴官…武運を祈る…」

 

それは…貴官にも言える事だろう…

麗しき神の加護なぞ世界には存在しないから、こう祈るべきか…

ベーガル05に強運があらん事を切に願う。

 

 

ターニャは、そう心中で呟くと戦域指揮所に最大速度で向かう。

 




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