戦場黙示録 カイジ 〜 ザ・グレート・ウォー 〜   作:リースリット・ノエル

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第31話 ターニャ、再び空へ

-ライン戦線 第13空域 臨時合流地点 P1563-

 

「ジョーンズ軍曹。第143機動予備大隊の先遣隊と、合流できたか?」

 

ターニャはノイズ混じりの無線機越しに、先行するライン戦線のベテラン魔導士の1人 ジョーンズ軍曹に呼びかける。

 

「それが一応、合流は出来たのですが…」

途中で声がこもる反応からして、上手く合流出来たわけではない事を彼女は察する。

 

「先遣隊の3個小隊の内、合流出来たのは1個小隊半程度です…敵捜索航空隊との遭遇戦で持ってかれたようです。」

 

やれやれ、なんて事だろう。

嫌な予感は外れて欲しいものだ。

 

我が国の魔導師部隊は、各所の戦域に散り散りに分散するが余りに合流するのは、決して容易ではない。それはわかっていた事だ。

 

特に敵航空戦力が不透明な戦域で少数の部隊が活動するならば、何が起こるかはわからない。

 

確かに我が国の魔導師は、高い練度を持つ事で有名だが、戦力的に圧倒的な優位を持つというわけではない。

 

機動性を重視する遊撃部隊としての特性を持つ帝国魔導師部隊は、逆に数的劣勢に陥る事は回避出来ない。

 

それでも他国より多くの訓練と経験を重ねた上で練度的優勢を確保し、他国の魔導師、航空機部隊に対抗すると言った古典的だが、一応の確実性がある手段を帝国はとっている。

 

とはいえ、やはり限界はある。

 

数が多い有力な敵航空戦力に遭遇すれば、どうなるだろうかは、素人でもわかる事だろう。まぁ、その結果がこれなのだが。

 

時に空の英雄とも形容される歴戦のエースが混じった部隊か、それだけで編成された部隊と不意に遭遇すれば、総じて殲滅されてしまう可能性は大いにある。

 

「状況が状況だ、こればかりはしょうがない。多少の戦力でも合流出来ただけでも宜しいとしよう。」

 

その点で言えば、残飯程度の戦力が残っているだけでも良しとすべきだろう。

味方戦力が消失するより、何倍もマシであろうて。

 

「それなら、まだいいのですが。指揮官が戦死した上に….次級で指揮を取る軍曹を除き、全員が訓練兵上がりの新兵ですよ。」

 

ターニャは、ジョーンズ軍曹からの報告を聞き、少しの間を開けた後、驚きのあまり気の抜けたような返事をする。

 

「……はぁ?」

 

咄嗟の反応で、声を荒げなかったのは、彼女の持つ理性的抑止が働いたというよりは、報告に対する疑義が働いたからだ。

 

それは本当なのか?と

 

報告を聞いた瞬間、ターニャに去来するものは、現実に対する強い疑い。

 

「そんな事、あるはずが無かろう。いやあってたまるか!」という反応を心の中で叫びながらも、冷静さを保つため「何かの間違いだろう」と判断する。

 

その心理は一時的な現実逃避と似たものである。どちらかと言えば、彼女が一方的に現実を拒否しているのだが

 

ひとまず、彼女は事実か判断すべくで確認を行う。

 

「軍曹、それは本当なのか?」

対してもたらされるのは、誤認でも何でもない「ええ、間違いありません。」と断言される。

 

「彼等、一回の戦闘だけで飛ぶ事が、まぁようやくといった状態です。酷いもんです。」

 

頭が一瞬文字通りに凍りつき、ターニャは言葉を失い、呆然とする。

 

現実であると認識した時に、衝撃と戦慄が身に走る感覚が体を覆う。

 

彼女は、顔を強張らせながら、一言口に出す。

 

「そんな馬鹿な…」

 

人は見たくない現実に対して、大体同じような口を叩くのを彼女は、ここで学ぶ事になる。

ある意味良いきっかけで、あるかもしれない。

人は、想定外の事態で矢面に立たされると、語彙力を失うと。

 

「受け入れたくはないが、これが我が軍の現状か…」

 

精鋭主義を自負する帝国魔導師の悲壮な現実を突き詰められたような気持ちだ。

 

それ以前に予備大隊と名付けられた第二線級扱いの部隊が、方面司令部直下の強襲挺団と比べ、第一線級の実力を持つわけでもない。

 

