戦場黙示録 カイジ 〜 ザ・グレート・ウォー 〜   作:リースリット・ノエル

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「共和国軍の歩兵部隊が自分のいる陣地に迫ってきた時にようやく実感したんだ。ああ…本当に戦争なんだ。撃たなきゃいけないんだって。引き金に添えた指が固くなるのを感じたよ。もうすぐ人殺しになるんだから…」

〜帝国軍 第144歩兵連隊 第3中隊 機関銃手(名前不明)の手記より〜


第2話 地獄の釜Ⅱ

 

アルサス・ラレーヌ地方 8月15日 午前12時43分 ミューズ・ライン第2防衛線

 

第144臨編歩兵連隊 第1塹壕陣地帯 第一線塹壕線 戦闘前衛部

 

 

砲弾の雨が上がる中、第141臨編連隊は自らが持つ戦闘機械を密やかに発動させる。

 

「連隊はこれより防御戦に移行する!対歩兵、対戦車、対空戦闘用意!各部隊配置につけ!!」

 

各指揮官と通信士官から達せられた号令は自動的に連隊を戦闘に駆りたてる。

 

各大隊、中隊、小隊、分隊、班、組に至る連隊の内臓たる区分化された戦闘部署は、定められた防御戦闘配置に迅速につかせる。

 

配置につき兵士達は各々がもつ武器の点検を行う。

銃口に泥が入り込んでないか、弾は何発あるか、身につけた装備と身体に異常がないかを確実に確認する。

 

一通りの確認が終われば塹壕で、トーチカで兵士達はお互いに肩を寄せながら射撃姿勢をとり、警戒心を鋭くさせながら敵の到来を待つ。

 

ヨハン・アランベルガー2等兵は迫る戦闘に高鳴る緊張と高揚感、不安、恐怖が混ぜあった感情の昂りを感じながらMG08重機関銃のグリップを握る。

 

隣にいるヨハンと同期にあたる弾薬手ラルフ2等兵も布製の弾薬ベルトを持ちながら全身に緊張を漂わせていた。

 

それを見た機関銃長のイーゲル上級兵長は、ガチガチになっている新兵2人に声をかける。

 

「おう、新入り達。息を大きく吸うんだ。初体験だからしょうがないが、あわてるなよ。教練通りに持っている機関銃を扱うんだぞ。」

 

「はっ…はい!」

 

ヨハンとラルフは上ずった声を上げ、それにイーゲルは2人の肩を軽く叩きながら言う。

 

「いいか、俺は今まで色んな戦場で戦ってきた。ヤバイなと思った事は沢山あったが、その度に班を引っ張って生き抜いて来た。だから俺の言う通りにしっかり動くんだぞ。そうすれば死なずに済むんだ。特にヨハンは射手だからな。俺の言う事をしっかり聞けよ。」

 

「あっ…はい…分かりました銃長。」

 

「とりあえずヨハンは、肩にかけたライフルを置きな。邪魔になるからな。もしもの時以外は横においとけ。銃剣もつけといてな。」

 

「ラルフは弾薬箱を手元に持ってこい。シュパン(MG08)が弾切れした時に、弾薬が後ろにあると装填動作に時間がかかる。数秒でも装填の間を少なくしないとフランちゃんに刺されるぞ。」

 

了解と言いながらラルフは弾薬箱をせっせと移動させる。

 

「これで大丈夫ですか?」

 

「そうだな。いいぞラルフ。あと一番上の弾薬箱のロックを外して…こうやってフタの間に弾薬ベルトを少し出しておくんだ。そうすれば装填の手間がちょっと省ける。覚えとけよ。」

 

ラルフのヘルメットを叩き、理解の確認をする。

 

「はい、銃長。」

 

細かく指示を出しながら、手本を見せ、戦場で培った知恵を教える兵長に対しラルフとヨハンは先程までの砲火で身を包んだ強張りが少しずつ解けていくのを感じた。

 

「今おまえらが考える事は、そのシュパンで敵を薙ぎ倒す事だ。」

 

「他は考えなくていい。ただ俺の命令を聞いて狙いを定め機械の様に撃つ、装填、撃つ、装填を繰り返すんだ。俺は常にお前らに目を配ってるから安心して、目の前の事に集中しろ。いいな。」

 

兵長から放たれる人間的魅力を直に感じながら、これから始まる戦闘に先程まであった暗澹たる気持ちが切り替わりっていく。

 

それは明確な闘志の焔。

戦う事に対する明確な意思と衝動が湧き上がる。

 

連隊の持てるライフル、軽機関銃、重機関銃、火砲すべて射線が敵方に指向され、来たる射撃命令を今かと待ち望む。

 

いよいよ、雷鳴のように響きわたっていた砲撃が終わりを迎える。

 

束の間、雨上がりの静けさのような奇妙な感覚に晒されながら、ヨハンは目の前に広がるアルサス平原に無数の影の連なりを確認する。

 

緩やかな稜線から次々に浮かび上がり、こちらに向かってくる影はいくつもの線となり向かってくる。

 

一定の距離感を保ち、整然とした隊形を統制しながらゆっくりと確実に近づく。

 

それは紛れも無い。

共和国軍の突撃部隊の第一陣。

防御戦線突破を図る第1梯団、その先鋒集団である。

 

「さぁ、始まったぞぉ…いよいよ本番だ。気を抜くなよ、お前らの初舞台のお相手だ。」

 

水平線から無数に湧き出る敵影を見つめながら、不敵な笑みを浮かべるイーゲル。

それは長きに渡る兵役経験からくる戦いの昂りからなのか。

 

それとも死線を潜り抜け続けた古参兵でも滲み出る緊張と不安を隠すためなのか。

 

どちらなのだろうかとヨハンはふと思うが、分からなかった。

 

明らかに危機迫る状況である中で、どうでも良い事を思うのは人間の不思議な所である。

 

過度に抑圧と緊張状態に対する反動で、来るものだろうと結論づけ、気を取直して刻一刻と近づく敵軍に照準を合わせる。

 

「いいか!俺が号令をかけるまで撃つなよ。無駄弾を撃つ余裕はこっちにはないからな!」

「はい!!」

 

ヨハンは叫ぶように返事をし、機関銃のグリップを握る手に力が入る。

 

いよいよ、来るのか。

始まるのか。

本当に撃つんだ、戦うんだ…

とても怖いな…やっぱり…

 

でもやるしかないんだ…

 

交錯する感情が溢れながら、彼は銃線の先を見据え、狙いをつける。

そして、内なる覚悟を静かに決める。

 

はじめて…人を殺すんだ。僕が殺されないように…生きる為に引き金をひこう。




中々、集中して上手くまとめる時間がなかったため、少しだけ投稿します。ちょっとだけなんですが、個人的に進めたという実感を持ちたいので…カイジが出てないので、申し訳ないです。

後、少し当初の話の構想に修正を加えて編纂中です。
あと文章表現に苦戦中。思った表現が中々出来ないのはストレスですね。まぁ、練習と試行錯誤の繰り返しで頑張ってはいます。

8月中旬から休暇が少しあるので一気に話を進めて行きます。
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