多少練度が劣るのはしょうがないと考えていたが、実態は更に上に行くものだった。

 

言うならば「余りにも程がある!」だ。

まるで、大戦末期のドイツ軍そのものだからだ。

 

しかし、その道に至るには、まだ早すぎる。

 

何故、こうなってしまうのか…今、考えてもしょうがない事だ。気持ちを切り替えるしかない。

 

「当該方面軍全体で、基幹用員が不足しているのは、理解出来していたが…合流した戦力は、訓練未修の新兵で烏合の衆と解釈すべきだろうな。」

 

「それでよろしいかと。どう足掻いてもこの戦力で、拠点防衛任務に応えなければ、ならないでしょう。」

 

幼年学校上がりたての基礎過程を一応修了した新品の魔導師達。

それを実戦部隊に既に投入している事態は、「マジか!」っと突っ込みたくなる。

 

魔導師戦に理解ある人間ならば、「まぁまぁ、これは御冗談を」と笑い流す事であろう。

 

それ程までに馬鹿げた決定だ。

 

実戦配備される帝国魔導師とは、最低部隊経験を2年積むのが普通だ。

ここ数年の緊迫した情勢や現在の戦況を加味しても許して1年程度は絶対に必要。

 

精鋭主義の極みとする魔導師は4名で小隊、12名で中隊を編成する以上は、一定レベルの戦闘技術・部隊連携を習熟した人間で無ければ、とてもお話にならない。

 

先天的に魔導師として適正があったからと言って、軍の基礎課程を修了した初心者マークの新兵に戦力価値はない。

 

逆に下手な事をしでかし、パニックで乱射して味方を誤射る可能性がある邪魔者でしかない。

 

ターキーショット以前の問題。

というか、実際にされてしまっているではないか!

 

こんな奴らと一緒に拠点防衛せねば、ならないのか。

 

別に上は無理強いせず、後方の警戒任務に従事させれば良かろうに。

 

何を考えて、そうしたかのか理解に苦しみながらもターニャは、半ば諦観の念を出すような声で、恐らく同じ事を思っているだろうジョーンズに無線で呼びかける。

 

「要は、子供を預けて戦争しろというわけだな。まったく無理にも加減があるだろう。」

 

「同感です。とは言え、彼等を打ち捨てる訳にもいかないでしょう。とりあえず早く部隊に収容し、少尉殿の指揮下に置くべきでしょう。」

 

確かに奴等の存在がどうであれ、合流予定の味方だ。別に敵ではない以上、止む無くだな早急に部隊に……ん?

 

ターニャはそこで違和感を感じ、再度ジョーンズに呼びかける。

 

「軍曹、今、私の指揮下に置くといったな?何故だ…」

 

「えっ?それは勿論、少尉殿が最上級者だからです。各小隊の指揮官と下士官は戦死し、残すのは臨時指揮者のエバーンズ軍曹だけですし、部隊を仕切れる将校は少尉殿だけですよ。」

 

「ああ、そうか…そうだった。」

 

こう見えても私は将校の端くれの一人だったな…

 

現時点で部隊指揮権をもつ唯一の存在が、将校として最下層の私だけというのは心情的に頂けない。

 

つい先程までは、単身で偵察員やらされた身が、今では一部隊を率いる指揮官に繰り上げられる唐突な現実に少なからず動揺を覚える。

 

かつての前世世界でも一介の平社員が会社側の一方的な諸事情により、いきなり「営業で人が足らないから、明日からそっちの方で頑張ってくれ。専門外?いや、とにかくやるんだよ。」とか「新部門作るから、準備要員で管理主任やってくれ」とか「今新潟が中々激アツだから、新潟支部を拡張する。君の経験を買って、そこでガッツリ働いてほしい。」など様々な意図を感じられる無茶振りを受ける様を直接その場で見て、聞いた事があるからそれと同様のものだと思いこもうとしたが、やはり納得しきれない。

 

無茶振りにしても限度があろう。

 

-これも、また戦争の一面か…-

 

そう考えながら、新たに命ぜられた任務を遂行する為に再び空を、駆けていく。

 

そして、テンプレの一言を唇を噛み締めながら、吐き出す。

 

-上層部のクソッタレめっ‼︎-

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆さん、久しぶりです。
大分、間が空いてしまいましたが、これからも更新していく予定ですので、気が向いたら見てくださいね。
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